著者
加納 政芳 戸本 裕太郎 中村 剛士 小松 孝徳
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.25, 2011

本稿では,オノマトペが持つ音響的な特徴を用いて,オノマトペの類似関係を2 次元平面上に表現することを提案する.具体的には,ニューラルネットワークの恒等写像学習によって,多次元オノマトペ特徴を2次元に圧縮し,その空間内でのオノマトペの配置からオノマトペ間の類似性を判断・推測できるようにする.提案手法の有効性をアンケート調査によって確認した結果,「従来の辞書よりも理解しやすい」などの評価を得た.
著者
古川 まき 鈴木 泰博
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.25, 2011

遺伝的アルゴリズムやマルチエージェント系(Ant Colony Optimization)では解探索の高速化のためエリート選別と解候補の多様性の維持が必要であるが、それらを自動調整することは困難であった。本論文はミツバチの採餌行動に着想を得たアルゴリズムによってエリート選別を行う際の閾値を自動調整するモデルを巡回セールスマン問題を対象に作成し、その評価と考察を行う。
著者
神嶌 敏弘 赤穂 昭太郎
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.25, 2011

機械学習技術の進展に伴って,その応用範囲が広がっている.その応用範囲に,はローンにおける与信の予測や人事など社会的に影響を及ぼす事例も含まれる.こうした判断をするときに,人種・性別・出生など社会的公正さを欠いた条件に十分に配慮する必要がある.従来手法では,これらの条件への中立性が保たれない問題があるため,それを是正する正則化手法を提案する.
著者
寄本 勝美 片岡 寛光 石田 光義 藤井 浩司 縣 公一郎 寄本 勝美
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

1980年代以降、各国に新自由主義の潮流が押し寄せ、日本でもその路線に従った行政改革が続けられている。その基調は、企業経営を行政に導入するNew Public Managementの考え方である。大別して、5つのスタンスが挙げられよう。まず、業績に基づいて行政の対内的対外的活動全般を評価する業績評価の手法がある。これは、直截には、人事管理上の業績評価に繋がるが、さらには、一定の政府活動自身の評価を意味し、現実には、政策評価ないし行政評価といわれる手法の流布を促している。加えて、階層を少なくした簡素な組織、企業会計に倣った発生主義会計、パートナーである国民を顧客として捉える顧客志向が挙げられるが、今日まで最も追及されてきたスタンスは、政府活動全体の範囲を問い直し、民営化もしくは民間委託を行う市場原理の導入だろう。例えば、国のレヴェルでは、電電公社、国鉄、専売公社の民営化を発端に、郵政事業、高速道路建設・運営、空港建設・運営等が俎上に乗ったのは周知のことであり、また自治体レヴェルでは、廃棄物収集・処理を典型として、水道事業、病院建設・運営、保育所や幼稚園、そして学校経営等にも議論が及んでいる。勿論これらには、奏功している分野が多く見られるが、今日問うべきは、どこまで市場原理を導入するべきなのか、という点である。営利性と効率を基調とした市場原理のみでは最終的に達成しきれない価値が社会に必ず存在する、ということもまた、事実ではないだろうか。これは、ナショナルミニマム或いはシヴィルミニマムの達成、もしくはユニヴァーサルサーヴィスの確保といった観点でも議論されてきた。効率を追求する余り、逆に公平が損なわれてはいないだろうか。また、効率追求によって生じた余剰が、公平の促進に繋がっているだろうか。この観点で、公平と効率の間で均衡が図られる必要があるだろう。どのような状況で公平が優先され、また効率が優先されるのか、これを適切に判断する必要がある。本研究は、かかる議論に一つの方向性を示したものである。
著者
中村 成洋 松本 行弘
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.176-176, 2009-03-23

Apache HTTP サーバのもとで提供される Web サービスのような,ひんぱんにサブプロセスが生成される環境下では,現在 Ruby が採用しているマークビットをオブジェクトヘッダ内に持つマークスイープ方式のゴミ集め実装は,copy-on-write によるメモリページ共有を疎外し,必要以上にメモリを消費する.本研究では,マークをオブジェクトヘッダ内から独立したビットマップに移すことによるメモリ消費量実行性能の変化を示す.効率的なビットマップマーキングのためにはオブジェクトポインタからビットマップの特定の位置の計算が必要である.一般的にはビットマップ位置をたとえば 1M バイト単位でアラインしておきアドレスをマスクすることでビットマップ位置を求めることが行われている.しかし,Ruby のように種々のプラットフォームで動作する言語処理系では,利用できるメモリ割当て API はmalloc() しかないため,効率良くアラインされたメモリを確保する方法は知られていない.本研究では Ruby のオブジェクト配置方式を利用し,移植性を維持したまま,オブジェクトポインタから定数時間でビットマップ位置を計算する手法を提案する.また,二分検索を用いたビットマップマーキングと比較したマーキング性能の改善も示す.Since mark-and-sweep garbage collection scheme, which Ruby interpreter uses modifies every living object, it suffers performance problems due not to utilize copy-on-write memory page sharing among processes, under the circumstances like web-services running under Apache HTTP servers. In this paper, we proposes adding bitmap marking for Ruby's garbage collection. We show much memory usage and performance change by bitmap marking. For efficient bitmap marking, it is needed to calculate bitmap position from an object pointer. Prior art uses aligns heap memories and pointer masking to retrieve bitmap position from object pointer. But Ruby interpreter runs on various platforms, and we do not have portable memory allocation API to obtain aligned memory region without wasting region. In this paper, we propose portable scheme to map from object pointers to corresponding bitmap table in constant time. We also show how much proposed bitmap marking improves performance, comparing bitmap marking method using binary search to obtain bitmap position from object pointers.
著者
竹中 郁夫
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.106, no.2, pp.103-113, 2008-06-17

ここで紹介する判決は,東京地方裁判所に平成18年に提起された平成18年(ワ)第14387号損害賠償請求事件で,平成19年5月31日に判決が言い渡されたものである。事件の概要は,眼科開業医である原告が,生命保険に加入する際の検査として,被告○○生命保険相互会社(「被告会社」)の社医である被告A(「被告A」)から採血をされたが,その採血方法及び止血処理を誤った過失により,左腕の採血部位の動脈を損傷しあるいは静脈を必要以上に損傷したとして,被告A医師と被告会社に損害賠償を請求したものである。裁判所は,採血後の経過観察不十分と認定し,損害賠償請求440万円のうち,98万円の損害賠償が認められた。
著者
西垣 定治郎
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.183-201, 1970-02

For the control of Culex tritaeniorhynchus, the principal vector mosquito of Japanese encephalitis virus in Japan, the residual spray was proved to be nearly ineffective, and therefore the control experiments for the larvae were carried out at a farm village, Hokabira, located on a small island, Matsushima, Nagasaki Prefecture. From the results of the experiments, it is suggested that an effective control would be achieved when a 1% Sumithion floating dust is used once a week at a rate of 3 kg per 10 ares for all the potential breeding places such as paddyfields and allied collections of water, fertilizer pits, earthen jars, etc., located within the scope of at least 2km from the outskirts of the village in question, and that the desirable time for using the larvicide would be from early June to early September.本実験を行なった外平部落は,長崎県西彼杵半島の大瀬戸町から約1.5km離れた松島と云う小島にあって,この島に散在する5部落の内の唯一の農業部落である.外平部落は島の中央丘陵部の西南斜面と海岸との間にあって太田区,日向志区,瀬戸畑区の合計110戸の家がほぼ直線的に並んでおり,周囲に約950アール即ち松島全体の水田面積の97.4%に当る水田があり,多数の家畜を養い,古くから野菜作りが盛んで,その施肥のために下水を大水ガメに溜め,下肥を段々畑に掘られた多数の水肥溜に貯える習慣がある.この様に蚊の発生のための諸条件がそろっていたので,古くから蚊が非常に多く,バンクロフト糸状虫症が高度に浸淫していた.この糸状虫症は仔虫保有者に対する集団治療とアカイエカの駆除とによって1962年8月迄に完全に撲滅された.その後,村民は本病の再燃を恐れてアカイエカの撲滅作業を続ける事を決議し1963年から1965年迄残留噴霧を年1回ずつ実施し,下水,水肥溜等へは幼虫駆除剤の投入を続けながら,1963年中には下水溝を悉くコンクリート溝に改善して1964年,1965年には下水系統の水溜りがなくなり従っで駆除の対象は家の周辺にある水ガメと水肥溜のみとなった.この間,有機燐剤を使用して毎年行なった残留噴霧は,アカイエカに対しては著しい効果が長期に亘って見られたが,コガタアカイエカに対しては殆んど効果がなかった.このことは,残留噴霧実施後,♀成虫の採集数も,その経産率も減少しなかった事から認めざるを得なかったことであるが,残留噴霧を全く行なった事のない従って薬剤感受性が極めて高いと思われる部落においても同様に見られた事から,本種♀蚊の畜舎内に逗留する性質が極めて弱い事及び牛舎特に豚舎が構造上極めて開放的である事などがその主な原因であろうと思われた.そこで,1966年にはコガタアカイエカ(シロハシイエカも含む)の幼虫を対象として,早春から越年成虫群による産卵が終了する迄,水田を始めとする本種蚊の可能発生場所に幼虫駆除剤を散布し続ける計画を立て,外平部落の周縁から1kmの範囲の発生場所へ1%スミチオン浮遊粉剤を10アール当り3kgの割合で,越冬成虫の産卵期間と思われる4月3日から5月末迄の間,及び以後8月3日迄,4月中は10日,以後は7日間隔で散布を続けた.その結果,散布期間中は顕著な駆除効果がみられた.然しその間,蛹が少数ずつではあるが時々採集され,又,1km外から飛来したと思われる可成りの数の♀成虫が採集された.従って,1967年には駆除範囲を外平部落から2km迄広げて4月14日から5月31日迄即ち越年成虫に由来する幼虫が発生する期間中,昨年同様の方法で幼虫駆除剤の散布を続けた.散布中は勿論著効を認めたが,これによって6月以後の新生成虫の発生を防ぐことは困難であることが判った.7月上旬から幼虫及び成虫の発生がますます盛んになったので,全島(殆んど2km内に入る)一斉に残留噴霧を実施し,続いて幼虫駆除剤の散布量を多くして駆除を再開したが,約1ケ月間は幼虫及び成虫の盛んな発生を効果的に抑える事ができなかった.以上の実験から,少なくとも2kmの範囲内にある本種蚊の可能発生水域に対して1%スミチオン浮遊粉剤を10アール当り3kgの割合で週1回散布し続けるならば顕著な駆除効果を挙げることができる.然しこの方法で早春から越年成虫群が産卵を終了する迄の期間中幼虫駆除を続けても,6月からの新生成虫の発生の根源を断つ事にはならないので,成虫の発生が次第に盛んになり始め,豚での日本脳炎の自然感染が起り始める6月上旬から駆除を始め,多くの成虫が越年に入る9月中,下旬の少し前即ち9月上旬迄,幼虫駆除を続けることが,疫学的には必要且つ効果的であると考えられる.
著者
湯之上 隆 鈴木 淳 大塚 英二 大友 一雄 保谷 徹 岩井 淳 杉本 史子 横山 伊徳
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

静岡県を調査主体とする江川文庫史料西蔵調査事業と連携して調査研究を進めた。平成24年3月刊行の静岡県文化財調査報告書第63集『江川文庫古文書史料調査報告書』4冊により、約30, 000点の古文書を目録化した。本研究の前提となる第1次調査分の約20, 000点と合わせた約50, 000点にのぼる古文書調査はほぼ完了し、本研究の所期の目的は完遂した。江川文庫研究会を5回開催し、調査研究成果の公表と情報の共有を図った。国文学研究資料館の「伊豆韮山江川家文書データベース」により、調査成果を公開した。
著者
廣瀬 浩二郎 小山 修三 五月女 賢司
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本プロジェクトは、ユニバーサル・ミュージアム(誰もが楽しめる博物館)の具体像を模索する多様な研究活動を展開した。2011年10月にはプロジェクトの成果発表を目的とする公開シンポジウム「ユニバーサル・ミュージアムの理論と実践」を国立民族学博物館で行なった。吹田市立博物館の実験展示「さわる-五感の挑戦」(2009年・2010年)、特別展「さわる-みんなで楽しむ博物館」(2011年)の開催に当たっては、展示コンセプトの立案、資料選定などで協力した。
著者
五月女 格 鈴木 啓太郎 小関 成樹 坂本 晋子 竹中 真紀子 小笠原 幸雄 名達 義剛 五十部 誠一郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.451-458, 2006-09-15
参考文献数
21
被引用文献数
14 14

115℃のアクアガス,115℃過熱水蒸気ならびに100℃の熱水にてジャガイモの加熱処理を行った.加熱媒体からジャガイモへの熱伝達率を測定した結果,アクアガスの熱伝達率が最も高かったが,加熱処理中のジャガイモ中心部の温度履歴に加熱媒体間の差は見られなかった.また加熱処理によるジャガイモ中のペルオキシダーゼ失活の進行にも加熱媒体間の差は見られなかった.この原因は,いずれの加熱媒体による加熱処理においてもジャガイモ表面における熱伝達は十分に大きく,ジャガイモ内部温度変化はジャガイモ自身の熱拡散係数に律速されていたためであったことが,ジャガイモ内部における熱伝導シミュレーションの結果から確認された.<BR>また,それぞれの加熱媒体により加熱処理されたジャガイモの品質を比較した結果,アクアガスならびに過熱水蒸気により加熱処理されたジャガイモが熱水にて処理されたジャガイモと比較して,硬さも保たれ色彩も良好であった.走査型電子顕微鏡によるジャガイモ微細構造の観察結果,熱水により加熱処理されたジャガイモにおいては熱水への固形成分の溶出が推察された.このことから固形成分の溶出の有無が加熱処理されたジャガイモの品質に影響を及ぼしたと考えられた.またアクアガスによる加熱処理では過熱水蒸気処理と比較して質量減少を抑制することができた.更に,アクアガス処理によりジャガイモ表面に塗布した<I>B. subtilis</I>胞子を死滅させることが可能であった.<BR>以上のことからアクアガスを用いることにより,熱水による加熱処理と比較して良好な品質にて,また過熱水蒸気処理と比較して小さな質量減少にて,ジャガイモのブランチングを行うことが可能であると結論付けられた.またアクアガスを用いて加熱処理されたジャガイモを無菌状態にて保存することにより,高品質なジャガイモの長期間貯蔵が可能になると期待された.今後はジャガイモの酵素失活に必要な加熱温度条件等を詳細に検討し,アクアガスにより加熱処理されたジャガイモの貯蔵性ならびに貯蔵されたジャガイモの品質変化について解明していく予定である.
著者
谷口 真吾
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

亜熱帯地域の沖縄県を中心とする沖縄島嶼域では、森林のもつ公益的機能の高度発揮のため計27種の有用樹を造林樹種として指定している。沖縄県はこれらの有用樹種を用いた人工造林や樹下植栽、育成天然林施業など多種多様な森林造成を積極的に推進している。しかしながら、指定樹種には開花結実、受粉・交配様式などの繁殖特性が未解明な樹種が大半を占めている。亜熱帯域の多様な樹種から構成される森林を維持し、種子の供給と確実な更新を安定的に促すためには、構成樹種ごとに個々の繁殖特性を主体とする生活史を解明することが急務である。そこで、本研究課題では亜熱帯性樹木の繁殖特性を明らかにするため、有用樹4種の開花フェノロジー、送受粉機構、結実機構について研究を行った。本研究で得られた知見は、有用樹の効率的な種子生産に寄与する成果であり、沖縄島嶼域の森林保全あるいは再生、さらには新規造成のための地元産種子による苗木生産、あるいは天然更新のための種子確保に不可欠となる種子生産技術の基礎的情報の体系化に極めて重要な成果を提供するものである。
著者
平井 勇
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, 1961-06-25

1960年5月31日に愛知県刈谷市広小路の道端に生えるナツミカン(高さ2m)より終令幼虫12頭を得,自宅にて飼育中,6月24日に雌雄型1が羽化したので報告いたします.
著者
池口 良輔
出版者
公益財団法人先端医療振興財団
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

近年,世界で30例以上の手同種移植成功例と数例の顔面同種移植成功例が報告されている。しかし、通常の免疫抑制療法には術後,感染や悪性腫瘍の発生など致命的な副作用があり,腎、肝,心肺移植などの生命維持器官の移植では,致命的副作用を伴う免疫抑制剤の使用は認められるが,生命維持器官でない四肢運動器官の同種移植では,免疫抑制剤の使用については議論の多いところである。一方、骨髄間葉系幹細胞(MSC)は、骨、軟骨、脂肪組織などへの多分化能を有し、採取分離培養が比較的容易な細胞として知られているが、移植医療分野では同細胞の免疫調節効果を用いた治療法が近年報告されてきている。今回我々は、免疫調節効果を持つ骨髄間葉系幹細胞を投与し、ラット四肢同種移植モデルでの拒絶反応の抑制効果を評価検討した。Lewisラットをレシピエントとし、Wisterラットの後肢の同種移植を行いMSC(2×10^6)と1週間のFK506(0.2mg/kg/日)を投与したものをMSC群(n=6)、同様に同種移植を行いFK506(0.2mg/kg/日)のみを投与したものをFK群(n=6)、コントロール群として免疫抑制療法を行わない群(n=6)とLewisラット間の同系移植群(n=6)を作成した。移植肢の生着期間を組織学的に評価し、拒絶反応の程度を免疫学的に評価した。移植肢の生着期間について、MSC群ではFK群に対して有意な生着期間の延長が認めら、組織学的にも拒絶反応が抑制されていた。免疫学的にもMSC群での拒絶反応抑制が確認された。MSCには免疫反応抑制効果があり、それによりラット四肢同種移植モデルでの生着期間が延長したものと思われる。運動器官の同種移植など通常の免疫抑制剤の使用が致命的副作用のため制限されるような場合、細胞を用いた新たな免疫抑制療法として間葉系幹細胞を応用できる可能性が示唆された。
著者
徳宿 克夫 久世 正弘
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.803-810, 1994-10-05
参考文献数
17

1992年5月31日,衝突型加速器HERAで,電子陽子(ep)散乱が初めて観測された.10年近くの長い建設期間を経て,ZEUS実験がスタートした.それから2年,初期のデータ解析がなされ,新しい領域での概括的探査ができた.陽子の構造は非常に古くから研究されているが,クォークの描像が確立した現在でも,その振舞に関してわかっていないことが多い.また,光子という最も基本的なゲージ粒子も高エネルギーではハドロンの成分を持つことが知られ,HERAの実験で構造を探ることができる.ここで,これまでの成果をまとめ,今後の展望を紹介する.