著者
小松 光 久米 朋宣 大槻 恭一
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.91, no.2, pp.94-103, 2009-04-01
参考文献数
48
被引用文献数
3 9

針葉樹人工林の間伐による渇水緩和機能の変化を評価する一環として,小松ら(2007c)は間伐による年蒸発散量の変化を予測するためのモデルを作成した。このモデルは蒸散と遮断蒸発の部分からなり,モデルの妥当性は,1)間伐による蒸散量の不変性,2)間伐による遮断蒸発量の減少量,3)モデルの流域スケールへの適用可能性の3点から検証される必要がある。本論ではおもに2)の検証を行った。間伐による遮断蒸発量の変化を計測した7事例を文献より収集し,モデルによる予測結果と比較したところ計測値とモデル予測値は概ね一致し,2)がほぼ妥当であると思われた。3)については,流域水収支法による蒸発散量の計測データが1事例しか得られなかったが,このデータについては計測値とモデル予測値は概ね一致し,モデルが流域スケールへ適用できる可能性が示唆された。本論では1)の検証は行われておらず,3)の検証も不十分であるので,将来の検証作業で必要となるデータを列挙し,今後の計測研究に指針を示すことも行った。
著者
篠原 慶規 井手 淳一郎 東 直子 小松 光 久米 朋宣 智和 正明 大槻 恭一
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.92, no.1, pp.54-59, 2010 (Released:2010-04-01)
参考文献数
44
被引用文献数
12 14

近年, 管理放棄された人工林が増加している。蒸発散量は水資源量に大きな影響を与える要素であるが, 管理放棄人工林での計測事例と判断できるものはこれまでになかった。本研究では, 九州大学福岡演習林に設置された御手洗水試験流域の管理放棄されたヒノキ人工林において樹冠遮断量の計測を行い, 他の針葉樹林と比較した。本試験地の樹冠遮断率 (樹冠遮断量/降水量) は24.9%となった。他試験地の針葉樹林の樹冠遮断率は立木密度とともに増加する傾向があり, 本試験地の樹冠遮断率はその分布の範囲内に収まった。このことは, 従来報告されている樹冠遮断率と立木密度の関係が, 管理放棄人工林に対しても成り立つかどうかを判断する上で有益な情報となるであろう。
著者
手島 真
出版者
印刷学会出版部
雑誌
印刷雑誌 (ISSN:00201758)
巻号頁・発行日
vol.32, no.8, pp.1-4, 1949-08
著者
山口 直文
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

粒度・波浪条件・リップルの大きさで決まる堆積物粒子の沈降ポテンシャルが,リップルの移動とそれに伴うベッドロード輸送に与える影響を調べた.これまでの現世海浜での観測結果から,リップル移動速度から求められる堆積物輸送量が,既存の掃流砂輸送モデルから推算される輸送量よりも大きい場合と小さい場合があることが明らかになっている.しかし,その原因は明らかになっていない.本研究の造波水槽実験の結果から,これらのリップル移動速度とモデルとの違いが,リップル近傍での堆積物粒子の沈降ポテンシャルにより整理することができることが明らかになった:粗粒砂海浜のような堆積物粒子が沈降しやすい条件の場合,岸側への部分的な沈降がリップル近傍で起こることで,モデルの推算より岸向きへの堆積物輸送量が大きくなる.―方で,細粒砂海浜のような堆積物粒子が沈降しにくい条件の揚合,"phase lag"と呼ばれる流れと堆積物移動のずれの影響によって,モデルの推算より堆積物輸送量が小さくなる.これらの結果は,粒径や周期が主に支配する堆積物沈降ポテンシャルが,振動流下での堆積物輸送において無視できないことを示しており,その影響の仕方を定量的に評価できるパラメータを提案することができた.造波水槽実験に加え,現世海浜の堆積構造の特徴と,海底に形成されたウェーブリップルの特性を調べるために,新潟県上越市の大潟海岸において調査を行った.この調査では,水深約5mから20mの計12地点で,リップルのサイズの計測と,リップルの頂部・谷部における堆積物サンプルの採取を行った.各リップル表面の堆積物粒度は,頂部と谷部で異なる傾向を示した.頂部に比べて谷部は淘汰が悪く,堆積物の平均粒径が05φより粗い場合には,頂部より谷部が粗い傾向を示すが,0.5ψより細かい場合は逆に頂部のほうが粗いという特徴がみられた.
著者
間瀬 肇 森 信人 竹見 哲也 安田 誠宏 河合 弘泰 黒岩 正光
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,温暖化シナリオにもとづく気候変動予測結果をもとに,将来の台風災害,高波の予測災害,高潮災害について定量的な予測方法を確立することを試みた.日本周辺の高波・高潮予測に際しては,適切な台風イベントの抽出とその評価,そして高波・高潮の数値予測が重要となる.このため, 地球温暖化予測結果の下,将来の台風の予測を行った.ついで力学的・統計手法に基づく高波・高潮数値予測モデルを用い,温暖化に伴う高波・高潮災害の予測と評価を行い,将来気候における日本周辺の高波・高潮の顕著な増加を明らかにした
著者
桑形 恒男 近藤 純正
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.87-96, 1992-08-31
被引用文献数
2

The horizontal wind field of the typhoon, T9119,was analyzed using the surface wind data at the meteorological stations in Japan. In this analysis, observed wind speeds were corrected according to the surface roughness of each station. The 10-min mean maximum wind speed attained to 40-50ms^<-1> over flat surface in western Japan and the coastal area of Sea of Japan. The calculated wind field from the empirical formula compares favorably with the observation, and also suggests that wind speeds around Japan are enhanced by fast moving velocity of the typhoon nearly 100km h^<-1>. The wind storm of T9119 is as strong as those of the strongest typhoons which landed in Japan for recent 40 years. The gust factor in typhoon area slightly increases during recent 40 years, which result is mainly attributed to the increase of the surface roughness z_0 around each meteorological station.
著者
小崎 隆 縄田 栄治 舟川 晋也 矢内 純太 角野 貴信
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、湿潤地において定常的な有機物動態を攪乱・変容させるストレス要因を、土壌有機物動態モデルへ定量的に組み込む可能性を検討した。その結果、多糖基質分解プロセスにおいては可溶化/無機化二段階プロセスモデルの、また単糖無機化プロセスにおいては段階的基質利用コンセプトの適用が有用であり、反応論としてミカエリス-メンテン式の利用によって定量的に評価することが可能であった。いずれにおいても土壌酸性がストレス要因として重要なものであることが検証された。
著者
牧野 稔 渡壁 守正
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.338, pp.10-18, 1984-04-30
被引用文献数
1

The objective of this paper is to investigate the statistical properties of the extreme value distribution of the annual maximum wind speed obtained by a probabilistic model. The probabilistic model modified from the previous one by considering a gaussian distribution of translating speed of typhoons and a gradient wind field yields the extreme value distribution of the annual maximum wind speed very well. The analysis based on this model leads to the following; (1) For the distribution of extreme winds caused by tropical cyclones such as typhoons, the Type III extreme value distribution with three parameters is preferable to the other Types. (2) The upper limit ω and the scale parameter k in the Type III distribution may be fixed as a constant in and near the Japanese Islands (ω=90m/s, k=6). (3) The location parameter u in the Type III distribution may be approximately obtained in eq. (14) as a function of the mean occurrence rate, λ, of typhoons. (4) Resulting that the Type III distribution is the most suitable for the estimation of wind speeds in typhoonprone regions, the control band based on the distribution involved almost all observed distributions acceptably at 8 sites for the period of 30 years.
著者
宮村 倫司
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

大規模な接触問題解析を実現するために,領域分割法に基づく並列解析手法を開発することが本研究の目的である.最初に,摩擦のない接触問題の解法として, Semismooth Newton法の改良手法,内点法とSemismooth Newton法の組み合わせ手法を提案した.次に,内点法やSemismooth Newton法の反復の中に現れる等式制約条件付線形問題を多点拘束条件を考慮したBDD法で解くためのアルゴリズムの開発について検討した. GPGPU実装による高速化についてもプロトタイプコードを開発した.当初の研究計画には,摩擦のある大規模接触問題の解法の開発が含まれていたが,基礎的な検討にとどまり,研究期間内に実用的な手法を開発することはできなかった.
著者
奥野 久輝
出版者
社団法人日本化学会
雑誌
化学教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.142-146, 1974-04-20
著者
佐々木 和彦 植松 康
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.5, no.9, pp.61-64, 1999
参考文献数
4
被引用文献数
4

This paper discusses the characteristics of the wind damage to residential houses caused by Typhoon 9119 in Akita and Aomori Prefectures, based on the results of a damage investigation. It is found that the damage strongly depends on the framework and construction method of roofs. Furthermore, the results of a multivariate regression analysis indicate that the damage ratio for an area is related to the local topography as well as to the number of households in the area.
著者
山本 晴彦 早川 誠而 鈴木 義則
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.167-178, 1997-11-30
参考文献数
15
被引用文献数
2

The typhoons 9210 and 9612 damaged crops and green houses in western parts of Japan, in the early and the middle of August. For the typhoon 9210,the maximum instantaneous wind speed in Makurazaki city was 57.0 m/s, the maximum wind speed was about 15〜33 m/s in middle and southern parts of Kyushu districts. The loss money in the agriculture of Kyushu district by typhoon 9210 exceeded 19.8 billion yen. For the typhoon 9612,the maximum instantaneous wind speed in Kagoshima city was 58.5 m/s, this value was the maximum record since 1940. The precipitation of the Ebino meteorological station in August 14,1996 was 372 mm and many area in western parts of Japan were suffered by strong wind and heavy rainfall. The loss money in the agriculture of Kyushu district by typhoon 9612 exceeded 13.7 billion yen.
著者
松井 徹哉 武藤 厚 大塚 貴弘 永谷 隆志
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

浮屋根と液体の非線形性を考慮した大型液体貯槽の地震時スロッシング解析理論を体系化し、縮小模型による振動台実験を実施してその妥当性を検証した。さらにその成果に基づいて、2003年十勝沖地震で発生したシングルデッキ型石油貯槽浮屋根の損傷・沈没の原因究明を試み、浮屋根や液体の非線形性に起因する非線形振動モードの存在がポンツーンに過大な応力を発生させ、浮屋根を座屈・沈没に至らせる可能性のあることを指摘した。
著者
郭 桂芬 信田 哲宏 賈 会彬 新家 憲 井出 成一 郭 献山 李 忠貴 近江谷 和彦 松田 従三
出版者
専修大学北海道短期大学
雑誌
環境科学研究所報告 (ISSN:13464736)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.105-111, 2005-12-30

中国黒龍江省嫩江は少雨、寒冷地帯である。年間降水量は550〜600mm、年平均気温は-0.1℃である。この地帯の主要作物は大豆(油用)である。大豆などの作物を春に播種するとき、5月には降雨がほとんど無く、かつ気温が急降下することがあり、発芽が不安定である。このため、土壌水分の蒸発を防ぐことと、地温を上げるため、マルチ栽培が慣行化している。大豆栽培において、成長期の7月中旬に、このマルチフイルムを剥ぎ取らなければならない。7月中旬以降は降雨季に入り、雨水が地中へ浸透し易くするためである。さらに大豆が大気中の窒素を固定するため、マルチフィルムが妨害になるためである。現在、マルチフィルムの剥ぎ取り作業を全く人手で行っている。面積が広大であることと、マルチフィルムは纏まれば重量物となり、炎天下で、腰を曲げて行う作業であるため極めて重労働である。当研究では、このマルチフィルムを剥ぎ取る機械を開発することを目的とする。対象作物は大豆とする。主な結果は日本のらくはぎマルチフィルムのスリットから風が通るため、土壌との密閉が良くなく、雑草が生えてきた。中国黒龍江省嫩江県は春の播種期にほとんど雨が降らない、かつ風が強いため、スリットから水分がどんどん蒸発してしまう。保温、保湿の意味が薄くなった。日本のらくはぎマルチフイルムの厚さは0.02mmである。中国現地のフイルムの厚さは0.008mmである。コストの面で現地の農家にとって実用性に問題がある。紙マルチは弾力性がないため、機械で紙マルチを引く作業が極めて難しい。また、圃場は、かなり平らでなければ、紙マルチはすぐに破れてしまう。このため設置作業が難しい。紙マルチは雨に濡れると伸び、乾燥すると縮むため、2ヶ月の間に破れた。このためマルチの意味がなくなる。中国のマルチフィルムは巻き取るとき、すぐ切れた。これは0.008mmと薄いことと、黒龍江省では春の播種期の時、風が強いため、マルチをするときに必ずマルチの両端に多くの土をかけなければならない。この土は夏の雨で濡れ、非常に固くなる。このため両端の土壌が抵抗になってフイルムが切れた。これを解決するために、フイルム両端の土壌土壌をあらかじめ耕起して、土を落とすチゼルを今後、開発する必要がある。
著者
辻 宏一郎
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

大気大循環モデル(AGCM)で解像できる重力波の運動量フラックスが、熱帯域下部成層圏において東西方向に非対称な分布をしている原因について調べた。東半球の正の運動量フラックスは、夏季インドモンスーンによる強い平均の東風シアーとの相互作用によって東向き伝播の重力波が生成されることで出来ていた。西半球での負の運動量フラックスは、平均風と波の相互作用よりむしろ、太平洋や大西洋における大規模な(1000km-)cloud clusterの伝播方向に大きな東西非対称性があることが原因と考えられた。西進する雲クラスターが東進するものに比べ卓越しており、この西進する雲と、西向き伝播の重力波の間に強い関係性があると考えられる。以上の結果については、2004年度春季気象学会で発表を行った。さらに、論文として現在投稿中である。また、より長い周期を持つ波動についても同様の解析を行った。1980年から1999年まで20年分のECMWFデータを用いた統計的解析を行った。大気の変動成分を3日以下、3日から10日、10日以上の3成分に分け、各成分毎に運動量フラックスの地理的分布及び季節変化を調べた。どの成分においても、東半球において正の運動量フラックスが卓越していた。3日以下成分では、上部対流圏における、モンスーンによる東風が強い地域で正の運動量フラックスが卓越していて、AGCMにおける重力波分布と矛盾しなかった。3日から10日周期成分では、正の運動量フラックス分布はWheeler and Kiladis(1998)に見られるケルビン波の活動度分布と似ており、西半球まで正の値が広がっていた。10日以上周期成分では、赤道域を中心とする正の運動量フラックスが南北方向にも広がっており、季節内振動の影響が示唆された。
著者
一ノ瀬 俊明 花木 啓祐 泉 岳樹 陳 宏
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

華中科技大学と共同で、中国・湖北省・武漢市の長江両岸地区(武昌と漢口)において再開発が想定される地域を対象に、夏季と冬季の集中気象観測、ならびに街区スケールの気流等に関する数値計算を行った。観測からは、河道上の風速が強まるのと連動し、直交する街路上の風速が強まり、同期して気温の変動が生じていることが示された。また、気象観測や数値計算の結果にもとづき、ヒートアイランド緩和策を盛り込んだ市街地の整備プランを提案した。
著者
鴻野 英明 岩瀬 照雄 飯野 俊幸 宇野 武男
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.24, no.19, pp.37-41, 2000-02-25

ハイビジョン放送ならではの迫力ある映像と音声で大自然の驚異や大景観を画面から体感してもらう生中継シリーズ。昨年5月22日、23日の2日間、世界最大の峡谷・グランドキャニオンから、5月30日は300mを越える巨岩が立ち並ぶモニュメントバレーから生中継を実施した。富士山が17個も入ってしまう広大なエリアのグランドキャニオンからの中継は峡谷の崖上にある展望地「デザートビュー」をメインポジションとし出先現場を3ヵ所設け生中継を実施した。