著者
黒田 吉雄 内田 煌二 佐藤 美穂
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.75-82, 2001-12-25
参考文献数
16

筑波大学演習林が所在する,八ヶ岳東山麓の野辺山ケ原は冷温帯性ミズナラを主体とした,天然生広葉樹二次林が分布している。また,カンバ類が良く発達し混生林を構成しているが,本地にはブナの自生地が確認されていない。この原因解明のため,ブナ・ミズナラの開芽時期と晩霜が発生する時期について,1993年から1998年の6年間に渡って調査した。ブナの開芽は5月2日〜5月24日の間に起こり,開芽期間に22日間の差が認められた。一方,ミズナラの開芽は5月11日〜5月31日の間に起こり,開芽時期に20日間の差が認められ,平均9日(7日〜14日)ブナより遅いことが確認された。開芽日の日平均気温は,ブナで10〜13℃およびミズナラで11〜12℃,また,積算温度(6年間の平均値)も算出した。調査年により晩霜は5月9日〜5月28日の間に発生した。この晩霜発生期間は,ブナの開芽および開葉後にあたりそれが原因でブナの葉の枯死および枯死木も発生した。一方,ミズナラでは晩霜を受けない年もあったが,晩霜を受けても開芽直後および開葉後の葉には可視被害は殆ど認められなかった。このような両樹種の樹種特性の差が分布を規定しているものと推論された。
著者
加藤清信
雑誌
整外と災外
巻号頁・発行日
vol.44, pp.1333-1336, 1995
被引用文献数
1
著者
酒井 潤一 横山 賢一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、不働態皮膜により高耐食性を有する合金の腐食に伴う水素吸収から脆化に至るまでの全体像の特徴とメカニズムについて、電気化学的観点と材料強度学的観点を相互に関連させて複合的に調べ明らかにした。得られた種々の知見は、使用環境中における金属や合金の安全性・信頼性のさらなる向上のための材料評価法及び新しい合金開発のための指針の一つとして期待されることを示した。
著者
中山 守雄 原武 衛 荒野 泰 石原 石原 西田 教行
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

我々は、これまでに、^<125> I,^<11> C,^<18> Fで標識したフラボノイド誘導体が、βアミロイド(Aβ)凝集体に対して高い親和性ならびに、脳への良好な移行性と脳からの迅速なクリアランスを示すことを報告した。本研究では、主に、核医学診断分野で最も繁用性に優れた^<99m> Tcを用いて標識したフラボノイド誘導体を合成し、評価した。安定で脂溶性の高い^<99m> Tc標識体を得るための配位部位として、ジアミンジチオール型のMAMAとBATを導入した。そのうち幾つかの標識体は、Aβ(1-42)凝集体に対し高い結合親和性を示し、さらに、動物実験においては、^<99m> Tc-BAT-chalconeが、アミロイドの画像化に適した迅速な脳への取り込みと消失性を示すことが明らかとなった
著者
西 信康
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究課題は、古代儒家思想における人性論の歴史的展開と、儒家道家の思想交渉の歴史的展開に関する研究を進めた。具体的には、(1)『孟子』所載の仁内義外説を再検討し、「義」に対する告子の倫理思想を明らかにした。(2)郭店楚簡『性自命出』に見える「性」「命」「勢」「物」といった概念の意味内容と比喩表現を再検討し、その思想的特徴を明らかにした。(3)上博楚簡『民之父母』に見える「五至」について、『老子』『荘子』『淮南子』の記載を手がかりにその意味内容を検討し、儒家と道家の思想的交渉の様子を明らかにした。
著者
大槻 圭史 台坂 博 武田 隆顕
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.73-81, 2008-03-31

リング・衛星系は巨大惑星形成過程の自然な副産物であると考えられる.本稿では,土星リングを構成する氷粒子の物性がリングの力学進化や構造形成に及ぼす影響について述べる.氷粒子の反発係数はリングの力学進化を考える上で重要な物理量であり,室内実験結果が理論研究に使われてきた.粒子表面の摩擦は粒子自転を引き起こし,土星リングからの熱輻射の観測結果を解釈する上で重要となる.また粒子間の非重力的吸着力がリングの進化や構造形成に及ぼす影響,隕石衝突によるリング組成進化に関する研究等も行なわれているが,これらについては今後さらに詳しく調べる必要がある.
著者
山岸 敬幸 内田 敬子 山岸 千尋 土橋 隆俊 古道 一樹 牧野 伸司 湯浅 慎介
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

心臓流出路の発生には、おもに二次心臓領域と心臓神経堤由来の2種類の心臓前駆細胞の働きが必須であるが、これらの細胞の相互作用によって正常な流出路が形成される機序はいまだ明確でない。私たちは、二次心臓領域に発現し、心臓神経堤細胞の遊走に関与する神経血管誘導因子・Sema3Cの発現制御機構を明らかにすることにより、流出路発生における両細胞間相互作用に関与する分子機構を解明した。Sema3CのenhancerにlacZ遺伝子を連結・導入したtransgenicマウスの解析とChIP およびluciferase assayを組み合わせ、Sema3Cの上流直接活性化因子としてFoxc1/c2を、上流抑制因子としてTbx1を特定した。遺伝子改変マウスの解析によって、Tbx1の発現低下によりSema3Cが神経堤細胞に異所性に発現し、その遊走を障害することが示唆された。さらに両細胞間相互作用を担う候補タンパクの検討により、Tbx1のSema3C抑制機構は、心臓神経堤細胞において分泌因子Fgf8を介することが推定された。
著者
安武 潔 垣内 弘章 大参 宏昌
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

薄型Si太陽電池の実現には、光閉じ込め技術に加えて、キャリアの表面再結合を抑制するパッシベーション技術が鍵となる。p型Si表面のパッシベーションには、負の固定電荷をもつ絶縁膜が有効であり、Al_2O_3薄膜がその可能性を有している。本研究では、p型si表面のパッシベーションに有効なAl_2O_3/極薄SiO_2/Si構造の形成条件を明らかにすることにより、高効率Si太陽電池製造に必要なAl_2O_3薄膜の低温・高速形成プロセスを開発する。(1)大気圧プラズマによるSiおよびAlの酸化特性を調べた結果、400℃でのSi酸化速度は、1000℃ドライ熱酸化と同等であること、Al酸化速度はSiの1/2程度であり、熱酸化に比べ高速であることが分かった。(2)大気圧プラズマ酸化によるSiO_2膜は、高温熱酸化膜と同等の品質であり、SiO_2/Si界面準位密度はD_<it>=2×10^<10>cm^<-2>eV^<-1>であった。一方、正の固定電荷密度が高い(Q_f=5.3×10^<12>cm^<-2>)ため、n型Si表面のパッシベーションに有効であり、非常に低い表面再結合速度(S_<eff>80cm/s)を実現した。(3)Al/Si構造を大気圧プラズマ酸化することにより作製したAlO_x/Si構造は、負のQ_fを有するが、界面特性が十分でなかったため、Al_2O_3/SiO_2/Si構造を形成した。SiO_2が厚い場合、正のQ_fを示すが、SiO_2膜厚の減少とともに負のQ_fが増加することが分かった。(4)Al_2O_3/薄いSiO_2/Si構造により、D_<it>=9×10^<10>cm^<-2>eV^<-1>,負のQ_f=5.4×10^<12>cm^<-2>,S_<eff>=260cm/sが得られた。S_<eff>は、HF処理による915cm/sに比べてかなり低く、本方法で形成したAl_2O_3/SiO_2/Si構造が、p型Si表面パッシベーションに有効であることが示された。
著者
斎藤 夏来
出版者
吉川弘文館
雑誌
日本歴史 (ISSN:03869164)
巻号頁・発行日
no.749, pp.17-35, 2010-10
著者
玄 学南 山岸 潤也
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は東南アジアにおけるダニ媒介性動物原虫感染症の流行実態の解明と予防対策の確立を目指して実施する。本年度に実施した研究内容と得られた研究成果は以下の通りである。1. 昨年度に引き続きタイ国北部地域における牛のマダニ媒介性原虫感染症の流行実態を調べた。計200頭の牛の血液サンプルを採集し、全DNAを抽出した。ウシバベシア原虫特異PCR法を用いて、血液サンプル中の原虫DNAの検出を行ったところ、Babesia bovisとBabesia bigeminaの陽性率がそれぞれ12%(24/200)と21%(42/200)であった。この結果より、ウシバベシア症はタイ国北部地域広く流行しており、本症の制圧対策は当地域の牛の生産性向上に重要であることが示唆された。2. フィリピンマニラ周辺地域における牛のマダニ媒介性原虫感染症の流行実態を調べた。計250頭の牛より血液サンプルを採集し、全DNAを抽出した。ウシバベシア原虫特異PCR法とウシタイレリア原虫特異PCR法を用いて予備実験を行ったところ、2種類のウシバベシア原虫(Babesia bovisとBabesia bigemina)と1種類のウシタイレリア原虫(Theileria orientalis)DNAが高率に検出された。これらの結果により、フィリピンマニラ周辺地域の牛にはマダニ媒介性バベシア原虫とタイレリア原虫感染症が高率に流行していることが示唆された。
著者
押切 剛伸 渡部 昂 オシキリ ヨシノブ ワタナベ タカシ Oshikiri Yoshinobu Watanabe Takashi
出版者
山形県立産業技術短期大学校
雑誌
山形県立産業技術短期大学校紀要 (ISSN:2185470X)
巻号頁・発行日
no.16, pp.49-54, 2010-09

要旨: 近年,原油価格の高騰や可採年数の問題が懸念されおり,省エネルギーの推進やエネルギーの安定供給をはかるため,持続可能なエネルギー源獲得を模索する動きが盛んに行われている.その中でも太陽光発電,風力発電,バイオマスエネルギーは実際に運用例も多く,新しいエネルギー源として期待されている.しかし,それらの試みに対する有効性の検証は進んでいないのが現状である.そこで山形県で消費される年間エネルギーをこれらの新エネルギーで置き換えた場合の有効性について検証を行った.具体的には太陽光及び風力発電装置の必要設置面積並びに木材燃焼の場合の必要樹木量を算出した. キーワード:新エネルギー, バイオマスエネルギー, 太陽光発電, 風力発電
著者
山岸 忠明 生越 友樹 高田 晃彦
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

両親媒性環状化合物を合成し、凝集状態に及ぼす分子構造の影響と環状化合物を用いた分子カプセルの形成および分子カプセルの3次元配列制御について検討した。両親媒性カリックスアレーンの場合、アルキル鎖長によって凝集状態が変化することおよび分子カプセルの形成には最適のアルキル鎖長があることを解明した。さらに、液晶性シクロデキストリン (LCCD)を合成し、液晶性を利用して分子カプセルを規則的に配列させる方法を検討した。βLCCDがスメクチック液晶構造をとり、環状骨格を層状に規則的に配列させることが可能となった。これは、分子カプセルの規則的な3次元配列を可能とする分子集積技術へと応用される。
著者
中野 貴由 豊澤 悟 坂井 孝司 萩原 幸司 石本 卓也
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

骨は部位に応じた骨配向性を持つことで、初めて正常な力学機能を発揮する。しかし、現状では、最先端の骨再生手法を駆使しても、正常な骨配向性の回復は困難であることを見出した。したがって、次の研究段階では、骨組織の「質的な解析」にとどまらず、疾患・再生骨での「骨配向性を取り戻すための手法の確立」が急務である。本研究では、骨が本質的には異方性微細構造を持ち、その起源が骨系細胞の働きであることに着目し、材料工学ならではの手法を中心に、骨配向化を人為的に誘導可能とする新規概念・新規技術の確立を目指す。具体的には、材料/細胞間での相互作用を利用し、配向化のための最適環境(足場材料の形状・材質・結晶方位制御、核形成・成長、外場制御)を与えるための手法を提案することを目的とした。本研究は2009年4月1日に内定され、通知されたのち研究準備を開始し、単結晶を用いた結晶学的特徴を活かした骨系細胞増殖・分化誘導研究課題の達成のための機器の準備等をスタートした。しかしながら2009年5月11日付で科学研究費補助金・若手研究(S)の内定があり、重複制限により補助事業を廃止することとなった。その際、研究分担者が研究代表者になることで本研究を継続することは困難であるものと判断した。
著者
池田 光子
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、近世期に隆盛をほこった懐徳堂を対象とし、その思想的特徴について、《資料調査》《思想研究》の二方面から検討を行ったものである。主な成果として、《資料研究》では、懐徳堂を代表する儒者の一人である中井履軒の『中庸逢原』を、翻刻・データベース化し、《思想研究》では、養生思想に関する履軒の著作を検討し、儒学・医学に通底した実学主義の学問姿勢を明らかにした
著者
那須 敬
出版者
国際基督教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

17世紀半ばのイングランドにおける、宗教的寛容および不寛容をめぐる政治的・神学的・思想的な交渉過程を考察した。不寛容な前近代から寛容な近代へと直線的に発展する歴史像を提示し続けてきた「ピューリタン革命」理解をこえて、近世社会における宗教対立を理解する新しい枠組みを模索した。議会と教会、イングランドとスコットランド、書簡・請願と説教・印刷メディアなど、複雑な交渉過程の中で、「寛容」「非寛容」の概念がそれぞれを規定しながら動的に構築・再構築されるプロセスが明らかになった。