著者
山下 宏明 小川 正廣 神澤 榮三
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

前年度の成果を踏まえ、研究分担者各自の専攻領域の研究を改めて問いなおすことを課題とした。すなわち、山下は、改めて平家物語を内在的に規定している‘語り'の問題を物語と音曲の両面にわたって検討し、説話文学との差異を明らかにし、語り行為論的観点からする平家物語論に対して評価を加えた。音曲面については東京芸術大学を場とする共同研究グループとの音楽的成果を生かしたり、語り行為論的側面については、これも芸大での共同研究者の一人である兵藤裕己氏による肥後に伝わる座頭琵琶の語りの実情からする成果をめぐって、平家物語を口誦詩的観点のみに限定して論じきれないことを論じた。神澤はローランの歌との比較から口誦詩論的に平家物語を論じ、その成果を國文学者たちが企画した“あなたが読む平家物語"の1冊『芸能としての平曲』に求められて執筆、近く東京都内の出版書肆から刊行の予定である。なお山下の成果も、その企画の1冊『平家物語の受容』におさめ、すでに刊行ずみである。フランスの口誦詩との比較研究については先例もあるが、外国文学研究者が平家物語に即して検証したのは、佐藤輝夫氏以来の成果であろう。小川については専攻のギリシャ古典の関する学位論文の出版に従事し、その作業を進めるうえで本研究の成果を踏まえた。ギリシャの口誦詩は、世界のいわゆる叙事詩の原型をなすもので、平家物語を口誦詩論的に検討するうえでも有効なモデルであることを改めて確認した。
著者
渡辺 浩一 岡崎 敦 高橋 実 大友 一雄 臼井 佐知子 蔵持 重裕 林 佳世子 三浦 徹 丑木 幸男 須川 英徳
出版者
国文学研究資料館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

平成16年度は、11月に二日間にわたり、韓国国史編纂委員会の協力を得て、同委員会にて「近世東アジアにおける組織と文書」という国際研究会を開催した。日本側報告4本・韓国側報告4本・中国の報告1本を中央政府・地方行政組織・村落と家・商人の4つのセッションに編成した。参加者は約30名。平成17年度は、8月に二日間にわたり、復旦大学歴史地理研究所の協力を得て、上海において「東アジアにおける文書資料と家族・商業および社会」という国際研究会を開催した。日本側報告4本・中国側報告5本が行われたほか、韓国・トルコからのコメントも寄せられた。参加者は約30名。平成18年度は、9月に一日間で、アンカラ大学歴史地理言語学部の協力を得て、同大学において「オスマン朝と中近世日本における国家文書と社会動態」という国際研究会を開催した。日本側報告2本・トルコ側報告3本のほか、中国・韓国からのコメントも寄せられた。参加者は38名。平成19年度は、まず6月に、フランス国立古文書学校の協力のもとフランス国立文書館(パリ)において「アーカイヴズ、社会、権力(中世・近世の西欧と東アジア)文書管理働くさまざまな力」という国際研究会を行った。日本側報告4本・欧州側報告3本のほか世界各地からの多彩な比較コメント20本を、国家・都市・商人の3つのセッションと総合討論に配した。参加者は約40名。ついで、12月には本研究の総括として、立教大学において「近世アーカイブズの多国間比較」という国際シンポジウムを二日間にわたり開催した。日本側報告2本のほか、トルコ・西欧・中国・韓国から報告者を招聘し、「統治と社会」「実践」の二つのセッションに編成した。参加者は約100名。各研究会・シンポジウムの前後には国際共同史料調査を実施した。
著者
松沢 佑次 PARK Y.B. KOSTNER G.M FUJIMOTO W.Y 山下 静也 KYUNG Y.B.Park KOSTNER G.M.
出版者
大阪大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

最近、動脈硬化の最も大きな基盤である脂質代謝異常に人種的・地域的な特徴が存在することが明らかになった。本研究では、コレステロールエステル転送蛋白(CETP)の遺伝子異常と、LDL受容体の遺伝子異常の各タイプ別頻度を国内外で調査し、動脈硬化の国別の遺伝子基盤の相違を明らかにするために以下の検討をした。1.CETP欠損症CETP欠損症の変異は従来6種発見されているが、この中で比較的頻度が高いことが推察されるイントロン14の異常(IN14)及びエクソン14変異(EX15)を中心とする4変異について検討した。CETP欠損症の遺伝子異常としては、6種類発見されているが、IN14とEX15が大部分を占め、G181X変異も頻度は少ないながら、共通変異であった。IN14のホモ接合体は、全例がHDL-C100mg/dl以上を呈し、EX15のホモ接合体ではこれより低値を示す例が多かった。また、CETP遺伝子変異を有しても、HDL-C値が正常のものもあった。これに対して、国外ではCETP欠損症の頻度は極めて少なかった。日系米人の調査では、HDL-Cが90mg/dl以上のものが計27人あり、その中で、EX15のヘテロ接合体が4人、EX15とIN14の複合ヘテロ接合体が1人発見された。また、韓国においても日本人の共通変異が2種見出された。日系米人でも変異は日本人と共通していた。また、ドイツ人の高HDL血症例で新たな変異が見出され、これは日本人には存在しない変異であった。一方、米国及び欧州ではCETP活性の正常な高HDL血症例が存在し、そのリポ蛋白像はCETP欠損症と異なり、CETP欠損症以外の成因による高HDL血症の存在が示唆された。2.LDL受容体異常(家族性高コレステロール血症、FH)LDL受容体異常に関しては、我が国での遺伝子異常として見つかっているものには、約26種類の変異があったが、この中5つは共通変異で、日本人のFHの約1/3がこれらの変異で説明できた。これらの共通は日本全国で分布し、特定の地域への集積は認められていない。一方、欧米のFHではわが国で見出された変異は見つかっておらず、日本人の起源を推定する上で、アジア地区にも対象を広げて解析する必要がある。
著者
吉田 恭史
出版者
徳島県警察本部
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

徳島県在住の男性の特徴をY染色体で分類した後,表現型を組み合わせて考察できるように研究を行った。まず,Y染色体上のY-SNPを検出し分類を試みた。O系,C系,D系,N系,P系に分類し,さらにO系はO_2系とO_3系,C系はC_1系とC_3系のY-SNPを検出できるように,Cycling probe法を調製した。O_2系とO_3系はP31とMl22,C_1系とC_3系はM8とM217,N系とP系はM231,P228をマルチ検出した。マルチ化するにあたり,アニーリング温度は,RNase H活性のための至適温度である55℃を47℃まで引き下げて行った。そのため若干の非特異的な蛍光が観察されたが,検出結果に影響を及ぼすほどのものではなかった。Cycling probe法によるY-SNPs検出を行うことにより,操作の簡略化及び検出時間の短縮が可能となった。この手法により,血縁関係のない徳島県在住の男性172名の分類を試みた。結果,縄文系のC系とD系は46%,弥生系のO系は52%,N系は1%,P系は0.6%が観察された。特に,C系において,Nonakaら(2007)の報告による各県の比率より高い値を示した。C系をさらに詳細に観察すると,C_1系は58.3%,C_3系は37.5%とC_3系が高い値を示し,徳島県独特の傾向を示した。C_1・C_3系に当てはまらない検体は,C_2系と考えられ,過去に報告されていなかったものである。このことから,C系が徳島地域男性の特徴を持つものと推察された。このC系に対し,表現型(身長,顔貌等)の特徴を検討したが,本研究においては有意な差は認められなかった。この原因は,おそらく検体数によるものであると考えられ,今後検体数の増加を検討すると共に海外の人種との差を検討していく必要があると考えられた。
著者
丸山 真央
出版者
滋賀県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

「平成の大合併」で基礎自治体が合併して大規模化した地域では、自治体内分権や地域自治区制度を活用した新しい地域自治が試みられている。本研究ではこうした試みが効果的なローカルガバナンスにつながる条件を探った。地域自治区の全国的な動向調査や事例調査を通じて明らかになったのは次の 2 点である。第一に、地域自治区制度を活用した先進事例においては、法律上の地域協議会だけでなく、地域の公共サービス供給を担うNPOなどの新しい住民組織が必要とされ、実際に設立が進んでいるところがみられた。第二に、こうした新しい制度や組織が有効に機能するうえで、町内会・自治会等の既存の地域住民組織が、公共サービス供給でも地域の公共的な意思決定でも、またガバナンスのシステム自体の正統性の確保においても必要不可欠な役割を果たしているということである。
著者
吉田 右子
出版者
東京大学
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.495-503, 1996-12-20

During 1920s-1930s, it was the era of expansion in adult education in the United States. Public libraries have also developed various educational services. In 1938, A. S. Johnson wrote The Public Library : A People's University, a study of adult education in libraries. This paper examines Johnson's book with the aim of studying library adult education in 1930s. In his book, Johnson discussed how public libraries were functioning in the adult education movement, how librarians felt about developing work of this kind, and what the future position of the library might be. Johnson made the point that public library had the active educational function in the community and recommended that public library should develop into the permanent center for adult education in the community. As the result of this study, it was found that Johnson's work contained some philosophies that support library adult service provided by public libraries in our time.
著者
小山 憲司
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.61-73, 1999-07-30
被引用文献数
1

1920, 30年代のアメリカの大学図書館において, 実際にどのような利用教育が展開されていたのかを, 当時の調査研究と雑誌論文から考察した。その結果,まず1926年のALAの調査研究によって, 図書館利用教育の定義が明確化され, それには3つの類型が存在することが示された。また, 一般に講義と実習というラボラトリー・ワーク形式を基本とした利用教育が行われており, その際には, 図書館利用案内やテキストブック, 映画等のツールが利用されるようになったことも明らかとなった。このように, 大学図書館の利用教育は, 1920年代には主要な図書館サービスの1つとして見なされるようになっており, そこには, 今日の利用教育の原型と呼べるものを見出すことができた。その意味で, 1920, 30年代は, 図書館利用教育史において, 重要な時期であると考えられる。
著者
向殿 政男
出版者
明治大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

“あいまい"なデ-タは、実社会では避けることができない,しかも人間にとって極めて本質的であり重要なものである。本研究では,あいまい(ファジィ)デ-タを処理するための研究に関して,次のような幾つかの研究成果を挙げることができた。(1)ファジィProloキ“PROFIL"によるオンライン文字認識システムの製作本研究で開発したファジィPrologのシステムであるPROFILを,オンライン文字認識システムの記述に用い,本システムがあいまいさの多い文字(手書き)に対しても,有動に認識できることを示した。(2)フィジィ・インタ-バル論理の提案あいまい情報の処理のための基礎理論であるフィジィ論理の一つとして,従来の無限多値論理と、L.A Fadehの提案しているファジィ論理との中間に位置するファジィ・インタ-バル論理を提案し,その基本的性質を明らかにした。この新しい論理は本質的には,真,偽,未知,矛盾の4値論理に等しいことを明らかにした。(3)修正原理に基づくファジィ推論法の提案あいまいな前提からとも,もっともらしい結論を導しファジィ推論法には、これまで多くの考え方が提案それている。本研究では、修正原理に基づく新しいファジィ推論法を提案し、従来の方法の欠点を補なうことを可能にしていることを示している。この新しいファジィ推論法により、あいまいなデ-タ及び、あいまいな要求に対しても文献検索ができる『ファジィ検索』法の基本が構成できると期待されている。
著者
VARLEY GW.
雑誌
Injury
巻号頁・発行日
vol.26, pp.155-157, 1995
被引用文献数
2 42