著者
大塚 浩司 後藤 幸正
出版者
東北学院大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

X線造影撮影法を用いて、コンクリートのフラクチャープロセスゾーンを検出し、その性状を明らかにすることを目的とする研究を行った結果、研究の期間(平成4年度〜平成5年度まで)に得られた成果の概要は次の通りである。(1)本研究によって得られた、X線造影撮影法はコンクリート中に発生する微細なひび割れ群からなるフラクチャープロセスゾーンを非破壊的に検出するのに有効な手法であることが明らかとなった。(2)CT試験(コンパクトテンション試験)供試体を用い、供試体の寸法を同一とし、コンクリートの粗骨材の最大寸法を4種類に変えた場合のフラクチャープロセスゾーンの検出結果を比較したところ、微細ひび割れ群からなるそのフラクチャープロセスゾーンの性状は粗骨材の最大寸法に極めて大きく関係しており、特にその幅(破壊進行領域と直角方向)は粗骨材の最大寸法が増大するほど大きくなる傾向があることが明らかとなった。その最大幅は、粗骨材最大寸法が5mmの場合はその2.5倍程度であり、微細ひび割れの周辺の雲状の部分も含めると4.3倍程度であった。(3)荷重-開口変位曲線下の面積から求められる、破壊に使用されたエネルギーを破壊領域の面積で除した、破壊エネルギーGFは粗骨材の最大寸法が増大するにつれて大きくなる傾向がみられた。一方、破壊に使用されたエネルギーを破壊領域の体積で除した、破壊エネルギーGWは粗骨材の最大寸法に関わらずほぼ同様な値となる傾向が見られた。(4)粗骨材として河川砂利を用いたコンクリートの場合のフラクチャープロセスゾーンの幅は砕石を用いた場合のそれよりもやや広くなる傾向が見られた。
著者
矢田 北川 和則 米沢 義道 伊東 一典 橋本 昌巳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
信学技報
巻号頁・発行日
pp.25-30, 1994
被引用文献数
5

空間の1点からあたかもそこにスピーカがあるように音を発射する空中音源システムが開発された。可聴領域の周波数の信号で振幅変調された40キロヘルツの超音波が1個の圧電型のトランスジューサから発射され、その波はパラメトリックアレイ効果によって復調され、指向性の高い可聴音ビームが発生した。この音波はさらに放物面上で反射されて1点に収束された。この波は収束後、再び発散するがこの時、限られた範囲内で、収束点にあると仮定した実音源と同じ波面を持って広がってゆく。そこで、その拡散領域に聴取者がいるとその可聴音の音源位置を収束点に認識するであろう。これが我々が名付け、そして存在を期待した空中音源である。実験の結果、復調された可聴音は十分高いレベルで聴くことができ、空中音源の可能性が確認された。
著者
三宅 隆 ARYASETIAWAN Ferdi
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

標準的な第一原理計算手法である局所密度近似(LDA)の困難の一つとして電子相関の強い系の電子状態が挙げられる。強相関電子系に対する現状の計算手法の限界を明らかにして新しい手法を開発することを目的として以下の研究を行った。1.dバンドのエネルギー準位現在LDAを超える手法としてGW近似が定着している。電子相関の強くない半導体、絶縁体のギャップ値に対して大きな成果を挙げてきたが、局在性の強い電子に対する妥当性は確立されていない。そこで、代表的なII-VI族半導体であるZnSのセミコア軌道(d軌道)のエネルギー準位を調べた。LDAではd軌道はフェルミ準位から6eV下に位置し、実験値の9eVに比べて大きく過小評価される。ここにGW近似による多体補正を加えると約1eV準位が深くなるが、まだ実験値との差は大きい。そこで、LDA+U法によりセミコア準位を実験値の近傍に下げた状態からGW近似を行った。この(LDA+U)+GW法では、d準位はLDA+U法に比べて押し上げられ、通常のLDA+GW法の位置と近い結果が得られた。このことは、GW法が出発点となる平均場解に強く依存しないものの、d軌道のエネルギー準位の定量的記述には不十分であるということを示唆する。2.格子模型との融合LDA, GW法を超えて強相関電子系を取り扱う計算手法の試みとして、第一原理計算を格子模型へマップし、短距離相関効果を格子模型に対する多体問題の手法により取り扱うことが盛んに行われている。これらの方法において問題となるのは、格子模型の同一サイトにおける電子間反発エネルギー("ハバードU")の見積もりである。そこで、RPAにより求めた遮蔽されたクーロン相互作用のd軌道に対する行列要素を一連の遷移金属に対して計算した。
著者
GOULD GW.
雑誌
Trends Biochem Sci
巻号頁・発行日
vol.15, pp.18-23, 1990
被引用文献数
3 204
著者
GOERRES GW
雑誌
Radiology
巻号頁・発行日
vol.226, pp.577-584, 2003
被引用文献数
2 154
著者
水谷 智 平野 千果子 有満 保江 三ツ井 崇 永渕 康之 松久 玲子 板垣 竜太
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本共同研究では、日本(朝鮮、台湾、沖縄等)とヨーロッパ(イギリス、フランス、オランダ、スペイン、ドイツ等)の植民地史を、「医療」「官僚制」「人種主義」といった<近代性>の問題系に属する主題を軸に再検討した。植民地主義をグローバルな文脈で共同研究するにあたっての<比較>の必要性と危険性の両方に十分に注意を払いながら、様々な支配経験に関する実証研究を突き合わせ、相互参照を可能にする枠組および概念の創出を目指した。その結果、近年の植民地研究の鍵となっている「植民地近代性」(colonial modernity)の概念の可能性と限界が明らかになった。また共同討議の過程で、議論の対象とした植民地帝国のそれぞれが、他国との<比較>によって自国の支配を正当化し統治政策を策定していた歴史像が浮かび上がってきた。<比較>それ自体を歴史研究の対象として主題化し、植民地主義の一部としてそれを根底的に検証し直す必要性が理解されるに至ったのことも、本研究の重要な成果の一つである。

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出版者
国立国会図書館
巻号頁・発行日
vol.第125回, 2003-04
著者
小塚 匡文
出版者
岡山商科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、(1)マクロの消費行動に関する研究、(2)量的緩和政策と時間軸政策についての検証、(3)為替レートを考慮した政策反応関数の推定、を進めた。(1)は、総需要の推計に関連するものである。ここには日米比較のためのアメリカのデータによる推計も含まれる。(2)は先行研究のサーベイと実証分析である。実証研究では、量的緩和政策は長期の経済成長に対して、効果が十分になかったことが示された。(3)は、為替レート予測やインフレ率予測などを考慮した政策反応関数を推定である(共同研究・共著者が第1執筆者)。分析の結果、円安期待とインフレ抑制の関係が示された。
著者
小塚 裕介
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究は酸化物薄膜のバルクにはない構造制御性を利用し、酸化物ヘテロ構造中に非自明な電子的・磁気的構造を実現し磁気輸送特性を用いてその起源を解明することである。本年度は、チタン酸ストロンチウム単結晶基板上にパルスレーザー堆積法を用いて二次元界面を作製し、界面での伝導特性を評価した。特に高磁場での磁気抵抗に注目し界面での電子の量子伝導性に注目した。まず、ドープされていないチタン酸ストロンチウム上に電子ドープチタン酸ストロンチウム薄膜を堆積し、最後にキャップ層としてドープされていないチタン酸ストロンチウムを堆積させた。この構造に対し電気抵抗の温度依存性を測定すると、非常に良い金属伝導を示し、さらに0.3K付近において超伝導を観測した。超伝導臨界磁場測定を行うことにより、ドープ層の厚さを変化させると、超伝導が二次元から三次元に転移していることがわかった。次に、高磁場を印加し磁気抵抗を測定すると、量子伝導を示唆するシュブニコフ・ドハース振動を観測された。さらに、試料を磁場に対して回転させてシュブニコフ・ドハース振動を測定すると、その周期は磁場の試料に垂直成分のみに依存しフェルミ面が二次元的であることを示している。このように超伝導を示す物質でその常伝導状態が高移動度二次元フェルミ面から成っている物質の観測は初めてである。以上の結果は、酸化物の多彩な物性を組み合わせてヘテロ構造を作製することによって可能となった。今回の成果は酸化物におけるメゾスコピック系という新しい分野の先駆的研究である。
著者
脇田 晴子 水野 章二 村井 康彦 西川 幸治 武田 佐知子 京楽 真帆子
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本研究は(1)巨大都市における居住形態・衛生・身体的状況の歴史的研究、(2)都市における信仰・宗教・祭礼・芸能の歴史的研究としているが、平成10年度に(2)を、11年度に(1)を中心として研究交流・共同調査を行った。フランス側からは、クラビッシュ・ズベール、P.スイリ-、M.コラルテル、A.ブッシイの諸氏を招き、国立歴史民族博物館、東京日仏会館、京都大学会館において、研究報告と討論を行い、続いて都市としての東京・鎌倉の考古学発掘と都市研究成果、続いて京都、奈良、今井町、日本のコミューンともいうべき郡中惣の現地である甲賀・伊賀・小倭地方、近江の堅田、安土城、彦根城などの現地調査を共同で行って討論した。パリで行ったシンポジュウムは、10年度は11月に日本文化会館で「都市における表象と社会」をテーマとして、P.ペルトン、鈴木正崇、武田佐知子、松岡心平、脇田晴子、P.スイリーの6人が報告した。11年度は9月に、パリ国立民族博物館において、シンポジュウム「都市における文化的環境の比較史研究」を開いた。考古学・平安京・中近世・近代の巨大都市にわかって討論し、佐原真、田中琢、M.コラルテル、長志珠絵、P.ローゼンタール、西川幸治、水野章二、橋本裕之、が報告した。司会者・ディスカッサントには西洋史・東洋史の専攻のフランス人を主として頼み、日本人のフランス研究者にも協力を仰いだので、広い問題の視野のなかで討論ができ、新たな視角をお互いに開拓し、日本史学の成果を提示できたと思う。コラルデル氏が20余年間発掘されたパラドリュ湖、コルチェル遺跡などの都市的集落・城砦の発掘現場、個人所有の城砦、原子力研究センターで原子力方法による修復研究所を訪問、研究の視角、方法、文化財の保存のあり方等について討論を行う事が出来た。申請したとおりの研究日程をこなし、予期以上の効果を挙げる事ができた。これらは成果報告書として提出するが、出版の予定も立っている。
著者
小塩 トシ子
出版者
フエリス女学院大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

1)これまで数年にわたって本研究者は、エリザベス朝英国の一般文化に照らして、バラッドとくに"broadside ballad"とシエイクスピア劇の関係をみてきたが、昭和61年度は、"traditional ballad"がシエイクスピアの悲劇、なかでも『リア王』にどのように取り上げられたかを調べ、劇構成の中での位置づけと意味づけを行なった(昨年度末添付の紀要論文参照)。2)昭和61年4月西独ベルリンにおける第三回世界シエイクスピア会議(World Shakespeare Congress)に、発題者として参加、シエイクスピアの日本的受容の現況につき、『リア王』を中心に論文を提出した(昨年度報告書に添付ずみ)。そこでとり上げた黒沢明監督の映画『乱』と『リア王』をめぐって、原作の翻案と解釈の問題が、トロント大学ホーニガー教授、リバプール大アン・トムプソン女史、ケニス・ミユア教授らによって、受けとめられ、討論も実りの多いものであった。3)もうひとつ当初の研究目標であったシエイクスピアの「詩作品」におけるネオプラトニズムの要素と音楽的秩序観については、詩作品「不死鳥と,雉子鳩をとり上げて論じた(フエリス女学院大学紀要22号、添付論文参照)。この作品の音楽的構成と内容に加えて、じっさいに作曲された音楽(1984年発表、ジョン・ジュベール作曲の室内楽)についても言及・紹介した。
著者
丸尾 猛 FERNANDEZ J. L.
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

子宮筋腫や子宮腺筋症に伴う過多月経の長期管理では、LNg-IUDを子宮腔内に装着すると定常的な黄体ホルモン様作用により子宮内膜の分泌腺と間質の増殖能抑制とアポトーシス誘導が惹起され子宮内膜は強く萎縮、菲薄化して月経時出血量の著明な減少をみる。しかし、LNg-IUD装着後3ヶ月間は少量の不規則な出血(spotting)が出現し、同IUD使用時の臨床的問題となっている。そこで本年度の研究では、子宮筋腫や子宮腺筋症に伴う過多月経患者を対象に、LNg-IUD装着前ならびに装着3ヶ月後に採取した子宮内膜における血管新生関連因子(VEGF、アドレノメヂュリン等)発現を免疫組織学的に検討した。VEGFに関しては、LNg-IUD装着前には子宮内膜腺ならびに間質にその強い発現が観察されたが、LNg-IUD装着3ヶ月後にはその発現は大きく減弱した。一方、アドレノメヂュリンはLNg-IUD装着前には子宮内膜にその発現は観察されなかったが、LNg-IUD装着3ヶ月後には、その発現は子宮内膜腺ならびに間質において増強していた。このことから、LNg-IUD装着後3ヶ月間の少量の不規則な出血(spotting)はLNgによるアドレノメヂュリン発現の亢進によると推察された。甲状腺機能低下症ではしばしば流産を伴う。受精卵の着床に際しては絨毛外トロホブラスト(EVT)が重要な役割を果たすことから、甲状腺ホルモンがEVT機能発現に及ぼす影響を検討した。これまでにEVT培養細胞系を確立、EVTに甲状腺ホルモン受容体が存在し、甲状腺ホルモンが培養EVTのFas/FasL、caspase-3、PARP、Bax、Bcl-2蛋白発現調節を介してEVTのアポトーシス発現を抑制することを明らかにした。