著者
伊東 孝郎
出版者
白鴎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、志願学生をピア・サポート・スタッフとして育成することを主眼とし、ビデオを用いたカウンセリング体験学習の方法に基づく新トレーニング方法を開発することが目的である。過去2年間で12名の志願者に対しトレーニングを実施したが、量的評価と自由記述を通しての効果測定の結果も良好であり、また実際に彼らが開始したピア・サポート活動の観察結果から、技能面でも意欲面でも高いレベルを維持し、思いやりの心をもって活動していることが確認できたため、今年度も昨年度までと同様のトレーニングを実施することとした。今年度は2名がトレーニングに参加したが、トレーニング出席率は昨年度までよりも減少した。2名という少人数のグループサイズでは、観察学習の機会が得にくく、モチベーションの維持が難しいこと、人間関係もそれ以上広がりようがなく、仲間意識も芽生えにくいことなどが予想され、昨年度の人数である4名程度は少なくとも必要ではないかと思われた。トレーニングの成果としてのピア・サポート活動は、順調に進んだ。特に平成19年度には、相談件数が前年度の8件から109件へと急増した。その多くは4月に行われ、学業や施設案内などについての情報提供型活動が中心だったが、5月以降になると件数はさほど多くないものの、多岐にわたる内容の直接相談活動が中心となった。なお活動自体もカンファレンスも、貴重なトレーニングの場となっていた。これまで広島大学訪問、名古屋大学との意見交換の結果を、ピア・サポート活動の参考としてきたが、今年度は新たにニューヨーク大学を訪れ、ピア・エデュケーションのスーパーバイザー兼トレーニングプログラム開発者らと意見交換を行ったところ、本研究のトレーニングに対して高い評価を得た。
著者
鈴木 文二
出版者
埼玉県立春日部女子高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

工業生産用監視センサーとして市販されている8~16μmの中間赤外線検出素子を備えた「放射温度計」を使って観測・実験を行った。温度計は、測定範囲が広く(-50~500℃)、狭視野(2°)、デジタル出力可能、短い応答時間(1秒以下)という特徴をもつ。観測対象は、層雲、乱層雲などの雲底、月面からの熱放射である。絶対値の較正と感度分布の検定には、暖房用のハロゲンファンヒーターを用いた。下層雲の雲低温度は、高層気象の観測データと数℃の範囲内で整合性があり、凝結高度を説明するための実習に活用できることが確かめられた。一方で、光学的に薄い高層雲では、放射効率の補正を行っても十分な精度が得られなかった。しかし、可視光の全天カメラと組み合わせることによって、雲の高低と天気の変化という直感的に理解しやすい教材作成が可能である。月の観測は位相角68°~258°で行い、月表面からの熱放射の変化を捉えることに成功した。水蒸気の少ない冬場では、約0.06等の誤差で測定可能であったが、夏場では大きな吸収が起にり、概ね1.5等ほど低い値となった。また、位相角180°における月面温度の観測から放射平衡を仮定して求めた可視域のアルベドは約0.05となり、惑星科学の実習として十分に実用的であることがわかった。さらに、直径30cm弱の砂団子型の月モデルを作成した。ヒーターで表面を加熱し、熱放射を測定したところ、モデルの位相角依存性は、観測とよく一致した。ステファン・ボルツマンの式のみで解析することができるため、高校や大学の基礎実験として効果的である。
著者
白木 邦彦 河野 剛也 安宅 伸介 永田 智
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

レーザースペックル眼底血流計はこれまで主に視神経乳頭での血流測定に使用されてきた。視神経乳頭上の太い網膜血管を測定領域から除外すれば、視神経乳頭の組織血流量をレーザースペックル眼底血流計のSBR値が反映する。眼底血流測定に際しては、レーザースペックル眼底血流計は網膜と脈絡膜の両者の組織血流を反映するとされる。そこで、網膜循環に影響を及ぼさない脈絡膜病変では脈絡膜循環の異常を反映すると考えられるが、微小な脈絡膜循環の異常を把握しているかは不明である。今回、網膜血管を有しない家兎眼底において、臨床で日常的に施行されている豆まき状の光凝固を施行し、凝固部位間の非凝固部位領域の脈絡膜血流量の変化を経時的に検討した。さらに、沃素酸ナトリウム投与によって網膜色素上皮を障害し、続発的に生じた脈絡膜毛細血管の変性・萎縮領域に関してレーザースペックル眼底血流計にて経時的にSBR値の変化を検討した。レーザー光凝固部位ではSBR値の顕著な低下が早期よりみられ、経過観察期間中持続していたのに加えて、凝固部位間の非凝固部位でも3ヶ月、6ヶ月後にSBR値の低下、すなわち血流の減少がみられた。また、沃素酸ナトリウム投与例での網膜色素上皮障害部では、投与1ヶ月後には71%にSBR値が低下し、6ヶ月後にはさらに58%にまで低下し、持続的な脈絡膜血流量の低下がみられた。以上より、レーザースペックル眼底血流計を用いて眼底の脈絡膜の微小循環変化の検討が可能であることが明らかとなった。
著者
森 政弘
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
建築雑誌 (ISSN:00038555)
巻号頁・発行日
vol.106, no.1314, pp.34-35, 1991-06-20
著者
丸山 富雄 市毛 哲夫 日下 裕弘 ICHIGE Tetsuo
出版者
仙台大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

本研究は、わが国ではこれまで本格的な研究がなされてこなかった「スポーツと社会階層」の問題をとり上げ、統計的調査によって、一般成人の直接的・間接的なスポーツ参与と社会階層との関係を明らかにしようとしたものである。調査データは人口規模及び産業構造を参考に、東北地方を代表すると思われる宮城県内4市の選挙人名簿より郵送法によって得られた881(回収率35.4%)のサンプルを用いた。職業威信、学歴、所得、及び生活様式の社会的地位変数をクラスター分析した結果、調査対象者は上層及び下層と4つの様々なパターンをもつ中層の階層クラスターに分類できた。1.多様な運動やスポーツ活動のなかで、男性の手軽な体操や球技、ならびに女性のダンス系の運動では階層的な相違はあまりみられなかった。2.しかし、その他の運動やスポーツ、特に施設を利用する運動や野外スポーツ、競技的なスポーツの場合、階層による参与の違いは明らかであった。社会の上層及び将来上層に達するとみられる人々の参与率は高く、下層の成員は極端に低いという結果が得られた。3.また、間接的なスポーツ参与に関しては、一般的なスポーツ・ニュースやプロ野球では社会的な地位や社会階層による差はあまりなく、これらのスポーツ施設に関してはスポーツの大衆化を指摘しうると思われる。4.しかし、大相撲やゴルフ、プロレスのテレビ視聴では、一般に大相撲は高齢者、ゴルフは上層、プロレスは下層の人々がよくそのテレビを見るという傾向がみられ、これら種目の間接的参与と年齢や社会階層との関連性を指摘できた。
著者
礒田 正美 小川 義和 小原 豊 田中 二郎 佐々木 建昭 長崎 栄三 清水 静海 宮川 健
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の高次目標は、世界で有効に活用しえる算数・数学教材・教具を開発することである。具的には、数学を学ぶ意欲を喚起し、さらに深く知る契機を提供する機関として科学系博物館の展示・教育システムを活用し、科学系博物館向け数学展示、実験教材を開発し、数学における具体的で体験的な教育プログラムを提供することを目的とする。国立科学博物館、牛久市教育委員会、つくば市教育委員会、埼玉県立春日部高等学校、埼玉県立大宮高等学校の協力を得て、3年間を通して、科学博物館等で活用しえる数学展示、実験教材の事例開発を行った。蓄積した事例を領域でまとめれば、次の6領域になる:(1)透視の数理、(2)変換の数理、(3)機構の数理、(4)音階の数理、(5)測量の数理、(6)それ以外。開発教材の特徴は、学年、学校段階によらず、様々な学習が可能である点である。報告書は事例を示した。開発教材は、内外で注目を浴びた。国内では、小中接続・連携、中高接続・連携、高大接続・連携の立場から注目され、飛び込み授業のための事例集の出版を依頼された。変換の数理ではソフトウエア開発も行い、WEB上で閲覧可能である。国外では、国際会議で招待講演を2回(韓国、香港)、全体講演を1回(台湾)、研究発表を1回(ローマ)、海外での講習を2回(フィリピン、ホンジュラス)行った。特に数学教育国際委員会100周年記念国際会議では、ヨーロッパにおける教具の歴史的発展からの系譜をたどった。また、効果的な発表の方法についての調査もあわせて行った。既にフィリピン、ホンジュラスで開発したソフトウエアが利用される見込みとなった。成果をWEB公開することで、当初の予定通り様々な場で役立つ数学展示教材の開発が実現した。SHH, SPPなどでも成果を利用したい旨、依頼を得ている。博物館に展示することは将来的な課題であるが、成果は教育の場で活用しえる状況にある。
著者
鈴木 文二
出版者
埼玉県立春日部女子高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

「練り上げられた、工夫された教材」は小学校から高校までの特定な発達段階での、特別な目的に照準を合わせた感がある。そのため、個々の対象の知識は深まるが、逆に階層性が逆転したりしてしまうこともある。例えば、高校理科の授業において、星までの距離を測る方法を詳細に展開しても、見慣れた星座を作る星がどのような空間的な位置にあるのか、太陽系と銀河系の包含関係はどうなっているのか。まさに「木を見て森を見ず」という状況が散見される。次期指導要領においては、簡単な観察から始めて、より高度な科学的な研究・考察に発展させる「スパイラル学習」が重要な方法として提起されている。そこで本研究は、小学校から高校まで、共通した学習展開が可能になるように教材を統合化し、地球惑星科学、天文学の大きな柱である「時間と空間」を意識させ、なおかつ先進的な教材を配したスパイラル学習教材群を作成することを目的とする。本研究で作成した教材は、異なる発達段階における科学的リテラシーを考慮しつつ、ブラックボックス的な部分を極力少なくした。また直感的に現象を捉えつつも、現象を数値化する意欲を持たせられるものとした。さらに、入手しやすい材料・素材を用いて、専門的な知識・技能を持たない教員でも製作しやすい教材とした。今年度に開発した教材群は、以下のふたつである。(1) カシオペア座の観察、撮像から、恒星の位置、進化を知る(2) 大陸移動と古海流をシミュレートし、未来の気候を推定する引き続いて、赤外放射温度計を用いた、「雲底高度と気象変化」についての教材を作成中である。指導要領の『理数科目の前倒し実施』によって、これらの教材群は、移行措置期間中に柔軟に対処可能な教材として、その価値を見出すことができるものと考えられる。
著者
宮岡 礼子 大仁田 義裕 小谷 元子 山田 光太郎 岩崎 克則 梶原 健司 中屋敷 厚 長友 康行 佐々木 武 岩崎 克則 大津 幸男 梶原 健司 長友 康行 中屋敷 厚 山田 光太郎 二木 昭人 マーティン ゲスト ウェイン ラスマン 庄田 敏宏 入谷 寛 石川 剛郎 梅原 雅顕 川久保 哲 田丸 博士 藤岡 敦 松浦 望 西納 武男
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

等径超曲面の分類問題の大部分を解決し,運動量写像で表現することにより,可積分系理論との関連性を根拠づけた.特異点をもつ曲面の基礎理論を進展させ,種々の局所・大域理論を明らかにし,ルジャンドル写像を用いた新しい視点を開発した.リーマン・ヒルベルト対応を介してパンルヴェ方程式の力学系を研究し,カオス性の観点を開拓した.高種数Gromov-Witten理論のモジュラー性,ミラー対称性を論じ,また量子コホモロジーから得られる正則微分をポテンシャルにもつ曲面の構成を通じて,tt*幾何に貢献した.
著者
高崎 史彦 STAMEN Rainer
出版者
高エネルギー加速器研究機構
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

現在、高エネルギー加速器研究機構においてはB-ファクトリー加速器、KEKB、とBelle実験装置が順調に稼動し、このタイプの電子・陽電子ビーム衝突型加速器としては世界最高の性能を実現している。これに伴い、Belle実験はこれまでに最大のB中間子崩壊のデータを収集した。現在、このデータの解析を精力的に行い、多くの学術論文として発表してきた。Belle実験においては、高い頻度でビーム衝突が繰り返され、膨大な粒子反応が観測される。このうちから、興味ある事象のみを効率よく選び出し記録することが実験の成功の鍵を握る。現在、KEKB加速器の性能は当初の計画値を超えて優れた性能を発揮して折り、これに対応してBelle実験のデータ収集効率を改善する必要に迫られている。Stamen氏はグループの他のメンバーと共同してBelle実験のイベントトリガーシステムの改善を試み、データ収集能力を飛躍的に向上させた。一方、物理解析においては、B中間子崩壊のうち、K中間子とパイ中間子のみを終状態に含む崩壊反応を詳細に分析し、これらの反応におけるCP対称性の破れと、他の反応で観測されているB中間子崩壊におけるCP対称性の破れとの比較検討を行い、標準理論を越えるような現象の存在の有無を研究している。
著者
上田 直子 中村 仁美 大栗 誉敏
出版者
崇城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

日本の南西諸島に棲息する毒蛇ハブの毒成分は、意外にも生物の様々な組織にある脂質やタンパク質を分解する酵素が主成分であり、それらが加速進化して多様性を増すとともに、極めて高い特異性とユニークな性質を獲得してきたことが明らかとなりました。またハブ毒は、貴重な創薬シーズ(種)としても注目されています。本研究は、それらの毒成分が、毒を産生する組織である毒腺で、どのようにつくりだされるのか、その分子機構の解明を目指した研究です。
著者
佐々木 公明 日野 正輝 長谷部 正 山本 啓 小林 一穂 照井 伸彦 赤松 隆 徳永 幸之 林山 泰久 福山 敬 徳川 直人 平野 勝也 伊藤 房雄 村山 良之 横井 渉央 張 陽
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

日本の集計データに基づいた幸福関数の統計的分析は「他者との比較」を表す生活水準が住民の幸福度に影響を与えることを示す。一方、物質の豊かさの価値よりも心の豊かさに価値を置く方が幸福度を増加させる。幸福度は所得満足度と共に単調に増加するが、所得満足度は生得水準の単調増加ではなく、「快楽の踏み車」仮説があてはまる。社会環境を表す所得分配の不平等と失業率はいずれも個人の幸福度に負の影響を与えるが、不平等よりも失業が住民の幸福により大きな影響を与える。
著者
常松 定信 高海 幸夫
出版者
日本作物学会
雑誌
作物学研究集録
巻号頁・発行日
no.20, pp.10-11, 1978-07-20

稲・麦の二毛作を行なう場合、問題となるのが麦の収穫期と稲の移植期との競合で、とくに水稲を直播する場合により問題が大きい。そこで麦の立毛間に稲をばらまきし、麦収穫時のコンバイン排出わらで被覆する方法により、麦から稲への作付転換を円滑にする栽培体系について検討した結果の概要を報告する。