著者
池田 隆政 伊藤 大雄 吉田 亮
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.87-92, 2010 (Released:2010-01-26)
参考文献数
23

ニホンナシ短果枝葉の飽和光下光合成速度(光合成能力)の季節変化を携帯型光合成測定装置を用いて調査した.予備試験の結果,光合成能力の測定のためのチャンバー内条件として通気速度500 μmol・s−1,光合成有効放射束密度1,500 μmol・m−2・s−1が適当であった.また,光合成速度は午前9時以降減少することから,測定は9時までに終了することとした.ニホンナシ‘幸水’(露地栽培)および‘ゴールド二十世紀’(露地およびハウス栽培)短果枝葉の光合成能力は,満開後30~60日に最高値(15~20 μmol・m−2・s−1)に達し,その後収穫期あるいはその直前までほぼ同じ値が維持された.着果負担のなくなった収穫期後は次第に低くなり,10月以降は急激に低下した.葉肉コンダクタンスの変化は,光合成能力とほぼ同様であり,光合成能力は,主に葉肉活性に影響されていることが示された.以上の結果より,ニホンナシ短果枝葉の光合成能力は着果期間中高いレベルが維持されていることが明らかになった.
著者
植村 和正 井口 昭久
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.116-120, 1999-09-13
被引用文献数
1

「終末期医療」における患者の「自己決定」に関して、我が国における過去の「安楽死」事件の判例を検証.考察した。これまで7件の「安楽死」事件はいずれも有罪となっている。判決の法的根拠となった昭和37年の名古屋高裁の「六要件」の理論的背景は「人道(生命尊重)主義」である。平成7年の横浜地裁判決における「四要件」の法的根拠として「自己決定権」の理論が挙げられたが、「緊急避難の法理」も適用しており、従来の「生命尊重」優位の思想が引き継がれていることにも留意しなければならない。現時点では「安楽死」を法律が許容する余地は極めて小さい。いわゆる「尊厳死」に関しては、横浜地裁判決において「自己決定権」の理論と「医師の治療義務の限界」が法的根拠として挙げられた。微妙な判断が医師に委ねられた「法的不安定さ」を「科学的客観性」によって補っていると解釈できる。今後の検討は、人の生死における「尊厳」とは何か、「自己決定権」の遡及範囲、患者の「最良の利益」を保障するための方策、に向かうべきものと思われる。
著者
新発田 修治 嶋田 徹
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.102-108, 1986-07-31
被引用文献数
5

世界各地から収集したオーチャードグラスの27品種について,秋季の炭水化物含有率,耐凍性,および雪腐大粒菌核病抵抗性を調査し,これら3形質相互の関連について検討した。初秋に播種した幼植物の越冬前における耐凍性は品種によって異なり,1月の平均気温が低い育成地の品種ほど耐凍性が大きかった(r=-0.707)。幼植物の炭水化物含有率は,いずれの品種も還元糖(RS)<非還元糖(NS)<全糖(TS)<フクトサン(FS)<水溶性炭水化物(WSC:TS+FS)の順に高かった。RSを除くこれら画分と耐凍性との間には有意な正の相関々係があり,とくにWSC含有率との間に最も高い相関係数(r=+0.673)が得られた。また,各画分と乾物率との間にも有意な正の相関々係があり,特にWSC含有率と乾物率との間に最も高い相関係数(r=+0.710)が得られ,乾物率からWSC含有率を推定しうることが示された。17品種の雪腐大粒菌核病の被害率を消雪期に調査する方法で雪腐大粒菌核病抵抗性を検定したところ,北欧産,北米産および北海道産の品種の抵抗性が高かった。耐凍性が高い品種ほど被害率が低かった(r=-0.617)。またNS,TS,FS,WSC(r=-0.657)含有率が高い品種ほど被害率が低かった。これらの結果から,土壌凍結地帯で,冬枯れ抵抗性品種を育成する際には,選抜の指標としてWSC含有率が一つの目安となり,その推定法として乾物率が有効であることが示唆された。
著者
藤吉 康志 村本 健一郎
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.343-353, 1996-06-25
被引用文献数
6

暖めたケロシン中で雪片を融解させ, その際形成される水滴の粒径分布を調べた. この実験結果を基に, 雪片の融解分裂過程が, 雨滴の粒径分布に与える効果について考察した. 合計50個の融解前の雪片について, その最大直径, 断面積, 質量も同時に測定した. 1つの雪片から生じる水滴の総数は, 雪片の質量と最も相関が高く, 少なくとも質量が3.0mg以下の場合には, 平均的な水滴の個数は質量と共に直線的に増加した. ただし, 質量が同じでも形成される水滴の粒径分布には大きなバラツキがあった. 生成された水滴の平均粒径分布は, 質量が1.0mg以下の場合は指数関数で, 2.0mg以上の場合はガウス分布で近似出来た. 初めGunn-Marshall型の粒径分布をしていた雪片が, ここで得られた実験式にのって融解分裂したと仮定すると, 得られた雨滴の粒径分布の勾配はMarshall-Palmer分布の勾配と極めて良く一致した.
著者
村本 健一郎 松浦 弘毅 椎名 徹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.12, pp.2353-2360, 1994-12-25
被引用文献数
13

落下中の降雪粒子の雪質を測定することは,降雪時における電波減衰を解析するために重要である.雪質は降雪粒子の密度(含水量)に大きく依存しているので,雪質は密度により表すことができる.本研究では,落下中の粒子の密度を長時間にわたって自動的に測定することを目的として,まず,画像処理による降雪観測法を用いて,落下中の個々の降雪粒子の粒径と落下速度を測定した.このとき同時に地上に落下したすべての粒子の重量を電子天びんを用いて測定した.粒子の粒径と落下速度のデータより得られる単位空間を通過するすべての粒子の体積の値とそれらの粒子の重量のデータより,落下中の粒子の密度の計算をした.更に,粒子の密度に影響を与える因子について考察することにより,画像処理データだけを使って,降雪強度を推定する手法を提案し,実際に適用した結果,実測値との良い相関が得られた.
著者
山西 健司 森永 聡 松村 憲和
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.830-836, 2007-08-15
参考文献数
8
被引用文献数
1

本稿では,テキストマイニング技術を用いてCGM(consumer generated media)情報から知識化を行う枠組みについて解説する.CGMマイニングにおいては,1)トピックのダイナミクスを捉えること,2)トピックの共通文脈を捉えること,3)分散へテロな情報を俯瞰すること,といった問題が重要である.これに対して,それぞれ,動的トピック分析,文脈マイニング,分散協調マイニングといった技術によって解決できることを示す.本枠組みの有効性を,BIGLOBE旬感ランキングにおける事例などを用いて示す.
著者
田村 慶信 山田 茂
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. R, 信頼性 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.161, pp.23-28, 2009-07-24

現在,OSS(オープンソースソフトウェア)は,数多くの企業,自治体,教育機関,政府関係機関などにおいて,様々な分野で使用されている.また最近では,組込み機器に対してもBusyBoxやAndroidに代表される組込みOSSが積極的に採用されつつある.一方で,利用者側や開発者側にとって,サポートや品質上の問題といった多くの不安が残されている.特に,組込み製品に対して組込みOSSを導入する際には,移植可能性の評価,移植作業期間における進捗管理,および最適リリース時刻の決定が重要となる.本論文では,こうしたOSSの信頼性を評価するためにハザードレートモデルを適用するとともに,その最適リリース問題について議論する.さらに,実際のバグトラッキングシステム上から採取されたフォールトデータに基づく信頼性評価例を示すとともに,その適用可能性について考察する.
著者
田村 慶信 竹原 英秀 山田 茂
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. R, 信頼性 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.67, pp.13-17, 2009-05-22

オープンソースソフトウェア(open source software,以下OSSと略す)の普及の動きが活発である.特に,組込み機器に対してはBusyBoxやAndroidに代表される組込みOSSが積極的に採用されつつある.しかしながら,そのサポート体制および品質上の問題や,移植可能性の問題から,その導入へ踏み切れない企業が多く存在している.本論文では,オープンソースプロジェクトの下で開発されている組込みOSSの信頼性を評価するために,ベイジアンネットワークおよびソフトウェア信頼度成長モデルに基づく信頼性評価法を提案する.本手法では,OSSを構成するコンポーネント間の因果関係を条件付確率で表現する.これにより,主要コンポーネントと,それに影響を及ぼすコンポーネントとの相互作用を包括することが可能となることから,組込み製品に対するポーティングを利用した開発の際に役立つものと考える.さらに,実際の組込みOSSのフォールト発見数データに対する数値例を示す.
著者
齋藤 謙太 牧田 裕喜 佐々木 整
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.52, pp.31-36, 2009-05-16

e-Learningやモバイルラーニングの普及により,学習者の学習機会が増えている.そのような機会があるにもかかわらず,実際には積極的に学習を行わない学生も多く,何らかの工夫が必要である.そこで本研究では,多くの学生が所持している携帯機器に着目し,それで動作する電子単語帳を開発を行っている.本電子単語帳は画像や音声,3Dオブジェクトなどを利用したカードを使うことができる.現在はこの電子単語帳に対してカード表面の操作に対応させ,裏面を変えることができるよう改良を行っている.本発表では,これまでに開発した電子単語帳を紹介するとともに,カード上でのアプリケーションの実行について報告する.
著者
大槻勝紀
雑誌
細胞
巻号頁・発行日
vol.24, pp.127-131, 1992
被引用文献数
1
著者
春原 由香里 臼井 健二 松本 宏 小林 勝一郎
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.95-103, 1995-08-31
被引用文献数
3

著者らはすでに, クロメプロップ自身はオーキシン活性を示さず, 植物体内でその加水分解物であるDMPAに分解された後に初めてオーキシン結合蛋白質に認識され, オーキシン活性を示している可能性が高いことを報告した。本論文では, クロメプロップの更は詳しい作用機構を調べることを目的とし, ダイコン幼植物を材料としてクロメプロップの茎葉処理後に生成されるエチレンが形態変化に関与しているかどうかの検討を行った。(1) クロメプロップ, DMPA処理後に現れる葉のカーリングや葉の葉柄間角度の増大はエチレン生成阻害剤(AOA)を前処理することにより軽減された(Fig. 1, Table 1)。 (2) クロメプロップ, DMPA処理後の上記の作用は, エチレン作用阻害剤(NBD)を後処理することにより軽減された(Fig. 2)。(3) エチレン生成量は, クロメプロップの場合, 茎葉処理12時間後までは殆ど生成されず対照区と同程度であったが, 24時間後からはエチレン量の増加が見られた。DMPAの場合は茎葉処理3時間後から徐々に増加し始め, 12時間後から生成速度が増加した(Fig. 3)。(4) エチレン生成促進剤(ETH)処理により, 著しく第1葉の伸長が阻害された(Fig. 4)。(5) クロメプロップ, DMPA処理により, ACC合成酵素が誘導され, AOAの前処理によりその誘導が抑制されることが確認された(Fig. 6)。(6) クロメプロップ, DMPA処理では, ACCからエチレンへの反応を触媒する酵素(ACC 酸化酵素)の誘導は起こらなかった(Table 2)。以上の結果より, クロメプロップは植物体内でDMPAへと変化し, DMPAがACC合成酵素を誘導することによってエチレン生成量を増加させ, そこで生成されたエチレンが, ダイコンの形態的変化を引き起こしているものと推察された。
著者
塩川 優一
出版者
医歯薬出版
雑誌
医学のあゆみ (ISSN:00392359)
巻号頁・発行日
vol.135, no.12, pp.p1116-1133, 1985-12-28
被引用文献数
7