著者
友永 雅己
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.265-272, 2009-03-31 (Released:2010-06-17)
参考文献数
61
被引用文献数
1 1
著者
齋藤 久美子
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

壁塗り用石膏に関して、前年まで研究で、当時石膏焼きの際、過焼成によりプラスターに無水石膏が混入していた可能性を指摘したが、これが現在までに二水石膏部分をも無水化させた原因ではないかと考え、半水石膏と、半水石膏と無水石膏の混合物をそれぞれ水和させ、変化を観察した。1年半にわたり湿度30〜40%の状態に置き、定期的に石膏の脱水の有無を調べたが、両者とも脱水は見られなかった。さらに、温度など壁画が置かれていた環境も検討し、長期的な観察を行う必要がある。顔料については、壁画には銅を発色源とするエジプシャン・ブルー、土器の彩色にはコバルトを発色源とするコバルト・ブルーという使い分けが行われていた理由を実験により検証した。分析結果に基づき合成したエジプシャン・ブルーと、出土したエジプシャン・ブルーの塗られた壁画片を、土器を焼く温度で輝いてみたところ、ともに黒く変色した。エジプシャン・ブルーは熱に弱く土器には使えなかったものと考えられる。コバルトブルーの製法については、同じくコバルトを使用していたガラスの製法、及びコバルト・ブルーより二千年以上前から作られていたエジプシャン・ブルーの製法と比較してみた。成分分析の結果、ガラスに比べて、コバルト・ブルーには多量のアルミナが含まれていた。分析結果に基づいて合成実験を行ったところ、アルミナが多いと融解温度が高くなるため、当時ガラスが作られていた温度ではガラス化が困難であり、ガラス製法そのままではコバルト・ブルーは作れないことがわかった。また、エジプシャン・ブルーともガラス質部分の配合が異なり、伝統的な顔料製法を用い、新たに導入された原料であるコバルトを単に銅に置き換えただけではないことが判明した。当時の技術体系の複雑さが伺える。顔料に関する実験の成果の一部を、6月に行われた日本西アジア考古学会第10回大会で発表した。
著者
大津 史子
出版者
日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.2018-026, 2018 (Released:2018-11-03)
参考文献数
2

ディプロマポリシーなどで求める能力が,教育課程の成果として身についているかどうかを評価し,実質的な教育改善をすることが求められている.名城大学薬学部では,FD委員会で,教学IR(Institutional Research)に取り組んでいる.まずは,授業評価アンケートや学習活動調査,学習スタイル調査などのIRの基盤となる情報を一元的に蓄積し,他の学習成果の情報等も取り込み,多面的な分析が可能とする環境の構築(IR基盤データベース)を行った.また,ディプロマポリシー及び10の資質に対する長期的ルーブリックを作成し,後期終了時に,学生に1年間の学修成果を振り返らせる取り組みを導入した.本シンポジウムでは,現在取り組んでいる教学IRの事例として,学習成果とアクティブラーニング及び,学習スタイル調査との関連,さらに,ディプロマポリシー及び10の資質に対する自己評価について,検討結果の一端を紹介する.
著者
坂崎 紀
出版者
聖徳大学
雑誌
研究紀要. 第四分冊, 短期大学部(III) (ISSN:09166661)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.17-25, 1993-12-03
著者
吉田 右子 川崎 良孝
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.2-15, 2009-05-01

本稿は建築史研究者で文化景観学,子どもの空間,図書館建築などに関心を持つアビゲイル・ヴァンスリックの図書館史研究を研究史的に取り上げたものである。本稿では代表作『すべての人に無料の図書館』を含めて,ヴァンスリックの研究の特徴を2つの側面から明らかにした。従来の図書館建築史研究やカーネギー図書館の研究史の中での斬新さと特徴,および図書館というスペースに注目しての女性や利用者からの視点による図書館の捉え返し。そうした特徴を指摘しつつ,いっそう盛んになってきている「場としての図書館」への歴史的研究の貢献の可能性と,この視点の重要性を指摘した。
著者
河合 祐司 大嶋 悠司 笹本 勇輝 長井 志江 浅田 稔
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.475-479, 2015-09-01 (Released:2016-03-01)
参考文献数
4
被引用文献数
1
著者
宗原 弘幸
出版者
北海道大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

行動観察、受精生理および遺伝学的手法により、本課題を遂行した。その結果、ヨコスジカジカは産卵後に雄が卵に放精する、非交尾種であることが判明した。しかし、精子の運動活性は海水中よりも体液と等張でNa^+存在下で最も高く、特に卵巣腔液中では極めて長期間活動する。媒精、受精は産卵時に放出される卵巣腔液中であることから、非交尾カジカはすでに交尾への準備が進んでいることが示唆された。また、卵巣腔液中で受精可能な点は体内配偶子会合型の交尾種と相違した。その要因は卵巣腔液中のCa^<++>濃度の違いで、カジカ類では交尾習性の進化の際に、卵巣腔液中のCa^<++>濃度を下げる生理的メカニズムの変化があったことが示唆された。卵巣腔液の役割として精子の貯留や活性保持の他に、ケムシカジカでは交尾の際の精子受け渡しの媒介となることが水槽内観察より明らかになった。本種の交尾行動は、一連の求愛儀式を経た後、雌の生殖口から管が出され、さらにそこからゼリー状卵巣腔液が放出され、そのゼリーの向かって放精されるというもので、精子が絡みついてゼリーの一部が再び雌の卵巣内に収納されることで交尾が完了する。ペニスがないカジカも交尾をするという、本行動観察結果は、カジカ科魚類にはかなり交尾をする種がいることを示唆した。交尾行動は繁殖生態の上で、父性のあいまいさをもたらす。特に雄が卵を守るニジカジカの場合、重要な問題である。そこでDNAフィンガープリントで、保護雄と卵の父性およびいつ交尾した雄が有利かを調べた。その結果、繁殖期の終期では雄と卵には父性がないこと、および最初に交尾した雄は多くの子を残せることが分かった。本研究結果は、卵の保護は雄にとって直接的な利益が無いことが示され、卵保護の進化に父性の信頼性は必ずしも平行しないこと場合があることが分かった。最後に、配偶子会合型、交尾種の地理的出現を調査する準備段階として、アラスカ産のカジカ類の繁殖期を把握する目的で、キナイ半島リサレクション湾の仔稚魚サンプルを調べ、春季に10種のカジカ科魚類が出現することが分かった。
著者
垂水(四方田) 千恵 黄 善美
出版者
横浜国立大学国際戦略推進機構
雑誌
ときわの杜論叢 = The journal of Tokiwanomori (ISSN:2188739X)
巻号頁・発行日
no.1, pp.111-128, 2014-03

This paper is intended to discuss the politics of culture inherent in the translation process based onone of the author’s experience translating Zhang Ailing‘s Lust, Caution. In addition, it extendsthe discussion into Korea, focusing on the differences in strategy and cultural conditionssurrounding the translation of Chinese works in Japan and Korea. Further, this paper compares theJapanese and Korean translations of Zhang Ailing‘s Lust ,Caution and reflects on how suchdifferences actually affect the translations.
著者
宮下 純夫 新井 孝志 長橋 徹
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.47, pp.307-323, 1997-04-24
被引用文献数
17

北海道中央部を構成する日高帯には, 周囲の砂泥質堆積岩と同時期に形成された現地性緑色岩が多数分布している。これらは, 日高帯西縁のイドンナップ帯, 日高帯西部, 日高帯東部の3帯の緑色岩に区分される。年代は, イドンナップ帯のものが白亜紀中頃, 日高帯西部は後期白亜紀後半, 日高帯東部は古第三紀暁新世-始新世と推定される。緑色岩の全岩組成はいずれもN-MORBの特徴を示す。これらは, イドンナップ帯においてはユーラシアプレートとイザナギ-クラプレートとの洩れ型トランスフォーム境界, もしくはイザナギ-クラ海嶺, 日高帯西部については沈み込み境界に対して高角な海洋プレート内の洩れ型トランスフォーム断層, 日高帯東部についてはクラ-太平洋海嶺に由来すると推定される。日高帯は, 後期白亜紀後半から古第三紀にかけて海嶺の多重衝突を経験した特異な付加体で, 日高火成・変成作用の発生によりこの付加体は大陸性地殻へと転化した。これは, 海嶺の相次ぐ衝突による付加体深部の異常な温度上昇, 大量の陸源砕屑物の供給による付加体の急激な成長, 東側から古千島弧が接近してきたなどの複合によっていると考えられる。
著者
三浦 義記
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.129, no.2, pp.111-115, 2007 (Released:2007-02-14)
参考文献数
36

これまで数多くの薬剤が抗てんかん薬として研究開発され,種々の発作タイプに有用性を発揮している.これらの創薬初期段階では殆んどのケースでゴールドスタンダードと称される動物モデルを用いた評価によりその活性が見出されてきたが,そのような一元的な活性の検出でありながら,薬剤毎にそれぞれ独自の顔を持ち,新たな有用性が示唆されている.また,新規な標的分子の発見など作用メカニズム解析でも興味ある知見が得られているところから,近年話題性のある幾つかの化合物例について新たな機序を含めた作用プロフィールを紹介した.更に,抗てんかん薬の創薬研究における最適化手段として動物モデル評価の位置付け,意義などを考察すると共に,本研究領域において今後期待される研究課題を展望した.