- 著者
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沖津 進
百原 新
- 出版者
- 千葉大学
- 雑誌
- 千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
- 巻号頁・発行日
- vol.51, pp.137-145, 1997-03-28
- 被引用文献数
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5
1.我が国におけるチョウセンゴヨウの分布を既存資料に基づき整理し,北東アジア大陸部での分布と比較してその特徴を明らかにした.2.水平分布は本州中部地方にほぼ限られ,四国に僅かに隔離分布する.垂直分布は,標商1800m以上の亜高山帯に分布地点の73%が集中し,1800m以下の山地帯には少ない.3.同じような水平分布範囲を示すシラベやトウヒと比較して産地数はかなり少ない.また,ほとんど優占林を作らず,分布しても分布量は少ない.4.北東アジア大陸部では,チョウセンゴヨウは沿海州から中国東北地方,朝鮮半島北部にかけての広い範囲で量的に多く分布し,優占林を形成し,落葉広葉樹と混交してチョウセンゴヨウ-落葉広葉樹混交林を作るとともに,垂直分布の上からは常緑針葉樹林帯の下部の山地帯が分布の中心となってしいる.5.北東アジア大陸部での分布と比較すると,我が国のチョウセンゴヨウは,垂直分布域の下部を山地帯性の樹種に占拠された形になっており,そこでは分布が消えるか,ごく局限された状態で,亜高山域に追い上げられた形となっている.