著者
和田 初枝
出版者
サレジオ工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2016

研究目的]本高専の教育課程の特徴である「創造性教育」の一環としてのアクティブ・ラーニングを支援するラーニング・コモンズの設計と試行を本研究の目的とする。[研究方法]1. 本学で実践している「創造性教育」における課題解決プロセスを分析し、必要なツールや課題に応じた資料提供等の人的支援について明確にした。2. 「場」として読書等の他の利用目的とラーニング・コモンズを併存させる物理的空間を構築した。方法は図書館内の暗騒音の計測に基づいた音量のバックグラウンドミュージックを特に閲覧スペースを中心に聴こえるようにしたサウンドマスキングシステムを利用するものである。使用する音楽は先行研究で図書館のバックグラウンドミュージックとして肯定意見の多かった環境音楽とした。3. 「創造性教育」への授業外学習支援を視野に、上記1で明らかにしたツールや人的支援の提供を上記2の場で行い、学生利用者アンケートおよび教員へのインタビュー調査を実施した。[研究成果と今後の課題]1. 提供したツールはディスカッション時に「役に立つ」との認識は持っていることがアンケートから伺えたが、実際には積極的な利用は見られなかった。この結果から授業外学習支援においても課題解決学習時に行われているファシリテートが重要になる。そのためには図書館でも課題解決学習の簡単な講習会等を実施することが有効と考えられる。2. サウンドマスキングシステムで利用したバックグラウンドミュージックについては特に個人学習の際に「リラックスできた」という意見が70%以上を占めたが、「他の利用者の声が気にならなかった」については10%であった。この結果から「場」の構築はサウンドマスキングの視点からではなくバックグラウンドミュージックが図書館利用者にもたらす効果という点から再考した方が図書館利用時のそれぞれの利用目的の効果を高める上でも有用ではないかとの示唆を得た。3. 1および2の結果に基づき課題解決学習方法の講習内容および図書館利用者の利用目的の効果を高める図書館の音環境の検討と提案を今後行う。
著者
竹橋 誠司 高橋 春樹 糟谷 大河 柿嶌 眞
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集 日本菌学会第51回大会
巻号頁・発行日
pp.101, 2007 (Released:2008-07-21)

日本各地の海岸砂地から採集された2種のホウライタケ型菌類について報告する. 1. Crinipellis scabella (Alb. & Schwein.) Murrill:北海道石狩市の海岸砂丘の海浜植物群落内で採集された.本種は枯れたイネ科植物,あるいは海岸砂地の主に枯死したイネ科植物の根茎から発生し,かさと柄に帯橙~帯赤褐色の短毛を密生させるという特徴を持つ.本種の和名について本郷(1952, 植研雑27: 368)はニセホウライタケ,川村(1954, 原色日本菌類図鑑3巻)はカヤネダケとそれぞれ命名した.このため現在,本種に対しニセホウライタケとカヤネダケの和名が並存して用いられている(伊藤,1959:日本菌類誌2巻5号).しかし,C. scabellaの和名についてはニセホウライタケが一般に広く使われていることから,本種の標準和名をニセホウライタケに統一することを提案する. 2. 日本新産種,Marasmiellus mesosporus Sing.:北海道,本州(宮城,福島,千葉,静岡,富山,石川,兵庫)および四国(徳島)の海岸砂地から多数の子実体が採集された.本菌の子実体は小型,かさ表面は平滑で周辺部に強い小じわを持ち,ひだは肉厚で直生~やや垂生,柄は細い円筒形となり表面は粉状~綿毛状という特徴を持つ.本菌はアメリカ,アジア,ハワイ,ヨーロッパの砂地,特に海岸砂地に分布し,イネ科植物に胴枯病を起こすMarasmius-blightとして知られる.日本では,夏から秋にかけて海岸砂地のハマニンニク,チガヤ,コウボウムギ,コウボウシバやケカモノハシの茎と根茎からごく普通に発生する.本菌はM. carneopallidusと形態的に類似するが,後者とはかさ表皮構造,縁シスチジアの形状,担子胞子の大きさで異なる.本種の和名としてスナジホウライタケを提唱する.
著者
大谷 信介
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.278-294, 2015 (Released:2016-09-30)
参考文献数
26

社会学会では, 2003年に社会調査士制度を立ち上げ2008年に社会調査協会として法人化するなど, 社会調査の能力を備えた人材育成と社会調査の科学的水準の向上と普及を図ってきた. しかしそうした努力にもかかわらず, なかなか政府や地方自治体の政策立案過程において, 「社会調査」に関する社会学領域の研究蓄積や人材が活用されてこなかったという実態が存在してきた. その大きな原因として, 統計法に基づく統計調査や統計行政の制度的枠組みを踏まえた社会学領域からの問題提起が弱かった点を指摘することが可能である. 戦後日本の行政施策の企画・立案の基礎資料は, 統計調査と統計行政によって収集されてきた. こうした統計行政の仕組みは, 戦後復興に貢献するとともに, 長い間行政機関が実施する統計調査や世論調査に多大な影響を与えてきたのである. しかし, 戦後70年の社会・経済・国民生活の激変の中で, これまでの政府統計だけで政策立案をすることが困難となってきている現実も出現してきている.本稿では, これまでの国や地方自治体での政策立案過程において, 統計調査がどのように使われ, どのような問題を抱えていたかを整理検討することによって, 今後有効な「データに基づく政策立案」システムを構築していくうえで, 社会学領域からどのような問題提起をしていけばよいのかについて考察する.
著者
山田 寛之
出版者
東京福祉大学 教務課(教職課程支援室)
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2015

本研究では、高等教育のアドミッション・カリキュラム・ディプロマ・アセスメントの視点をふまえ、イギリスの1992年継続高等教育法により「ポリテクニク」から大学に昇格した、いわゆる「新大学」を対象とし、イギリス中部の新大学の事例研究によって、職業能力形成を重視する高等教育課程の質保証の取り組みを具体的に明らかにすることを目的とした。本研究の成果は、現状分析を中心とし、次の通りであった。第1に、全学共通の正課外教育として11月から3月の期間に実施されている「就業力支援講座」について、H27年度ガイドブック、オンライン教材、受講生募集用資料の分析により、その教育方法(対面授業、オンライン学習)、教育内容(ガイダンス、キャリア計画、自己分析、職業体験、各種スキル形成、省察、履歴書作成、模擬面接)、評価方法(ポートフォリオ : 作業日程を設定し、対面・オンラインにより指導)、課題が明らかになった。第2に、社会学/犯罪学専攻の学士課程の2年次必修科目で、同専攻の就業力養成科目に位置付けられている「サービスラーニング」について、H27年度ガイドブックと教材の分析、担当教員・学生へのインタビューにより、その地域連携による運営、教育方法、教育内容、評価方法、課題が明らかになった。第3に、「学生参加による教育改善」について、担当教員と代表学生の参加のもとで実施される、学部単位の取組み(10月から4月の期間、月1回程度の会合を実施)および、コース単位の取組み(年3回、会合を実施)を、それぞれ社会科学部と社会学コース(修士課程)を事例とし、そのH27年度議事録の分析により、教育改善への学生参加の特徴と課題が明らかになった。第4に、「職業分野の学士課程における成人学習者の学習経験」について、社会福祉(health and social care)専攻の成人学生へのインタビューの分析により、職業分野の学士課程の特徴、成人学習の文脈における高等教育の質が明らかになった。
著者
吉田 光男 荒瀬 由紀
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌(トランザクション)データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.20-30, 2016-03-31

ソーシャルメディアでの言及量やウェブ検索エンジンでの検索頻度をもとに,トレンドキーワードを発見する研究開発が広く行われている.また,注目されているキーワードに対して情報を付与し,そのキーワードの理解を促すような試みもある.しかし,それらのトレンドキーワードが様々なウェブリソースでどのように振る舞うのかは必ずしも明らかではない.そこで本研究では,トレンドをとらえうるウェブリソースを対象に,収集したトレンドキーワードがどのように振る舞うのかを横断的に調査する.この調査により,大半のトレンドキーワードがオンライン辞書サービスに登録されていないこと,検索のトレンドは2日で50%未満の頻度に収束すること,ソーシャルメディア(Twitter)がほかのウェブリソースよりもトレンドに敏感であることなどを明らかにする.Many researchers work on studies for discovering trend keywords and queries on the web, i.e., search frequency and social media. Moreover, studies on trend query classifications are being conducted. However, the behavior of trend queries for various web resources is unclear. In this study, we investigate how trend queries appear in different resources on the web. We clarify the following. (1) Most trend queries are not registered with online dictionary services. (2) The trend converges in approximately two days. (3) Social media websites (such as Twitter) are responsive to trend queries.
著者
今村 展隆 BEBESHKO Via 木村 昭郎 BEBESHKO Vladimir.G BEBESHKO Vla
出版者
広島大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

キエフ(ウクライナ)の放射線医学研究センター(ベベシュコ所長)では、クリメンコ教授を中心として12万名のリクイデーター(除染処理作業従事者)を毎年健康管理している。彼らは250mSv:25rem以下の放射線被曝に留めるように設定したとされているが、実際にはそれ以上(一部は1Sv以上)の放射線被曝を受けた可能性を指摘されている。ウクライナ放射線医学センターで1986年以降リクイデーターの白血病発生を調査したところ、1993年までに141名の白血病発症患者を認めそのうち86名は急性白血病であった。放射線医学研究センター血液部門(成人)において、1993年以降1995年9月までに血液腫瘍疾患(悪性リンパ腫を除く)を発症した患者数(リクイデーター)は42名であり、大多数(31名)が男性で年令は20才〜67才であった。急性骨髄性白血病(AML)は16症例で、FAB分類ではAML,M1,3例、AML,M2,2例、AML,M3,2例、AML,M4,5例,AML,M5,4例であった。一方急性リンパ性白血病は2症例認められ、それらはいずれもALL,L2であった。男女比は14/4(3.5:1)で年齢(平均【+-】標準偏差)は41.8【+-】10.6であった。慢性骨髄性白血病は8症例認められ、慢性リンパ性白血病(B-CLL)は8症例であった。これらは男性患者のみで年令(平均【+-】標準偏差)は47.4【+-】10.3であった。また骨髄異形成症候群(MDS:前白血病状態)も8症例認められた。男女比は6/2(3:1)で年令(平均【+-】標準偏差)は51.3【+-】8.7であった。これらの急性白血病のうち検査し得た二症例において、p53癌抑制遺伝子のExon 5及びExon 6の欠失を認めた。この事実は白血病発症においてp53癌抑制遺伝子が重要な役割を演じていることが示唆される。またこの白血病発症率を非被曝者を対象群として比較したところ、リクイデーターの白血病発症率は有意に高率であることが判明した。更にキエフの小児病院にてチェルノブイリ事故前後(1980〜1993年)における小児急性白血病発生率を検討した。キエフ州の急性白血病発病率は(対10万名)及び発病患者数は各々1980年5.24(23名)、1981年3.22(14名)、1982年4.82(21名)、1983年2.56(11名)、1984年4.41(19名)、1985年2.03(13名)、1986年2.81(12名)、1987年5.49(23名)、1988年5.53(23名)、1989年5.27(22名)、1990年4.33(18名)、1991年2.67(11名)、1992年2.43(10名)、1993年2.45(10名)、であり1987〜1990年に一過性の発病率の増加を認めたが、その後は減少していた。ジトミール州の小児急性白血病発病率(対10万名)及び発病患者は各々1980年1.60(5名)、1981年1.61(5名)、1982年1.63(5名)、1983年1.0(3名)、1984年1.60(5名)、1985年3.40(11名)、1986年5.30(17名)、1987年4.44(14名)、1988年4.71(15名)、1989年6.32(20名)、1990年5.80(18名)、1991年5.60(17名)、1992年5.60(17名)、1993年2.91(10名)であり、1988〜1992年に一過性の増加が認められたが、1993年には下降している。ポルタフスキー州の小児急性白血病発病率(対10万名)は1983年5.80、1984年7.8、1985年7.5、1986年5.4、1987年5.5、1988年6.7、1989年4.9、1990年6.7、1991年6.2、1992年6.9でありほとんど発病率の変化は認められなかった。従ってキエフ州、ジトミール州及びポルタフスキー州については調査した限りでは小児急性白血病発症率についてチェルノブイリ事故前後における急性白血病発病率の有意差は認められなかった。以上の事実より高線量被曝者(リクイデーター)に最近白血病発症の増加傾向が認められていることが示唆される。
著者
橋本 裕之
出版者
日本情報経営学会
雑誌
日本情報経営学会誌 (ISSN:18822614)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.11-17, 2015

Boosted by its user-centric approach in development and hands-on management by Kazuki Morishita, CEO of the company, GungHo has been realizing the cyclical innovation which ultimately leads to the production of the super-hit title "Puzzle and Dragons" and the redefinition of the gaming industry being in the transformation by the emergence of smart devices. While the industry is moving toward mercantilism, the spirit of pursuing originality and strong commitment to prioritize the creation over the trend of the market together with the limitations in development guide the company into a unique position to advocate pure amusement for all the stakeholders.
著者
山中 祥子 山 祐嗣 余語 真夫
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.101-108, 2012
被引用文献数
1

This study investigated implicit attitudes toward high-fat foods among female undergraduate students. The existence of conflict between implicit negative attitudes and approach attitudes toward high-fat foods was predicted. Implicit attitudes were measured using the Implicit Association Test (IAT; Greenwald, McGhee, & Schwartz, 1998). This test has two attribute categories: positive-negative and approach-avoidance. In Experiment 1, food stimuli were presented using words. The results showed an implicit negative attitude toward high-fat foods, but no approach attitude. In Experiment 2, pictures were used as food stimuli. Here, the results showed both an implicit negative attitude and an implicit approach attitude toward high-fat food. However, no difference was seen in implicit attitude toward high-fat foods between the group with high intention of intake restraint and the group with low intention. These results partly supported the prediction for this study. The relationships of implicit negative attitudes and implicit approach attitudes toward high-fat foods, and eating behavior, were discussed.
著者
三輪 宗弘
出版者
情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.415-421, 2012
参考文献数
11

本稿では米国国立公文書館を利用する一人として,資料特に真珠湾攻撃直後に押収された日本商社資料の閲覧を通して,企業の日々の活動の資料が徹底的に分析され,日本の空襲ターゲット選定や日本に関する様々な情報収集にまで利用された実態を知ることができた筆者の経験を記述した。これらのことから,米国国立公文書館を利用すると,資料を収集して,分析して活用し,さらにそれを今日まで記録として残し,公開しているという点で,米国の資料管理の素晴らしさを実感できる。日米の資料公開の違いを痛感するのが軍事関係情報の公開の在り方である。シビリアンコントロールの観点からも情報公開の大切さを学ばなければならない。海外文書館での資料や情報の公開のあり方を学び,優れた制度を取り入れ,根付くように微力を尽くしたい。
著者
小林 三世治
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.102, no.3, pp.237-244, 2004-09-17

保険契約者(被保険者)である訴外人が,高度障害を負っていないにもかかわらず負ったとして,被告(医師)が作成した内容虚偽の障害診断書を原告(保険会社)宛に提出し,高度障害保険金を請求し,同保険金を詐取した。この診断書を作成・交付した被告が,訴外人が高度障害を負っていないことを認識しながら,原告宛の虚偽の内容の障害診断書を作成・交付したことは,保険金詐取の幇助に当たるとして,保険金相当額につき損害賠償責任を認めた。
著者
大来 佐武郎
出版者
JAPAN SECTION OF THE REGIONAL SCIENCE ASSOCIATION INTERNATIONAL
雑誌
日本地域学会年報 (ISSN:02876248)
巻号頁・発行日
vol.1962, no.1, pp.29-39, 1964-05-22 (Released:2008-10-09)

This article gives brief account of the background and problems of the “National Comprehensive Development Plan” which was officially adopted by the Government in October 1962. The preparation of such a plan was already stipulated in the Comprehensive Land Development Act enacted in May 1950, but it took more than ten years before the finalization of the plan chiefly because of the rapid changes in the fundamental conditions of the Japanese economy.The new Plan is supposed to answer the question of (a) redevelopment of overcongested areas, (b) preparation of new industrial areas and (c) reduction of economic differencials among different parts of the country.