著者
大武 由之 中里 孝之
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.75-80, 1972-02-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
20

めん羊肉脂質の性質,特性をさらに明らかにするために,5頭の雌のめん羊について,背肉(背最長筋),肩肉(上腕三頭筋)および腿肉(半膜様筋)から抽出した脂質について,その脂肪酸組成ならびにトリグリセリド構造をしらべた.その結果,背肉は肩肉よりもいくらか全脂質や中性脂質が多く,腿肉は他の部位よりもリン脂質が少なかったが,統計的には有意な差は認められなかった.背肉の全脂質は肩肉や腿肉よりC18:2が少なく,飽和酸が多い傾向があった.肩肉の中性脂質は,背肉や腿肉よりもC16:0が少なかった.また肩肉のリン脂質は,背肉や腿肉のに比べて,C16:0やC18:0が少なくC18:2が多く,したがって不飽和酸が多かった.めん羊肉脂質ではC15:0,C16:0,C17:0およびC18:0,したがって飽和酸はトリグリセリドの1と3の位置に多く,これに反してC17:1,C18:1およびC18:2,それ故に不飽和酸は2の位置に多く存在していた.めん羊肉脂質のトリグリセリドの平均組成は,SSS,9.64%;SUS,31.45%;SSU,10.77%;SUU,35.47%;USU,3.08%およびUUU,10.23%であった.また1-パルミト-2,3-ジオレイン,1-パルミト-2-オレオ-3-ステアリン,1,3-ジパルミト-2-オレイン,1-ステアロ-2,3-ジオレイン,トリオレイン,1,3-ジステアロ-2-オレイン,1,2-ジパルミト-3-オレインなどが,めん羊肉脂質を構成するおもなトリグリセリドであると考えられた.なお,背肉や腿肉は肩肉に比べて,ジパルミト•オレインとトリパルミチンが多かった.
著者
小橋 吉博 松島 敏春 河原 伸 多田 敦彦 宍戸 眞司 矢野 修一 重藤 えり子 横崎 恭之 冨岡 治明 竹山 博泰 西村 一孝 塩出 昌弘 上田 暢男 倉岡 敏彦 印鍮 恭輔
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR TB AND NTM
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.73, no.12, pp.705-711, 1998-12-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
14

In this study, we investigated 45 foreign patients who had been diagnosed as having tuberculosis in Chugoku-Shikoku area during the past 12 years. Regarding regional characteristics, in Hiroshima prefecture an epidemic of tuberculosis was experienced among patients coming from South America, but antituberculous therapy was performed for 87% of the patients because of the high coverage of the health insurance scheme. But in Okayama prefecture, most of the patients were female and came from Asian countries, such as, the Philippines. Antituberculous therapy was not performed for nine patients because of no coverage of the health insurance scheme. In the other prefectures, only a few cases of tuberculosis were experienced, but in Yamaguchi prefecture two of three foreign patients were multidrug-resistant tuberculosis.
著者
久留 聡
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.109-114, 2021 (Released:2021-02-23)
参考文献数
39
被引用文献数
1

スモン(subacute myelo-optico-neuropathy)は,1960年代に多発した中毒性神経疾患である.腹部症状が先行し,下肢末端から上行する異常知覚・感覚障害,痙性麻痺,視力障害をきたす.当初は原因として感染が疑われたが,緑尿分析からキノホルム説が浮上し,疫学調査・動物実験により確認された.日本最大の薬害となった背景には,外用薬の内服薬への転用,安全神話,杜撰な投与量規制,国民皆保険制度による投与量増加,腹部症状の複雑性など多くの要因が存する.現在も恒久対策として患者検診が継続して実施されている.今後はキノホルム神経毒性機序や感受性の研究,薬害スモンの風化防止が重要である.
著者
波多江 崇
出版者
日本社会薬学会
雑誌
社会薬学 (ISSN:09110585)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.98-100, 2014-12-10 (Released:2015-09-04)
著者
山森 光陽 岡田 涼 山田 剛史 亘理 陽一 熊井 将太 岡田 謙介 澤田 英輔 石井 英真
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.192-214, 2021-03-30 (Released:2021-11-16)
参考文献数
93

この紙上討論の目的は,メタ分析や,メタ分析で得られた結果を多数収集し,メタ分析と同様の手続きでさらなる統合的見解を導く分析(スーパーシンセシス)といった,研究知見の統計的統合が,学術的な教育研究の持つ現象理解と理論形成,社会的要請への応答という二つの役割に対して果たしうる寄与を議論することである。日本の教育心理学におけるメタ分析の受容の経緯と最近の研究動向の概観を踏まえ,研究知見の統計的統合の普及が,個々の一次研究をサンプルと見なし,これらの積み重ねで結論を導こうとする態度の広まりといった,教育心理学および隣接領域での研究上の意義が示された。また,「エビデンスに基づく教育」を推進する動きとその是非に対する議論の活発化といったことも背景として,効果量のみに注目する単純化された見方がもたらされ,研究知見の拙速な利用が促されるといった社会的・政策的影響が見られることも示された。その上で,これらの意義や問題に対して議論がなされた。研究知見の統計的統合は現象理解と理論形成に一定の貢献をするものの,因果推論を行うためには個票データのメタ分析が必要となり,そのためのオープンサイエンスの推進の必要が指摘された。また,研究知見の統計的統合が,精度が高く確からしい知見をもたらし得るものと見なされ,その結果が平均効果量といった単純な指標で示されることから,教育の実践者が持つ判断の余地の縮小や,教師の仕事の自律性の弱化を招きうるといった危惧が表明された。これらの議論を通じて,研究知見の統計的統合は,現象理解と理論形成に対しては,知見群全体の外的妥当性を高めるための有効な手立てであることが示され,構成概念の再吟味や概念的妥当性の検証にも寄与する可能性があり,教育心理学の理論自体の精度と確からしさを高めることにつながる展開が期待できることが導かれた。社会的要請への応答に対しては「何が効果的か」を知りたい,明解でわかりやすい結論が欲しいという要望には応えていることが示された。一方,この討論で指摘された諸問題は,教育心理学が産出する研究知見そのものが研究分野外に与えるインパクトそのものを問うものであることも示された。最後に,研究知見の統計的統合が,現象理解と理論形成,社会的要請への応答という二つの役割をいっそう果たしていくためには,教育心理学の領域の内外で,合理的な知見を伝達し交わし合うことに対する意識が,これまで以上に求められることを論じた。
著者
善教 将大
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.2_163-2_184, 2016 (Released:2019-12-10)
参考文献数
47

本稿の目的は, 政党支持の規定性, 具体的には長期的党派性の投票行動に対する影響を検証することである。政党支持の規定性は, これまで多くの研究者が議論してきた安定性とは対照的に, ほとんどその妥当性に関する検証作業が行われていない。本稿では実験的手法を用いて, 行動意欲とは異なる長期的党派性は, 政党ラベルや候補者要因が投票行動に与える効果をどの程度条件付けるのかを分析することで, 政党支持の規定性の検証を試みる。大阪市および近畿圏在住の有権者を対象とするサーベイ実験の結果, 長期的党派性は政党ラベルの因果効果を常に高めるわけではないことが明らかとなった。この知見は, 政党支持は規定的であるという通説的見解に疑義を投げかけるものであると同時に, 有権者における政党支持の 「揺らぎ」 を示唆するものでもある。
著者
標葉 隆馬
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.140-154, 2021-07-19 (Released:2021-07-19)
参考文献数
51

Under the crisis of the pandemic of COVID-19, various stakeholders should discuss not only scientific risk but also its broader social impacts, including various ethical, legal, and social issues (ELSI). In this paper, I describe discussions on ELSI of the pandemic from literature reviews and extracted ELSI agendas for the further discussions. Through analysis of literatures, I will point out that social vulnerability and gender equality is the essential perspectives for academic and policy-making on COVID-19.
著者
野田 克彦 磯崎 さとみ 谷口 春雄
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.32, no.11, pp.791-796, 1985-11-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
16
被引用文献数
2 3

大腸菌生育に対するスパイス類の影響を検討し以下の結果を得た(1) 大腸菌のコロニー形成に対してクローブ,タイム,セージの加熱抽出水溶液は抑制的に働き,ブラックペパー,ローズマリーの加熱抽出水溶液はわずかに抑制的であり,マスタードの加熱抽出水溶液には明確な効果はみられず,ガーリック,パセリの加熱抽出水溶液およびワサビ,シソ葉,ヒネショウガの搾汁加熱液は生育促進的に作用した。(2) タイムには菌生育阻害物質としてチモールが存在するが,それと共に生育促進因子の存在も示唆され,タンニン酸など還元性物質である可能性があった。(3) 市販ガーリック粉末は大腸菌生育に促進的に働いたが,生鮮ニンニクは高濃度では生育を抑制し,低濃度域では逆に生育を促進した。市販ガーリック粉末および低濃度ニンニク汁の生育促進効果はスコルジニンによるものとの結果を得た。(4) 生鮮ワサビ,シソ葉,ショウガ,および乾燥パセリなどに菌生育促進効果がみられたのはアスコルビン酸によるものと推測した。
著者
三中 信宏
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.123-128, 2016 (Released:2018-04-13)
参考文献数
27
被引用文献数
3

The recent controversy over statistical data analyses sheds a light on a number of cases of abuse of statistical procedures. In this essay some practical aspects of statistical analyses, mainly in agricultural research, are discussed. During the past century eminent researchers, including K. Pearson, R. A. Fisher, J. Neyman, and E. S. Pearson, have established the theoretical basis of modern mathematical statistics, e.g., experimental design, sampling distributions, and hypothesis testing. Some users in psychology, agronomy, etc. might be liable to commit misconduct in statistical analysis. Of course while they are responsible for what they have done, they must understand not only the proper use of statistical methodology but also the characteristic of each science.
著者
斎藤 毅
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.337-348, 2001-10-30 (Released:2008-12-25)
参考文献数
40
著者
宮内 洋
出版者
日本質的心理学会
雑誌
質的心理学研究 (ISSN:24357065)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.28-48, 2004 (Released:2020-07-05)

小型化・軽量化・低価格化・操作単純化されていくことによって,小型ビデオカメラ等の録音・録画機器が普及し,私たちのフィールドワークも様変わりしてきた。フィールドにおける記録は,以前よりも簡便に可能となったように見える。このことによって,フィールドにおける場面の微細な分析も可能になるなど,私たちのフィールドワークの精度も高まったかもしれない。しかし,一方で,〈出来事〉の説明の複雑化ももたらしたようにも見える。「羅生門問題」とは目撃者の人数分の状況説明の出現という事態を表象したものであるが,記録された音声と映像の入手は,一人の個人においても複数の状況説明が現れるという事態を創出したのではないだろうか。本稿は,ある幼稚園におけるフィールドワークで直面した幼児同士の「トラブル」の分析によって現れた,小型ビデオカメラが普及した現代におけるフィールドワークに関する一つの問題提起である。いわば,記録された音声と映像を手にすることによって,自らの中に「藪の中」を抱え込んでしまったフィールドワーカーを狂言回しとする,一つのフィールドワーク論である。
著者
Junji FUJIKURA Muneya FUJIMOTO Shintaro YASUE Michio NOGUCHI Hiroaki MASUZAKI Kiminori HOSODA Takao TACHIBANA Hajime SUGIHARA Kazuwa NAKAO
出版者
The Japan Endocrine Society
雑誌
Endocrine Journal (ISSN:09188959)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.623-628, 2005 (Released:2005-11-11)
参考文献数
16
被引用文献数
42 47

An 82-year-old woman with type 2 diabetes had been treated with recombinant human insulin for 16 years. She developed large swellings in both sides of her lower abdomen. The masses were soft, painless, and located around her insulin injection sites. Based on the history and clinical features, a diagnosis of insulin-induced lipohypertrophy was made. Total resection revealed that the lesions were composed entirely of fatty tissue. Microscopic examination showed nests of mature adipocytes expanding toward the dermal reticular layer. The hypertrophic adipocytes were twice as large as those from normal subcutaneous areas and contained numerous small lipid droplets. Electron microscopic analysis also revealed a minor population of small adipocytes, suggesting active differentiation or proliferation. Thus, the possible in vivo effects of insulin on adipocytes were clearly observed in this case of insulin-induced lipohypertrophy. To our knowledge, this is the first report of insulin-induced lipohypertrophy with detailed histological examinations.
著者
赤井田 将真 中井 雄貴 富岡 一俊 谷口 善昭 立石 麻奈 田平 隆行 竹中 俊宏 窪薗 琢郎 大石 充 牧迫 飛雄馬
出版者
一般社団法人 日本老年療法学会
雑誌
日本老年療法学会誌 (ISSN:2436908X)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-6, 2022-06-01 (Released:2022-06-04)
参考文献数
30

【目的】地域在住高齢者ドライバーにおける自動車事故歴と転倒歴の関連性を調べることを目的にした。【方法】地域コホート研究(垂水研究2018または2019)に参加した65歳以上の自動車運転をしている高齢者602名(平均年齢72.8±5.6歳,女性50.0%)を対象とし,横断的に解析を行った。自動車事故歴は過去2年間の自動車事故歴の有無を聴取し,「事故歴あり」と「事故歴なし」に分類した。転倒歴は過去1年間における転倒の有無を聴取し,「転倒歴あり」と「転倒歴なし」に分類した。統計解析では,従属変数に事故歴の有無,独立変数を転倒歴の有無,共変量に年齢,性別とした二項ロジスティック回帰分析を行った。【結果】全対象者のうちで自動車事故歴がある者は5.6%,転倒歴がある者は13.0%であった。事故歴ありの者は,事故歴なしの者に比べ転倒歴を有する者の割合が有意に高かった(p=0.003)。二項ロジスティック回帰分析の結果,転倒の経験は自動車事故の経験と有意に関連することが示された(オッズ比:3.12,95%信頼区間:1.42–6.85,p=0.004)。【結論】地域在住高齢者ドライバーにおいて,自動車事故の経験を有することと転倒の経験を有することは関連することが示唆された。
著者
渡辺 伸元 松永 宏之 宇野 雅紀 大岩 孝
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.1153-1157, 2014-09-30 (Released:2015-02-04)
参考文献数
17
被引用文献数
1

症例は35歳女性。便秘,腹痛を主訴に来院した。腹部CTで結腸に多量の便塊と小腸から結腸にかけて高度の拡張を認め,宿便性腸閉塞の診断で入院となった。保存的治療を試みたが,さらに発熱,炎症反応高値を認めたため閉塞性腸炎の診断で緊急手術を施行した。下行結腸で硬便が数珠状に連なり閉塞していた。横行結腸で双孔式人工肛門を造設した。術後は一旦経口摂取可能となったが再度腹部の膨隆が強くなった。腹部CTで腸管外にairを伴う多量の腹水を認め,消化管穿孔の診断で術後5日目に再度,緊急手術を施行した。腹腔内には便汁が充満し,人工肛門より口側の横行結腸に壊死,穿孔を認めた。拡大結腸右半切除および回腸ストマを造設した。敗血症性ショックとなったが2回目の手術より14日目に軽快退院となった。今回,健常な若年者が宿便性腸閉塞から閉塞性腸炎,大腸穿孔をきたした症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。