著者
神馬 征峰
出版者
医学書院
雑誌
公衆衛生 (ISSN:03685187)
巻号頁・発行日
vol.80, no.11, pp.853-858, 2016-11-15

密輸業者ナスレディンの秘密 ナスレディンの稼業は密輸業.毎日夕方になるとロバに乗って税関所を通る.税関検査官はナスレディンがまた悪さをしていると思い,吊り籠の中をくまなく調べる.しかしみつかるのはいつも藁だけ.何年も何年も繰り返し調べても,何もでてこない.ナスレディンといえば,どんどん金持ちになっていく.何か密輸しているのに違いないのだ. やがてナスレディンも年をとり,密輸から足を洗う.そんなある日のこと,たまたま退職した例の税関検査官とばったり出会ってしまった.
著者
齋藤 佑樹 長山 洋史 友利 幸之介 菊池 恵美子
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.299-308, 2017-06-15

要旨:本研究では,ADOCが作業療法面接に与える影響について検証した.ADOCは作業療法士とクライエントが協業的に面接評価を行い,作業療法目標を立案・共有するための面接ツールである.Webアンケート調査で,5名の予備調査インタビューから得た3つのカテゴリー(①セラピストの知識・技術,②セラピストの自信,③クライエントの状態)を基に,全34問の質問紙にて調査した.ADOCの使用経験者188名の回答を分析した結果,作業療法初心者には作業に焦点を当てた実践を追求したいと思う動機的側面にプラスに作用し,経験者では認知症や失語症など意思疎通が困難なクライエントと意味のある作業を共有する自信がついたとの回答が多いことが明らかとなった.
著者
三ツ橋 雄之
出版者
医学書院
雑誌
臨床検査 (ISSN:04851420)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.1246-1247, 2013-10-30

1.大型血小板とは 大型血小板とは正常な血小板よりも大きい血小板であり,正常の血小板が直径2~3μm程度に観察されるのに対して,4μm以上を呈するものである.塗抹標本上では赤血球との比較で大きさを評価し,赤血球の直径の約半分に相当する4μmから赤血球大(約8μm)までのものを大血小板,赤血球サイズを超えるものを巨大血小板(giant platelet)と呼ぶことが多い. 大血小板や巨大血小板はいくつかの先天性の疾患や後天性の病態で出現することがあり,診断の端緒となることがあるが,健常人でも少数の大血小板や巨大血小板がみられることがあるため,血小板減少の有無,血小板形態の変化,出血などの臨床症状や他の検査値異常の有無などの所見を合わせた総合的な評価が必要である.
著者
長洲 光太郎
出版者
医学書院
雑誌
medicina (ISSN:00257699)
巻号頁・発行日
vol.8, no.9, pp.1422-1424, 1971-08-10

病人の要求に答えられるか こういう種類の本を読むのはわたしたち医者にとってむしろ苦痛であるだろう.触れたくない創をかきまわすのであるから.しかし毎日「死んでゆく患者」をみているわたしたちこそ,この種の本を読む必要があり,またその意味を正しく理解できるのではあるまいか.
著者
米田 勝紀 山川 謙輔 日置 琢一 天野 信一
出版者
医学書院
雑誌
臨床泌尿器科 (ISSN:03852393)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.335-337, 1989-04-20

症例は75歳女性で脳血管障害による長期臥床老人,オムツによる尿路管理がなされていた。全身状態が悪化,バルーン挿入不可能とのことで当科受診。尿路単純撮影にて尿道に鶏卵大の層状の結石を認めた。外尿道口切開を加え結石を摘出,大きさは57×43×30mmで45g,成分は燐酸Ca83%,炭酸Ca17%であった。6ヵ月後の尿道造影では尿道は正常の大きさであり,膀胱で徐々に大きくなった結石が尿道に嵌頓したものと診断した。
著者
鯨岡 栄一郎
出版者
医学書院
雑誌
理学療法ジャーナル (ISSN:09150552)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.305-311, 2014-04-15

はじめに 近年,リハビリテーション領域におけるコーチングやコミュニケーションに対する関心の高まりを感じる.理学療法を進めていくうえで,治療技術以外の要素の必要性をどこかに感じている現れかもしれない.とはいえ,リハビリテーションのみならず,医療において最も課題となる患者の動機づけ(=モチベーション)そのものの実際に関しては,まだまだ乏しいのではないだろうか? 今日,パソコンやスマートフォンに代表されるウェブ環境が整い,医学的知識は無料でいくらでも集めることができるようになった.これからの時代に着目すべきは,むしろ情報量ではなく,「知っていること」と「実際の行動」の溝である.多くの場合,人は自分が何をすべきなのかはすでにわかっている.しかし,それを実行し続けられるかどうかはまた別の問題である.人はそのくらい,自分1人だけでは,自らの行動を変え,習慣化させるということが難しい生き物であると言える.そのギャップを埋めるのが,これからのわれわれ療法士に求められる役割と言えよう. そこで今回,私からはあくまで現場実践のコーチング的視点から,臨床において患者を動機づけするための具体的なスキルと考え方について紹介したい.
著者
中谷 雄介
出版者
医学書院
雑誌
臨床眼科 (ISSN:03705579)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.239-244, 2018-02-15

要約 目的:スプレーガンは圧縮空気を噴射する携帯型の装置で,動力源にエアコンプレッサーを用い,トリガーの操作により空気を噴射して,塵やゴミ,水滴などの付着物を吹き飛ばすものである。今回,スプレーガンによる眼窩内気腫を経験したので報告する。 症例:60歳,男性。仕事中,作業着の上からスプレーガンで埃をとるために噴射していたところ,誤って右眼球の中央から耳側にかけて空気をあてた。その直後,右眼瞼,顔面が腫れたため当院を受診した。 所見と経過:右眼球結膜下の多量の気泡,耳側結膜の裂傷を認め,右上眼瞼,下眼瞼,側頭部,頰部にかけて気腫を認めた。眼瞼,頰部などを触れると捻髪音を認めた。CTで眼窩内側壁骨折を認めた。受傷翌日に結膜裂傷を縫合し,受傷3日目には合併症なく気腫はほぼ消失した。 結論:スプレーガンによる眼窩内気腫の報告では予後はおおむね良好と報告されており,本症例も同様であった。受傷直後は眼瞼が開きにくく,明確に空気迷入口である結膜裂傷を確認できた症例は少ない。圧縮空気使用者と医療従事者はスプレーガンによる眼合併症が起こりうることを認識する必要がある。
著者
京極 真 寺岡 睦 小林 隆司 河村 顕治
出版者
三輪書店
雑誌
作業療法ジャーナル (ISSN:09151354)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.521-524, 2014-06-15

Abstract:本論では,作業療法教育における学部・大学院5年一貫教育プログラムの概要を紹介し,実践報告を通してその利点と課題を明らかにした.今回,わが国の作業療法業界で初めて学部・大学院5年一貫教育プログラムに選抜された学生に対し,大学院教育を行った.その結果,意義として,①作業療法学の発展に貢献し得る人材を早期に育成しやすい,②作業療法養成課程におけるキャリアプランを豊かにし,学生のモチベーションの向上に資する,の2点があると論じた.他方,課題として,①教育体制の充実と工夫が必要である,および②大学院教育期間の短縮により受ける制約の検証が必要である,の2点があると論じた.
著者
山浦 晴男
出版者
医学書院
雑誌
看護研究 (ISSN:00228370)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.218-227, 2017-06-15

はじめに この小論は,次の文献と筆者の体験をもとに,クラシックGTとKJ法およびそれに準拠した質的統合法(KJ法)を比較検討している。 Ⅰ. 川喜田二郎(1967).発想法─創造性開発のために.中央公論社. Ⅱ. 川喜田二郎(1986).KJ法─渾沌をして語らしめる.中央公論社. Ⅲ. B.G.グレイザー&A.L.ストラウス/後藤隆,大出春江,水野節夫訳(1996).データ対話型理論の発見─調査からいかに理論をうみだすか.新曜社. Ⅳ. 山浦晴男(2008).科学的な質的研究のための質的統合法(KJ法)と考察法の理論と技術.看護研究,41(1),11-32. Ⅴ. 山浦晴男(2012).質的統合法入門─考え方と手順.医学書院. Ⅵ. V.Bマーティン&A.ユンニルド編/志村健一,小島通代,水野節夫監訳(2017).グラウンデッド・セオリー─バーニー・グレーザーの哲学・方法・実践.ミネルヴァ書房. これらの文献とともに,KJ法の創案者川喜田二郎氏に直接指導を受けた20年間の体験と,その後の26年間にわたる筆者の実践経験に基づき,比較検討を行なった。 日本ではグレイザーの流れに基づくクラシック・グラウンデッド・セオリー(以下,クラシックGT)のほかに,ストラウスの流れをくむグラウンデッド・セオリー(以下,GT)が普及しているとされている。そこで次の文献も参照したが,本小論では主にクラシックGTとの比較を行なっている。 Ⅶ. 木下康二(2003).グラウンデッド・セオリー・アプローチの実践─質的研究への誘い.弘文堂. Ⅷ. 戈木クレイグヒル滋子(2005).質的研究方法ゼミナール─グラウンデッド・セオリー・アプローチを学ぶ.医学書院. Ⅸ. 戈木クレイグヒル滋子(2006).グラウンデッド・セオリー・アプローチ─理論を生みだすまで.新曜社. Ⅹ. 髙木廣文(2011).質的研究を科学する.医学書院. これらに加えてさらに,次の文献を参照している。 Ⅺ. マイケル・ポランニー/高橋勇夫訳(2003).暗黙知の次元.筑摩書房. Ⅻ. 伊藤邦武(2016).プラグマティズム入門.筑摩書房. なお,筆者はクラシックGTおよびGTの直接的な体験がなく,文献ならびに小島通代氏の講義と口頭での学びの範囲での理解であり,そこに理解の限界があることを申し添えたい。また,以降の本文中の引用については,一部を除いて,上に挙げた文献番号を示す形とさせていただきたい。
著者
杣川 知香 福田 雄高 吉村 正太 佐藤 慧 日宇 健 小野 智憲 牛島 隆二郎 戸田 啓介 堤 圭介
出版者
医学書院
雑誌
Neurological Surgery 脳神経外科 (ISSN:03012603)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.629-635, 2017-07-10

Ⅰ.はじめに 内頚動脈-後交通動脈分岐部動脈瘤(internal carotid-posterior communicating artery aneurysm:IC-PC AN)に合併する同側動眼神経麻痺(oculomotor nerve palsy:ONP)は,切迫破裂の警告症状やくも膜下出血(subarachnoid hemorrhage:SAH)に伴う局所神経症状として広く認知されているが,対側に生じることは極めて稀である19).今回われわれは,SAH発症約1日後に対側ONPを発症したIC-PC ANの稀な1例を経験した.文献的考察を加えて報告する.
著者
藤原 啓恭 小田 剛紀 牧野 孝洋 森口 悠 米延 策雄 海渡 貴司
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.39-48, 2017-01-25

背景:関節リウマチ(RA)患者の疾患活動性が後方経路腰椎椎体間固定術(PLIF)後の固定隣接椎間障害(ASD)発生率に影響を与えるかを検討した. 対象と方法:2椎間以下のPLIFを施行し,2年間の経過観察が可能であった90例(RA患者22例,非RA患者68例)を対象とし,臨床・画像成績を調査した.RA患者は画像上ASD発生の有無により副分類し,術前の患者背景を比較検討した. 結果:画像上ASD発生率はRA患者30%(12/40椎間),非RA患者9%(11/121椎間)と有意差を認めた(P<0.05).画像上ASD発生の有無でRA群の患者背景に有意差を認めなかった. まとめ:RA患者では疾患活動性制御に関わらずASDが高率に発生した.
著者
塚本 潔 池田 正孝 野田 雅史 山野 智基 小林 政義 濱中 美千子 馬場谷 彰仁 木村 慶 宋 智亨 今田 絢子 内野 基 池内 浩基 冨田 尚裕
出版者
医学書院
雑誌
臨床外科 (ISSN:03869857)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.450-456, 2018-04-20

【ポイント】◆根治性と機能温存の観点から,家族性大腸腺腫症に対して大腸全摘・J型回腸囊肛門吻合術が標準術式とされている.◆肛門側操作で確実な粘膜切除と括約筋温存を心がけることで根治性と機能温存が両立される.◆1期的手術や腹腔鏡手術の有用性が期待されるが,いまだ十分なコンセンサスを得たものではなく,専門性の高い術式であるという認識をもつことも必要である.*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画(Flash形式)を見ることができます(公開期間:2021年4月末まで)。
著者
飯村 大智 安井 美鈴 横井 秀明
出版者
日本言語聴覚士協会
雑誌
言語聴覚研究 (ISSN:13495828)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.354-368, 2017-12-15

言語聴覚士(以下,ST)を目指す吃音者にとって,吃音の問題は様々な障壁となり,ST養成校における支援が求められる.本調査ではST養成校における吃音者の困難・配慮および吃音STの実態調査を質問紙法により実施した.ST養成校に在学経験のある吃音者27名(男性22名,女性5名,平均年齢29.0±5.3歳)からの回答が得られた.回答者は,臨床実習や検査演習での検査の教示,授業での音読,就職活動や入試での面接など,様々な場面で困難を感じていることがわかり,「吃音の認知」「吃音の理解」「吃音を考慮した評価」「代替手段の利用」などの配慮を必要としていることがわかった.自身の吃音を契機に養成校に入学する者は多いものの,入学後に吃音領域の少なさを知る者も多かった.教員などへの相談により心理的にプラスの影響があったり,環境整備が行われる例も多くみられたが,教員へ相談ができない例もあり,教員の積極的な吃音学生への介入が求められる.