著者
塚田 岳大 後藤 勝
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本申請は、古くからの謎であるウナギの「血清毒」の解明に切り込む。この血清毒は、タンパク性で熱に弱く、摂取や接触により下痢、嘔吐、皮膚炎などの症状を引き起こすことが知られているが、毒の本体(遺伝子)はまだわかっていない。本研究の目的は、ウナギ血清毒を同定・単離し、その毒性を調べることにある。さらに、タンパク質X線結晶構造解析を組み込み、血清毒の立体構造から毒の作用機序を明らかにするとともに、他の生物種における血清毒遺伝子の探索を行い、魚類の血清毒の進化的意義を考察する。
著者
齊藤 信夫
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

インフルエンザ流行防止策として学級閉鎖の効果を解析するため、閉鎖状況の情報収集を行ったが、解析に十分な閉鎖回数、期間がみられなかった。今後、他地域でも情報収集を行う必要がしめされた。流行防止対策として、最も重要であるワクチンの効果について解析を行った結果、ワクチンの発症防止効果は2011/2012~2013/2014シーズンでインフルエンザAに対して32%、Bに対して13%と低い防御効果であった。ワクチン効果が低い要因として、毎年、連続してワクチンを接種するとワクチン効果が用量依存的に下がるということを統計学的に示すことが世界で初めてでき、感染症領域で最も権威ある国際誌で発表した。
著者
神谷 厚範 吉川 宗一郎 檜山 武史
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

自律神経系は、健康時には、生体情報の変化に応じて全身の臓器を個別に調節する役割を担い、生体恒常性や生命の維持機構の要のひとつである。ところが、自律神経系は、病態ではむしろ不合理に働き、病勢を加速するなど、難病の病態に深く関わる。本研究では、乳がんと高血圧を対象とし、制御工学や遺伝子工学等で自律神経系に介入して神経機能を制御して疾患を治療する、システム自律神経制御医療を試作することを、目的とする。
著者
神谷 厚範
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

本研究は、従来の神経計測法(体外培養下や臓器外における記録等)では決して分かり得ない、臓器組織の内部における神経線維終末の動態(生体情報の感知, 細胞機能の調節)という未開の領域を、独自の先端的神経計測技術(生動物2光子末梢神経イメージング, MEMS神経マイクロマシン)によってリアルタイムに計測し解明することを目指す。がん組織や胸腹部臓器に分布する末梢神経を対象として、実施する。
著者
渡辺 顕
出版者
昭和大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

母体血漿中に胎児由来のDNAが浮遊している事が報告されている。この胎児由来DNA量は妊娠中毒症や早産、また、胎児がDown症の症例で増加すると報告されている。今回、妊娠初期の胎児由来DNA量をY染色体特異的なDYS14遺伝子を定量することで評価した。302例の妊婦で検討したところ、男児妊娠例139例中135例でDYS14遺伝子を同定した。女児妊娠例ではDYS14遺伝子は検出されなかった。この胎児性別検査法のSensitivity:97.2%、Specificity:100%、Positive predictive value:100%、Negative predictive value:97.5%と精度の高い検査法であることがわかった。また、この検討で妊娠9-14週頃の症例が妊娠16週以降の症例に比較して胎児DNA量のばらつきが大きいことを見出した。妊娠9-14週で高値を示した症例について臨床的な背景、その後の妊娠合併症の発現について検討をおこなったが、妊娠中毒症や早産などとの関与はなかった。しかし、妊娠悪阻症状の強い患者が多かったことから、その関与について検討を行った。その結果、妊娠悪阻にて入院した症例は、妊娠悪阻症状を認めなかった症例にに比較し、有意に母体血漿中胎児DNA量が高値を示すことがわかった。また、母体血漿中beta-hCG濃度と胎児DNA濃度が有意に正の相関を示した。このことから、妊娠絨毛の活発な母体脱落膜への侵入などが母体の免疫系を刺激し、母児境界で両者の鬩ぎ合いが起こっていて、その結果として母体血漿中胎児DNA量が増加すると考えられた。この結果は妊娠のその病態を理解する上で重要な所見であると考えられた。
著者
米田 成
出版者
和歌山大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2020-04-24

ホログラフィックデータストレージのさらなる大容量化・高転送速度化を目的として光波の「振幅」・「位相」・「偏光」などの多次元情報を活用する手法を提案する.一般的に,光波の多次元情報を同時に変調するためには複数の空間光変調器が必要であり光学系が大型・複雑・高価になる.また,復調過程では撮像素子が必要である.これらの問題を解決するために,計算機ホログラムの技術や圧縮センシング,シングルピクセルイメージングなど,情報フォトニクスに関する幅広い分野の技術を応用する.これら技術の応用により汎用光学素子を用いた超高速多次元大容量化ホログラフィックデータストレージを開発する.
著者
坂部 知平 坂部 貴和子 田之倉 優 江橋 節郎 三井 幸雄 山根 隆 大沢 文夫 京極 好正 芦田 玉一
出版者
(財)国際科学振興財団
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

本重点領域ではこれまで4年間放射光を利用して蛋白質結晶構造のダイナミックスの研究を、蛋白質が関与する反応及び調節などの機構を3次元構造を基礎にして理解するために必要な研究を勢力的に進めてきた。本年度の目的はこれまでの研究成果報告を行い評価することと、これまでの成果をまとめて報告書を出版することであった。この目的を達成するため、平成5年度〜平成8年度研究生果報告会を東京大学山上会館て7月16日から18日まで開催した。会議では実行班の計画研究代表者、分担者、公募研究代表者全員が成果を報告を行い、総括班の評価委員が座長を受け持った。出席者は142名と盛況で盛んな議論が展開された。そしてこの時点で研究グループが解散するのは大変残念であるとの声が多くの参加者から出た。これまでのすべての報告をもとに作られた小冊子が10月16日に文部省で行われた最終ヒアリングで提出された。ヒアリングの席でこのような研究をさらに広範な分野に広げることは出来ないかとの質問が出された。また、会議に先だってアブストラクト等を収録したNewsLetter5-1(108頁)を発行した。各研究者の会議報告うは4年間の研究成果報告書(630頁)に収録された。総括班会議は2回行った。初回は成果報告会中の7月17日、2回目は平成10年1月24日であった。会議の中心議題はこれまで盛り上げてきた学際的な研究態勢を今後どのようにして維持し、研究の活性を維持し、さらに広い領域に発展させるかということであった。最終的には今後発展が期待される時間分割ラウエ法利用研究において最高の成果を上げられた京大化研の小田順一教授が世話役になり広範な領域の研究者が参加した『動的構造研究会』を母体にして特定Aの申請がなされた。以前から懸案になっていた英文のモノグラフ発行については次期特定が認められた場合その成果も交えて出版することが認められた。
著者
遠藤 優
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

ホログラフィと画像処理を組み合わせた計測技術(DH: Digital Holography)では,画像処理が複雑化・多様化し,その開発に要するコストの増大が問題となっている.本研究では,DHシステムにおける画像処理を最適化問題として統一的に扱う手法を提案し,スケーラブルかつ高性能なホログラム画像処理フレームワークの構築を目指す.また開発したフレームワークを様々なDHシステムに応用し,その有用性を実証する.
著者
水谷 康弘 高谷 裕浩
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

半導体検査工程においてサブナノオーダの欠陥を光学的に検出する手法が求められている.一般的に,光学的な応答強度と対象物の大きさは相関があるため,欠陥が小さくなるほど強度が弱くなり検出が困難になる.そこで,本研究では,光学的に非常に弱い応答をする欠陥からの散乱光をイメージングするために,光相関イメージングを適用することを試みた.ここでは,フォトンカウンティングと組み合わせることで数フォトンレベルでのイメージングを可能した方法と,ディープラーニングと組み合わせることにより検出速度を高速化させた手法とを提案し実証した.
著者
小松 義典 足立 伸樹 辻 浩彰 酒井 悠介
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

全国に4万店を超えるコンビニエンスストアが分布し, 多くの店舗が店内に設置されたトイレを24時間開放している。こうしたトイレの公共的利用が進んでいる現状に対して, トイレの施設計画や日常の維持管理計画は個々の店舗に委ねられている。本研究では, これらの計画を支援することを目的として利用実態の調査を行った。調査の結果, 一日の利用人数, 一時間の最大利用人数, 来店者の属性とトイレ利用率の関係等を明らかにした。
著者
長嶋 比呂志 梅山 一大
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は糖尿病およびその合併症研究に適した病態モデルブタを開発することである。我々は若年発症成人型糖尿病3型の原因遺伝子である変異型ヒトHNF-1αP291fsinsC遺伝子を導入した遺伝子組換え(Tg)ブタを樹立した。このTgブタは恒常的な高血糖(>200 mg/dl)を維持し、経口糖負荷試験でも糖尿病の特徴を示した。病理組織学的には膵臓ランゲルハンス島の形成不全、ヒト糖尿病性腎症で確認される結節性病変、糖尿病性網膜症で確認される網膜出血と綿花状白斑が確認された。これらの結果から、このTgブタは有望な糖尿病およびその合併症モデルになると考えられる。
著者
水原 啓暁 佐藤 直行
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本提案では,ヒトとヒトのコミュニケーションは、コミュニケーションを行う二者の脳の神経活動の振動(神経リズム)がシンクロすることによって実現される,という仮説を検証する.この目的のために,コミュニケーション課題を遂行中の被験者からの脳波計測を実施するとともに,神経リズムのシンクロを非侵襲的に操作することで,コミュニケーションの量的および質的変化が起こるかを調べる.本研究提案の成果は,円滑なコミュニケーションを実現するための技術開発につながる.令和元年においては,以下の2つの研究項目のうち、「コミュニケーション時の脳波と音声のシンクロ」について重点的に研究を遂行するとともに、「非侵襲脳刺激による神経リズム協調の操作」についても、その非侵襲脳刺激の方法について検討した.(1) コミュニケーション時の脳波と音声のシンクロ(2) 非侵襲脳刺激による神経リズム協調の操作「コミュニケーション時の脳波と音声のシンクロ」については,ナレーションを聴取中の20名の実験参加者を対象とした脳波計測実験を完了した.この実験では,短編小説のナレーションを聴取後に,どのような内容であったかを自由想起により被験者に回答してもらう課題である.自由想起した内容とオリジナルの小説文章との意味的な一致度を定量的に評価するために,自然言語処理技術を用いてそれぞれの文章を意味ベクトルに分解する.この意味ベクトルの一致度合いに基づき,被験者がどの程度ナレーション文章の聴取に成功していたかの成績評価を行う方法を開発した.特に今年度においては,自然言語処理技術による評価性能が最大となるパラメータ探索を実施した.また,「非侵襲脳刺激による神経リズム協調の操作」については,現在,経頭蓋電気刺激の利用可能性について検討を開始したところである.
著者
若狭 雅信
出版者
埼玉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

磁気共鳴(磁場+マイクロ波)を用いた同位体濃縮を実現するためには,選択的スピン緩和と反応ダイナミクスの制御が必要不可欠である。本研究では,ミセル中での励起三重項ベンゾフェノンの反応などを取りあげ,生成物収量に対する磁場効果を調べた。生成物の収量に大きな(21%増加)磁場効果を観測した。そこで,共鳴パルスマイクロ波を照射して,選択的同位体濃縮に挑戦した。エレクトロスプレーイオン化飛行時間質量分析計(ESI-TOF-MS)を用いて,生成物中の同位体比測定を行なったところ,炭素-13の同位体濃縮が確認できた。しかし,観測された同位体濃縮は小さく,その原因として緩和機構が考えられた。
著者
定兼 邦彦 稲葉 真理 今井 浩 徳山 豪
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

ゲノムデータベースからの知識発見のためのアルゴリズムとデータ構造に関する研究を行った.まず,ゲノム配列データベースからの高速パタン検索のアルゴリズムとデータ構造を開発した.索引としては既存の圧縮接尾辞配列を用いたが,新しいアルゴリズムにより従来の30倍の速度での検索が可能になった.次に,2つの長いゲノム配列のアラインメントを計算するための手法である,MUM(Maximal Unique Match)を列挙する省スペースなアルゴリズムを開発した.配列の長さをnとすると,既存手法ではO(n log n)ビットのスペースが必要であったが,本研究ではこれをO(n)ビットに圧縮した.これにより,ヒトの全DNA配列2つのMUMの計算がメモリ4GBのPC1台を用いて約6時間で計算できた.また,ヒトとマウスの間の共通部分については約24時間で計算できた.データベースからの知識発見のために,データベース中の複数の属性間の最適相関ルールを求める高速アルゴリズムを開発した.最適とは,支持率を固定した場合の最大確信度ルールまたは確信度を固定したときの最大支持率ルールを表す.従来手法では2値属性のみしか効率良く扱えなかったが,本研究の手法では数値属性に対して効率良く動作する.また,数値属性間の最適相関ルールを拡張し,様々な確信度に対する最適領域をピラミッド型の図形で表現する方法を提案し,その効率の良い計算法を提案した.これを最適ピラミッドによる相関ルール表現と呼ぶ.これを用いることでデータベースから抽出した知識を簡潔に表現することができ,過学習の回避もできる.また,ピラミッドを用いてデータの可視化を行うこともできる.
著者
神原 正明
出版者
佐賀大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

本年度は主に具体的なデ-タを収集するため東京及び関西方面に調査に出かけた。作家の死因についてデ-タを整理するとともに、彼らの生活態度、及び作風に「結核」や「ガン」の影響がどういうかたちで現われるかに注目した。何か一貫性があるものと考えて結果を期待したが、作風の展開を決定するには様々な要因が複雑に重なりあっており、死に対する恐怖のみが、大きくクロ-ズアップされるとは限らず、作家の個性によって、思ったより多様な現われ方をするようだ。ことに現代は「死」に遭遇する様々な機会があり、「ガン」だけを特定するわけにはゆかず、多かれ少なかれ死に対する恐れは、日常生活の中で埋没しており、時折何らかの体験が引きがねになって顔を出す。中には常に死にこだわり続ける作家もいるが、それはむしろ特例といってよい。こうした現代の美術家についての個別的なデ-タ集めとあわせて、主に国会図書館や東京大学、京都大学など大学附属図書館で、時代そのものが、あるいは集団が死に向かう態度について研究した欧米の文献を調査した。その場合、美術作品をデ-タとして利用しているものも多く、ことに心理的に緊迫した時代に秀作が頻出する点は興味深い。そうした中で、中世末期ことに西暦1500年を前後した時期に「最後の審判」の主題とともに、多くの名作が生まれており、そこでは死に対する恐れが下敷きにされている。しかし重要なのは、実際の死よりも死に対する恐れの方が上まわったという点であり、そこに芸術作品の必要性が準備されたといえるようだ。様々な怪物が画面に現われるのもその時である。またそうした恐怖を笑いとばそうとした「阿呆船」というような諷刺的テ-マの出現も見のがせない。来年度はさらに「流行病」「地獄」「終末思想」といった死の恐れを喚起するこの時代の文脈を調査し、再度現代へと投げ返してみる計画である。
著者
上間 陽子
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本調査研究は、沖縄県において、10代で子どもを出産した女性に対して、その選択に至った理由や背景を、インタビューによって聞き取ることを企図してなされた調査である。聞き取りにおいては、彼女たちの学校体験、ピアグループの有無・形成過程、定位家族、生殖家族の状況、本人の自己アイデンティティの形態について聞き取りをすすめるものである。初年度である一昨年の実施においては、10代の女性と、20代の女性では、世代的な違いがみられており、それはコミュニティ形成の仕方と、それを裏付けるように学校体験の差異というものが少なからず影響を与えているように思われた。初年度は49名の方から聞き取りを実施することができたが、二年目を迎える昨年度はあらたに16名の方から聞き取りをすすめ、現時点で、聞き取りデータ数は65名となっており調査の進行としてはまずまずだと思う。今年度までの65名のデータから明らかになったのは、出産に至るまでと出産後の状況の厳しさに、原母との関係とピアグループとの関係があるということである。また、出産によって原母との関係が変容しているケースがあり、その点に、彼女たちが出産を積極的に進めたい多くの理由が集中している。またピアグループの形成が学校・地元規定的なのか否かが、出産後の状態にかなり影響をあたえている、ということである。今年獲得予定のデータ獲得数は15名になるが、80のデータをベースにして整理をすすめたい。今年度のデータでは、支援を受けている女性が幾人か追加されているが、支援系の暴力も告発されている。その点について、どうしてそうした暴力がおこるのかについても、一定のデータを蓄積することができた。なお、こうしたデータの性質上、法曹界並びに医療従事者との連携も増えており、それゆえ多忙を極めることになったが、最終年度においても、こうした連携を進めながら、データの獲得にあたりたい。
著者
村中 厚哉
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

円二色性(CD)と磁気円二色性(MCD)強度が共に強い有機分子を開発するために、卍形の分子構造を持つキラルなフタロシアニン系有機色素を新規に合成し、その光物理特性について調べました。このような分子は、新しい磁気光学効果である磁気キラル二色性(MChD)が観測されることが期待されています。卍形異性体が得られた化合物に関しては、光学分割を行い、CD・MCDスペクトルを測定し、量子化学計算を用いて絶対配置を帰属しました。
著者
海老原 淳 NITTA JOEL
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2016-11-07

本年度の研究では、194のシングルコピー遺伝子を次世代シーケンサーMiSeqを用いて46サンプルの塩基配列を決定した。シーケンスキャプチャーの効率(全リードの中に目的の遺伝子がどれくらい含まれているか)は、標本からのサンプルでは4-8%、標本ではない最近のサンプルでは10-14%となって、過去に報告されたシダ植物を扱った研究(Wolf et al. 2018 Applications in Plant Sciences 6)のおける効率(1-2%)を大幅に上回った。本手法の導入によって、今まで系統解析に含められていなかった重要な種の標本からDNA解析が可能になり、それらの系統樹での位置が初めて明らかになった。たとえば、2種のみから成るとされていたデスモフレビウム科のDesmophlebium longisorum (Baker) Mynssen, A. Vasco, Sylvestre, R.C. Moran & Rouhanは、本研究の結果では Diplazium(ノコギリシダ属)に所属することが明らかになったことや、東南アジアに分布するDiplazium flavoviride Alstonがアメリカ大陸の東部に分布する Homalosorus pycnocarpus Smallに極めて近縁であるという新知見が得られた。また、ヒメシダ科ハシゴシダ近縁種群の研究においては、標本からのDNA解析に成功したことによって、日本産個体とは別系統に属する中国・韓国産種から成るクレードが発見された。さらに、フィリピンに分布するParathelypteris grammitoides (Christ) Chingがハシゴシダ近縁種群に含まれ、その分布の南限になっていることが明らかになった。
著者
三宅 なほみ 三宅 芳雄 小笠原 秀美 土屋 孝文 白水 始
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、人が新しい分野に挑戦し数年という長い時間をかけて、徐々に専門性を身につけるような積極的な知識構築の過程を、認知科学を対象に実践的に明らかにすることを目的としている。18年度は最終年度であったため、3年間で整備してきた「2年間実施用カリキュラム」を一旦完成させ、報告書にまとめる準備をした。大学で2年間に亙るカリキュラムを展開できる環境は、現実には少ないため、本研究の成果を整理して、1年で同様の学習効果を狙う短縮版カリキュラムについても検討した。以下の3点について成果が上がった。(1)17年度に行った体験型の協調作業(認知研究で扱う課題について、実際納得のいくまで体験し、その過程を話し合うなど協調的に振り返る作業)の課題の検討を継続し、振り返りから研究資料の内容理解へとつながりのある授業展開を試みた。人間にとって「自然にうまく出来る」認知過程を振り返り、協調的に吟味するための具体的なカリキュラム・セットをまとめるための材料が揃いつつあり、これを報告書にまとめる。(2)2年春期から秋期に行う、認知科学の基礎的な考え方を総括的に理解するためのジグソー方式について、素材と、具体的な活動方式について具体的なカリキュラム・セットをまとめるための材料が揃いつつあり、これを報告書にまとめる。(3)上記の体験型協調作業の一部と基礎文献の協調的な理解のためのカリキュラム・セットの一部を組み合わせ、半期(1セメスタ15コマ程度)で実施できるパッケージを作成し、集中講義ならびに他校でのワークショップの際に実際に実施して、他機関への転用可能性を検討した。最終報告書には、これまで発表してきた研究成果に加えて、上記のカリキュラム・セットをまとめ、これらの実施成果を踏まえて、学習者の長期に亙る知識統合を目指した学習理論について報告する。
著者
中田 友明 菊山 榮 豊田 ふみよ 山岸 公子 横須賀 誠 蓮沼 至 中倉 敬 中西 功樹
出版者
日本獣医生命科学大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

脊椎動物の性フェロモンの繁殖制御機序を解明するために、イモリの性フェロモンであるソデフリンの受容機序について分子・細胞・組織レベル、さらに個体群間において調べた。その結果、ソデフリンは繁殖期にプロラクチンとエストロジェンの影響で増加する鋤鼻器の感覚細胞で受容され、受容体は受容細胞に発現するGタンパク質から2型鋤鼻受容体であること、2つのシグナル伝達系を経て発生した性フェロモンの感覚信号は脳の副嗅球を一次感覚中枢として処理されることを見出した。また、フェロモンの構造と活性の発現には地域差があることが明らかになり、性フェロモンによる繁殖制御機序の一端が解明できた。