著者
頼本 維樹 滝 充 藤平 敦 中野 澄
出版者
国立教育政策研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の計画は,4年にわたる研究期間のうち,最初の3年間は意識調査実施期間として,18年間にわたって国立教育政策研究所が実施してきた「いじめ追跡調査」と同様の意識調査を行い,最終年度に21年間の全体を通した比較分析を行うことである。また,地域や学校の実情を把握しておくために,3年間の意識調査実施期間中に教育委員会と学校への訪問調査を年に2回ずつ行うことである。意識調査については,国立教育政策研究所が実施してきた18年間にわたる「いじめ追跡調査」を引き継ぐ形で,年に2回ずつのいじめに関する意識調査を行う。意識調査で用いる調査票については,原則として従前と同じものを用いる。また,記名式でありながら匿名性を確保するために,記入後,回答者自身で封入できる封筒を準備する点も,従前通りである。なお,調査対象者についても,従前通りで,小学校4年生から中学校3年生までの市内全域の児童生徒を対象とした悉皆調査とする。本年度(30年度)は,一昨年度から既に確保済みの2地点目の調査地点と併せた2地点の調査を実施した。6月末には本第1回調査を実施し,8月中にデータ入力を済ませ,単純集計結果を各学校に返送した。11月末には,第2回調査を実施し,1月にはデータ入力と単純集計結果の返送を行った。また,この調査結果について,ギリシアのコンスタンチナ・カパリ,アメリカのロン・アヴィ・アストルを訪問し,意見交換を行った。
著者
滝 充 宮古 紀宏 立石 慎治
出版者
国立教育政策研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

21年間(1998~2018年)の実績と蓄積のある「いじめ追跡調査」について,これからの10年、20年の社会状況の変化に対応できるように見直しと充実を図った上で,従来のデータとの比較可能性を担保できるように配慮して3年間の追跡調査を実施し,調査票の最終版を開発する。これにより,文部科学省の「問題行動等調査」との完全な対応をとるとともに,学術的ないじめ質問紙調査の基準となる調査票と,併せて,海外のbullying researchのstandardとなる調査票(日本語版・英語版・スウェーデン語版)を完成させる。
著者
田邊 史 小宮 節郎 瀬戸口 啓夫
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

細胞はヒトiPS細胞から樹立された神経幹細胞AF22を使用した。1%O2下では20% O2下と比較してオートファジーのマーカーであるLC3-IIの発現が亢進した。またオートファジー活性剤であるLiClの投与で1% O2,20% O2ともにAF22の細胞増殖能が亢進することがWST assayで示された。さらに他のオートファジー亢進剤であるラパマイシンの投与でも同様に1% O2,20% O2ともにAF22の細胞増殖能が亢進することがWST assayで示された。低酸素で培養した際のヒトiPS細胞由来AF22の分化能を検討したが20% O2と比較して1% O2では分化能に影響がないことが示された。
著者
熊谷 一郎 村井 祐一 藤本 修平
出版者
明星大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

平成30年度は,平成29年度に行った実験準備を基に以下の項目を実施した.①翼型気泡発生装置の深喫水船舶への拡張に関する実験研究代表者の熊谷(明星大学)は,10m/sの流速が得られる海上技術安全研究所の小型高速チャネルを用い,実船の巡航速度における翼型気泡発生装置の空気導入性能および気泡生成過程を調べるための実験を行った.その結果,流速9m/sにおいて,翼の負圧による空気導入流量が約50l/minに達することが確認できた.一方で,流速が5m/sを超える場合には,翼周りにair cavityが形成され,空気導入性能が低下することも確認された.しかしながらこの問題については,翼形状の最適化によって克服できることを明らかにした.さらに本実験では,新規開発した穴あき水中翼の空気導入性能に関する実験も行い,サブミクロンオーダーの微細気泡を大量発生させることに成功した.また研究分担者の村井(北海道大学)は,昨年度に引き続き,気液二相流の数値シミュレーションを行い,水面下を運動する翼による気液界面変形に関する計算を行った.次年度,実験成果との比較検討を行う予定となっている.②微小気泡による船舶抵抗低減法に関する船体壁面の傾斜や凹凸の依存性について研究分担者の藤本(海上技術安全研究所)は,ドック入り直後の船舶の表面を型取りし,その凹凸データを取得することに成功した.得られた壁面凹凸の特徴についての解析も行った.また,その結果を基に,気泡による船舶抵抗低減効果の船体壁面の凹凸の影響を調べるための実験準備を行った.具体的には,平成31年度(2019年度)の秋に,明星大学および海上技術安全研究所の水槽を用い,実船から得られた凹凸データから作成した模擬壁面を気泡流中に設置し,その抵抗低減効果について調べるための実験装置設計を行った.
著者
工藤 隆司 木村 太 二階堂 義和 竹川 大貴 冨田 哲
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

うつ病は自殺、就労不能などの社会的損失が莫大であり、さらに3割が治療抵抗性を示すなど、非常に大きな問題となっている。近年、麻酔薬ケタミンのうつ病への効果が報告され、2019年5月よりアメリカ食品医薬品局でうつ病への使用が認可された。しかしその作用機序が不明であり、長期使用による有害事象が懸念されている。そこで、本研究ではケタミンの抗うつ作用を解明すべく、難治性うつ病患者へのケタミン投与前後のうつ病評価および作用機序に関連している可能性がある各種候補バイオマーカー測定、比較し、その結果からケタミンの抗うつ作用機序解明に迫る。
著者
藤田 隆則
出版者
京都市立芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

能の謡の楽譜には、テクストの横に「節」あるいは「胡麻点」と呼ばれる記号がつく。われわれは、その記号が、音の高さや長さを明示していると期待するが、その期待はうらぎられる。高さや長さについて有益な情報を与えるのは胡麻点ではなく、それ以外のさまざまな指示語である。にもかかわらず、胡麻点は謡の楽譜には必要不可欠である。それは胡麻点が、謡のテクストのシラブル数を明確に示してくれるからだ。シラブル数の情報は、謡のような、音数律の変化を基本とする音楽にとっては必要不可欠である。また、胡麻点のかたちは、しばしば手などで身体的になぞられる。それは、旋律をひとつの身ぶりとしてとらえるための補助道具として機能する。
著者
村井 祐一 石川 正明 田坂 裕司 熊谷 一郎 北川 石英 大石 義彦
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

2011年の大震災以来,エネルギーの効率的な生産と効果的な利用が,持続可能な社会を目指す上で早急に実現すべき人類の課題として最重要視されてきた.このうち海運分野で重責を担う革新的省エネ技術が,二相流を利用した乱流摩擦抵抗低減技術である.船舶の10%の抵抗低減が世界全体で2GW(年間CO2換算で2100メガトン)の省エネを実現する.本課題では,高レイノルズ数環境にある二相流力学的な「摂理」(多次元性,マルチスケール性,ならびに著しい非定常性・不規則性)を真正面から扱い,5%以下の僅かなボイド率で30%以上の正味抵抗低減率を「常に」得るような二相乱流のスマート制御を達成した.
著者
角森 史昭
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、岩石の一軸圧縮に伴うガス放出の過程を調べた。岩石破壊の直前に大量にガスが放出されることから、地震発生前のガス濃度増加にかなり関与していることが示唆される。地球化学的地震予知研究では、地下水に溶けているガスやイオンの濃度の時間変化が時間に応答するという観測結果に基づいて、そのメカニズムモデルの構築や的確なシグナル観測の技術開発を行ってきている。そこで本研究では、メカニズムモデル構築のための基礎データを得ることを目標とした。使用した試料は、稲田花崗岩でφ50、L100の円柱である。この形状の花崗岩の場合およそ25tの荷重、約2mmの軸方向の変形の後破壊に至る。試料は真空容器内に入れ、4.2kg/sの荷重速度で圧縮した。このときの荷重はロードセルを使用して同時にモニターした。また同時に、破壊に至るまでの亀裂生成率はアコースティックエミッションでモニターした。アコースティックエミッションセンサーは真空容器内で岩石に貼り付けられている。亀裂生成に伴って放出されるガスを精密に分析するために、英国HIDEN社の四重極質量分析計HAL201を使用した。測定をした質量数は、時間分解能を上げるために2,4,5,16,18,28,32,36,40,44とした。これらの質量数をスキャンするのに要した時間は10秒であった。アコースティックエミッションの頻度は、破壊に至る時間の80%程度の時間から指数関数的に増加した。測定されるアコースティックエミッションのシグナルの強さとガスの放出パターンに相関が確実に見られるのは指数関数的な増加が始まってからと判断された。放出されるガスの組成には系統性があるとは言い難く、指標とできるガス種についてはさらに詳細な実験が必要である。一方、当初目標としていた亀裂生成の三次元可視化は、使用したシグナル解析装置の不備により実現できなかったが、解析装置の改良を行うことで可能になると考えられ、ガス発生を引き起こすアコースティックエミッションを特定が可能になることが期待される。
著者
井口 洋夫 鈴木 修吾 中原 祐典 市村 憲司 薬師 久弥 緒方 啓典
出版者
岡崎国立共同研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

平成9年度においては、水素を含む3成分系有機超伝導体(Na-H-C_<60>)の試料合成において、超伝導を示す試料と超伝導を示さない試料ができてしまうが、超伝導を示さない試料を超伝導試料に変換する方法を確立した。また、超伝導相及び非超伝導相の構造をリートベルト解析により明らかにした。さらに、Na-H-C_<60>が水素ガス、重水素ガス、ヘリウムガスなどを吸蔵することを見出し、それを特許として出願した。平成10年度においては、超伝導相に対してリートベルト解析から得られた原子座標を使って電子状態の計算を行い、水素は単なるスぺーサーではなくその原子上にも伝導電子が存在し、系全体の電子状態(特に、超伝導性)に関与していることを明らかにした。さらに、この3成分系の範囲を広げて、K-H-C_<60>及びNa-NH_2-C_<60>の有機超伝導体を作成した。(KH)_3C_<60>はK_3C_<60>よりも大きな格子定数をもち、昇温脱離、^1H NMRの実験から水素が格子の中に含まれていることを確認した。さらに興味ある結果として、(NaH)_<4-x>(KH)_xC_<60>(x=0.1,0.5,1,2 and 3)も超伝導を示す上、きわめて安定な超伝導体を作ることを見い出した。これによって、水素を含む3成分系有機超伝導体を大量に作ることが可能になり、水素の存在及び挙動の解析するための中性子回折の実験の準備が整い、今後の本研究の発展に大きな進展をみることができると判断している。これらの結果は水素還元によって異常な伝導性を示す嫌気性電子伝導物質シトクロムc_3(分子量13,955)の電導機構の解明に役立つと判断し、その研究を続行している。
著者
野依 良治 斎藤 進 伊丹 健一郎 大熊 毅
出版者
名古屋大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2002

光学活性ジホスフィンと1,2-ジアミンをともに配位子とする一連の塩化ルテニウム(II)錯体は,2-プロパノール中,塩基の存在下,様々な単純ケトン類の不斉水素化反応において極めて高い活性と立体選択性を示す。平成18年度は、RuCl_2(diphosphine)(pica)やRuH(h^1-BH_4)(diphosphine)(pica)がt-アルキルケトン類の不斉水素化に有効であることを発見した(pica=α-picolylamine)。これまでかさ高いケトン類の不斉還元におけるアルコール生成物の鏡像体過剰率は不十分であったが、この問題を解決する新しい手法を提供できたといえる。さらに、η^6-arene/N-tosylethelenediamine-Ru錯体が、水素移動型還元のみならず水素化反応、にも有効な触媒前駆体であることを明らかにした。この手法により、非塩基性と酸性、いずれの条件下においても、ケトン類の高効率かっ高選択的な不斉水素化が可能となった。得られた結果は、基質適用範囲を大幅に拡大するとともに、ケトン基質の水素化遷移状態における金属-配位子二官能性機構を改めて支持した。核酸や糖医薬,および液晶材料等の合成において有用な原料となり得るβ-ヒドロキシニトロアルカン化合物やβ-アミノニトロアルカン化合物、およびβ-ヒドロキシカルボニル化合物を,金属を含有しない環境調和型触媒存在下効率よく合成することにも成功した。特に、分子構造が精密に制御された酸あるいは塩基を意味する「形ある酸」および「形ある塩基」触媒を開発した。これら分子触媒を用いることで、水溶液中での高活性・高選択的化学変換に新局面をもたらした。さらに、独自に設計・開発したロジウム錯体が、芳香環やヘテロ芳香環の炭素-水素結合を直接アリール化する優れた触媒となることも見出した。本反応はチオフェン、ビチオフェン、フラン、ピロール、インドールなどのヘテロ芳香族化合物のみならず、ベンゼン誘導体でも進行することが明らかとなった。反応機構をより詳細に理論的に解明し、今後の触媒設計指針に重要な知見を提供した。
著者
藤嶋 昭 LATTHE Sanjay LATTHE Sanjay
出版者
東京理科大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

蓮の葉表面のマイクロ/ナノ構造や化学組成を模倣し,高い水滴接触角と低いロールオフ角を示す優れたセルフクリーニング超撥水性コーティング膜を開発した.半透明で耐久性のあるセルフクリーニングシリカ-PMMAナノ複合材料を用いて,ガラス上に超撥水性コーティングを行った. PMMA濃度が2%で浸漬時間を30分でコーティングしたとき,最も高い水滴接触角を示した.浸漬時間が1分のコーティング膜では,ガラス基板上のコーティングが薄く,超撥水性を示すには不十分であった.浸漬時間が15分になると,コーティング膜は表面上に多孔質なドメイン構造を形成し,基板表面を覆うように成長し始めた.このドメイン構造は空気を閉じ込めることができず簡単に水で置き換えられ,そのため水滴接触角は150°以下となりWenzel状態となってしまう.一方,浸漬時間が30分以上になると,コーティング膜は多孔質構造体の連結構造をとり,マイクロメートルスケールで空隙を有していた.また,PMMA濃度については,4 %や6 %と濃くすることで水滴接触角は低下した.これは,シリカ粒子で構成された凹凸構造が軟質ポリマーの増加によって減少したと考えている.条件を最適化したPMMA濃度が2 %で浸漬時間30分でコーティングした膜は,優れた超撥水性と超親油性を示した.スクラッチ試験機を用いて機械的強度も調べた.PMMA高分子を含まないシリカコーティングでは,機械的安定性は低く,わずか1.1 mNの荷重をかけただけでも簡単に膜が剥がれた.一方,PMMA濃度を2%でコーティングした膜はおよそ2倍の2.8 mNの荷重まで耐えることができた.また,シリカ中のPMMA濃度は機械的特性の影響を及ぼすだけではなく,光学特性にも大きく関わり,PMMA濃度が高くなると光透過性が向上した.総じて,シリカなど無機膜に含まれるポリマー添加量が少量であれば,複合膜の特性,特に疎水性,機械的耐久性及び光学的透明性は向上することがわかった.
著者
藤嶋 昭 寺島 千晶 鈴木 智順 鈴木 孝宗 安達 隆尋 小笠原 麻衣 加藤 華月
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

日光の社寺等の文化財に用いられている漆を保護するための光触媒コーティング技術の開発を行った。紫外線による劣化を防ぎつつ,防カビ効果のある保護膜として,紫外線吸収剤を含んだ積層構造の光触媒膜をコーティングし,紫外線劣化による寿命を未処理の漆に比べ18倍向上させることに成功した。また,漆等の文化財および日光周辺に発生するカビの特定を行い,文化財由来株はPenicillium属とCladosporium属に近縁な一般的な建築物に発生する真菌であることを真菌叢の網羅的解析から明らかにした。
著者
豊田 紳
出版者
早稲田大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

冷戦期の非民主主義体制の主流は一党独裁体制であったが、冷戦後の世界では、政府=与党に選挙で勝利することが極めて困難であるにもかかわらず、公式制度の上では野党が許容され、与野党間で定期的に競争選挙が行われる選挙権威主義体制が独裁体制の下位類型として主流となった。しかし、既存研究は一党独裁体制と選挙権威主義体制とを理論的に区別しておらず、従って選挙権威主義体制に時に存在する「組織化された野党」を分析できないという問題があった。本研究は、一党独裁体制と選挙権威主義体制を区別した上で、選挙権威主義体制にのみ存在する組織化された野党の意義を理論化した。
著者
渡邉 貴昭
出版者
特定非営利活動法人喜界島サンゴ礁科学研究所
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

西アジア地域は、人類史の中でも早くから文明が発展し、交易の中心として文化・経済の重要な地域であり続けていた。しかし、近年の中東地域の社会情勢は不安定である。近年の中東地域の不安定な社会情勢には、干ばつと砂嵐の多発といった気候変動の寄与が指摘されている。過去に発生した気候変動の影響を検証するためには連続した観測記録が必要となる。そこで、過去の干ばつと砂嵐の頻度と強さをペルシャ湾産の造礁サンゴを用いた代替指標で復元することにより、観測記録の不足を補い、近年の西アジアの気候変動を解明する。復元記録をもとに気候変動が中東社会に与えてきた影響を解明する
著者
笹山 啓
出版者
東京外国語大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25

2015年度はまず、7月4日東京外国語大学において開催されたスラヴ人文学会で、「60年代ソ連の地下文化と現代ロシアの『新しい言葉』」と題した発表を行った。これはソ連の神秘主義・実存主義的な傾向を持つ地下文化と現代ロシアにおける「ネオ・ユーラシア主義」のようなあらたなナショナリズム的イデオロギーの関係を扱うものであった。8月には、幕張メッセおよび神田外国語大学にて3~8日にかけて開催された国際中欧・東欧研究協議会(ICCEES)第9回世界大会に参加し、7日のパネルにてPelevin and ‘Counter-Culture’ in the Soviet Union(内容ロシア語)と題した発表を行った。これは従来注目されてこなかった、現代ロシアのポストモダン作家ヴィクトル・ペレーヴィンと、ソ連時代の非公式文化、とりわけ作家ユーリー・マムレーエフのインド哲学を下敷きにした思想との関係を論じたものである。この発表をまとめたプロシーディング集が東京外国語大学ロシア文学研究室より今年に入り発行され、そこでПелевин и 'контркультура' в Советском Союзеと題名をロシア語に改め、引用・註などの手直しをくわえた論考を発表した。11月8日、埼玉大学で開催された日本ロシア文学会全国大会にて「ペレーヴィンはなにから目覚めるのか」と題する発表を行った。これはペレーヴィンの初期作品に頻出する「夢」というモチーフを手がかりに、現在までペレーヴィンが一貫して描き続けている現実の虚構性というテーマの政治性を明らかにすることを試みた。2月には北海道大学・スラヴ・ユーラシア研究センターにて研究会での発表と資料収集を行った。
著者
森田 康彦
出版者
鹿児島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

前年作成した装置は従来のX線CTの検出器を輝尽性蛍光体イメ-ジングプレ-トに置き換えたものであったが今年はさらにイメ-ジングプレ-トを2次元X線検出器として用いた小型実験用X線断層撮影装置を試作し、画像再構成をおこなった。この装置では1ピクセル1mmx1mmで128x128ピクセルでスライス厚さ1mmの連続した画像5スライスを1回のスキャンで得ることができた。これは1ボクセル1mmx1mmx1mm128x128x5ボクセルの画像を1スキャンで得られるということもできよう。また装置の大型化により人乾燥下顎骨の画像再構成が可能となった。特にわずか幅5mmではあるが2次元投影デ-タ収集が可能になったため"下顎骨に沿った投影デ-タ"と仮に呼ぶ軌道により得られた2次元投影デ-タから5枚の連続した横断画像を1回のスキャンで得ることが可能になった。この画像は現在のX線CTにより同一下顎骨を撮像し得られた画像にくらべればいまだ劣るものであるが、1回のスキャンで5枚のデ-タが得られたことは重要な成果であると考えられる。以上のような成果については日本歯科放射線学会総会にてすでに口演し、またコンピュ-タシミレ-ションについては歯科放射線学会誌上に発表した。さらに詳しい内容については近く投稿の予定である。
著者
吉尾 寛 堀 美菜 松浦 章
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

①代表者吉尾寛が、昨年度研究協力者公文豪氏(高知近代史研究会会長)との調査、又土佐清水郷土史研究会の支援を得て見出すにいたった、当該の漁民の出身地就中高知県土佐清水市(松尾等)ならびに同黒潮町の複数の当事者・遺族に対して、2018年6月(2度)、7月、2019年1月に聞き取り調査を行った。その中で、南方澳出生を確認できる戸籍謄本など本テーマに直結する資料(PDF)を把握するとともに、当地で生まれ現在も当時の事情を具体的に語っていただける方(1名)に辿り着いた。そこで得た情報は、昨年訪問した南方澳郷土史家から聞いた内容と符号するものであり(沖縄漁民の雇用等)、加えて、居住地(一戸建てと集合住宅)の位置、移住した婦人の副業(鰹節工場での労働等)、原住民(「生蕃」)との関わり、当時南方澳に在った日本軍兵営の関係者との交流、米軍の空襲下の状況、日本への「引き揚げ」等に関する新たな事実であった。そして、それらは他の高知県関係者の話と基本的に合致するものであった。②2018年8月台湾側の研究協力者台湾海洋大学卞鳳圭教授と、宜蘭大学の教授(漁業史)の協力を得て南方澳を再訪した。前年同様当地の郷土史家(南方澳 商圏発展協会理事長兼南方澳文史工作室・三剛鉄工廠文物館長、元南興社区発展協会理事長)に対して、上記②の高知県側の調査内容を紹介した。今年度は、高知県での調査に対応する形で、南方澳の側で当時の日本人漁民に関して記憶のある方(1名)が紹介され、始めて聞き取りを行った。蘇澳鎮に在った小学校の事、鰹節工場の位置等の情報を得た。吉尾は当日から翌日にかけて南方澳のほぼ全市街地街を踏査した。③本年度は代表者、分担者、研究協力者がそれぞれ本テーマの直接的な研究成果を発表することができた。
著者
甲田 勝康 河野 比良夫 中村 晴信 奥田 豊子
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

「適応能」は生理人類学の中心的概念の一つである。ヒトはその歴史のほとんどを自然環境の中で過ごし、その環境に適応してきた。その結果、様々な生理的多型性が生まれヒトは全世界に分布した。諸民族の問にエネルギー代謝の違いがあることが報告されている。動物性タンパクや脂肪摂取の多いイヌイットは高い代謝水準によって寒さを凌ぎ、食糧事情の悪いアンデス高地の住民は代謝増大をできるだけ抑え断熱型の反応をする。しかし、このような相違が遺伝的要因により決定されるものなのか、もしくは短期的な機能馴化によるものなのかは十分には解明されていない。今回我々は、短期的な絶食および食事制限がエネルギー代謝や他の生理機能にどのような影響をおよぼすかについて検討し、ヒトの環境適応の過程にについて考察した。労働者の健康増進を目的として、軽度肥満者や軽度高脂血症者または健常者に餌や運動指導を行っている企業がある。本研究は、この企業の健康増進活動に参加したものを対象として行われた。対象者を中等度摂取エネルギー制限群および軽度摂取エネルギー制限群の二群に分け、摂取エネルギー以外の健康指導は両群とも同じとした。呼吸商は、エネルギー制限により低下し、エネルギー源が経口の炭水化物から体脂肪に移行していることが示唆された。基礎代謝量も減少し、その程度は中等度制限群において軽度制限群より大きかった。また、この基礎代謝の変化は体重の変化よりも大きかった。このことからエネルギー制限により、基礎代謝は敏速に減少することが確認された。さらに動物を用いた実験系で検証した。その結果、短期の絶食により代謝系を含む生理機能が変化することが観察された。この研究成果は、国内および国際学会で報告し、国内および国際誌上に発表した。以上のごとく、本研究は目的を達成することができた。
著者
佐藤 岳詩
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、イギリスの哲学者I.マードックの道徳哲学から着想を得て、現代において主流となっているメタ倫理学理論の批判的再検討を行うものであった。規範的であるとはどのようなことか、という問題の検討に注力する現代メタ倫理学の在り方に対し、マードックやC.ダイアモンドらの道徳理論に基づき、道徳的であるとはどのようなことか、という観点から検討を加えることで、もう一度メタ倫理学の可能性を拡張し、様々な実践的問題をメタ倫理学の観点から扱う方途を示した。