著者
茂木 快治
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究の目的は、因果推論、欠損データ分析、コピュラモデルの三者を結びつけることである。これら3つの研究分野を融合させるのは、本研究独自の取り組みである。まず、本研究は一般性の高いモデルの下で因果推論の精度向上を達成する。さらに、提案した因果推論の手法を応用し、欠損データに対するコピュラモデルの推定を可能にする。因果推論と欠損データ分析の間の理論的な類似性を利用すれば、両者を自然な形で結びつけることができる。欠損データに対するコピュラモデルの推定を実現させることにより、経済予測の精度が高まる。
著者
長谷川 光一 ペラ F マーチン カーン マイケル ウー ジュン
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ヒト多能性幹細胞(ES細胞やiPS細胞)は、特定の培養条件下で、多能性を保ったまま無限に増殖させること(自己複製)や、人体の全ての細胞種を作り出すことが可能である。このため、細胞移植治療や創薬、疾患研究への利用が期待されている。本研究では、大量の細胞が必要となるこれらの応用利用を安全に安価で行うために、自己複製のメカニズムを解明し、化合物で制御することで合成培養システムの開発を行った。その結果、3種類の化合物を用いることで、従来より安価で安定した合成培地を開発し、この培地を用いた培養システムの開発に成功した。本システムによって多能性幹細胞を利用した再生医療が加速されるものと期待される。
著者
伊藤 栄明
出版者
統計数理研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

幾何学的な対称性を群論をもちいて記述する方法はよく知られている. 3次元空間における周期的な構造について対称性を記述する230個の群があり, それらは空間群と呼ばれている. 結晶における原子の配列を解析する際に空間群はもちいられる. 結晶の対称性は230の空間群のいずれかによりあらわされる. 対称性の統計的分布について, 球の充填あるいは楕円球の充填等にもとづいたモデルが考えられる. 本研究ではこのような幾何学的構造を直接考えずに群とその表現にもとづいたモデルについて議論した. 個々の結晶の対称性が何になるかという問題は物理的, 化学的な議論にもとづいて行われるべきものであるが, 多数の結晶について対称性についての分布をしらべるには統計的モデルを考えうる. 群を値としてとる確率分布という見方が可能である. 群を値としてとる確率分布あるいは確率過程という見方でとらえることのできる現象は多くあると思われる. 群を値としてはる確率過程も興味ある今後の課題と思われるがこれについては別の機会に行いたい. 幾何学的対称性と平行移動の操作を考慮に入れずに記述する点群といわれている32個の群がある. それらは定点0を通る軸による回転及び定点0についての反転からなる有限群である. 点群は結晶の形態を記述する際にもちいられる. 点群における対称操作に平行移動の操作を組み合わせたものが空間群であり, 各空間群は32個の点群のいずれかにもとづいて構成されている. 本研究においては各空間群に対応する点群についての統計的分布を考えた. 多く存在している群は, 群として生成されやすいということと考え, 生成されやすさということについてのモデル化をこころみた. 計算機をもちいてこのモデルにより得られる結果とデータを比較した. さらにモデルについての確率論的性質をしらべた.
著者
鈴木 泰博 鈴木 理絵子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

時間変化する触覚を,五線譜を用い圧力の強弱と長さを記述する「触譜」を提案した.触譜によりマッサージ熟練者のスキルを分析し合成法を抽出し,生体応答計測により合成法の検証を行い確証を得た.触譜から振動触覚への変換法を構築し頒布することを可能とし,生体応答計測により変換法の検証を行い確証を得た.音声や時系列データの大きさを圧力とみなすことで触譜への変換を可能とし,様々なデータから触感や触質などを抽出することを可能とした.音楽から抽出した触覚によりマッサージを行う機器を構築し,効果の検証を行い肌年齢の若年化,低次脳機能障害の改善を確認した.
著者
福島 浩平 石井 直人
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

潰瘍性大腸炎の手術では、肛門を残すことに加え小腸で便を貯める袋(回腸嚢)を作製する。術後のトラブルで一番問題となるのが、小腸で作った袋に炎症(回腸嚢炎)が生じることであるが、その原因は不明であり根本的な治療もまだ見つかっていない。本研究では、当初マウスを使った病気モデルの解析を試みようとしたがうまくいかなかった。そこで、便の中の細菌を詳しく調べることにした。現在のところ回腸嚢炎の治療薬として抗菌剤が用いられているが、抗菌剤を用いると薬の効きにくい遺伝子をもつ菌の割合が増えることが明らかになった。このことが、回腸嚢炎が治りにくくなる理由の一つであると考えられる。
著者
近藤 静香
出版者
愛媛大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2016

【研究目的】発達障害児および定型発達児における, 新版K式発達検査2001(新K式)の発達指数(DQ)とWISC-Ⅳの知能指数(IQ)の関連を明らかにすることを目的とした。【研究方法】愛媛大学医学部附属病院子どものこころセンターおよび小児科, 精神科を受診した5~10歳の患者のうち, DSM-5の診断基準を用いて自閉スペクトラム症(ASD)と診断され, 本研究への参加同意が得られた9名(男児:女児=8:1, 平均月齢99.7±21.3ヶ月)をASD群とした。うち5名は注意欠如・多動症の併存があった。定型発達群は通常学級に通う児童6名(男児:女児=3:3, 平均月齢86.2±16.7ヶ月)とした。両群に新K式とWISC-Ⅳを1ヶ月以内に実施し, 各指数の比較検討を行った。比較には, 全検査領域(全領域DQと全検査FSIQ), 言語性領域(言語・社会DQと言語理解, ワーキングメモリー), 非言語性領域(認知・適応DQと知覚推理, 処理速度)の3領域を用いた。統計にはSpearmanの順位相関係数を用い, 有意水準はBonferroniの補正を行った上でp<.002とした。【研究結果】① ASD群内の新K式とWISC-Ⅳの比較ASD群内の比較では, 言語・社会DQと言語理解に強い相関を認めた。ASD群9名のうち7名が言語・社会DQ>言語理解であった。他の指標においては相関を認めなかった。② 定型発達群内の新K式とWISC-Ⅳの比較定型発達群内の比較では, いずれの指標においても相関を認めなかった。【考察】ASD児においては, 言語発達面においてのみ新K式とWISC-Ⅳに相関が認められたが, 新K式DQがWISC-ⅣIQよりも高く算出されやすいことが推測された。新K式とWISC-Ⅳは異なる背景を持つ検査であり, 縦断的な評価には慎重を期す必要があることが示唆された。今後も症例数を増やし, 更に検討する予定である。
著者
渡邉 真代
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2016-04-22

昨年度に引き続き、ジャービル・ブン・ハイヤーンに帰される『探求の書』を収めたアラビア語写本の読解に取り組み、内容理解を深める場として、『探求の書』読書会を毎月開催した。『探求の書』第1章には、質料と形相の何であるかが記されている。その中身は基本的にアリストテレスの質料形相論を踏襲しているが、「形相すなわち運動」とする独自の形相論も展開されている。この特異な形相論の源泉は、『探求の書』第6章に見出された。第6章には、アフロディシアスのアレクサンドロスの著作を引用した箇所がある。引用の出典は「アレクサンドロスの論文」とだけ記され、その原典はこれまで特定されずにいた。しかしこの度、「形相が質料の内にいかにしてあるか」を主題とする箇所で引用されている「論文」が、アレクサンドロス『問題集』第1巻第17問のアラビア語訳である可能性に行き着いた。続いて、「運動の何であるか」を論じた箇所で引用される「論文」がD8と一致することを確認し(D8とは、[Dietrich (1964)] がアレクサンドロスのアラビア語作品に付した整理番号で8番目の作品を指す)、さらにD8が『問題集』第1巻第21問(=1.21)のアラビア語訳であると判断するに至った。ところが、1.21のアラビア語訳としては、既に別の作品D2が認知されている。D8とD2は異なる作品として数えられているものの、訳語の違いが見かけ上の差異をもたらしているだけであり、両者は同じ原典を持つ作品であると理解できる。特にD8では、1.21の内容理解において決定的な意味を持つ一文が誤訳されており、それが本来1.21には見出されない「形相すなわち運動」という思想を、D8の内に生み出す契機となっていた。以上の内容を口頭発表にて報告し、また、関連するアラビア語写本資料を求め、3月にはイランのテヘラン大学図書館、議会図書館にて写本データの収集を行った。
著者
伊藤 芳明
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は地域食材の糖代謝調節機能に及ぼす健康機能性を明らかにすることを目的として行なった。その結果、本わさび根茎に含まれるisothiocyanate 類の一つに糖尿病モデル動物で血糖上昇緩和効果があることを新規に見いだした。またヤマブドウは岩手県など冷涼な地域で栽培されるが、ジュースなどの加工時に生じる未利用資源である搾り粕や果皮などに存在するオレアノール酸に3T3-L1 脂肪細胞の分化抑制や蓄積脂質の分解効果のあることを明らかにし、糖尿病の背景要因となる肥満の抑制効果が期待できる可能性を見いだした。
著者
谷亀 高広
出版者
高森町蘭植物園
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

研究目的:本申請では、移植、栽培が困難な野生ランであるムヨウラン属植物を対象とし、(1)日本国内に自生するムヨウラン属植物全12種の菌根菌の多様性を明らかにすることでムヨウラン属植物が、どのような菌根菌と共生し、生育しているのかを明らかにし、(2)比較的個体数の多いムヨウランについて、菌根菌の分離培養および外生菌根形成試験を行い、樹木、菌根菌の共生系が確立させ、(3)そこへムヨウランの種子を播種し、種子発芽から開花に至るまで栽培することで、ムヨウラン属植物の増殖技術確立のための基礎的知見の集積を行うことを目的とするものである。研究方法:新潟県~沖縄県に至る広範囲な地域よりムヨウラン属植物の根の一部を125株分採集した。実験室に持ち帰り、菌根菌の菌糸塊を抽出し、そこからDNAを抽出し、ITS1・ITS4のプライマーを用いrDNAのITS領域を増幅した後、シーケンスを行うことでDNAの塩基配列を決定し、菌根共生する菌種を特定した。菌根菌の分離培養には、外生菌根性菌類の培養に使用するMMN培地を使用し、根から菌糸塊を抽出し培養した。研究成果:ムヨウラン属植物はベニタケ科のチチタケ属およびベニタケ属菌に特異性を持ち生育することが明らかとなった。この菌への特異性は種によって大きく異なり、エンシュウムヨウランについては採集した4地点すべての個体よりチョウジチチタケに極めて近縁な菌種が高頻度で検出された、それに対しクロムヨウラン、ムヨウラン、ホクリクムヨウランなどの種ではベニタケ属、チチタケ属の様々な菌種が分離され、菌根菌への強い特異性はみられなかった。また、南方に分布するシラヒゲムヨウラン、アワムヨウランなどはAtheliaceaeの菌種も菌根菌となることも明らかとなった。全体の結果から、南方起源のムヨウラン属が温帯地域に適応するに従い、チチタケ属植物の特定の種と共生関係が構築されるようになったことが併せて想定された。菌根菌の分離培養は、チチタケ属菌の菌根菌が10系統分離された。しかし、ベニタケ属菌やAtheloaceaeなどの菌根菌は分離培養することができなかった。その理由として、これらの菌種は樹木に外生菌根を形成することが知られていることから、特殊な栄養要求性を有しているのがその原因と考えられる。これらの菌株を外生菌根性樹種であるコナラの実生苗の根に定着させ外生菌根を形成させる実験を行ったが、現在のところ菌根形成は確認されていない。本研究ではサンプリングと実験に多大な時間を要したので菌根定着試験を行う段階にまで至らなかった。
著者
田中 佐千恵
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

2014年4月~2019年3月に当院精神科を受診した気分障害・ストレス関連障害の休職者のうち,研究に同意の得られた患者22名(うつ病11名,双極性障害7名,その他4名,男性18名,女性4名,平均39.0歳,平均参加期間137日)がプログラムに参加した.プログラム開始時と終了時の評価尺度の比較では,認知機能を測定するBACSの言語記憶,言語流暢性,注意,社会適応度を測定するSASS-Jの興味や好奇心,職務遂行能力を測定するGATBの知的能力,言語能力,書記的知覚,空間判断力,形態知覚,運動共応,手腕の器用さ,復職準備性を測定するPRRSの基本的な生活状況,症状,職場との関係,作業能力,準備状況,健康管理,PRRSトータルで有意な改善を認めた.うつ病の重症度を測定するHAM-D, 躁症状の重症度を測定するYMRSに有意差は認められなかった.プログラム終了後に復職できたのは16名(72.7%)であり,就労継続率は1年後,2年後ともに93.7%であった.プログラム終了後では,特に作業能力や復職の準備性の改善が大きかった.長期的検討では,復職率は国内での先行研究で示された,63.6~77.2%(秋山2003; 北川2009; 平澤2011; 大木2012)と同程度であり,就労継続率は既報の継続率,1年後86.0%,2年後71.5%(五十嵐2014)と比較しても高く,作業療法を取り入れた多職種で行う地域包括型のリワークプログラムの有効性が示唆された.2018年度は地域のハローワーク,障害者就業・生活支援センターと連携し,離職者のフォローアップ体制を整えることができた.
著者
坂本 慎一 横山 栄 中島 章博 李 孝珍
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

環境音響の研究では、様々な空間において人が音を聞いたときの反応を調べる。建築音響の分野では、音の空間特性が聴感印象や快適性、作業効率など、人の心理や活動に及ぼす影響に重点が置かれるので、対象とする空間の音響特性を正確に捉えることが重要である。そのような目的で近年では高度な波動音響解析手法が開発され利用されるようになってきた。様々な音源はすべて指向性をもっており,人間もまたそうである。さらに,人の聴覚も,頭部や耳介の形状に起因する指向性を有している。本研究では,そのような音源と受聴の指向性を正確にシミュレートしながら,環境音響を忠実に再現できる,波動数値解析を援用したシステムの開発を行った。
著者
笹川 幸治
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

湿地性ゴミムシ類の保全に関する基礎研究として、各種の生態の解明に取り組んだ。これまで生活史が未知であった複数の種の飼育に成功し、特殊な産卵生態や幼虫食性を明らかにした。一部の種では、これらの生態特性を通して湿地環境に依存していることが示唆された。また、ゴミムシ類の重要な生活史形質の一つである幼虫食性について、大顎形態から推定する方法についても開発した。これらの成果は、絶滅が危惧される湿地性ゴミムシ類の保全に役立つ有用な基礎データとなりうるだろう。
著者
美根 大介
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

○研究目的:鍼灸治療においては四肢末梢部にある経穴の刺激で、疼痛の軽減だけでなく身体の柔軟性が高まることが経験される。これを利用出来れば、高齢者や運動習慣のない人、障害を持つ人々に対して、怪我の予防や運動を行ないやすい身体づくりの一助となる可能性が考えられる。本研究では、この現象を検証し客観的に測定することを目的とする。○研究方法:対象は健常成人6名(平均年齢34.2歳)とした。身体の柔軟性を評価する項目には、体幹および下肢の柔軟性評価として指床間距離と下肢伸展挙上角度を、上肢の柔軟性評価として肩関節屈曲、外旋、内旋角度を測定した。はじめに上記項目を測定し、ストレッチ効果を除外するため1時間以上の間隔を空けた後、コントロール(無刺激)ではそのまま2回目を測定、各経穴への鍼刺激では2回目測定前に30秒間の鍼刺激を行い、1回目と2回目の変化を観察した。使用した経穴は「合谷」「曲池」「足三里」「太衝」の4部位とし、それぞれの経穴ごとに1週間以上の間隔を空けて測定を行った。○研究成果:肢伸展挙上角度、肩関節屈曲、外旋、内旋角度に関しては、コントロール、各経穴刺激ともに大きな変化は認められなかった。指床間距離の前後差はコントロールにおいて平均-6.7mmの柔軟性低下傾向がみられたのに対し、各経穴刺激では「合谷」平均13.31m、「曲池」平均22.5mm、「足三里」平均22.5mm、「太衝」平均20mと柔軟性が高まる傾向がみられた。下肢伸展挙上角度および肩関節可動域に変化がみられなかったことは、対象が健常者であり元々制限が少なかったことや、これらの制限因子が主に靭帯などの伸張性の乏しい組織によることなどが考えられた。指床間距離では背筋鮮を中心とした大きな筋群の影響を受けていることから、鍼刺激による筋緊張の変化が出やすかったものと考えた。今回、部位の違いにおける特異性は見出せず、四肢への鍼刺激は一様に体幹の前屈柔軟性を高める可能性が示唆された。
著者
青山 薫 大久保 香 要 友紀子 櫨畑 敦子 濱中 洋平 宮階 真紀 宮田 良 八木 香澄
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

2005年風営法改正いらいの繁華街「クリーンアップ」(取り締まり強化)が進み、調査の要であるアウトリーチやピアエデュケーションに積極的に反応する人は、風営法届け出事業の中でも条件の良い店舗で働く人に偏っていることが明らかになった。合法性産業の二極化が進み、「クリーンでない」店舗等で働く人の脆弱性が高まったと言える。不法就労の外国人についても、外界と接触を避ける傾向が強まり脆弱性が高まっていた。各国当事者団体とWHO等一部国連機関の、性労働者の脆弱性を高める性取引犯罪化は避けるべきとの主張に照らしても、性労働者の権利と安全を守るためには、取り締まり強化を避けるべきであると本研究は結論した。
著者
川島 隆太
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

超小型近赤外分光測定装置(NIRS)を用いて、背内側前頭前野の活動の同期現象をリアルタイムでモニター可能なシステムを作成し、個体間の社会的相互関係を実社会環境下で定量計測することが本研究の目的である。グループ・ディスカッション時、リズム集団歩行時の脳活動同調を計測した結果、集団インタラクションのあり方の違いに応じた脳活動同調の変化を捉えることに成功した。個人内の脳機能同定を主とする従来研究を越えた個人間の脳活動同調の評価が、共感やコミュニケーションの質などの集団における創発的状態の指標を与える可能性を示唆している。
著者
寺島 正二郎
出版者
新潟工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

頸椎損傷者などは上肢も不自由なため,電動車椅子の操作にも不自由が伴う.そこで,「舌運動」を利用し,口腔部に設置したリモコンやジョイスティックを用いて,福祉機器の操作を行う「口腔・舌運動による総合型操作装置ItoAS」の開発を行っている.24年度は,口唇で咥えて使用する「口唇ジョイスティック」,25年度はジョイスティック型口腔内リモコン5号機を開発し,26年度は小型化を目指して6号機を製作した.システムの有効性を確認するために,6号機を用いて市販の電動車椅子で簡易コースを走行する試験を行った.当リモコンを舌で操作した所要時間は指と比較して約20%の増加に留り,本システムの有効性が示された.
著者
石田 寛 遠山 茂樹 佐藤 令一 遠山 茂樹 佐藤 令一
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

嗅覚センサを搭載し、匂い・ガスを辿って危険物の所在を突き止める犬型ロボットの開発を目指した。ナノスケールの周期構造を持つ金属薄膜に光を照射すると、化学物質の吸着に敏感に応答し、反射光強度が変化する。これを利用して小型嗅覚センサを実現した。また、くんくんと匂いを嗅ぐ犬の鼻の構造を模倣した測定装置を開発した。能動的に気流を操作し、左右の嗅覚センサの応答差を拡大することにより、匂い・ガスの発生源を容易に見つけ出すことができる。
著者
舘岡 康雄
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012

世の中の現象が空間的には拡大し、時間的には短縮したことにより、複雑で不確実な時代がやってきた。このような時代には、「させる・させられる」ことを交換する管理を中心としたマネジメントから「してもらう・してあげる」ことを交換するSHIEN(支援)を中心とするマネジメントの合理性が高まる。新たな時代に必要な能力を「してもらう能力」と提唱し、その能力の要諦を明らかにすると共に、旧来組織を新しい時代にふさわしい組織に変える研修手法を確立した。
著者
澤井 一彰
出版者
早稲田大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本科研の研究成果としては、東地中海世界の中心都市であったイスタンブルにおいて16世紀から18世紀にかけて発生した複数の自然災害の実態と、その後の復興の過程を詳細に解明したことが挙げられる。具体的には、1509年のイスタンブル大地震、1563年のイスタンブル大洪水、そして1766年のイスタンブル大地震について、研究報告を合計5回行い、それらを活字にした論文を合計4本執筆した。海外の研究機関に所蔵されている関係史料の調査も積極的に行い、イスタンブルの首相府オスマン文書館、メトロポリタン美術館、パリ国立図書館、ヴェネツィア国立文書館、ライデン大学図書館から多数の史料を収集することができた。
著者
西本 希呼
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、言語研究の立場から、無文字社会における地域社会固有の"数学的概念"を、オーストロネシア語圏を中心に現地調査を行い、記述・分析することである。現時点では、マダガスカル、インドネシア、仏領ポリネシア、イースター島が提案者の主な現地調査の対象としている。2012年8月より約5ヶ月間、米国ハワイ大学マノア校言語学科に客員研究員として滞在し、当該専門分野の研究者との議論を通じて研鑽を積んだ。昨年度の仏領ポリネシアで行った現地調査で得た資料を整理し、成果の一部を、2012年6月インドネシアで開催された国際オーストロネシア言語学会で発表した。国際オーストロネシア言語学会では、当該分野で世界最先端を行く研究者が世界各国から集結し、学術的ネットワークの構築や情報交換の面でも大変有意義であった。マダガスカル語Tandroy方言の植物利用、色彩語彙、昔のお金の数え方等をまとめ、論文としてまとめた。また、ルルツ語(仏領ポリネシア・オーストラル諸島)に関しては、数の範疇の諸相について、研究ノートをまとめた。2013年3月に京都大学にて、海外から2名の研究者を招聘し、国際研究集会(International Meeting on Austronesian Languages and Cultures : Communication Between Linguists and Ecologists)を企画し、盛況に終わった。主催者として、予稿集の作成、パンフレットの作成、当日の司会進行、口頭発表を行った。本国際研究集会の主催経験は、若手研究者として大変学ぶところの多い良い体験であった。