著者
福間 良明
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.104-115, 2017 (Released:2018-06-13)
参考文献数
13

本稿では、ポピュラー・カルチャーにおける「戦争の記憶」の「継承」と「断絶」のポリティクスを捉え返すべく、「特攻の町・知覧」が戦跡観光地として成立するプロセスについて、検討する。かつて陸軍特攻基地があった知覧は、交通アクセスの悪さにもかかわらず、特攻隊員の「思い」への感情移入を促す場として、近年ますます多くの観光客を集めている。だが、知覧は戦後の初期から「特攻の町」であったわけではない。さらに言えば、特攻体験は知覧住民の戦争体験ではない。特攻出撃したのは、全国各地から集められた陸軍パイロットであって、知覧の住民ではない。にもかかわらず、なぜそれが「知覧の記憶」として位置づけられ、多くの来訪者の感涙を誘うに至ったのか。こうした事例を考察することは、観光や映画を含む近年のポピュラー文化における「継承」のポリティクスを捉え返すことにもつながるだろう。本稿は「特攻の町・知覧」が創られていくプロセスを概観しながら、「継承」の語りが何を覆い隠してきたのかについて、検討する。そのうえで、これらの力学が戦後ポピュラー・カルチャーのいかなる変容を象徴するものなのかを考察する。
著者
田中 美加 池内 眞弓 松木 秀明 谷口 幸一 沓澤 智子 田中 克俊 兼板 佳孝
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.386-398, 2018-08-15 (Released:2018-09-14)
参考文献数
42

目的 不眠症状を訴える高齢者は多い。高齢者の不眠症状に対しては,非薬物的アプローチが優先されることが望ましい。不眠に対する認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia: CBT-I)が不眠症患者に有効であることが多くの臨床研究で示されていが,地域高齢者の睡眠の改善にも役立つかは十分に示されていない。我々は,看護職でも実施可能な簡易型CBT-Iが地域高齢者の睡眠を改善させ,睡眠薬服用者の服薬量を減らす効果があるかを調べることを目的に無作為化比較試験を行った。方法 60歳以上の地域高齢者を対象に,看護職が,集団セッション(60分)と個人セッション(30分)からなる簡易型CBT-Iを実施した。主要アウトカムは,ピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburgh Sleep Quality Index: PSQI)の得点と不眠重症度指数(Insomnia Severity Index: ISI)得点の介入前後の変化量,副次アウトカムは,介入前後の不眠症有所見者(ISI得点8点以上)の割合と,睡眠薬使用者における減薬の有無とした。フォローアップ期間は3か月間とした。結果 介入3か月後のPSQI得点は,対照群(38人)に較べ介入群(41人)で有意に改善し,介入の効果量(Cohen's d)は,0.56(95% Confidence interval [CI], 0.07 to 1.05)であった。ISI得点も,介入群で有意に改善し,介入の効果量は,0.77(95%CI, 0.27 to 1.26)であった。サブグループ解析において,不眠改善に対するNumber Needed to Treat(NNT)は2.8(95%CI, 1.5 to 17.2),睡眠薬の減薬に対するNNTは2.8(95%CI, 1.5 to 45.1)であった。結論 簡易型CBT-Iは,地域高齢者の主観的睡眠の質を改善させ,不眠症状を軽減させることが示唆された。また,簡易型CBT-Iは睡眠薬の減薬に対しても効果的な介入であることが示唆された。睡眠の問題を抱える地域高齢者は多いことから,地域保健活動における簡易型CBT-Iの方法や効果についてさらなる検討が必要と考える。
著者
魏 然 陸 一菁
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究会
雑誌
神戸松蔭女子学院大学研究紀要. 人間科学部篇 = Journal of the Faculty of Human Sciences, Kobe Shoin Women's University (JOHS) (ISSN:21863849)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.63-79, 2014-03-05

本稿は、中国語圏のジャニーズファン及びジャニーズファンによって形成されるファンコミュニティの実態と特性を明らかにするために、中国語圏最大のジャニーズファンBBS「J家闲情」におけるアンケート調査を行った。その結果、北京、上海など経済水準が高い地域在住の20代の女性というのが中国大陸のジャニーズファンの典型像だといえる。彼女たちは日本国内のファンと比べると、アイドル情報や音楽映像、関連グッズの入手が困難な環境にあるが、それでも様々なルートを通じて、大量のお金を費やしアイドルの応援活動に没入している。応援活動では、特にインターネットの使用が際立つ。また、ジャニーズファンのオンライン匿名コミュニティから、オフ会を行い、お互いに認知できる少人数の特定コミュニティに転化するケースが多く観察される。このようなコミュニティは「ファン同士の集まり」よりも、「同じ趣味をキッカケとした交友関係」であると認識したほうがより妥当だと考えられる。更に、日本のファンコミュニティのキー概念ともいえる「担当制」は中国語圏のジャニーズファンコミュニティにも存在するが、しかし決して日本ほど重要な要素ではないと考えられる。
著者
名取 良太
出版者
関西大学総合情報学部
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.71-84, 2014-08-08

小選挙区比例代表並立制導入の目的の一つは,「候補者本位」の選挙から,「政党本位」「政策本位」の選挙へと転換することであった.政党間競争を促す小選挙区制の下では,政党支持に基づく投票が中心となるため,個人単位の選挙区活動の有効性は低下する.結果として,政党本位・政策本位の選挙競争が生じるようになると考えられたためである.しかしながら,2012 年総選挙における有権者の投票行動を分析した結果,政党投票よりも候補者投票を行う有権者の比率が高かった.また,民主党支持者や,自民党と民主党による選挙戦が行われた選挙区の有権者ほど,政党投票よりも候補者投票を行う傾向があることから,民主党に対する評価の低下が候補者投票の増加をもたらせたと考えられる.すなわち,有権者が政党投票をするかどうかは,政党に対する評価が影響を及ぼすのであり,選挙制度の効果は限定的であることが示唆される.One of the aims of the electoral system reform conducted in 1994 was to increase party voting. While under the old system, multi-member districts with a single nontransferable vote promoted intra-party competition, the new system encouraged party competition. Thereafter, reformers expected that Japanese electoral politics would become party oriented.However, this study observed that Japanese voters preferred personal voting to party voting in the 2012 Lower House Election. In addition, the results of a logistic regression analysis clarified that the supporters of the Democratic Party of Japan and the constituencies of districts in which there is twoparty competition tend to conduct personal voting. Moreover, the study suggests that whether constituencies engage in personal voting is determined not by the electoral system, but constituencies’estimation of the parties.
著者
杉本 希映 遠藤 寛子 飯田 順子 青山 郁子 中井 大介
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.149-161, 2019-09-30 (Released:2019-11-14)
参考文献数
39
被引用文献数
4

本研究の目的は,“保護者による教師の信頼性認知”を測定できる尺度を作成し,その尺度と関連が予想される要因について検討することであった。目的1において,予備調査により原案34項目の尺度が作成された。その尺度を用いて,小学生と中学生の子どもを持つ保護者516名を対象に因子分析を行った。その結果,「教師の役割遂行能力」,「規律的指導」,「子どもに合わせた指導」,「子どもが示す好意」の4下位因子と1つの上位概念から構成される「保護者による教師の信頼性認知」尺度が作成された。目的2において,学校,子ども,保護者の各側面と「保護者による教師の信頼性認知」との関連を検討した。その結果,子どもにトラブルが生じたときの学校対応に対する満足度が「保護者による教師の信頼性認知」にも関連していることが明らかにされた。さらに,「保護者による教師の信頼性認知」が低く,トラブル時の学校対応満足度も低いと,教師に援助を求めることへの心配が高いことも明らかとなり,「保護者による教師の信頼性認知」は,保護者と教師の協働に関与している可能性が示唆された。
著者
石川 篤志 岸 幹也 山上 圭吾
出版者
(社)大阪生活衛生協会
雑誌
生活衛生 (ISSN:05824176)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.257-260, 2009-10-30 (Released:2009-11-10)
参考文献数
20
被引用文献数
1

To evaluate the effect of natto and soybeans on postprandial blood glucose level, a crossover study was conducted in 12 healthy male volunteers.Subjects were given a control meal (white rice), a natto meal (white rice with natto), or a soybean meal (white rice with steamed soybeans), and blood glucose level in each group was measured before and 15, 30, 45, 60, 90, and 120 minutes after intake.After both the soybean and natto meals, the blood glucose level at 60 minutes after intake was significantly lower than after the control meal. However, only the natto meal, and not the soybean meal, significantly suppressed the rise in blood glucose level at 60 minutes compared to the control meal. Furthermore, the area under the glucose curve from 0 to 120 min after the natto meal was significantly smaller than for the control meal.These results suggest that natto is useful for the control of postprandial blood glucose level.
著者
西山 保弘 工藤 義弘 矢守 とも子 中園 貴志
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.F3O1206, 2010

【目的】<BR> 本研究では温浴と冷浴の異なる温度の落差が自律神経活動や体温に与える影響を検討したので報告する。<BR>【方法】<BR> 文書同意を得た健常男性5名(平均年齢23.8±4.91歳)に温浴41&deg;Cと冷浴15&deg;Cならびにその両方を交互に行う交代浴(15&deg;C交代浴)、温浴41&deg;Cと冷浴10&deg;Cの交代浴(10&deg;C交代浴)の4つの異なる部分浴を実施した。交代浴の方法は水関らの温浴4分,冷浴1分を4回繰り返し最後は温浴4分で終わる方法に準じた。温浴のみは計20分、冷浴のみは計10分浸漬した。安静馴化時から部分浴終了後120分間の自律神経機能、舌下温度、血圧、心拍数、動脈血酸素飽和度、手足の表面皮膚温を検出した。測定間隔は安静馴化後、施行直後、以下15分毎に120分までの計7回測定した。表面皮膚温度は、日本サーモロジー学会の測定基準に準じサーモグラフィTH3100(NEC三栄株式会社製)を使用した。自律神経機能検査は、心電計機能を有するActivetracer (GMS社製 AC301)を用いて被検者の心拍変動よりスペクトル解析(MemCalc法)を行いLF成分、HF成分を5分毎に平均値で計測した。統計処理は分散分析(one way ANOVA testと多重比較法)を用いた。<BR>【説明と同意】<BR>対象には、口頭で研究の目的と内容を説明し、十分な理解を得た上で承諾を文書で得た。<BR>【結果】<BR> 副交感神経活動指標であるHF成分は、両交代浴終了90分後に有意差をみとめた(P<0.05)。両交代浴の相違は15&deg;C交代浴に著明にHF成分の低下を認めた(P<0.01)。温浴は80分後に有意差を認めた(P<0.05)。冷浴は終了後60分で変化が一定した(N.S.)。交感神経活動指標とされる各部分浴のLF/HF比は、冷浴と10&deg;C交代浴に開始時と終了以後に有意差を認めた(P<0.01)。15&deg;C交代浴は終了後60分から低下をみたが有意差は認めなかった。舌下温度は、両交代浴と温浴(P<0.01)、両交代浴と冷浴(P<0.01)、温浴と冷浴(N.S.)と両交代浴間(N.S.)となり交代浴に体温上昇を有意に認めた。表面皮膚温にこの同様の傾向をみた。最高血圧は、両交代浴と温浴(P<0.01)、両交代浴と冷浴(P<0.01)、温浴と冷浴(P<0.01)で相互に有意差を認め交代浴が高値を示した。<BR>【考察】<BR> 両交代浴と温浴ならびに冷浴の相異はイオンチャンネル(温度受容体)である。温浴は43&deg;C以下で反応するTRPA4、冷浴は18&deg;C以下で反応するTRPA1と8&deg;C以下から28&deg;Cで反応するTRPM8、両交代浴はこのすべてに活動電位が起こる。もう一つは温熱感覚と寒冷感覚の刺激の質の相違である。温水41&deg;Cの温水はHF成分を抑制して、冷水15&deg;Cと10&deg;Cは、LF/HF比を抑制させていた。温度差の相違は15&deg;C交代浴で26&deg;C、10&deg;C交代浴で31&deg;Cである。温度幅より温浴刺激はHF成分を促進し、冷刺激はLF/HF比を抑制したことが結果より示唆された。さらに両交代浴の相異は寒冷刺激の温度差と侵害性有無の違いがあり結果にも影響していた。それは、効果発現に寄与するイオンチャンネル数の相異と刺激の質により変化すると考えられる。舌下体温の上昇については、一定温の温浴や冷浴より刺激性に優れる理由であり、温度落差が自律神経を刺激しHF、LF成分に変調変化を引き起こす根本理由となる。体温上昇からは、温度落差がある両交代浴が内因性発熱物質インターロイキン1を有意に発現させたことになり免疫応答含め影響を及ぼした結果と考えられる。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>異なる温度落差が自律神経活動に及ぼす影響は、温浴はHF成分を刺激し、冷浴はLF/HF比を刺激することが示唆された。水温落差はその量と質の関係をもって生体に影響する。<BR>
著者
春田 みどり 水田 洋平 伊藤 隆安 太田 進 内山 靖
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.661-666, 2016 (Released:2016-10-27)
参考文献数
28
被引用文献数
1

〔目的〕内側型変形性膝関節症患者における身体アライメントの特徴を明らかにし,アライメントと身体機能との関連性を明らかにすることとした.〔対象と方法〕内側型変形性膝関節症患者25名と対照群とする健常高齢者20名とした.身体アライメント,関節可動域,筋力,5 m歩行時間,片脚立位時間を群間で比較した.〔結果〕内側型変形性膝関節症患者の身体アライメントは頭部前方突出,腰椎屈曲,骨盤後傾,体幹前傾,膝関節内反位で,腰椎屈曲と体幹前傾には背筋力低下との関連性がみられた.〔結語〕内側型変形性膝関節症患者でみられる体幹アライメントの変化は,体幹アライメントと身体機能との相互の関連性を示している.
著者
川島 逸郎 渡辺 恭平
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.49, pp.67-83, 2020 (Released:2020-03-31)

名古屋市博物館所蔵の「吉田翁虫譜(小塩五郎写本・四巻仕立て)」(原本は、尾張藩士で「嘗百社」の幹部でもあった吉田高憲(平九郎, 号雀巣庵, 1805–1869)の作)のうち、第一巻に含まれる「蜂(はち)譜」(二十二丁)について、現代の視点から詳細な解析および同定を行った。その結果、概して写実的に描かれてはいるものの、全形図133 個体(部分図や巣、巣材、獲物などを除く)のうち、種レベルでの同定が可能なものは33 個体30 種であった。各種の生活や習性については詳しい記述がなされている一方、その配列や呼称などには規則性はみられず、西洋での系統分類のような視点は存在していない点が窺えた。描かれた種構成からは、当時の尾張から三河地方における、平野から丘陵地にかけてのハチ相や生息環境(里山)の一端も読み取れる。
著者
熊谷 次郎
出版者
桃山学院大学総合研究所
雑誌
桃山学院大学経済経営論集 (ISSN:02869721)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.67-119, 2019-02

The purpose of this paper is to demonstrate features and significance ofRichard Cobden's liberal radicalism based on the voluminous Letters ofRichard Cobden (4 vols, eds. by Anthony Howe and Simon Morgan, OxfordUniversity Press, 2007-2015). There might be no noticeable difference inhis thought and activities between his writings, speeches and his letters.But letters, as often said, incline to disclose underlying thoughts and feelingof a person in a candidate form. In the case of Cobden, therefore,individualities must to be expressed naturally and plainly in his letters.From this point of view, this paper aims to depict his liberal radicalism inhis unreserved opinions seen in his letters.Cobden's radicalism rooted fundamentally in his unforgiving criticism toaristocracy. According to his view, ever since the Glorious Revolution, theBritish government had been monopolized by aristocracy, and their sonswho were not entitled to inherit the right of primogeniture had occupiedthe upper ranks of the army and navy. As it is their benefits to intervenein domestic policies of foreign countries and in conflicts among nationsacross the world with armed forces, armament expenditures necessarilyincreased and consequently oppressed the well-being of the people with itsburden. Then, Cobden focused his vital concern on the arms reduction inthe national finance, and provided the people with the 'peace dividend'created by the reduction in armament expenditures.From this perspective, Cobden made a frontal attack upon Palmerstonwho deployed the intervention policy and gunboat diplomacy in the East.In his letters, Cobden's remarks on Palmerston and Peel, who resolutelycarried out the abolition of the Corn Law, formed a striking contrast: theformer was an 'impostor' and the latter, 'Adam Smith wrote, Peelpracticed.'(To be continued)
著者
河田 浩 細井 昌子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

慢性の広範囲痛および慢性の限局痛と家族機能の関係における差異を検討した。慢性の限局痛患者に比べ、慢性の広範囲痛患者は「役割」と「情緒的関与」における機能が低かった。本研究で慢性の広範囲痛患者の家族機能は慢性の限局痛患者くらべより適応的でない家族機能を有していることを示した。幼少期の養育と成人後の慢性疼痛の重症度の間の関係について検討した。1)慢性疼痛のない一般住民、2)慢性疼痛のある一般住民、3)外来慢性疼痛患者、4)入院慢性疼痛患者の4つの群において両親のケアと過干渉を比較した。両親とも望ましくない養育スタイル(低ケアと過干渉)の頻度は1)群から4)群まで段階的に優位に増加した。
著者
井上 翔大 大山 恵弘
雑誌
研究報告システムソフトウェアと オペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2010-OS-113, no.4, pp.1-8, 2010-01-20

現在,Java,C#,ML のような高い生産性での安全なプログラミングを支援する現代的なプログラミング言語が様々な目的で利用されている.しかし,OS や組み込み系ソフトウェアなどの低レベルのシステムソフトウェアの分野では,未だに C 言語が広く用いられており,低い生産性や致命的なバグの原因となっている.そこで,本研究では,現代的な関数型言語 OCaml で OS を開発し,低レベルのシステムソフトウェアの記述における関数型言語の有効性を評価する.その OS は極めて小さいが,カーネル空間とユーザ空間の分離,マルチタスク,割り込み処理,初歩的な入出力デバイス管理などのいくつかの基本 OS 機構を備えている.その OS の大部分は OCaml で記述され,残りは C 言語とアセンブリ言語で記述されている.この論文では,その OS の設計と実装について述べるとともに,開発を通じて得た,関数型言語を使用することの利害得失などに関する知見を示す.
著者
田中 尚人 川崎 雅史
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.151-159, 2000-05-01 (Released:2010-06-15)
参考文献数
40

It is useful for infrastructure planning to learn the technologies of civil engineering in the past and study a process of urban development. We classify the transition of urban development along the Lake Biwa Canal that was based on the function of navigation systems, and consider the action of the infrastructure on urban development.The Lake Biwa Canal was constructed by using water from the Lake Biwa in the 19th century applying the latest technology in Meiji period. This canal has been produced a lot of amenity for about 100 years since the construction, in spite of disappearance of shipping there. It was found through our study that navigation systems was one of the most important function of the Lake Biwa Canal and this infrastructure played an important part in the urban development of Kyoto.

3 0 0 0 OA 株式年鑑

著者
大阪屋商店調査部 編
出版者
大同書院
巻号頁・発行日
vol.昭和3年度, 1935
著者
高桑 浩一
雑誌
学習院大学人文科学論集 (ISSN:09190791)
巻号頁・発行日
no.13, pp.105-127, 2004-10-31

In two papers published in l982, Taryo Obayashi(1929-2001)pointed out that some common features exist betWeen the myths aboutんnewakahiko or/Vi8ihayahi, who are regarded as heretical gods in Japanese sovereignty myths, and myths about the founders of ancient Korean dynasties like Ko8ut yo or Silla. In血is paper, reexa血ning the Obayas㎞’sstudy,1 restructured the common features of these myths as follows: 1)The heroes of these myths are connected with Heaven by ascending there after death. But, at the same time, they are connected with Earth in that their dead bodies or articles left behind are buried. 2)Their bows and arrows are the symbols of their status as Heaven-God. These articles also have a function as regalia, which is what any successor of sovereignty should own. What awakens our interest is that these features are not clearly found in the myths of H∂ηo痂’8’, who is considered as the legitimate successor of sovereignty of Japan in“KOjiki”or“Nihonshoki”. This fact shows the complex nature of the influence on Japanese myths from Korean Peninsula.