著者
玉井 颯一 五十嵐 祐
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.90.17338, (Released:2019-02-28)
参考文献数
31

Ostracism is a contradicted social action because it has been widely adopted as a legal sanction but is also considered to be excessive enforcement. In the present study, we conducted a scenario-based experiment to examine the psychological process underlying the endorsement of ostracism in school settings. We focused on three general rationales to justify the sanction: a general prevention to protect public welfare (utilitarianism); a counter to deviance from social norms (retributivism); and a type of education to rehabilitate a perpetrator (moral education). The results showed that utilitarianism was more effective in justifying ostracism than retributivism or moral education. Further, preferences towards ostracism based in utilitarianism were less susceptible to influence from others. These findings indicate people’s general preference for the protection of public welfare over the segregation of wrongdoers.
著者
田崎 勝也 申 知元
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.90.18302, (Released:2019-02-28)
参考文献数
26

This study aimed to identify how a response style (RS) affects differential item functioning (DIF) detections in cross-cultural comparison studies. RS is an individual’s systematic response tendency to survey questions. Following the representative indicators response style means and covariance structure (RIRSMACS) model introduced by Weijters et al.(2008), Tasaki and Shin (2017) developed an RS measurement model and quantified three RS types (acquiescence, extreme, and mid-point) in three nations (Japan, Korea, U.S.). Using the same data set, this study adapts their RS model to control for RS-related nuisance variances and to see if different DIF items emerge with or without the RS model. As a result of DIF analysis through the MGMACS approach, three nonuniform and five uniform DIF items were flagged on a 10-item psychological scale. By applying the RS model to DIF analysis, all the nonuniform DIF items and three uniform DIF items turned out to be non-DIF items. These results imply that RS-related nuisance variances may be a cause of DIF, and RIRSMACS can be used to control for RS.
著者
赤坂 憲雄
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.43-51, 1983-04-10

Biwa-Hoshi was an outsider who visited the communities and the very Japanese way of calling him was "Marebito". Those people drifted around the boundary area of the communities, so they were also called "the people of the boundary", and they were accepted with respect and fear by the settlers of the
著者
諸見里 恵一 譜久嶺 忠彦 土肥 直美 埴原 恒彦 西銘 章 米田 穣 石田 肇
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.115, no.1, pp.25-36, 2007
被引用文献数
5 8

17世紀から19世紀の農耕民であると考えられる,久米島近世人骨(男性56個体,女性45個体)の変形性脊椎関節症の評価を行った。変形性脊椎関節症の頻度は,男女ともに腰椎が最も高く,女性においては重度化を認めた。次に変形性脊椎関節症を認めた部位として,女性は頚椎で,男性は胸椎下部と,男女間で異なった傾向を示した。変形性脊椎関節症の部位別頻度では,椎体前縁部が後縁部に比べ顕著に高く,男性の胸腰椎では右側縁部が左側縁部より高い傾向を示した。関節突起に関しては頚椎が最も頻度が高く,胸腰椎では低い傾向を示した。また,男性は頚椎,胸椎上部の一部に,女性では第11および第12胸椎で頻度が高く性差を認めた。主成分分析の結果でも,頚椎および腰椎の変形性関節症の頻度が高く,腰椎では椎体前縁部と左右縁部に,頚椎では椎体後方と椎間関節に関節症の頻度が高い傾向を確認した。久米島近世人骨の女性は,頚椎の椎体後方に変形性関節症の頻度が男性と比較して高いことから,民俗学者らによって示唆されている,頭上運搬による体幹直立位での荷重の影響を受けたと思われる。<br>
著者
吉岡 正三 山本 久 熊谷 雅晴
出版者
一般社団法人 表面技術協会
雑誌
金属表面技術 (ISSN:00260614)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.272-276, 1970-05-01 (Released:2009-10-30)
参考文献数
5
被引用文献数
3 1

A simple and economical process for boriding metal surfaces was found. The process was only to immerse the metal in a hot salt bath containing borax and carborundum, where no special atmosphere was needed.Optimum conditions found for boriding of mild steel were to dip the steel in a bath containing 60-50wt% of borax and 40-50wt% of carborundum at 1, 000°C for 6hrs. The boride layer produced by this process was composed of Fe2B, which was 170μ in thickness, having about 1, 200 of Vickers hardness.The mild steel lying beneath the boride layer was also observed hardened. The results of chemical analysis and electron probe microanalysis showed that the hardening of the interior mild steel was attributed to the boron and carbon penetrating through the boride layer.
著者
崎田 喜美枝
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
Artes : bulletin of Takarazuka University of Art and Design : 宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.25-46, 1990-03-20

'60年代にアンドレ・クレージュ(パリ)とマリー・クワント(ロンドン)が発表したミニスカートが,世界中にセンセーションを巻きおこしました。'60年代後半から'70年代には,パンツといえばスポーツウエアやホームウエアだったアイテムが,サンローランがシティパンツを提唱し,あっという間に世界の女性に愛用され,タウンウェアはもちろんフォーマルウェアとして,なくてはならないものになりました。'70年代は,"ウーマンリブ"ということばに象徴されるように,女性が主張する時代でもありました。その流れから,'80年代前半のファッションは,男性と対等意識を表すように,パッドを入れて肩幅を強調したショルダーラインで,メンズスーツのようなテーラードなジャケットを多くのデザイナーが働く女性のために発表し,ワイシャツ,ネクタイ,パンツなどもレディス・ファッションの中で,異和感のないアイテムになりました。'86年,男女雇用均等法が施行されたこともあり,男性のエグゼクティブと同じようなスタイルが台頭し,サッチャー英前首相,クレッソン仏首相,ヒルズ米通商代表など,世界の女性政治家がテレビ,新聞をにぎわすのに代表されるように,あらゆる面で活躍する女性が増えました。'80年代半ばには,ジャンポール・ゴルチェやティエリー・ミュグレーがアンドロジナス(男女両性)ファッションを提唱し,若者たちにすぐに受け入れられましたが,ユニセックスなもの,例えばタキシード,ネクタイ,ハンティング,ビジネスバッグなどのメンズグッズを女性が,またソフトなパンツやシースルーのシャツブラウスを男性が着るなど,一部の若者だけでなく,アダルトな男性,女性にも浸透しました。エグゼクティブとして活躍する女性管理職から新しい女性が育ち,社会進出が定着し,肩ひじ張ったりするのではなく,積極的に仕事をしながらも,おしゃれを忘れない"キャリア・シック"に移行し,知的で洗練された現代女性のエレガンスが,パリ,ニューヨーク,そして日本にも共通するテーマとなりました。アライアをはじめとして,ボディコンシャスで,からだのラインを美しくみせるファッション,またニューヨーク・ファッションに代表される洗練されたコンサバティブなエグゼクティブ・ファッション。'80年末から'90年にかけ,アルマーニやフェレに代表される知的でありながら,女らしいイタリー・ファッションが台頭してきました。その中心となっているのは,19世紀からの伝統あるパリ・オートクチュールとパリ・フレタポルテだともいえます。ファッションが大きく移り変わってゆくことは衆知のことですが,これは単なるファッションの変化だけでなく,社会背景とともに女性の生き方が変り,ライフスタイルも高級志向になりました。食生活が変化し,健康のため,痩身のためのヘルシーメニューをそろえた専門レストランも登場しました。一方,余暇にスポーツをする人も多いのですが,その時間もない多忙なビジネスマンやオフィスレディたちは,会社への生き帰りに,ウォーキング-歩くことで健康不足を解消しようとしている"アーバンハイカー"がニューヨークで出現しました。ゴルバチョフ大統領のペレストロイカ,チェルノブイリ原発事故,オゾン層破壊,ベルリンの壁崩壊,EC統合,大旅行時代,湾岸戦争など,自然環境問題をはじめ,政治,経済,社会,民族文化など,世界の出来事をリアルタイムに,各国で受けとめる今日では,ファッションも世界的な観点から見ることが必要だといえます。"アース'90"と題して環境問題に関心を持つ世界のミュージシャンが,子供の未来を守るコンサートに参加するなど,「自然を愛そう」「地球を大切にしよう」という環境保護-エコロジーがクローズアップされています。その影響を受けて,'90年代はじめのファッションは,エコロジーカラーやアースカラーといった,自然のモチーフや健康であること-スポーツマインドが主役となっています。'90年春夏,'90〜'91秋冬のニューヨーク,ロンドン,マドリッド,ミラノ,パリのプレタポルテ及び,パリオートクチュール・コレクションから,時の流れの中で生活文化や女性の生き方などを,ファッションを通して考察します。
著者
上山 尚子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.422-426, 2016-08-01 (Released:2016-08-01)

京都服飾文化研究財団(KCI)は,株式会社ワコールの出捐によって1978年に設立された,西欧の服飾及び,服飾に関する文献資料を,体系的に収集・保存・研究・公開する機関であり,同時に日本人デザイナーの活躍の発信も使命としている。現在,主に17世紀から今日までの服飾資料を1万3千点,文献資料を1万6千点所蔵している。KCIの活動内容紹介と共に,KCIにおける様々な形状,時代,コンディション,素材の服飾資料について,それらの保管前の処置と,収蔵庫における保管方法の実例を紹介し,現時点及び将来的な問題点について考察する。
著者
宮野 道雄 望月 利男
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-9, 1991-05

第二次世界大戦終結前後に、わが国では鳥取地震、東南梅地震、三河地震、南海地震、福井地震とたてつづけに大地震が発生している。これらの地震はいずれも大きな被害を生じさせているが、被害の甚大さの割には詳細な調査資料を見出だすことが難しい地震が多い。その理由として、当時が社会的混乱期にあり、種々の視点からの被害調査が行えない状況にあったことや実施された調査も結果を公の報告書として発行することが困難であったことなどが考えられる。これらの地震は、全て1000人前後以上の死者を出しており、いわば古典的地震の最後のグループに属するものである。したがって、人的被害や避難などの人間行動を解明するための貴重な事例といえる。しかし、地震当時から40年以上を経過した現在、被災経験者から直接被害実態を聴取することが年々困難になっており、早急に追跡調査を実施する必要がある。以上の視点に基づき、本研究では1946年南海地震の被害追跡調査を行ない、和歌山県新宮市の延焼火災発生地区における人的被害と人間行動こついて検討を加えた。調査は同市の延焼地域に属する5つの老人クラブの会員を対象として、調査票を用いた面接形式で行った。ただし、調査実施日に調査会場へ来られなかった人には老人クラブ役員に調査票の配布を依頼し、後日郵送してもらう方法をとった。調査票は全部で30の設問から成り、回答者の当時の住宅特性・個人属性と物的・人的被害および地震の最中、直後の行動、地震後の避難行動などを尋ねている。回答総数は65票(回収率54%)であった。得られた結果を要約すればつぎのようである。すなわち、新宮市では出火点が一ヵ所であり、同時多発火災のような混乱が生じなかった。また、火災の拡大がゆるやかであったため、広域避難行動も行ないやすかったと考えられる。調査により得られた死亡原因内訳によれば、延焼地域においても焼死と断定できるものはなく、家屋倒壊による圧死が多かった。死者の属性別の死亡率をみれば、男性では高齢者において高く、女性では全年齢にわたってほぼ等しくやや高い値を示した。
著者
飯田 汲事
出版者
愛知工業大学
雑誌
愛知工業大学研究報告. B, 専門関係論文集 (ISSN:03870812)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.159-164, 1981-03-31

The earthquake and tsunami damages caused by the Keicho earthquake of 1605 are investigated from old documents collected to understand the damage locality and the occurrence characteristics of an earthquake in off Tokaido districts. The distribution of seismic intensity and tsunami inundation heights are also studied. Tokaido and Nankaido districts along the Pacific coasts were hit by the tsunami of this earthquake. Most severe inundation heights are estimated at about ten meters in Tokushima Prefecture and Hachijo Island. Two epicenters of the Keicho earthquake are assumed as longitude 137.8°E, latitude 34.0°N in Enshunada and longitude 134.9°E, latitude 33.3°N, off Kii Peninsula, respectively. It is estimated that about five thousand houses were destoryed and about several thousand peoples were drawned by the Keicho earthquake and tsunami. The magnitude of this earthquake is estimated at 8.0-8.1 for off Tokaido and 8.1-8.2 for off Nankaido, respectively.
著者
小林 美紀
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:13428403)
巻号頁・発行日
no.17, pp.199-214, 2008-09

アイヌ語では名詞を抱合した動詞形というのが見られる。先行研究では他動詞の主語抱合、他動詞の目的語抱合、自動詞の主語抱合があり、抱合される名詞の意味役割は他動詞の対象、自動詞の対象、充当接頭辞によって道具や場所も可能であり、名詞+自動詞の場合、その動詞は非対格自動詞であることがすでに指摘されている。本稿ではこれを踏まえ、動詞に名詞が抱合され結果として、名詞句を一つ取る一項動詞が形成される場合、残りの一つを埋める名詞はその意味役割が動作主である場合、対象である場合、(抱合された名詞の)所有主である場合もあり、ときには基本形の項ではない場合もあるが、いずれの場合も格表示は主格となり、主語となることを述べる。そして、一項動詞が使役接尾辞を取らずに名詞を抱合する際には、一項動詞に名詞が直接抱合される場合であっても、動詞に充当接頭辞が接頭した上で名詞が抱合される場合であっても、その動詞は対象を主語とする非対格動詞であることを述べる。

3 0 0 0 OA

著者
田山花袋 著
出版者
今古堂
巻号頁・発行日
1910
著者
ヤン ジョンソク 篠原 啓方
出版者
関西大学文化交渉学教育研究拠点(ICIS)
雑誌
周縁の文化交渉学シリーズ6 『周縁と中心の概念で読み解く東アジアの「越・韓・琉」―歴史学・考古学研究からの視座―』
巻号頁・発行日
pp.143-159, 2012-03-01

原著:ヤン ジョンソク翻訳:篠原啓方 東アジアにおける古代都城制の中でも、宮殿は中国の影響を強く受けてきたと言えるが、各地域によって新たにつくられる要素も存在する。その要素は宮殿が新たに造営されるたびに登場し、各地域の内部における独自の変遷も見られる。本稿では、このような認識に基づき、高句麗や渤海を中心に、東アジア宮殿の系譜を検討したい。 高句麗の国内城は、造営過程において、当時流行していた魏の宮殿に類似した宮殿が、宮殿の中央を基準に造営される配置構造を維持するいっぽう、宮殿の中央建築群の地表面を他のそれより高くするという、中国漢代の前殿と高台建築のアイディアも確認される。こうした特徴は、高句麗の平壌遷都(427)後にも維持されるが、安鶴宮においては、自然の地形を利用し、中央建築群が周辺より高い場所に配されている。 また安鶴宮には、魏晋南北朝期に流行した太極殿と東西堂制という宮殿の新たな配置構造が受容された。安鶴宮の中央建築群は、南宮、中宮、北宮に大別されるが、このうち南宮は中央に太極殿を、その左右に東堂と西堂を配置するという構造が採用されている。これにより南宮は、後方の中宮や北宮よりはるかに広い空間を持つようになった。さらに安鶴宮には、後方に行くにつれ空間全体が狭まっていくという配置構造が見られる。 安鶴宮のこうした特徴は、渤海上京城の宮殿においても確認されている。ただ上京城の宮殿は完全な平坦地に造営されたため、中央建築群の地表面を高める構造や、後方に行くにつれ地表面を高くする配置構造を持たなかった。また上京城においては、東西堂制が採用されなかった。これは隋唐代の宮殿が東西堂の造営を必要としない構造に変化したためと思われる。にもかかわらず、上京城の第1号宮殿と第2号宮殿には、安鶴宮南宮の太極殿(正殿)、中宮の太極殿(正殿)の建築構造がそのまま採用されている。特に第2号宮殿は、高句麗の独特の建築構造を持つもので、中国においては類例を探すのが困難である。 このように渤海は、高句麗の宮殿構造の中から系譜的に重要と思われる要素が採用しつつ、いっぽうで隋唐宮殿の新たな要素をも採用している。このような変化を経つつ、古代東アジアにおける宮殿の建築構造と配置様式は、発展を遂げていったのである。
著者
大塚 博邦 高梨 征雄 大久保 公裕
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.689-697, 2013-06-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
16

【背景と目的】我々はこれまでに,スギ花粉症における本格的花粉飛散前の症状発現,すなわち季節前発症にブドウ球菌などの細菌が関与する可能性を報告した.そこで今回は,本格的飛散前後の保菌率や鼻粘液上皮細胞診を詳細に解析し,スギ花粉症の季節前発症における細菌の関与について検討した.【方法】2011年,スギ単独感作例で飛散前無症状群(PreAs)53名,発症群(PreSy)60名,飛散中発症群(InSy)72名の鼻腔を綿棒で採取した粘液上皮成分をハンセル染色,細胞増多判定を行った.又細菌培養検査を行った(InSy群70名).【結果】黄色ブドウ球菌はPreAs 79%, PreSy 75%で検出され両群間に有意の差はなかった.InSyでは53%であった.表皮ブドウ菌の検出率はPreAs 15%, PreSy 10%, InSy 16%.モラキセラ・カタラーリスはPreAs 9%に対し,PreSy 25%で有意に高かった.細胞診は好酸球のみではPreAs 6%, PreSy 2%と両群低値でありInSy 51%であった.好中球のみはPreAs 45%に対し,PreSy 65で有意に高く,2+以上ではPreAs 20%に対しPreSyは47%でさらに有意に高かった.浸潤細胞なしはPreAs 43%に対し,PreSyは22%で有意に低かった.以上のことからスギ花粉季節前発症は好中球増多による鼻炎によるものであり,ブドウ球菌やモラキセラ・カタラーリスなどが関与しているものと思われた.
著者
福谷 直人 任 和子 山中 寛恵 手良向 聡 横田 勲 坂林 智美 田中 真琴 福本 貴彦 坪山 直生 青山 朋樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1512, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】腰痛は,業務上疾病の中で約6割を占める労働衛生上の重要課題であり,特に看護業界での課題意識は高い。近年では,仕事に出勤していても心身の健康上の問題で,労働生産性が低下するプレゼンティーイズムが着目されている。しかし,看護師の腰痛に着目し,急性/慢性腰痛とプレゼンティーイズムとの関連性を検討した研究はない。したがって,本研究では,看護師における急性/慢性腰痛がプレゼンティーイズムに与える影響を明らかにすることを目的とした。【方法】大学病院に勤務する看護師807名(平均年齢:33.2±9.6歳,女性91.0%)を対象に,自記式質問紙を配布し,基本属性(年齢,性別,キャリア年数),腰痛の有無,腰痛の程度(Numeric Rating Scale)を聴取した。腰痛は,現在の腰痛の有無と,現在腰痛がある場合,その継続期間を聴取することで,腰痛なし,急性腰痛(1日から3ヶ月未満),慢性腰痛(3ヶ月以上)に分類した。さらに,プレゼンティーイズムの評価としてWork Limitations Questionnaire-J(WLQ-J)を聴取した。WLQ-Jは,労働生産性を数値(%)で算出できる質問紙であり,“時間管理”“身体活動”“集中力・対人関係”“仕事の結果”の下位尺度がある。統計解析では,対象者を腰痛なし群,急性腰痛群,慢性腰痛群に分類し,Kruskal Wallis検定(Bonferroni補正)およびカイ二乗検定にて基本属性,WLQ-Jを比較した。次に,従属変数に労働生産性総合評価および各下位尺度を,独立変数に急性腰痛の有無,または慢性腰痛の有無を,調整変数にキャリア年数・性別を投入した重回帰分析を各々行った(強制投入法)。統計学的有意水準は5%とした。【結果】回答データに欠測のない765名を解析対象とした。対象者のうち,363名(47.5%)が急性腰痛,131名(17.1%)が慢性腰痛を有していた。単変量解析の結果,腰痛なし群に比べ,急性および慢性腰痛群は有意に年齢が高く,キャリア年数も長い傾向が認められた(P<0.001)。加えて,“労働生産性総合評価”“身体活動”“集中力・対人関係”において群間に有意差が認められた(P<0.05)。重回帰分析の結果,急性腰痛が労働生産性に与える影響は認められなかったが,慢性腰痛は“集中力・対人関係”と有意に関連していた(非標準化β=-5.78,標準化β=-1.27,P=0.016,95%信頼区間-10.5--1.1)。【結論】本研究結果より,看護師の慢性腰痛は“集中力・対人関係”低下と有意に関連することが明らかとなった。急性腰痛は,発症してから日が浅いため,まだ労働生産性低下には関連していなかったと考えられる。しかし,慢性腰痛では,それに伴う痛みの増加や,うつ傾向などが複合的に“集中力・対人関係”を悪化させると考えられ,慢性腰痛を予防することで労働生産性を維持していくことの重要性が示唆された。