著者
熊谷 圭知
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.15-33, 2013 (Released:2013-04-19)
参考文献数
19
被引用文献数
1

わたしはフィールドワークを「研究対象の存在する場所に身を置いて,一次資料を集める調査方法」と定義している.フィールドワークは調査研究者と調査対象/フィールドとの間の相互作用であり,フィールドワーカーがそのかかわりを引き受けることを意味する.わたしは,1980年以来,パプアニューギニアの首都ポートモレスビーの移住者集落と,高地周縁部(セピック川南部支流域)の村でフィールドワークを続けてきた.そして,90年代半ばごろから,フィールドワーカーがフィールドに何を還せるのかを考えるようになった.ポートモレスビーでは,セトルメントやインフォーマル・セクターの排除の動きの中で,JICA専門家として,都市貧困対策の公論形成にかかわった.クラインビット村では,自らのフィールドワークの成果をピジン語で村人に提示するとともに,「場所の知」の協働構築の可能性を模索している.それらは試行錯誤の繰り返しではあるが,かかわりの過程としてフィールドワークをとらえることは,人文地理学の常識とされる調査する者と調査されるものの二項対立を越える必要な一歩となる.
著者
堤 亜美
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.323-337, 2015-06-30 (Released:2015-11-03)
参考文献数
26
被引用文献数
5 6

本研究では, 一般の中学・高校生を対象とした, 認知行動療法的アプローチに基づく抑うつ予防心理教育プログラムの実践を行い, その効果を検討した。プログラムは全4セッション(1セッション50分)からなり, 主な介入要素は1)心理教育, 2)感情と思考の関連, 3)認知の再構成, 4)対反芻, であった。中学3年生および高校2・3年生を対象に本プログラムを実施したところ, 分散分析の結果, 中学生対象の実践ではプログラム実施群はプログラム実施前に比べ実施後に有意に抑うつの程度と反芻の程度が低減したこと, 高校生対象の実践ではプログラム実施群はプログラム実施前に比べ実施後に反芻の程度が有意に低減し, 抑うつの程度が有意に低減した傾向が示された。また, 中学生では実施6ヶ月後, 高校生では実施3ヶ月後の時点において, プログラム実施後の抑うつ・反芻の程度を維持していることも示された。そして感想データの分析の結果, 自分自身や周囲の人たちの抑うつ予防に対する積極性の獲得など, 一次予防や二次予防につながる様々な変化が見出された。これらのことから, 本プログラムは抑うつ予防に対し継続的な有効性を保持するものであることが示唆された。
著者
山中 千恵 伊藤 遊 百瀬 英樹 Yamanaka Chie Ito Yu Momose Hideki
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間学部篇 (ISSN:21853355)
巻号頁・発行日
no.14, pp.39-50, 2015

本論文の目的は,台湾南投県にあるテーマパーク型宿泊施設「妖怪村主題飯店-渓頭明山森林会館」が作る南投渓頭妖怪村の事例をとりあげ,ポピュラー文化を活用した観光資源創造の可能性について検討することにある.非場所的な性質を持つポピュラー文化が,その特質ゆえにローカル化を容易にし,それによって,あらたな場所性を創造していくことを可能にする過程を確認する. 調査を通じて明らかになったのは,「妖怪」をめぐるポピュラー文化の再場所化を支えるのが,そこに書き込まれた「物語」を消費することではなく,むしろ,そうしたテキスト間の横断をうながす「キャラクターの自律性」という,日本に顕著にみられる能動的なポピュラー文化消費の形式と,それを支えるシステムだということである.こうしたシステムの存在に注目することで,ポピュラー文化のグローバルな消費をめぐる議論を,ファンの受容行動にとどまらない文脈へと接続することが可能になると思われる.

3 0 0 0 OA 日本紳士録

著者
交詢社 編
出版者
交詢社
巻号頁・発行日
vol.39版, 1935
著者
吉澤 孝幸
出版者
大仙市立大曲中学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

1. 研究目的 : 本研究では、授業改善の手段として「CAN-DOリスト」を取り入れることで、生徒のスピーキング力や教師の組織的な指導力の向上にどのような効果が見られるのかを検証することを目的とした。2. 研究方法 : 研究を実施するにあたり「拠点校・協力校制度」を活用し、拠点校及び協力校2校の中学3年生247名を対象とした。共通の実践内容として、スピーキングの前に原稿を書かず、メモから英文を口頭で構成するという手法を取り入れ8ヶ月間授業を実践した。拠点校においては「CAN-DOリスト」を到達目標として生徒に意識させ指導を行った実験群と「CAN-DOリスト」を評価の手段にのみ活用した統制群に分け授業を行った。これら試みを量的に検証する手段として、4技能で構成される外部テストを活用した。3. 研究成果 : ライティングにおいて生徒が書いた「文の数」、スピーキングテストにおける「アティチュード」の得点、そして「英語の問いに対する応答」の正答率において、実験群の方が統計的に有意に高い傾向が見られた。次に、共通の指導に対して、拠点校と協力校の生徒間で意識の差が生じるのかを検証するために質問紙を実施しクロス集計を行った。その結果、3校の生徒間でリッカート尺度の積極的肯定的回答に有意差は認められず、3校とも積極的肯定の割合が高いことが認められた。このことから、導入した指導方法は、拠点校・協力校とも同じ程度の影響をもって取り入れられたことが明らかになった。本研究から「CAN-DOリスト」は4技能以外の情意面にも影響を与え、教室における積極的な行動様式を生み出す可能性を示すことができたことは大いに意義があったと言える。また、拠点校が協力校への波及効果の程度や、受け入れ側の教員はどのような意識をもっているかを明らかにできたことで、今後の事業を継続していく上でも有用な情報となると考えている。
著者
柴田 由己
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.198-208, 2008-01-01 (Released:2008-03-30)
参考文献数
29
被引用文献数
2 2

本研究は,青年用刺激希求尺度を作成して,その信頼性と妥当性を検討することを目的とした。研究1では,先行研究と予備調査において収集された126項目について探索的因子分析を行った。大学生189名のデータから,スリルと冒険 (TAS),抑制の解放 (Dis),内的刺激希求 (IS),日常的な新奇性希求 (DNS) の4因子が抽出された。研究2では,大学生480名のデータを用いたSEMにより,4因子構造と男女間での因子パターン不変性の確認,さらに男女間で因子得点の平均構造の比較を行った。結果は4因子構造の因子的不変性とTAS, Dis, DNSにおける因子得点の有意な男女差を示した。研究3ではα係数と再検査信頼性が検討され,SSS-JAの下位尺度における充分な内的一貫性と安定性が示された。さらに,他尺度との相関分析から,収束的妥当性と弁別的妥当性が論じられた。
著者
平田 裕美
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.89.16071, (Released:2018-07-14)
参考文献数
32
被引用文献数
1

The impact of parenting on the family orientation of university students and their identity formation during adolescence was investigated to identify parenting styles that promoted identity integration and minimized confusion. In addition, cooperation between fathers and mothers was analyzed to explain parenting styles. The results indicated that students of both genders who were raised by parents with an authoritative style more often evaluated that their parents cooperated in raising them compared with those who were raised with other parenting styles. Moreover, identity integration was significantly higher among students who were raised with an authoritative parenting style than among those raised with an authoritarian and uninvolved parenting style, whereas the opposite outcome was seen for identity confusion. Therefore, it was concluded that in the process of identity formation during adolescence, parenting styles that are responsive to children are essential, as is putting demands on them to mature based on proper criteria, i.e. disciplining them. However, further discussion is required about the fact that no differences were seen for the permissive parenting style.
著者
岡本綺堂 著
出版者
六芸社
巻号頁・発行日
1938
著者
塚本 勝巳
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.350-356, 2006 (Released:2006-06-07)
参考文献数
43
被引用文献数
2 4
著者
落合 太郎 大嶺 茉未
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.83, 2015 (Released:2015-06-11)

本研究は音楽が時間経過の感覚にどのように影響を与えるか?という命題を簡単な実験によって検証したものである。音楽が人の情緒に直接作用することは経験上誰もが知っていることであるが、これが時間経過の感覚にどのように作用するかはまだ解っていない。西洋音楽の3要素であるテンポ、ハーモニー、メロディをはじめ印象や音の高さが、どのように実際の時間経過時間と感覚時間の差となって表れるかを検証した。誰もが知っているモーツアルト「きらきら星」(k.265/K.300e)の主題と12の変奏曲のなかから特徴的な9曲を選定していずれも60秒に編集し、感覚時間等を18名の被験者に聞いた。全曲が同じ時間であることは被験者に伝えず、曲の要素を変えながら感覚・イメージへの影響をアンケートで設問した。仮説としては、速いテンポの曲が短い時間経過を感じると想定した。しかし結果は真逆で、静かでスローな曲は時間経過が短く、ダイナミックでアップテンポな曲は時間経過を長く感じさせた。2011年に著者らが発見した「逆浦島時間」の仮説と符合して、音楽が感覚を活性化して「逆浦島時間を誘発する」という結果となった。
著者
森田 由佳 江原 史雄 森田 義満 堀川 悦夫
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.401-404, 2018 (Released:2018-07-06)
参考文献数
11

〔目的〕動物介在療法の効果を心理尺度,生理学的手法を用いて示し,その効果の検証を行うことである.〔対象と方法〕対象は,佐賀大学学生30名(男性15名,女性15名),年齢:20.6 ± 0.7歳(平均 ± 標準偏差)とした.方法は,対象者に介在動物であるトカラヤギ2頭と触れ合ってもらい,その前後で気分プロフィール尺度であるPOMSと,唾液アミラーゼ活性を測定した.〔結果〕POMS,唾液アミラーゼ活性ともに,介入前と比較して介入後が有意に低下した.〔結語〕動物介在療法による効果を心理尺度,生理学的手法を用いて示すことができた.今後,障がいなどを持つ高齢者のリハビリテーションに応用し,その際の治療効果判定の一助となると考えられる.
著者
Sangwan PARK Kiwoong KIM Youngbeum KIM Kangmoon SEO
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.17-0532, (Released:2017-12-15)
被引用文献数
6

A seven-month-old female domestic shorthaired cat was presented for buphthalmos in the right eye and corneal cloudiness in the left eye. Full ophthalmic examinations were performed for both eyes and enucleation was done for the right nonvisual eye. Congenital glaucoma caused by anterior segment dysgenesis was confirmed for the right eye. In the left eye, slit-lamp examination revealed focal corneal edema with several iris strands from iris collarette to the affected posterior corneal surfaces. Circular posterior corneal defect was suggested to be the cause of edema. Goniodysgenesis, additionally, was identified. Taken together, the diagnosis of Peters’ anomaly which is a subtype of anterior segment dysgenesis was suggested in the left eye.
著者
重村 哲至 古川 達也 相知政司 林 敏浩
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.3318-3327, 2007-09-15
参考文献数
14
被引用文献数
1

電気・電子・情報系の学生にノイマン型コンピュータの動作原理を教えるために,実機を用いた機械語教育を行うことが提唱されてきた.しかし,現在のコンピュータ・システムは教育用には高度で複雑すぎる.そこで,筆者らは,高専や大学において,機械語教育に使用する演習用のマイコンを設計・開発した.開発したマイコンが備える,内部を2 進数で観察できるコンソールパネル,命令セットアーキテクチャ,入出力装置,クロス開発環境は,どれも教育用に配慮がされたものである.また,学生が個人で所有できるように小型・安価に実装した.実際に徳山工業高等専門学校の授業で4 年間使用し,教育効果があることが判明した.To teach students the principle of the von Neumann窶鍍ype computer, the machine language education with a real computer has been advocated conventionally. However, present computer systems are too advanced and complex to educate them. According to the demand for the higher education, the authors have designed and implemented an educational microcomputer system to satisfy the demand. The implemented computer has a console panel, that can be used to observe the inside, a set of instructions, I/O devices and cross development environments that are appropriate for education. Moreover, it has been implemented small size and at a low price so that the student might own it individually. It has been found out that there is a feasible education effect because of the practical usage in some classes for four years at Tokuyama College of Technology.