著者
松田 紀子 白木原 美紀 白木原 国雄
出版者
日本水産學會
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.8-14, 2011 (Released:2012-12-06)

天草下島周辺海域に周年定住するミナミハンドウイルカTursiops aduncusを対象としてイルカウォッチング船が群れの行動に及ぼす影響を調べた。陸上定点から群れの行動観察を行い,群れの位置をセオドライトで計測した。個体が間隔を詰めて同調的な潜水浮上を繰り返す時,ウォッチング船が1隻でも存在すると,不在時に比べて潜水時間が長くなり,浮上中の速度が増加した。4,5隻以上存在した時,潜水地点から浮上地点までの距離が増加し,浮上時間が減少した。群れに接近可能な隻数制限の導入が必要である。
著者
荒木 希世 松岡 貴浩 森下 貴文 川崎 信司
出版者
熊本県水産研究センター
巻号頁・発行日
no.9, pp.13-18, 2013 (Released:2014-03-06)

近年、有明海において頻発するChattonella赤潮は、赤潮の発生とクルマエビ漁獲量及び漁獲努力量の減少との関連性から、底生性甲殻類であるクルマエビの漁獲量の減少に影響を与えていることが示唆された。また、有明海においてC. antiquaの日周鉛直移動が確認され、本種が、栄養塩が十分に供給される状況下にあっても、能動的な輸送により夜間には海底直上層(水深19m)まで到達していることが明らかとなった。
著者
山田 明義
出版者
信州大学農学部
巻号頁・発行日
vol.38, no.1-2, pp.1-17, 2002 (Released:2011-03-05)

日本の野生きのこ類の主要な位置を占める菌根性きのこ類について、食資源としての利用性を明らかにすることを目的に、文献調査を行った。その結果、これまでに300種を超えるきわめて多様なきのこ類が利用されており、今後さらに研究の進展にともない、より多くのきのこ類が利用される可能性のあることが示唆された。これら菌根性きのこ類は、これまで殆ど人工栽培の研究が行われていなことから、産業利用の見地からは研究の必要性が指摘された。
著者
奥島 史朗
出版者
岡山大學農學部
巻号頁・発行日
no.62, pp.39-44, 1983 (Released:2011-03-05)
著者
寺山 誠人
出版者
宮崎県水産試験場
巻号頁・発行日
no.8, pp.1-94, 2004 (Released:2013-08-30)

カツオはクロマグロやメバチマグロに比べて肉色が暗赤色を呈し、格段に変色しやすいが、その要因はクロマグロやメバチマグロでは漁獲直後に脱血するので、ヘモグロビンがほとんど含まれていないのに対して,カツオでは多量の還元型ヘモグロビンが含まれていることや、pHが低く、メトミオグロビンに対する酵素的還元力が弱いことが挙げられている。そこで漁獲直後のカツオ、カンパチ、ハマチを活けしめ脱血して、漁獲物の高付加価値化および消費拡大を図ることを目的に、上記のような紡錘形魚の活けしめ脱血装置を開発し、その品質向上効果について研究を行った。第I章では、カツオに対する活けしめ脱血の効果について調べた。近海カツオ一本釣り漁業で漁獲された釣獲直後のカツオ活魚を使用し、船上で活けしめ脱血処理を行った。最初に脱血の方法について検討した。延髄および尾部を包丁で刺す方法が最も脱血率(全体重に対する放血量の割合)が3.3%と高かったが、延髄部を包丁で刺す方法でも2.9%であり、船上での作業を考慮すると延髄を刺す方法が実用的であると判断した。次に、対照区(苦悶死)、打撃区(即殺無放血)および脱血区(延髄刺殺)のカツオを調製した。36時間水氷貯蔵後の背肉のpHは、対照区が5.3と最も低く、次いで打撃区の5.4、脱血区5.6の順であった。ゲルろ過カラムを用いた高速液体クロマトグラムによりミオグロビンを分画し、フォトダイオードアレイ方式によってメト化率を測定した。メト化率は対照区が22%と最も高く、10%以下の打撃区と脱血区に差はなく、対照区より低かった。肉の赤さとして色差計によるa*値を比較したところ、脱血区が最も赤く、対照区に比べて有意に赤かった。船上凍結試験でも対照区より脱血区の方が赤かった。仲買人および量販店の仕入れ関係者による官能試験では、脱血区の方が肉色が明るく鮮やかで、生臭くなく、対照区より高い評価が得られた。沿岸曳縄漁業で漁獲したカツオは、活けしめ脱血した方が水氷じめしたものより破断強度が高かった。第II章では、活けしめ脱血を実用化するために装置の開発を行った。装置の開発では、ドリルおよび丸のこなど4台の部分試作機を製作して比較した。延髄部切断したカツオと延髄部破壊したカツオの冷却の状況を比較したところ、延髄破壊の方が速く冷えた。また、船上での作業性、処理速度、可食部のダメージおよび外観を比較し、ドリルで脳、延髄および鰓部をくり抜く方法を採用した。この方法では、カツオの向きを制御する必要があるが、丸みをつけた金属板でカツオ胴部を挟みつけることにより背を上、腹を下に制御できた。本装置は1尾あたり4秒で処理でき、重量約70kg、脱血率は3.1%であった。品質を比較するために本装置で活けしめ脱血処理したカツオと、水氷でしめたカツオを100尾づつ調製し、流通関係者100名を対象に官能検査を行った。官能検査では、肉色、匂いおよび味いずれも本装置で処理したカツオの方が有意に勝っていた。パネリストの多くは、装置で処理したカツオはモチモチとした食感があると記載していた。第III章では、カツオと同様に紡錘形の体形である養殖カンパチについて、活けしめ脱血装置の効果を調べた。カンパチの体形に合わせた活けしめ脱血装置で処理した①機械じめ、従来法である②水氷じめ、包丁で延髄を刺す③延髄じめ、および機械じめした後圧縮ガスで脊髄を圧搾した④脊髄じめの4試験区を調製した。調製して約10時間後、背部筋肉のpHは、機械じめがぱらつきもなくpH6.8と最も高く、他の3区はpH6.0~6.3の範囲内であった。ATPおよびグリコーゲン量でも約6.mol/gおよび約400mg/100gと機械じめが最も高かったが、乳酸は約450mg/100gと最も低かった。鮮度指標であるK値に、区間の差は見られなかった。肉の破断強度は、機械じめおよび脊髄じめに差はなかったが、手じめおよび水氷じめより高い値を示した。機械じめの破断強度は10時間後で465g、75時間後で359gに対し、水氷じめのカンパチは10時間後333g、75時間後266gであった。養殖ハマチの破断強度においても、機械じめの方が水氷じめより高い結果であった。以上の結果から、カツオなどを活けしめ脱血すると肉色が良くなり、血生臭くなく、破断強度は水氷じめより高くなることが明らかとなった。また、本研究で開発した活けしめ脱血装置を使用すると、鮮度のばらつきが小さく、カツオなど紡錘形魚の品質向上に有効であることが明らかとなった。
著者
小山 豊 森田 弘彦 千葉 和夫
出版者
日本雑草防除研究会
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.15-24, 2014 (Released:2014-08-18)
著者
沖 大樹 山本 祥輝 奥村 宏征
出版者
三重県科学技術振興センター水産研究部
巻号頁・発行日
no.11, pp.15-21, 2004 (Released:2011-03-05)

平成13年6月から平成14年2月にかけて熊野灘北部沿岸で増加傾向にあるガンガゼについて生物学的知見を収集するとともに試食による評価を行い、食材としての可能性を検討した。また、鹿児島県におけるガンガゼ流通の現状を把握し、三重県における本種の利用の可能性ついても考察を試みた。1.贄浦地先に生息する個体群と宿浦地区の個体群の平均殻長はそれぞれ46.3mm、54.3mmで、贄浦産が平均殻長で8mm大きかった。2.生殖腺熟度指数の月変化より産卵期は、両地区とも7-8月に盛期を迎えると推察された。3.食材として利用可能と判断された7g以上の生殖腺を持つ個体の月別の殻長サイズ別出現率から、殻長が50mm以上の個体は両地区とも利用可能と考えられ、同殻長サイズにおける利用可能な期間は宿浦に比べ贄浦が長かった。4.試食の結果、熊野灘北部沿岸に生息するガンガゼは食用ウニ類に比べ生殖腺の色彩、味覚は劣るが、食材としての可能性はあると評価された。5.鹿児島市内でガンガゼが流通するウニ類の35%と多くを占めた要因として、他の県内産食用ウニ類の水揚量が少ないことに加え、我が国におけるウニ類の主要産地と距離的に隔たりがあったことが考えられた。以上の結果より、三重県熊野灘北部沿岸に生息するガンガゼについては地域差があるものの食材として利用の可能性があると考えられた。また、三重県におけるウニ類の流通事情は鹿児島県とほぼ同様であると考えられることから、県内においてもガンガゼを市場流通させる可能性はあると推察された。
著者
加藤 敏英 矢田谷 健 石崎 孝久 伊藤 貢 小田 憲司 平山 紀夫
出版者
日本獸医師会
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.127-130, 2008 (Released:2011-01-19)

トルアジン誘導体であるトルトラズリルの牛コクシジウム病発症予防効果および安全性を調べることを目的に、168頭の子牛を用いて投与試験を実施した。その結果、有効性試験(n=134)では薬剤投与群(n=67)の発症率(0%)が無投与対照群(n=67)のそれ(38.8%)に比べ有意に低かった(P<0.01)。また、薬剤投与群のオーシスト排泄率およびOPG値は投与後4週までは無投与対照群に比べ有意に低く(P<0.01)、便性状や下痢便排泄率でも顕著な差が認められた。いっぽう、安全性試験(n=168)では薬剤投与群(n=84)と無投与対照群(n=84)でそれぞれ19.0%、26.2%の個体に呼吸器症状がみられたが、薬剤投与に起因する有害事象はみられなかった。以上のことから、トルトラズリル5%経口液は牛コクシジウム病発症を抑え、臨床的に有用性が高い薬剤であることがわかった。
著者
堀 兼明
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.60-69, 2010 (Released:2011-03-28)
著者
沖 陽子
出版者
農業技術協會
巻号頁・発行日
vol.35, no.11, pp.495-501, 1980 (Released:2011-03-05)
著者
三木 信雄 久保村 安衛
出版者
農林水産省農業生物資源研究所
巻号頁・発行日
no.5, pp.1-29, 1993 (Released:2012-09-24)

微生物遺伝資源事業における糸状菌の安定的長期保存を順調に進めるため,液体窒素保存法について2,3の実験を行い次の結果を得た.1)凍結保存前に5~10℃の低温に処理した菌株は解凍後の菌糸の伸長が良好であった.2)凍結保存1月後の167属371種915菌株の生残率は95.6%,凍結保存1年後における120属287種722菌株の生残率は97.1%を示し,多数の菌種において,凍結速度を制御しない簡便な方法で凍結保存できることがわかった.3)Coprinus,Diaporthe,Fomilopsis,Fusarium,Phaeolus,Pyricularia,Rhizoctonia,Sclerotium,Selenophoma,Waiteaの各属に属する糸状菌には生残率が低い菌種が含まれており,凍結方法の検討が必要である.4)上記以外の多数の菌種,菌株は液体窒素気相中で凍結保存できることが明らかになった.
著者
篠原 信
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.81, no.7, pp.753-764, 2006 (Released:2011-03-05)
著者
大森 信 蒔田 道雄
出版者
日本プランクトン学会
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.107-113, 1976 (Released:2011-03-05)
著者
佐藤 至 辻本 恒徳 山下 竹治
出版者
日本獸医師会
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.733-737, 2007 (Released:2011-12-19)

野生動物の鉛中毒は古くから知られていたが、近年はカドミウムやタリウムなどによる汚染も報告されている。このため本研究では、ツキノワグマ、ホンシュウジカ、ニホンカモシカ、トウホクノウサギおよびカワウの肝臓および腎臓のPIXE分析を行い、これらの重金属による汚染状況を調査した。カドミウム濃度はツキノワグマとトウホクノウサギの腎臓で高く、ツキノワグマで74頭中27頭、トウホクノウサギで16羽中5羽が10mg/kgを超えていた。鉛はツキノワグマとカワウで高く、5頭のツキノワグマが鉛汚染の目安となる肝臓鉛濃度の2mg/kgを超えていたが、カワウではこれを超えるものはなかった。タリウムはすべての試料で検出されなかった。これらの結果は、ツキノワグマとトウホクノウサギは比較的高度のカドミウム暴露を受けており、さらにツキノワグマでは鉛汚染が散発的に発生している可能性を示唆している。
著者
関 伸一
出版者
森林総合研究所
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.193-205, 2010 (Released:2012-12-03)

東シナ海北東部の男女群島でそれぞれ異なる季節に5回の鳥類調査を行って観察種を記載するとともに、これまで文献に記載されている記録の整理を行い、男女群島における鳥類の観察記録をリストとしてとりまとめた。現地調査では75種が観察され、これまでの記録と併せて179種となった。このうち確実な繁殖記録があるのは6種のみで、繁殖している可能性のある種を含めても18種であった。男女群島は、他の地域とは地理的に隔離されていることに加えて面積が限られているために、島嶼環境に適応したアカヒゲ、ウチヤマセンニュウなどの種が分布する一方で、ウグイスやカワラヒワなど面積の大きな島では広域的に分布する種の一部が欠落し、単純で特異な繁殖鳥類群集が生じたと推測される。 渡り鳥については、個体数に関する記録が少ないため、渡りの中継地としてのこの地域の重要牲を評価することは困難であった。しかし、春期の調査において高い割合で記録される渡り鳥があり、これらの種では男女群島を経由する渡りのルートを利用する個体が恒常的に存在すると推測された。
著者
鈴木 寛之 菅沼 健二
出版者
愛知県農業総合試験場
巻号頁・発行日
no.34, pp.127-132, 2002 (Released:2011-03-05)

種なし「巨峰」のジベレリン(以下GA)処理回数を削減するため、開花前にストレプトマイシン(以下SM)200mgL(-1)を散布し、GA25mgL(-1)溶液中にフルメット液剤(以下CPPU)を混入して満開後に1回処理した場合のCPPU濃度及び処理時期について検討した。1.GA処理の溶液中CPPU濃度が10mgL(-1)では、満開5日後処理により慣行と同等の果実が得られたが、CPPU濃度が5mgL(-1)では果粒肥大が劣った。2.GA処理溶液中のCPPU濃度が10mgL(-1)で、満開5日後に中庸樹及び強勢樹に処理した場合は、慣行と同等の果実が得られた。しかし、満開8及び10日後処理では、強勢樹では1房当たりの着粒数が20粒以下となり、商品性を失った。また、満開8及び10日後処理では両樹勢樹とも無核果率が低下する傾向であった。3.GAとCPPUの混用処理により穂軸の伸長が抑えられ、果粒の横方向への肥大が促進された。その結果、果粒同士が密着した果房となった。