著者
安田 香
出版者
日本音楽表現学会
雑誌
音楽表現学 (ISSN:13489038)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.45-54, 2007

<p> ドビュッシーは 1889 年パリ万博でガムランの生演奏に触れ、強い関心を抱いた。彼は先ず、演奏されたある印象的フレーズを用いて 3 作品を書く(これらの作品の一部は、後日作曲者自身の反省の対象になった)。次いで、ガムラン的音組織、 音色、低音打楽器の特性、ヘテロフォニーなどを諸作品に取り入れ、ついにピアノ独奏曲「パゴダ」Pagodes(『版画』Estamp 第 1 曲)にそれらを結集させる。以降、ガムランから学んだ技法は、次第にドビュッシー独自の語法になっていく。本稿は、上述の過程を、作曲家が創作を展開した当時の芸術思潮に照らし論考する試みである。</p>
著者
姜 美香
出版者
四天王寺大学大学
雑誌
四天王寺大学大学院研究論集
巻号頁・発行日
no.11, pp.93-113, 2017-03-20

ベトナムにおける介護分野の技能実習生確保への取り組みに向けてベトナム・ハノイにおける送り出し機関4 か所を対象に現地訪問ヒアリング調査を行った。その結果、日本語教育内容及び日本語レベルについては、最低1 カ月から最大6 カ月までのベトナム人講師による日本語教育を実施しており、教育方法はテキストやDVD を使用していた。技術的な教育は、経済連携協定( EPA )による送り出し機関としての経験を持つ場合には、機関内に実習室を設けていたが、小規模の送り出し機関の場合には日本語教育のみを機関内で実施、技術的な教育は外部機関へ委託していた。学生の9 割以上が今後日本への外国人介護労働者としての受け入れを希望しており、高卒の学生が一番多かった。この学生たちの主な目的は出稼ぎであり、送り出し機関側も今後介護分野における外国人技能実習生の送り出しができることを強く希望していた。しかし、ベトナムにおいてはまだ「介護」の概念が根付いてないため、介護の仕事といっても看病人をイメージする場合が多く、今後介護分野での外国人技能実習生が活躍するためには介護に関する概論などの基礎的知識の修得だけでなく日本の介護現場での実習も必要不可欠であることが明らかになった。
著者
渡辺 守邦
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 = The Bulletin of The National Institute of Japanese Literature (ISSN:03873447)
巻号頁・発行日
no.14, pp.63-123, 1988-03-30

泉州信田の葛の葉狐の子が、母と生き別れて、天文博士に出世する安倍の童子の物語は、源を『簠簋抄』に発する。この話は、むしろ浄瑠璃、歌舞伎に入って以降おもしろみを倍増するのであるが、本稿は、反対に、この話を育んだ、暦数書の仮名注の世界を俳徊してみようとするものである。本題に入る前に、断っておかなければならないことがある。それは書名の読み。「簠簋」と書いて、〈ホキ〉と読む。『論語』公冶長篇に「瑚璉」の語があって、朱子の注に、宗廟に供える黍稷を盛る器、夏に〈瑚〉、商に〈璉〉、周に〈簠簋〉と称した、とする。本来は祭器である。が、貴重品を運んだり、納めておく器具とも考えられたらしく、次のような言い伝えもある。すなわち、釈迦如来像が百済から海を渡って本朝に運ばれたとき、簠簋に入れられて来た、それゆえ、釈迦をホトケと呼ぶ、ホトケはホキの転である―と。『法華経直談鈔』に載る名義譚。早くも話が中世説話の世界に入ってしまったようだ。 A story of Abe no doji who is a child of Kuzunoha (a name of white fox in legend) in Shinoda of Senshu, succeeded as a master of astrology after separating from mother came from "Hokisho"(簠簋抄). This story rather became twice as much as interesting after being taken up as a theme of Joruri and Kabuki, this article tries to wonder around the world of the kanchu (written in kana) of the Rekisusho (the number of years book) that created this story. Before getting to the main point, it is enough for me to say about the reading of the title of a book. "簠簋"is pronounced as "Hoki". There is a word "Koren"(瑚璉)in "The Analects of Confucius" edited by Koyacho, and it was explained: a container to pile millet to offer in the ancestral mausoleum, "Ko" for Hsia, "Ren" for Shang, "Hoki" for Zhou in a note of Shushi. It is originally ceremonial implement. However it seemed to be thought as an appliance which carry and put the valuables, there is the following legend, that is to say, when statue of Shaka Nyorai was put in "Hoki" and carried to our country across the sea from Kudara,that is why we refer to "Shaka" as "Hotoke". "Hotoke" is derivative of "Hoki". This is a "Myogitan" (名義譚)appears in "Hokkekyojikidansho" (法華経直談鈔). The story seems to have already entered the world of the narration in the Middle Ages.
著者
長沼 君主
出版者
清泉女子大学
雑誌
清泉女子大学紀要 (ISSN:05824435)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.XIII-XXIX, 2003-12-25

In extensive reading, graded readers, in which texts are classified into several levels according to their range of vocabulary, are often recommended to learners. In those texts, vocabulary is controlled, and "simplified" input is given to the readers to eliminate the difficulty they may face in their reading. However, simplification sometimes entails loss of variety and authenticity of expressions, and therefore may tend to be monotonous and less interesting for the readers. In this study, the frequency and coverage of basic vocabulary in an "authentic" novel are examined, and the percentage of, supposedly, "unknown" words are calculated. The result shows that the coverage of "known" words seems enough for readers to read texts with not so much attention to the detail understanding of the text, but rather to the pleasure of following the storyline. The use of authentic material in extensive reading thus seems promising, though further research is required to find about the cognitive process and strategies of the readers in reading authentic texts.
著者
神 信人 山岸 敏男
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.190-198, 1997

The purpose of this study is to test a new hypothesis for the group identity effects in social dilemmas, the effect that common group membership promotes cooperation. According to the proposed hypothesis, people prefer to cooperate with ingroup members because they expect reciprocal responses from ingroup, but not from outgroup members. In other words, people are considered to expect generalized reciprocity to exist within groups but not beyond group boundaries. Based on this hypothesis, it was predicted that the previously observed group identity effect-subjects facing a prisoner's dilemma cooperate more with an ingroup member than with an outgroup member-exists only when the partner shares the membership information. When the partner does not know that the subject shares the same group membership, group identity effect is predicted not to emerge. Result of an experiment with 78 subjects clearly supported this prediction and rejected alternative hypotheses based on psychological distance(Krammer & Brewer, 1984), social identity (Billig & Tajfel, 1973), and ingroup stereotype (Brewer, 1978).
著者
久木元 由紀子 藤重 仁子 外村 晴美 五十嵐 淳介 前田 薫
出版者
森ノ宮医療大学 紀要編集部会
雑誌
森ノ宮医療大学紀要 = Bulletin of Morinomiya University of Medical Sciences
巻号頁・発行日
no.13, pp.1-14, 2019-03-20

現在欧米で一般的に実践されている現代ヨガは、アーサナと呼ばれる身体的ポーズに力点をおいたもので、それに体の姿勢、呼吸法、そして瞑想を組み合わせた健康やフィットネスを目的とするエクササイズであり、また補完代替医療(Complementary and Alternative Medicine:CAM)の一療法とも位置づけされるのが一般的になっている。その医学的有効性についての期待も高まっていることから、本研究では、現代ヨガと補完医療における位置付けについて、心疾患・肥満・乳がんの医学的有効性について、エビデンスをレビューしたので紹介する。結果として、ヨガによって生活習慣を改善すると心疾患のリスク因子を低減できる可能性が高いこと、過体重者ではヨガの定期的な実施と体重増加の緩和が関連していること、乳がんサバイバーにおいて不安・うつ・QOLにおいて効果があることなどが示唆された。しかし、それらの効果が運動そのものによる効果なのかヨガに特異的な効果なのかについては明らかにされていないため、今後のさらなる検証を期待したい。
出版者
日経BP社
雑誌
日経情報ストラテジ- (ISSN:09175342)
巻号頁・発行日
vol.17, no.11, pp.71-73, 2008-12

深夜になり、周囲に人けも無くなったダイキン工業淀川製作所(大阪府摂津市)。工場内のグラウンドで合図の声が響くと、待ち構えていた者たちの間でビールかけが始まった。 まず、狙い撃ちにされたのは特機事業部企画部航空機担当課長の川村正行。バケツの水を浴びたように、たちまち全身びしょ濡れになった。
著者
阿満 利麿
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
no.9, pp.p55-67, 1993-09

死後の世界や生まれる以前の世界など<他界>に関心を払わず、もっぱら現世の人事に関心を集中する<現世主義>は、日本の場合、一六世紀後半から顕著となってくる。その背景には、新田開発による生産力の増強といった経済的要因があげられることがおおいが、この論文では、いくつかの思想史的要因が重要な役割を果たしていることを強調する。 第一は、儒教の排仏論が進むにつれてはっきりしてくる宗教的世界観にたいする無関心の増大である。儒教は、現世における倫理を強調し、仏教の脱社会倫理を攻撃した。そして、儒教が幕府の正統イデオロギーとなってからは、宗教に対して無関心であることが、知識人である条件となるにいたった。 第二の要因は、楽観的な人間観の浸透である。その典型は、伊藤仁斎(一六二七―一七〇五)である。仁斎は、正統朱子学を批判して孔子にかえれと主張したことで知られている。彼は、青年時代、禅の修行をしたことがあったが、その時、異常な心理状態に陥り、以後、仏教を捨てることになった。彼にとっては、真理はいつも日常卑近の世界に存在しているべきであり、内容の如何を問わず、異常なことは、真理とはほど遠い、と信じられていたのである。また、鎌倉仏教の祖師たちが、ひとしく抱いた「凡夫」という人間認識は、仁斎にとっては遠い考えでもあった。 第三は、国学者たちが主張した、現世は「神の国」という見解である。その代表は、本居宣長(一七三〇―一八〇一)だが、現世の生活を完全なものとして保障するのは、天皇支配であった。なぜなら天皇は、万物を生み出した神の子孫であったから。天皇支配のもとでは、いかなる超越的宗教の救済も不必要であった。天皇が生きているかぎり、その支配下にある現世は「神の国」なのである。 しかしながら、ここに興味ある現象がある。儒教や国学による激しい排仏論が進行していた時代はまた、葬式仏教が全国に広がっていた時期でもある。民衆は、死んでも「ホトケ」になるという葬式仏教の教えに支えられて、現世を謳歌していたのである。葬式仏教と<現世主義>は、楯の両面なのであった。
著者
石川 和彦
出版者
日経BP社
雑誌
日経アーキテクチュア (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.761, pp.84-87, 2004-01-12

壁に黒いカビが広がり、ガラス窓の枠がびしょびしょに──。住宅で後を絶たない結露被害をなくすにはどうすればよいか。この連載では、リフォーム現場で結露解消に取り組んできた技術者たちが、原因と対策を5回にわたって解説する。第1回は、建物周辺の冷気だまりが原因で生じる結露への対策だ。
著者
Kobayashi Yoshitsugu Tomida Yukimitsu Kamei Tadao Eguchi Taro
出版者
国立科学博物館
雑誌
National Science Museum monographs (ISSN:13429574)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.i-121, 2006

中期更新統の大阪層群から発見されたマチカネワニ(Toyotamaphimeia machikanensis)の模式標本について,本論文で詳細な再記載を行った.系統解析は,48分類群(2外群)の165形質を使って行った.その結果,420ステップで323個の最節約樹が得られた.厳密合意樹は,マチカネワニが明らかにマレーガビアル亜科(Tomistominae)に含まれることと,同亜科の唯一の現生種(マレーガビアルTomistoma schlegelii)の姉妹群であることを示している.さらに,系統樹の樹形は,マレーガビアル亜科がヨーロッパで起源したあとマチカネワニとマレーガビアルの分岐群が40万年前までに東アジアに拡散してきたことを支持し,これまでの研究と整合性を持つ.マチカネワニの定義についても改定した.従来は上顎の最大の歯は7番目と言われていたが,実際には12,13番目の方が7番目より大きい.上顎の7番より後方の歯はそれより前方の歯に比べてより密に並ぶ.上顎の8番から12番の歯は,かみ合ったときに下顎の歯の外側に位置するが,13番から16番の歯は対応する下顎歯と噛みあうことから,後方の歯は破砕の用途に使われたと考えられる.岸和田市から発見された類似のマレーガビアル亜科のワニ化石は,以前にはマチカネワニと考えられていたが,マチカネワニとは異なる分類群で,より原始的な種の可能性がある.