著者
小板橋 又久
出版者
一般社団法人 日本オリエント学会
雑誌
オリエント (ISSN:00305219)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.30-44, 1989 (Released:2010-03-12)

We can find in the Old Testament mšrr “singer” and šr “singer” which both derive from the verb šr (*šyr) “to sing”. We can find Mšrr only in Ezra, Nehemiah, and Chronicles. Mšrr occurs several times with the word “Levites”, and denotes a singer which belongs to the temple, especially to the Jersusalem Temple, except in Ezra 2: 65 and Neh. 7: 67, in which case we can't determine the kind of singers. On the other hand šr does not occur in specific materials. From two examples (II Sam. 19: 36; Eccl. 2: 8) which denote the “palace singers” and four examples (I Kings 10: 12; II Chron. 9: 11; II Chron. 35: 25; Ps. 68: 26) where we can't determine the kind of singers, we conclude that šr does not mean the specific type of singer but referes to a singer in general.Why does the term mšrr occur only in the so-called Chronicler? Ezra, Nehemiah and Chronicles stress that there was one form in the songs and instrumental music dedicated to Yahweh which were performed in the Jerusalem Temple based on the true faith in Yahweh. The group that proclaimed that the traditional form was very important might use the term mšrr and distinguish it from the other terms which refer to the singers not based on the traditional form from their point of view.
著者
鳥居 建史 能村 幸介
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.772-779, 2018 (Released:2018-07-25)
参考文献数
9
被引用文献数
3

以前,加速時の車室内音から燃焼騒音を時系列寄与分離する手法を報告した.この手法で得られた燃焼騒音の音質良否を定量化するため,複数の燃焼騒音を提示音とし,エキスパート14名に対して一対比較法による主観評価実験を実施した.その結果と提示音の分析結果から,音の変動強さを考慮した新しい音質評価指標を開発した.
著者
森 一博 田中 靖浩
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は, ウキクサ類を用いてデンプンを多く含むバイオマスを生産し,これをバイオエタノール生産の原料に用いようとするものである。そこで,有用ウキクサ植物株の探索, バイオマス生産条件, デンプン誘導条件, ウキクサ類バイオマス由来デンプン糖化条件を明らかにした上で,供試植物のエタノール生産への適用性と実用性評価を検討し結果,ウキクサ類から効率的にバイオエタノールを生産できることが示された。
著者
渡辺 守邦
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 = The Bulletin of The National Institute of Japanese Literature (ISSN:03873447)
巻号頁・発行日
no.14, pp.63-123, 1988-03-30

泉州信田の葛の葉狐の子が、母と生き別れて、天文博士に出世する安倍の童子の物語は、源を『簠簋抄』に発する。この話は、むしろ浄瑠璃、歌舞伎に入って以降おもしろみを倍増するのであるが、本稿は、反対に、この話を育んだ、暦数書の仮名注の世界を俳徊してみようとするものである。本題に入る前に、断っておかなければならないことがある。それは書名の読み。「簠簋」と書いて、〈ホキ〉と読む。『論語』公冶長篇に「瑚璉」の語があって、朱子の注に、宗廟に供える黍稷を盛る器、夏に〈瑚〉、商に〈璉〉、周に〈簠簋〉と称した、とする。本来は祭器である。が、貴重品を運んだり、納めておく器具とも考えられたらしく、次のような言い伝えもある。すなわち、釈迦如来像が百済から海を渡って本朝に運ばれたとき、簠簋に入れられて来た、それゆえ、釈迦をホトケと呼ぶ、ホトケはホキの転である―と。『法華経直談鈔』に載る名義譚。早くも話が中世説話の世界に入ってしまったようだ。 A story of Abe no doji who is a child of Kuzunoha (a name of white fox in legend) in Shinoda of Senshu, succeeded as a master of astrology after separating from mother came from “Hokisho”(簠簋抄). This story rather became twice as much as interesting after being taken up as a theme of Joruri and Kabuki, this article tries to wonder around the world of the kanchu (written in kana) of the Rekisusho (the number of years book) that created this story. Before getting to the main point, it is enough for me to say about the reading of the title of a book. “簠簋”is pronounced as “Hoki”. There is a word “Koren”(瑚璉)in “The Analects of Confucius” edited by Koyacho, and it was explained: a container to pile millet to offer in the ancestral mausoleum, “Ko” for Hsia, “Ren” for Shang, “Hoki” for Zhou in a note of Shushi. It is originally ceremonial implement. However it seemed to be thought as an appliance which carry and put the valuables, there is the following legend, that is to say, when statue of Shaka Nyorai was put in “Hoki” and carried to our country across the sea from Kudara,that is why we refer to “Shaka” as “Hotoke”. “Hotoke” is derivative of “Hoki”. This is a “Myogitan” (名義譚)appears in “Hokkekyojikidansho” (法華経直談鈔). The story seems to have already entered the world of the narration in the Middle Ages.
著者
中田 敦 大和田 尚孝
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュ-タ (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.784, pp.20-27, 2011-06-09

みずほフィナンシャルグループ(FG)は5月20日、みずほ銀行が3月に引き起こした大規模システム障害の全貌を明らかにした。本誌が合計38ページの報告資料を検証したところ、30の不手際が重なり影響が拡大した事実が判明した。 大規模障害を招いた直接の原因は、システム部門の不手際だ。システム全体の仕様や機能をつかみきれず、障害後には運用ミスを重ねた。
著者
斉藤 淳 浅羽 祐樹
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.114-134, 2012

比較優位を失った農産物の保護政策を自由貿易と整合的にどのように実施するかは先進工業国に共通する重要な政策課題である。日韓はコメ保護農政において価格統制から出発し強大な農業者団体を有するなどの類似点にもかかわらず,日本は与党への支持と減反への協力と引き換えに公共事業を選択的に提供する恩顧主義から脱却しきれず,TPPに対する態度を保留している半面,韓国は裁量の余地がないプログラム型の直接支払制へと移行し,米国やEUとFTAを締結した。権限が強く,農村部が過大代表されたままの第二院を抱える両院制議院内閣制の下,衆参ねじれが常態化し,与党に対する規律が弱く,日本の首相は執政権が制約され,現状点が維持されたままである。他方,韓国の大統領は,都市部の消費者や国民経済全体の厚生により敏感で,任期半ばで迎える議会選挙の公認権を通じて与党を統制することで,政策転換が可能になった。
著者
児玉 佳一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.283-296, 2019-01-20 (Released:2019-02-02)
参考文献数
31
被引用文献数
2

本研究はグループ学習中における教師のモニタリングとサポートの特徴について,小学校5年生1学級における社会科の調べ学習の授業観察および教師への再生刺激インタビューにより事例的に検討した.教師にはウェアラブルカメラを装着してもらい,教師の視野からの授業映像の収集を行った.分析の結果,単元の前半では児童の学習への参加状況や学習者像を掴むために俯瞰的なモニタリングを行っていることが示された.内容面へのモニタリングは,「進行表」というツールを基に行っており,サポートについても進行表を媒介して行っていた.また,軌道に乗せたいという想いから,数多くまたは長めの教師から関与するサポートを提供していた.単元の後半では,リソースの配分に意識を向けて,グループ間差を捉えようとモニタリングを行っていた.また,軌道に乗ってきたという心的余裕から,サポートをしながら他グループへのモニタリングを行う様子も見られた.
著者
平川 幸子
出版者
法政大学公共政策研究科『公共政策志林』編集委員会
雑誌
公共政策志林 = 公共政策志林 (ISSN:21875790)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.231-247, 2018-03-24

近年,途上国を中心に発生している新興・再興感染症が,人々の健康に重大な影響を与える公衆衛生危機として課題となっている。感染症パンデミックをはじめとする公衆衛生危機に備えて,日本でも事前の計画作成を行っているが,想定外の事象が発生することで柔軟な対応が求められる場合も多い。本稿では,日本と米国の公衆衛生緊急事態への対応について,2009年に発生した新型インフルエンザH1N1への対応を中心に分析し,日米の対応の比較を行った。米国においては大統領や州知事が緊急事態宣言,保健福祉省長官の公衆衛生危機事態宣言の発出等により,緊急対応が行われた。日本でも2012年に新型インフルエンザ等対策特別措置法が制定され,緊急事態宣言等を含めて整備されている。
著者
岩出 和也 山口 翔
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.197-210, 2017-10-31

日本のアニメーション産業は,2015年には,市場規模が1兆2,542億円に達するなど,年々拡大を続けている。しかし,市場構造の変化などにより,制作現場には疲弊しており,今後の健全な成長を考える上では課題も多い。 この先,日本的なアニメーション表現の多様性を確保しつつ,世界市場に向けてコンテンツを制作・発信可能な形で制作現場の業務フローを改善していく上では,基本的な制作フローの情報化を業界全体として推し進める必要がある。その上で,課題や改善点についての知見を個別に蓄積するのではなく,業界全体として共有する枠組みも重要になると考えられる。本論文では,アニメーション産業全体の市場構成と整理,制作現場がかかえる課題と情報化による事業効率化の可能性を検討する。
著者
小林 あづみ
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.39-60, 2020-03-31 (Released:2021-03-01)

鎌倉時代の華厳僧、明恵上人(京都栂尾高山寺の中興開祖)について、観音菩薩に関する夢やコメント等を『華厳経』や『華厳経』の内容を絵画化した作品と対比させて考察した。結果、明恵が夢に見た観音は、自身が制作に関与した華厳変相図に基づくものであり、観音の住む補陀洛山を夢に見、普陀山(補陀洛山の写しとして知られる中国の観音霊場)を意識した場で仏事を行ったことが判明した。また、明恵が華厳の守護神として祀った善妙についても、その働きを観音と同一視している。明恵による観音への直接的言及は少ないが、その特色として挙げられる点(紀州での修行、法然による著作への反論、五秘密への傾倒、善妙を神として祀り善妙寺を建立する)の基底には観音があったのではないかと結論づけた。
著者
福井 庸子
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
2010

制度:新 ; 報告番号:甲2958号 ; 学位の種類:博士(教育学) ; 授与年月日:2010/1/26 ; 早大学位記番号:新5206
著者
吉濱 佐知子
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.142-143, 2020-01-15

サトシ・ナカモトを名乗る人物がビットコインの論文を発表して10年が経過した.現在世の中に流通している仮想通貨(暗号資産)は数百種類以上もあり,新技術の発表や取引所への攻撃など,さまざまな観点で連日ニュースを賑わせている一方,企業間コンソーシアムなどのクローズドな環境でブロックチェーンを使う試みも多く,実証実験を超えた本格運用への移行もはじまっている.本特集は,変化の早いブロックチェーン関連技術の最新動向について解説を行い,今後の技術開発を促進するための基礎となるような情報を提供することを目的として企画した.
著者
隅田 祥光 早坂 康隆
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.115, no.6, pp.266-287, 2009 (Released:2009-10-29)
参考文献数
100
被引用文献数
4 8

兵庫県朝来地域には,古生代海洋内島弧の中~下部地殻に由来する夜久野オフィオライト朝来岩体が露出する.本研究では夜久野古島弧の基盤地殻を構成する苦鉄質岩類の起源について,そしてSuda(2004)が報告したミグマタイトの産状分類に基づいた島弧花崗岩類の形成過程について,地球化学的手法を用いたモデル計算を行い検討した.結果,以下のことが示された.朝来岩体では背弧盆地殻に由来した基盤地殻が部分融解し,珪長質メルトが形成された.これら珪長質メルトは集積,上昇する過程で結晶分化しながらマグマへと成長し,キュームレイトに相当するものが主にミグマタイト中のリューコソムとして下部地殻相当域に,一方,残液に相当するものが岩脈,岩床として主に中部地殻相当域に残された.朝来岩体には,島弧下部地殻の部分融解過程と,島弧花崗岩質マグマの形成と発達による地殻の安山岩質化過程を示すまさにその現行段階が残されている.
著者
遠西 昭寿 福田 恒康 佐野 嘉昭
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.79-86, 2018-07-31 (Released:2018-08-22)
参考文献数
27
被引用文献数
4

「主体的な学習」においては, 行為や具体的操作よりも心的・認知的な意味での主体性が問われなければならない。本研究の目的は, 観察・実験における主体的探究者としての科学者と授業における学習者の認知的活動を比較して, その差異から授業を改善することである。その結果, 観察や実験の結果の考察においては, 観察・実験が確証をめざす当該の理論のみならず, その理論を含む理論体系の全体が学習に先行して概観されていなければならないことを示した。さらにアプリオリな理論体系の存在は, 問題の発見から仮説設定, 観察・実験の方法の決定といった一連の過程においても必然であることを示した。すなわち, 観察や実験で演繹されるべき理論(仮説)のみならず, 学習の成果として期待される理論の体系的全体の概観が, 当の学習の前提であるという循環論である。本論文ではこの問題を解決する具体策として, 教科書記述の改善と現在の教科書を使用した対応の方法を提案した。
著者
鈴木 淳
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 文学研究篇 = The Bulletin of The National Institure of Japanese Literature (ISSN:18802230)
巻号頁・発行日
no.46, pp.203-301, 2020-03-16

フランスの自然文学者で美術批評家のエドモン・ド・ゴンクールの『北斎』は、前人未踏の研究成果である。本書は、北斎を、優れたデッサン画家として捉え、十八世紀のフランスに輩出した画家たちの延長上に位置づけ、その絵本、版画、摺り物、肉筆に渉る全作品を網羅的に叙述したものである。近時、本書は、木々康子、鈴木重三、小山ブリジットらの研究によって、パリの骨董商で、ジャポニズムの火付け役を演じた林忠正とS・ビングとの協力、確執といった側面から論及することによって、研究の進展が図られてきた。本稿では、ブラックモンやゴンクールらがいかに北斎に辿り着き、その研究を達成させたかの追求を試みると同時に、ゴンスやデュレなどのジャポニザン、フェノロサ、ラファージらの米国の美術批評家との北斎評価をめぐる対立を振り返ることで、北斎を見出したのが、グラビア美術作家らの愛好と探求心の賜物であることを明らかにした。また、ゴンクールの他の著述で注目すべきこととして、『ある芸術家の家』上下巻の北斎に関する記述を論じた。そこで、ゴンクールは、英国のディキンズによる、北斎の略伝と『北斎漫画』初編を初めとする序文の翻訳の敷き写しを試みているが、『北斎』では、ディキンズの影は払拭され、序文の翻訳は、林との協同作業であることが強調されている。その矛盾点の解明を試み、北斎研究に対するゴンクールの功名心のなせるわざという結論に達した。