出版者
日経BP社
雑誌
日経ものづくり (ISSN:13492772)
巻号頁・発行日
no.607, pp.76-79, 2005-04

愛媛県・松山空港に近い鋼材商社,暗い倉庫の片隅で,その機械は小さくうなりを上げていた(図1)。ローダが機械に持ち込むのは,鉄鋼メーカーが納めてきたものを切断しただけの鋼の丸棒。黒皮も付いている。約60秒後に機械から出てくると,1カ所がカラーのように膨らんでいる(図2)。井浦忠研究所(本社愛媛県東温市)が開発した「軸肥大加工機」の実用1号機が働く現場である。
著者
佐々木 定
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.10, pp.720-725, 2007

日本酒復活のために次の提言がなされた。<BR>・酒税法改正に潜む製造技術的な問題点を指摘した上で米を原料とした醸造酒の原点に戻り, これからの日本酒は「旨味」の研究を行うべき。<BR>・鑑評会の酒質に関し「売れる酒」,「飲んで旨い酒」,「味吟醸」が入賞出来るような審査基準を設けるべき。<BR>・紙パック商品の低価格競争に歯止めをかける必要がある。<BR>醸造技術者として長年官界, 業界に身を置いてこられた筆者の提言は傾聴に値する。
著者
花里 孝幸 荒河 尚 佐久間 昌孝 張 光玄 沖野外 輝夫
出版者
The Japanese Society of Limnology
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.151-167, 2001
被引用文献数
16

これまでなされた研究成果を基に,諏訪湖の動物プランクトンの群集構造と生態系における役割についてまとめた。諏訪湖の動物プランクトン群集では,春にはワムシ類が優占し,夏から秋にかけては優占種が小型枝角類に変わった。優占種とそれらの季節変化は1960年代から1990年代に至るまで大きな変化はなかったようにみられる。諏訪湖では2種のBosmina,B.longirostrisとB,fatalisの遷移に季節的に明瞭な交互性が見られる。すなわち,B,longirostrisが春と秋に優占し,B.fatalisが夏に優占する。B.fatalisの夏の優占度と夏の平均水温やクロロフィル量との間に正の相関が見られたことから,その優占にはアオコの発生が何らかの関わりを持っていることが示唆された。湖沼生態系のしくみを理解するため,大型の隔離水界を諏訪湖に設置して実験的な解析が行われた。それにより,諏訪湖における動物プランクトンに係わる食う一食われる関係や競争関係などの生物間相互作用が明らかにされた。また,沖帯だけでなく沿岸域の水草帯の動物プランクトン群集も調査され,水草帯が複雑な環境を作ること,それが動物プランクトン群集組成に影響を与えることが示された。これらの結果から,諏訪湖の動物プランクトン群集には高い魚の捕食圧がかかっていること,夏の食物連鎖では腐植食物連鎖が卓越していることが指摘された。
著者
荒河 尚 吉田 雅彦 平林 公男 吉澤 一家
出版者
The Japanese Society of Limnology
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.69-78, 1998

河口湖における動物プランクトン群集の経年的および季節的変動を,1993年4月より1995年12月にかけて調査した。期間中輪虫類が16分類群,枝角類が4分類群,カイアシ類が5分類群確認され,なかでもKellicottia longispina,Synchaeta stylata,Bosmina longirostris,Daphnia galeataなどが多くみられた。また,カイアシ類はそのほとんどがCyclopoidaに分類された。さらに過去の報文との比較において,枝角類Bosmina fatalis,Bosminopsis deitersiが近年見られなくなっていることが明らかになり,近年本湖の動物プランクトン群集構造が大きく変わってきていることが示された。
著者
寺本 潔
雑誌
玉川大学教育学部紀要 (ISSN:13483331)
巻号頁・発行日
no.2016, pp.101-116, 2017-03-31

観光という事象を総合的学習や社会系科目に学習課題として導入することの意義について実証的に出前授業を通して明らかにすることが,本稿の目的である。観光は,沖縄県においてとりわけ重要な産業になっており,那覇市に位置する高校においては普通科の内容としても扱うに相応しい内容と思われる。折しも,スーパー・グローバル・ハイスクール(SGH)の指定を受けている高校において提案性に富む実験的な授業が実施できた。今回,マーケティング基礎の内容を含む教材や地域ストーリーづくりの演習問題の開発により,観光教育は今後の沖縄県における人材育成としても大切なテーマであることが確認できた。
著者
荻原 新八郎 長田 勉 立野 勝彦
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.531-538, 1992-09-01

肩関節周囲炎患者にはたいてい鉄亜鈴またはアイロンを持たせ, アイロン体操と称してコドマンの振子運動を行わせている。その理論は, 重りが肩関節の軟部組織を伸張し, その周囲筋の弛緩を助長させると考えられている。しかし, 重りを手で握ることによる手部・前腕の筋群の収縮が肩関節周囲筋の収縮を生じさせ, それが振子運動の目的を損なうのではなかろうか? 右手首に2kgの重錘バンドを巻かせるか, あるいは同じ重さの鉄亜鈴を持たせ, 振子運動時の三角筋および棘下筋の積分筋電図を比較した。また振子運動の方向別, すなわち前後, 左右, および時計回り分回し運動による比較も検討した。被験者は15名の理学療法学科の男子学生で, 被験者自身も対照群とした。その結果, 積分値はすべての筋において重錘バンドを巻いて振子運動を行うよりも鉄亜鈴を持って行う方が有意に大きかった。振子運動の方向別については, 前後方向の動きの場合には三角筋中部線維の積分値が有意に小さく, 左右方向と時計回り分回し運動の場合には三角筋前部線維のそれが有意に小さかった。棘下筋の積分値はすべての方向の動きにおいて有意に大きかった。この実験の結果, 重錘バンド・鉄亜鈴を用いた振子運動ともに肩関節周囲筋の収縮は生じたが, 前者の場合, その程度が小さいことが判った。したがって重錘バンドを用いる方が目的を達するのに適しているのではなかろうか。また振子運動は前後左右の動きのみ行わせ, 分回し運動は避ける方がよいであろう。上肢の末端部に重りをつけない振子運動時の積分筋電図も以上の結果と比較・検討してみる必要がある。
著者
黒崎 文也
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
1981

博士論文
著者
井口 克郎
出版者
日本医療経済学会
雑誌
日本医療経済学会会報 (ISSN:13449176)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1-27, 2013-03-30
参考文献数
26

介護保険導入以降、介護現場では働き手の確保とケアの質向上が課題となっており、介護の質を評価しそれを労働者の待遇へ反映させる試みが進行している。しかし介護サービスのあり方は本来、労働者の能力だけでなく施設形態や分業体制、労働者の労働条件、延いてはそれらを規定する制度・政策に左右される。以上を筆者による介護労働者のタイムスタディ調査等から明らかにし、ケアの質の把握・向上のために必要な視角を提示する。
著者
中井 睦美 中井 均
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.4, pp.170-179, 2008-04-15
参考文献数
26
被引用文献数
8 1

初等教育教員免許取得希望大学生および中等教育理科教員免許取得希望大学生を対象として実施したアンケート結果を解析したところ,現在の高等学校の教科科目選択制度のもとで,理科4科目(物理・化学・生物・地学)をまんべんなく学習してきた学生は1割程度であり,多くの学生は化学・生物の2科目のみを履修していることが明らかとなった.また,ゆとりをめざす教育による度重なる学習指導要領の改訂によって,小学校・中学校・高等学校の理科の時間数は大きく減少し,その結果,教職課程を履修する学生が小学校・中学校・高等学校を通じて行う実験・観察の絶対的な時間数は減少している.特に,小学校理科の授業内容の約60%は地学・生物に関した内容であり,実験・観察も多く,初等教員養成系学生の理数系学力の低下は深刻な問題である.この状況を改善するためには,現在考えられている現職教員への研修制度の充実や,理科支援教員制度の創設だけでは不充分である.教育職員免許法・学習指導要領を変えて,小学校・中学校・高等学校での理科の時間数を増やし,実験・観察の機会を増加させる,免許更新の研修制度に教科研修を大幅に導入する,全ての小学校に理数系教科の専科教員を導入する,理数系教科専科教員の専門性の認定をする制度をつくる,などの方策の検討が必要である.
著者
岡原 聡 奥田 邦晴 谷村 広大 島 雅人 片岡 正教 岡崎 由 宮垣 慶子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】我々が提唱する福祉型植物工場は,軽負荷かつ坐位での農作業が可能になるため,高齢者の就労年齢の延伸化に貢献するとともに障がい者,特に低賃金かつ就職難にある重度障がい者にも雇用促進,職域拡大,就労賃金の向上を図れる可能性がある。さらに植物工場の特徴として,室内環境で設置場所を自由にできることから都市部の高齢者や障がい者が暮らすコミュニティで事業展開できるため,アクセシビリティーの面からも注目を集めている。第48回全国理学療法学術大会では,リフトロボットを活用した完全人工光型植物工場における作業環境のユニバーサルデザイン化により,高齢者や障がい者の坐位作業での就労の可能性を示した。その後,奥行きが少ない縦50cm×横50cmに縮小した特製の定植板トレーや特製作業棚の開発,農業資材の導入など,作業環境の整備を進めている。一方,上肢を空間位で保持した肢位での作業が強いられることにより肩関節や頸部周囲筋群の活動が高まり,上肢負担が課題となっている。そこで本研究では,植物工場における頚髄損傷者の就労を目的とし,アシストシステムの一部に「グレイパー」という既存のブドウ収穫時の上肢アシスト機器を使用することで,坐位作業の上肢筋活動の軽減が可能であるかを検討した。【方法】対象は,男性頚髄損傷者3名(Zancolliの分類:C6A,BI,BIIの各レベル1名),平均年齢34±10歳であった。作業課題は,縦50cm×横50cmに9つの穴を空けた特製の定植板トレーを用い,9つの苗を植える「定植」を行わせた。植物は本学の植物工場研究センターで実際に育成している定植用の苗(約10g)を用いた。作業は事前に十分な説明を行い,植物を丁寧に扱うよう指示を与え,作業速度は任意で実施させた。測定条件は,上肢アシスト機器の有無による2条件とし,ランダムに実施した。なお,作業環境は対象者が日常生活で使用している車椅子を用い,作業台の高さを70cm,作業台と体幹の間隔を15cmに設定した。筋活動は,表面筋電計(Noraxon社製)を用い,作業中の筋電図電位をサンプリング周波数1.5kHzで記録し,作業開始から作業終了までを解析区間とした。対象筋は,農作業に伴う筋骨格系障害が上肢に出現することから,対象者の残存筋のうち,利き手側の僧帽筋,大胸筋,三角筋前部,三角筋中部,上腕二頭筋の5筋とした。測定波形は整流化し,各筋の最大随意収縮(Maximum Voluntary Contraction:MVC)を基準に正規化(%MVC)し,2条件における作業全体の平均%MVCを求め比較した。また,上肢アシスト機器有りでの平均%MVCを上肢アシスト機器無しでの平均%MVCで除し,最も軽減される筋の抽出を行った。【倫理的配慮,説明と同意】研究倫理審査委員会の承認を得た後,対象者に本研究の目的および内容について十分に説明し同意を得た。【結果】作業全体における平均%MVCは,僧帽筋,大胸筋,三角筋前部,三角筋中部,上腕二頭筋の順に,上肢アシスト機器無し条件では12.5±2.2%,14.9±10.7%,8.8±4.8%,6.4±3.3%,1.2±0.5%であり,上肢アシスト機器有り条件では10.4±2.3%,14.2±9.1%,7.7±3.6%,5.3±2.1%,1.2±0.7%であった。また,上肢アシスト機器有りは無しに比べ,作業中の平均%MVCが僧帽筋において最も軽減した。【考察】本研究により,上腕三頭筋の麻痺を有する第6頚髄損傷者でも植物工場の作業遂行が実用レベルで可能であることが分かった。また,定植作業時には僧帽筋と大胸筋の平均%MVCが10%を超えており,上肢アシスト機器を使用することで僧帽筋の活動量が軽減することが明らかとなった。福祉型植物工場におけるアシストシステムは,完全な自動化やロボットのようなものではなく,あくまでも働き手が坐位でも主体的に,そして可能な限り手動操作を基本として作業できる上肢の負担軽減機能を搭載することにより,個々人が有する能力や潜在能力を引き出し,筋骨格系障害を予防しつつ作業効率を維持できること目指している。今回使用した「グレイパー」は,形状記憶合金を用いているため上下・前後への作業時に下方からの柔軟な支えが可能でありつつ,支柱固定部が回旋を妨げないため,作業範囲が横70cm×奥行き50cm必要である定植作業においても下方からの上肢支持が可能であった。一方,形状記憶合金の元の形に戻ろうとする力が,上肢挙上位からの肩関節伸展・内転時の抵抗になり,大胸筋の筋活動が高まる場面もみられ,就労に活用するには習熟が必要であることが分かった。【理学療法学研究としての意義】頚髄損傷者の身体特性を捉えた理学療法学研究により,重度身体障がい者の農業分野への就労支援に寄与するとともに,労働者の筋骨格系障害の予防や作業効率を維持できる就労環境を整え,豊かな暮らしを支える一助になり得る。
著者
戸田 偉 岡山 正歩 川谷内 哲二 矢部 篤雄
出版者
金沢大学
雑誌
高校教育研究 (ISSN:02875233)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.69-103, 2005-12

本校では,一昨年度より観点別評価を試み,昨年度より1年生の通知表に観点別評価を記載することとなった。数学科では,現状を最大限に活かす形で,教員の極端な負担増にならないような観点別評価の方法として,評価問題による観点別評価に取り組んでいる。本校の実状を踏まえて,観点別に評価するための具体的な評価規準を作成し,その評価規準の到達度を測るための観点別評価の問題を作成している。現段階は,数学I・A・II・Bの各科目について,計9領域における評価規準と評価問題を作成し,その評価問題によって観点別評価を実施した。その観点別評価についての中間報告である。
著者
小杉 正太郎 大塚 泰正
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.55-62, 2001-05-20
参考文献数
6
被引用文献数
8

我々は1980年以来, 総計約10,700名の従業員を対象として, 積極的メンタルヘルス活動に依拠する心理カウンセリングサービスを展開している. 我々のカウンセリング方法は, 心理ストレスモデルに基づくものであり, 以下の3段階に分割される. 第1段階は, 職場ストレス・スケール(JSS)による一斉調査である. 一回の調査は500名程度の従業員を対象として実施され, 調査結果は, 結果通知表によって社内便により全従業員に通知される. 第2段階は, 不適応状態にある従業員に対して実施される半構造化面接である. 面接対象となる従業員は, JSSの心理的ストレス反応得点によって判断される. 面接者は, JSSの構成要因, すなわち, 職場ストレッサー, コーピング方略, ソーシャル・サポート, 心理的ストレス反応, のそれぞれについて被面接者に説明を行う. 第3段階は, 心理カウンセリングである. カウンセリングの対象となる従業員は, 以下の基準により判断される. 1)来室者自らがカウンセリングを希望する場合, 2)精神疾患が疑われる場合, 3)職場ストレッサーが低得点であるにもかかわらず, 心理的ストレス反応が高得点である場合, 4)家庭における問題が認められる場合. これら4段階を踏襲することによって, 従業員のカウンセリングに対する抵抗を低減することが可能となると考えられる.
著者
上谷弘平 田中成典 北川悦司 吉田博哉 中村健二
雑誌
第74回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.1, pp.921-922, 2012-03-06

今日,SNSやアミューズメント分野において,デフォルメ顔画像が幅広く利用されている.しかし,既存のデフォルメ顔画像生成技術は,顔のパーツ作成や顔の特徴点を取得するのに手間とコストがかかる問題などがあるため,簡単にデフォルメ顔画像を生成することができない.そこで,本研究では,顔領域内の特徴点を自動取得することで,誰もが簡単にデフォルメ顔画像を生成できるアプリケーションの開発を目指す.さらに,デコメや名刺といった様々な用途での利用を想定し,デフォルメ顔画像に表情変化やアニメーションなどの効果を追加する機能も作成する.なお,開発には,手軽に素早くゲーム感覚で利用できるWindowsPhoneを用いた.
著者
河口 真一郎 石田 正己
出版者
公益社団法人 日本航海学会
雑誌
日本航海学会論文集 (ISSN:03887405)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.33-46, 1977

2測定点の偶然誤差の相関度を調べるに際し,一方の偶然誤差の時系列を入力とし,他の偶然誤差を出力とする応答系としてとらえ,応答特性により周波数領域での相関度を検討した結果,函館,釧路,稚内における各レーンの夜間の偶然誤差の変動は,パワーの大部分を占める低周波領域では,確率過程として独立な現象である事が判明した。更に,定常正規確率過程の極大値の分布とその特性を,デッカ位置線のスリップ・レーンとの関係において検討した結果,スリップ・レーンを防止する為には,偶然誤差の標準偏差が0.45lane以下でなければならない事が明らかとなった。最後に,主従局からの電界強度を入力とし,デコメータの読み取り値を出力とする2入力1出力応答系としてとらえ,その応答特性を解析した結果,電界強度,デコメータの読み取り値共に大部分のパワーを有している低周波領域では,両者の相関は一般に低い事が判明した。