著者
鈴木 隆子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

今回の事例において、エスクエラヌエバのアメリカ事務所は閉鎖し、ニューヨークを基点とする国際的な出版会社の投資によるソーシャルビジネス化の動きは8か月の協議の末とん挫した。つまり、4年の間にアメリカとの関係の中で様々な動きはあったものの、ビジネス化はなかなかうまくいかなかった。そのため当初目的としていたこれをモデルとした教育開発モデルにはつながらなかった。しかし今後も教育支援するための投資を募り、質の高い農村教育を広めていくことは重要である。今回の経験から、賛同投資家の増加に貢献するため、新たな研究課題「途上国農村における初等教育の教育成果に関する調査―コロンビアでの追跡調査」が生まれた。
著者
内田 みどり
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1960年代以降、「国家安全保障ドクトリン」に基づいて軍・警察が非暴力的な組合運動や左翼運動をも弾圧するようになったウルグアイでは、1973-85年の軍事政権下で多くの国民が投獄・拷問された。こうした弾圧をさけるため、おもに隣国アルゼンチンに逃れた人々のなかには「コンドル作戦」の対象となって強制失踪させられたもの、作戦時に殺害されたもの、暗殺されたものがいる。2000年8月、バッジェ大統領が国民和解のため設置した「平和のための委員会」は、免責の是非については決着済みとしながら、強制失踪被害者と目される人々の遺体を発見し、遺族に返すことに活動を限定し、2002年末に任務を終了した。この委員会はウルグアイで長い間無視されてきた強制失踪問題が存在すること、失踪に国家が関わっていたことをはじめて認めた点で、強制失踪被害者遺族から評価された。だが軍部が情報を提供せず、謝罪もせず、また委員会の調査では被害者の遺体の所存を突き止めることはできなかったことなどから、委員会は加害者と被害者の和解や社会の平和ももたらしたとはいえない。しかも米州諸国における強制失踪問題は新たな展開をみせ、委員会設置当時のバッジェの思惑(遺体発見に限定し訴追は回避)を超えている。まず、米州人権裁判所はペルーにかんし免責法が米州人権条約違反であるとはっきり認めた。2003年5月に就任したアルゼンチン・キルチネル大統領が自国の免責法廃止と軍政時人権侵害の訴追を決めたこともバッジェとウルグアイに対する圧力となっている。
著者
内田 みどり
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

2013~15年には、訴追に熱心だったモタ判事の異動や失効法時効不適用法への違憲判決等、司法府の軍政期人権侵害訴追に対する冷淡な姿勢が目立った。訴追に冷淡なムヒカ大統領の意向が間接的に影響を及ぼしているという指摘もある。2014年の大統領選挙では軍政をめぐる記憶を政治利用してきた伝統政党の候補は過去とのつながりを隠し、逆に拡大戦線がそれをあてこするという記憶の政治利用があった。元ゲリラ/人質のウィドブロ国防相は軍と沈黙の掟を共有し人権団体を非難するなど、ウルグアイの記憶闘争は「被害者」が分裂し、錯綜している。今後は記憶の政治利用の長い伝統の中に、この記憶闘争を位置づける視点が必要である。
著者
橋井 美奈子 樋口 善博 松川 茂 東田 陽博 東田 陽博 松川 茂
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

CD38は細胞内カルシウムイオン(Ca2+)上昇に働くセカンドメッセンジャーであるサイクリックADPリボース合成酵素としての働きを有する。質量分析によりCD38に結合するキナーゼ (PKと略) を見いだしたので、CD38により活性化する生理作用がPKの調節を受けるかを検討した。CD38発現細胞ではCa2+振動などCa2+シグナル増強作用がみられ、PK阻害によりこの効果は抑制された。よってCD38により増強する細胞内Ca2+シグナルにPKが関与していることがわかった。
著者
児島 明
出版者
鳥取大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

越境移動する人びとの教育に関する先行研究を検討して浮かび上がってきたことの一つに、いわゆる「若者の危機」について数多くの研究が蓄積されるなかにあって、移動する青年の「移行」については、ほとんどまともな研究がなされていないことがあった。これは、従来の移行研究が、「日本人」を前提としたナショナルな枠組みに暗黙のうちにとらわれ、移動あるいは移動する人びとの視点を欠いてきたことに起因するものと思われる。そこで、国境を越えた移動のなかで青年期を過ごすブラジル人青年の移行経験について、かれらが自身の「自立」や「自己実現」をどのように意味づけ生きているのかに注目し、日本とブラジル両国での聴き取り調査を行なった結果、かれらの語りからは、移動による獲得と喪失の経験をめぐって、「獲得の持続」「喪失への転化」「喪失の累積」「獲得への軌道修正」という四つの物語が析出された。とりわけ「獲得への軌道修正」は、度重なる移動による「喪失」経験の累積を断ち切る可能性として、移行支援の文脈からも興味深いものであった。ただし、「軌道修正」の可否は、当該の青年が居住する地域においてアクセス可能な諸資源の有無、あるいはそうした諸資源へのアクセスを可能にしてくれる知人・友人や支援団体(社会関係資本)の有無といった偶然性に大きく左右される。その意味では、ニューカマー青年の移行の結末は、かれらの自己決定ないし自己責任に安易に帰されるべきものではない。移行期を生きる青年はさまざまなゆらぎのなかを生きており、国境を越えた移動の経験もそうしたゆらぎをもたらす大きな要因の一つである。人間形成の途上にあって、ゆらぎながら生き方を模索する可塑的な存在としてニューカマー青年を理解し、どのような局面でどのような働きかけが望ましいかを熟慮することは、今後、ニューカマー青年に対する実効的な移行支援を構想するにあたり重要なポイントとなる。
著者
五十君 麻里子
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本年度は、ローマ法における合意についての研究を行うため、とりわけ諾成契約と問答契約の関係に着目した。合意のみによって効力を発生する諾成契約はローマで「発明」されたと言われるが、この諾成契約に伴いあわせて問答契約も締結されるケースがまれではなかった。このことは、売主の担保責任が売買契約訴権で追求できるようになったのちにも、担保責任を問答契約で設定していると思われる事例が扱われていることからもわかる。またウァッローの『農書』にも家畜売買のマニュアルとして、重畳的に問答契約を締結することが勧められる。このような事例から、必ずしも合意の法的効力が当然と認識されていたのではないのではないか、との仮説に達し、2005年10月に熊本大学において開催された日本法制史学会研究大会にて「合意の法的効力-諾成契約債務と問答契約債務の関係をてがかりとして」と題し、報告を行った、さらにこの研究成果については、本経費から一部支出して招聘したエラスムス・ロッテルダム大学、タモ・ワリンガ博士とフローニンゲン大学、ヨハネス・ロキン教授をアドヴァイザーとして迎え、貴重なご意見をうかがった(両先生はこれ以外にも本務校にてそれぞれ2度の講演をおこなっていただいた)。この研究に際しては法学関係文献のみならず、ひろくローマ史文献の渉猟が必要であったため、これにつとめた。
著者
井上 奈良彦
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

「アカデミック・ディベート」と呼ばれる日米の教育・競技を目的とするディベートの談話構造の分析方法を再検討し暫定的モデルを提唱した。録音・録画したディベートを文字化しデータベース化した。暫定モデルを用いて実際のディベートを分析した。日本人参加者による日本語のディベートと日本人参加者による英語のディベートについては、ほぼ計画どおりの数の録音・録画をすることができた。アメリカ人による英語のディベートについては、収録対象としたディベートの試合での参加者の変動などにより予定より少ないデータ数となった。議論の論理構造(特にトゥールミンのモデル)を分析の枠組みの一つとして検討を加えた。コード化を行う場合、あるコード化単位(命題)がモデル内のどの要素に該当するかの認定はディベートが行われているスピーチ・コミュニティーの成員(研究代表者を含む)が発話者の意図性を推測して行った。このモデルを利用して時系列に沿って生成される談話構造の記述として利用し、日米のディベートの談話構造の暫定的な比較分析を行った。さらに詳細な談話構造の分析を行うため、スピーチアクトを利用した「言語学的アプローチ」による談話構造の分析の方法を援用して実際のディベートの分析に当てはめた。ここでは特にディベート参加者の間でほぼ共有されているディベートに特化した「手(move)」や「行為(act)」のレベルでの要素を設定しコード化のための基礎的な分析を行った。各スピーチや反対尋問における談話要素の時系列に沿った発話位置と要素間の階層関係を規定するとともに、それらの相互作用(議論の提示、証明、質問、応答、反論など)に注目した。分析の成果は今後学会発表、雑誌論文の投稿を行う予定である。
著者
井上 奈良彦 蓮見 二郎 山形 伸二 青木 滋之 金子 晃介 是澤 克哉 筧 一彦 上條 純恵 諏訪 昭宏 久保 健治 竹中 野歩 加藤 彰 ZOMPETTI Joseph CARLSON Shanna KIPP Peter
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ジェネリック・スキルやアカデミック・スキルとしての議論教育は、近年ますますその重要性を高めている。本研究は、これまでの研究の不備を埋めるべく、議論教育用eラーニング・コンテンツを作成するための基礎的研究を行った。具体的には、(1)議論教育関係の文献レビュー、(2)議論教育の効果測定テストを作成と検証、(3)議論モデルの開発検証、(4)議論教育支援サイトの作成と検証、(5)議論教育とディベートの教材作成、等を行った。
著者
水谷 幸正 田宮 仁 藤本 浄彦 山口 信治 雲井 昭善 藤原 明子 藤腹 明子 久下 陞 中村 永司
出版者
佛教大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

1.本年度は研究最終年度に当たり、当初の研究計画に添い報告書作成に向けて月1回の例会を開催した。その間に、次のような成果を得た。まず前年度までに一応の成果が得られた「仏教によるタ-ミナル・ケア方法論の開拓」ということでは、その方法論を検証を兼ねて仏教の祖師方のタ-ミナル・ステ-ジに当てはめ、再吟味を行なった。2.また本研究のもう1つの目的であった、タ-ミナル・ケアにかかわる仏教者の養成ということでの仏教学(宗学)専攻学生を対象としたカリキュラムに、医療看護関係者の意見も聴取して吟味を加え、より実際的なものとすることができた。4.これらの方法論開拓やカリキュラム作成という、本研究の主たる目的を中心に、その典拠となるべき仏典や仏教思想を吟味確認し、また研究分担者のそれぞれの専門分野からの研究をまとめ報告書作成に臨んだ。5.なお、各研究分担者は本研究の成果を以下の各種学会・セミナ-において報告等を行なった。(1)京都ビハ-ラの会研究会・於佛教大学四条センタ-・毎月2回第1,3金曜日、(2)佛教大学社会学研究所宗教研究会於佛教大学・11月14日、(3)第12回国際社会学会・於スペイン・マドリッド・7月9日、(4)第14回死の臨床研究所・於札幌市教育文化会館・10月13日、(5)‘90第2回日本生命倫理学会・於大阪日本生命講堂・11月3日、(6)日本仏教社会福祉学会第25回大会・於稲沢女子短大・11月11日。また中華民国で開催された国際仏教学術会議・12月23日〜29日、佛光山仏教青年学術会議・1991年1月1〜5日にも報告を行なった。
著者
串田 久治
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は彗星と流星の観測記録ととともに生まれる「予言」記録を整理することによって、これまでの一連の研究で明らかにした古代中国の天文学と「予言」の政治学を更に補強し、古代中国の「予言」が当時の政治や社会を動かす原動力となっていたことを解明して、董仲舒の災異説の現実的役割を中国古代社会思想史上に位置付けることにある。古代中国人が五惑星の異常運行に劣らず恐れたのは彗星と流星の出現・消滅であった。その出現と消滅に、古来為政者が無関心ではいられなかったのは、自然界と人間世界との相関関係を受け入れ、天体の神秘は地上の政治に対する天の意思表示であると考える古代中国では当然のことである。このことは、中国で天文学が科学としてよりも国家占星術として発展していった事実とも符合する。ところで、董仲舒が儒教国教化のアンチテーゼとして提唱した災異説がそれ以後の社会に多大な影響を与えたことは周知の事実であるが、災異説が広く受け入れられて社会に定着するには、言説だけでは不充分である。言説を理解することと納得することとは同じではない。誰もが目にすることのできる神秘的現象によって現実にあった政治的・社会的事件・出来事が説明され、その合理性が納得されて始めて災異説の言う「天の譴責」は為政者に対して意味を持つ。しかし、前漢末、讖緯説の隆盛とともに災異説が本来の批判精神を喪失すると、彗星・流星の出現は「予言」を創出し、五惑星の異常運行にまつわる「予言」が果たしたと同じように、災異説の批判精神を見事に継承して人間社会への警鐘として機能し続けたのである。
著者
針塚 進 古川 卓
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

軽度の痴呆化した高齢者が対人関係場面において、他者の情動理解をどのようにするのかを明らかにするため、対人関係投影法テストを作成した。この対人関係投影法テストは、痴呆化によって衰える「記名力」や「記憶力」を測定するためのテストではなく、対人関係場面における、人の情動理解力を測定するものである。そのために、対人関係場面を描いた図版を11枚作成した。このテストの標準化のため、20代の若者、在宅高齢者、介護老人保健施設入所者を対象にデータを収集し、被験者が投影するであろう情動の種類と内容の標準反応を特定化した。テストの標準化は継続研究となった。さらに、情動理解と情動表出を検討するため施設入所高齢者を対象とした対人交流場面を以下のように構成した。(1)「動作」法による(リラクセーションを中心とする)相互的関わりを行う場面。(2)「行為」による(回想法グループ活動において高齢者が回想した場面に基づいたロール・プレイング)相互的関わりを行う場面。(3)標準的なコミュニケーション場面(動作も行為も積極的には用いない、回想法グループ活動場面、動物や風景の写真を見ながらの会話場面)。(4)写真刺激による回想法的場面。以上の結果は、次の通りである。(1)で動作法によって高齢者のうつ状態が減少した。(2)では回想法にロール・プレイングなどの行為化を導入したことで情動理解や情動表出が増加した。(3)では実施前後において、高齢者のテスト反応に変化が見られなかった。(4)では軽度痴呆化状態の高齢者は、「ひまわり」「海」「赤ちゃん」等の写真に対してポジティブな情動反応を示したが、「犬」などのペットになるような動物等には余り示さなかった。
著者
児玉 康一
出版者
愛知教育大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究計画期間内に下記の携帯電話ソフト3種を開発した。1.色情報のリアルタイムな変化を音楽(和音のアルペジオ)として表現するソフト。携帯電話内臓カメラからリアルタイム画像を取得する事が困難であったため、カラーセンサと赤外線通信モジュールをワンチップマイコンで制御し、カラーセンサで取得したリアルタイムの色情報を、赤外線通信を使って携帯電話に送信するハードウェアを作成した。開発したソフトはこのハードからの色情報を音楽として表現するものである。これを使えば、透過光量を測るだけの従来型の感光器では識別困難な、BTB溶液の青と緑の識別を明確にできる事を確認した。盲学校の理科実験での試用には至っていないが、準備はほぼ完了しており今後行っていく予定である。2.携帯電話内臓のカメラを使って撮影した画像の中央部の色(RGB値)を認識し、これに応じた色の名前を、携帯電話の音楽再生機能を使って、読み上げるソフト。色の名前は、視覚障碍の生徒と晴眼者とのコミュニケーションに有効であり、いろいろなものの色を調べるのに使える。3.携帯電話内蔵のカメラを使って7セグメントデジタル表示の数値を認識し数値として読み上げるソフト。これを使えば、音声出力に対応していない各種測定器(pH,重量等)に対して簡単に音声出力機能を付加する事ができる。「市販されている安価な測定器を盲学校の理科実験で使えないか?」という盲学校の先生の要望を形にしたものである。いずれのソフトも、DoCoMoのiアプリでの実装と動作確認は完了している。今後、盲学校の先生への広報はもちろん、より多くの人に使ってもらえる様に、SoftBankのS!アプリなど、他の携帯電話への実装を引き続き行っていく。
著者
山田 真司 山田 典子
出版者
青森県立保健大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

唾液アミラーゼ活性によるストレス測定値それ自体,および測定値の前後変化と質問紙による主観的な質問項目(疲労感,興味,楽しさなど)との関連については一つの質問項目を除き乏しかった.従って,これらの主観的な感覚は複数の要素から構成されたものであり,唾液アミラーゼ活性によるストレス測定値のみによって代替することは困難であると思われる.ストレス測定値と関連の高かった質問項目は「これから計測するストレス値は高いだろう」というものであったことから,唾液アミラーゼ活性によるストレス測定値に示される客観的な身体状況が主観的にも的確に評価できているという結論が導かれた.
著者
小野寺 康之
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ホウレンソウからは,雄株および雌株の他に雌雄双方の機能を備えた間性株も見出される.これらの多様な「性」はホウレンソウにおける効率的F1採種に必要な受粉制御技術を確立する上で重要な形質である.本研究では,性決定遺伝子座の構造解析を試みた.先ず,Y遺伝子座の解析からは,この遺伝子座を含む周辺領域は減数分裂期の相同組み換えが抑制された雄特異的領域であることが示唆され,この領域は少なくとも840 kbp以上である可能性が示された.さらに,この領域の一部の配列を決定した結果,大部分が新規のレトロエレメントで占められていた.その一方で,タンパク質コード候補遺伝子は僅かに4個しか見出されなかった.
著者
五味 紀真
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

特別研究員報告書にも書いた通り、当初の研究実施計画を変更する必要があった。なお、変更に当たって研究の最終的な目標、および概略に関しては一切変更していない。本年度は第一に、一神教・多神教問題と精神分析との関係性についての基礎的な文献や先行研究を分析した。4月に行った発表「Den Entzug eines Gottes nachbereiten一神教の脱構築とエクリチュールの歴史についての覚書」では、デリダの脱構築と、フロイトの『モーセと一神教』を中心とした問題との関係性をある程度明確に分析することができた。また、レヴィ=ストローズから始まりジャン=ピエール=ヴェルナン、ピエール・ヴィダル=ナケに至る構造主義的な神話分析の研究を読解することによって、これまで本研究が主に依拠してきたハイデガー-キトラーによる「解釈学的・存在論的神話分析」と前者との差異を子細に分析することができた。後者においては木庭顕『政治の成立』から多くの示唆を得ることができた。また、精神分析に関しては、これまで主に分析してきたフロイト、ラカンに加え、メラニー・クラインら対象関係論の分析家たちの著作の読解も始めた。対象関係論は、研究実施計画にも記したドゥルーズらによる資本主義分析において大きな役割を果たしているため、デリダの脱構築と一神教の問題、およびドゥルーズの資本主義分析を関連付けて論じるために、ラカン派に劣らず重要であると思われる。残念ながら計画に記したように本年度中に以上の研究を博士論文としてまとめることはできなかった。今後も研究を継続し、実施計画にある通りの研究を完遂することを目指し、本研究を続けていきたいと思う。
著者
齋木 悠
出版者
名古屋工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

オンサイト発電用マイクロガスタービンで使用される小型燃焼器では,低レイノルズ数と高い出力変動に伴い,良好な燃焼特性の維持が極めて難しい.そこで本研究では,ガスタービン燃焼の典型的な熱流動であるメタン・空気同軸噴流火炎を対象として,同軸ノズル内壁に配備した微小噴流アクチュエータ群を用いた新たなアクティブ燃焼制御手法を構築した.火炎上流における渦運動およびメタン・空気の混合過程をアクチュエータにより柔軟に制御した結果,異なる出力条件において,保炎特性および燃焼排出ガス特性を著しく改善できることを明らかにした.
著者
清水 裕子 上田 伸男
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

快適性・感性の評価を客観的に行う方法を確立し、衣服の快適性・感性に影響を与える要因相互の関係を明らかにする目的で、客観的指標として脳波を取り上げ、解析を行った。また、衣服だけではなく、食物のおいしさ、好ましさと生理特性との関係を明らかにするために、検討した。結果は以下のとおりである。(1)極端な冷房による不快感と脳波の関係を検討した。冷房が苦手な被験者群と冷房が苦手でない被験者群との間では、主観評価、皮膚温について有意な違いがみられた。脳波については有意差ではなかったが、冷房の苦手な被験者群の方が、全般的にα波の出現は少ない傾向がみられた。(2)人体を圧迫する衣服に関しては、素材の異なる2種類のガードルで、サイズが合ったものと、ワンサイズ小さいものの合計4種類のガードル着用による快適感・覚醒感・圧迫感の調査と脳波の測定を行った。ガードル着用時のα波のパワーの比率は、日常的にガードルを着用していない被験者の方が全般的に減少しており、非着用者にはガードル着用による精神的な緊張がみられ、主観調査と共に、日常の着用状態による違いがみられた。(3)衣服の快適性の客観的な評価に、脳波の時間的空間的相関を検討する武者利光らの感性スペクトル解析法を用いて検討を行った。絹、綿、麻、ポリエステル新合繊を用い肌触りの異なる衣服を作成し、これらブラウスの着心地のよさとの関係を調べた。感性スペクトルは個人による差がかなり大きいが繊維による違いが認められた。(4)好きな食べ物と嫌いな食べ物を被験者に食べさせ、脳波、心電図、皮膚表面温度、鼓膜温度、心理評価を行った。脳波の変化としては、嫌いな食べ物を食べることにより、α波の低下、心拍数の増加がみとめられた。以上のような研究の結果、脳波測定と解析を用いて、衣服や食物に関した快適性の客観的な評価を行うことができることが示唆された。とくに、寒さを防ぐための衣服の効果、衣服による拘束のような不快感、食物の好悪に関した快・不快に直接反映されることがわかった。
著者
立川 光 中原 壽喜太
出版者
香川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

当初は画像の各関心領域の演算を超高速画像処理専用ボードを用いてハードウェアで処理させる方針であったが、ソフトウェアによる方式にした。このため、フラフィカル ユーザーインターフェースの部分を作りやすい言葉(Visual Basic)で解析ソフトを開発中である。各画像を大域的領域に分割する組み合わせはほぼ無限大になるが、最適な手順を選択する方法として、ニューラル・ネットワーク、あるいは遺伝的アルゴリズムを用いることを検討し始めた。臓器レベルの画像だけでなく細胞レベルの動態機能解析にもとりかかり、カルシュウム・シグナリングなどの応用に期待がよせられている。
著者
堂野前 彰子
出版者
明治大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

韓半島との関係が深い日本海周辺地域に限定し、(1)文献研究と(2)フィールド調査を行うことから、日本海を利用した交易の様相を総合的に捉えることを試み、渡来人の移動とも重なる古代の「交易」ルートを解明することにより、古代日本文学や当該地域の寺社縁起譚、民間伝承等の新しい解釈を行った。また比較研究として琉球説話集『遺老説伝』や韓国仏教説話集『三国遺事』の研究に取り組み、「交易」の視点を導入した解釈や研究方法を提示した。
著者
竹田 等
出版者
北九州工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

研究目的近年、小学校第3学年から学ぶ理科(科学)離れが問題になっている。理由の一つに、小学生にとって学校などで色々なことを学ぶ機会があるにもかかわらず、学んだ知識が、どのようなことと繋がり何に役立てることができるのか分からないことが考えられる。その小学生にとって、平成23年3月11日に発生した東日本大震災は記憶に新しい。その震災で注目された一つに、太陽の集光利用がある。そこで、小学生が興味を示す太陽の集光を利用する方法として、食べた後に捨てられるポテトチップスなどの個包装の裏面の光沢を利用して簡単に作れる太陽光集光器を製作し小学生対象の出前授業用の実験教材を作ることとした。研究方法1. 集めたポテトチップスやチョコレートなどの個包装の裏面の油汚れなどを落とし光沢を出した。2. 不要なダンボールを利用して個包装を貼り付け太陽光集光器の試作品を作った。3. 水を入れた缶を2本用意し1本は試作した太陽光集光器で照射を行い、もう1本は太陽光の直射のみとして午前9時から午後4時まで温度測定を行った。4. 文部科学省新学習指導要領に準拠した「光の性質」を知る(学ぶ)ことができるように反射・集光・光の当て方と明るさや暖かさが分かる工夫を行った。5. 出前授業の実施に向け北九州市内小学校の行事を調査した。研究成果試作した太陽光集光器は、缶の水温を早く上昇させ太陽光集光器として使用できることが分かった。この集光器を、小学生第3学年の実験教材用に透明のアクリル材にお菓子の袋を貼り付け可視化を行いお菓子の袋を利用していることが見て分かる太陽光集光器を完成させた。また、光の性質を学ぶことができるように余ったアクリル材にも貼り付けて鏡として使える教材を作った。出前授業を北九州市内小学校の土曜日授業で計画していたが小学校では全学年対象の行事などにより実施できなかった。このことについて、今後の課題とした。