著者
松井 実 竹内 崇馬 小野 健太 渡邉 誠
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.64, 2017

集団遺伝学における遺伝的浮動と同等の,個体が文化的形質をランダムに模倣するモデルが実世界の様々な形質データを説明することを文化進化学の諸研究は明らかにしてきた.しかし文化的形質が実際にどのように変異し,選択されるかについての実証研究はほとんどなされていない.本研究ではデザインの進化実験で生じた頻度のデータが,ランダムコピーモデルのシミュレーションによる帰無モデルに極めてよく一致することを示す.実験では,デザイナーがよくデザインされていると感じるものを模倣し,よくないと思うものを排除してもらった.同時に新奇のデザインをいくつか考案してもらい,集団に投入した.これを何度も繰り返し,伝達連鎖ネットワークを形成した.その頻度を解析すると,従来デザインの質を向上すると考えられていた様々な処理が有用でないこともわかった.この結果は特定の環境下においてデザインの創造プロセスとその市場での選択はその価値に関係なく行なわれていることを示唆する.
著者
菊地 和則 伊集院 睦雄 粟田 主一 鈴木 隆雄
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.363-373, 2016-10-25 (Released:2016-11-24)
参考文献数
29
被引用文献数
2

目的:認知症の徘徊による行方不明死亡者の死因の違いによる,行方不明から死亡に至るまでの過程の違いを明らかにし,捜索の効率化と死亡の予防に資することを目的としている.方法:2013年中に警察に行方不明者届が出された人の中で,認知症(疑いを含む)により行方不明になった10,322名の中から,死亡者全数である388名の家族を対象として,厚生労働省が警察庁の協力を得て自記式調査票による郵送調査を行った.郵送調査は2015年1月5日から2月2日に実施された.個人情報を除いたデータが厚生労働省から研究班に提供され,死亡者の中で死因が記載されていた61名を分析対象とし,χ2検定(Fisherの直接法)と残差分析により,死因の違いに関連する要因を検討した.なお,死因は先行研究を参考に「溺死」,「低体温症」,「その他」の3つに分けた.結果:分析の結果,死因が「低体温症」では死亡推定時期が行方不明から「3~4日目」,死因が「その他」では「当日」が有意に多くなっていた.また有意差は無かったが溺死の場合,4割以上が「当日」に死亡していた.結論:徘徊による行方不明死亡者には,死亡に至るパターンが少なくとも3つある可能性が示された.即ち,①行方不明後すぐに自動車事故などによる外傷や溺死,病状悪化などによって死亡するパターン,②数日間徘徊して徐々に体力を奪われた末に低体温症などで死亡するパターン,およびこれら2つに当てはまらない,③その他のパターン,である.
著者
南 武志 武内 章記 高橋 和也 今津 節生 徳田 誠志 寺沢 薫 河野 一隆 島崎 英彦 豊 遙秋 河野 摩耶
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

弥生時代後半から古墳時代に重点を置き、墳墓より出土した朱の産地推定を硫黄・鉛・水銀同位体分析から行った。その結果、北部九州では古墳時代に入っても中国産朱と思われる朱が一部の墳墓に用いられていたが、それ以外の地域では古墳時代に入る前から国内産の朱が墳墓に使用されていた可能性が高く、古墳時代前期には東北地方まで畿内産の朱がもたらされたと考えられる。以上より、朱の同位体分析により古墳時代黎明期の権力推移が考察され、考古学分野に一石を投じることができたと考える。
著者
二宮 文子
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
東方学報 (ISSN:03042448)
巻号頁・発行日
vol.87, pp.412-393, 2012-12

In the 13th century, the northwestern area of South Asia was situated between the two strong powers of the Mongols and the Delhi Sultanate. There were many small groups in that area trying to secure their autonomy as much as possible. This article deals with one of those small groups called Qarlugs. The first leader of the group is Sayf al-Din Hasan Qarlug, who was appointed by Khwarazmshah Jalal al-Din as a ruler of Ghazna, Kurraman and Bannu in 1224. Due to Mongol pressure, he was compelled to move toward Multan, though he kept occupying Bannu, situated on the route from Ghazna to Multan. Though they had been controlled by Mongols through shahna (armed tax collectors), Sayf al-Din's son and successor, Nasir al-Din Muh ammad Qarlug, tried to tie a matrimonial relationship with Giyat al-Din Balaban in Delhi. In the consequence, envoys were exchanged between Balaban and Hulagu Khan of the Il-khanate, in 1260. In the end, Nasir al-Din Muhammad was killed by Hulagu Khan based on an accusation of Sams al-Din Kurt, a semi-independent ruler based in Herat. Sams al-Din Kurt's aim seems to have been to remove an obstacle against his expansion towards the southern part of Salt Range and Sind province. Through the history of the Qarlug, s, we can see how Mongol rule and/or geographical conditions affected the activities of small powers in the northwestern area of South Asia.
著者
片岡 弥恵子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.51-60, 2005-09-15 (Released:2012-10-29)
参考文献数
29
被引用文献数
9 19

本研究は, 日本の周産期で使用できるDVのスクリーニングツール「女性に対する暴力スクリーニング尺度 (Violence Against Women Screen: VAWS)」を開発し, 信頼性および妥当性, 正確度を検討することを目的とした. VAWS (案) は, 9項目から構成される3段階リカート尺度で, 得点が高いほどDVのリスクが高まる得点構成とした. 加えて, 至適基準として日本語版配偶者虐待尺度, 併存妥当性の検討に用いる日本語版GHQ30および自尊感情尺度を用いて, 妊婦328名に調査を実施した.VAWSは, 項目の分析により7項目で最適解となった. VAWSは, 因子分析および主成分分析の結果, 一元性の因子構造であった. 日本語版GHQ30 (r=.30) と自尊感情尺度 (r=-.26) との有意な相関により併存妥当性が認められた. 信頼性係数Cronbach's α は.70であった. カットオフポイントを9点にするとVAWSの感度は86.7%, 特異度は80.2%, 陽性尤度比4.38となった. スクリーニング方法 (自記式とインタビュー) では, 感度は自記式のほうが高く(89%vs.83%), つまり自記式のほうがDV被害を見逃さないことが明らかになった. 以上より, VAWSは妥当性および信頼性を有するDVのスクリーニングツールとして, 特に周産期実践での実用化の可能性が示唆された.
著者
駒井 睦子
出版者
日本イスパニヤ学会
雑誌
HISPANICA / HISPÁNICA (ISSN:09107789)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.56, pp.159-181, 2012-12-25 (Released:2014-03-27)

1926年までのアルフォンシーナ・ストルニの詩には、女性の一人称を語り手としたものが数多くあり、その中には男性に従順さをアピールしつつ愛を求める女性もいれば、反対に男性優位主義社会を批判する女性が描かれてもいる。このような女性の語り手の作品は、これまで多くの研究で「作者の感情を投入した、主観的な作品」とみなされ、男性の愛を求める女性と、批判をする女性という2つの対比される女性像があると指摘されてきた。しかし本稿において、内容表現だけではなく詩作上の工夫にも着目しながら作品を分析した結果、それぞれの女性像には微妙な揺らぎがあり「恋する」、あるいは「批判する」だけではないことが見出された。また、語りの調子を和らげたり、語り手自身の矛盾を追及したりする効果を生んでいる構造、構成上の工夫にも言及し、これまで見過ごされていた女性の「私」が有する語りの多彩なトーンや構造による複雑さを明らかにした。
著者
沢西健 訳
出版者
弘文堂書房
巻号頁・発行日
1942
著者
稲浪 正充 栗山 智子 安部 美恵子
出版者
島根大学教育学部
雑誌
島根大学教育学部紀要(人文・社会科学) (ISSN:02872501)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.35-50, 1994-12-25

われわれは,3年前から色彩と感情のテーマにとり組んできた。本論文では2つの調査を試みた。先行研究(稲浪,野口)で,色の重さ,暗さ,冷たさを追及したが,ここではこれら3種類の感情的意味を含んだ10種類の感情的意味を調べた。また,先行研究(稲浪,小松原)で大学生に行った笑い顔,怒り顔,泣き顔のぬり絵から喜び,怒り,悲しみの色を調査したが,ここでは笑い顔のぬり絵に限り,就学前幼児と老令者を対象に調査した。13;
著者
渡辺 澄子 片瀬 眞由美 平林 由果
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.87, 2005 (Released:2005-12-08)

目的 わが国では、足の症状で悩む人が非常に多くなってきた。それらの症状は急に現れるのではなく、幼少期からの靴の選び方や履き方に原因があるのではないかと考えられる。我々は既にわが国の幼児を対象に実態調査を行い多くの問題点を明らかにした。ここではさらに、靴文化の長い歴史をもつドイツにおける子供靴の実態を、ドイツの小学校の保護者へのアンケート調査をもとに分析し、いくつかの知見を得たので報告する。方法 調査対象者はドイツ3地域(ベルリン、フランクフルト、フライブルク各1校)計小学校3校の保護者338名である。調査時期は2004年5月_から_6月、配票留置法による自記式調査を行った。調査内容は、普段履く靴のタイプ、靴購入時の重視点、購入店、足のサイズ測定、価格、子供靴に対する不満、子供および保護者の足の健康状態、足の症状に対する対処法、子供が最初に履いた靴に対する記憶や保存等である。結果 普段履く靴のタイプは紐靴がほとんどである。留め具のない靴はほとんど履かれていない。靴購入時の重視点はフィット性と子供の足の健康であり、シューフィッターなどのいる靴専門店で足のサイズを測って購入している。普段の靴一足の平均購入価格は6570円(円換算)であり、わが国の平均価格よりかなり高い。靴購入時の不満では価格の高さを不満と答えているものが多いが、しかしながら中古靴に対して経済的だから履かせるというものはほとんどいない。子供の足の健康には非常に関心があると答えており、足のトラブル症状に対しては、専門家のいる靴店で靴を選ぶ、病院で受診していると答えていた。子供が最初に履いた靴を6割近くのものが大事に残しているのも靴文化の違いであろう。
著者
澤井 文雄
出版者
東北職業能力開発大学校付属 秋田職業能力開発短期大学校
雑誌
東北職業能力開発大学校附属秋田職業能力開発短期大学校紀要
巻号頁・発行日
vol.14, pp.46-51, 2009-03

1年次を普通に修了して進級した学生A君は2年次に単位不足で留年し、3年目の途中から心の不調により学校に来られなくなった。担任の指導により暫くは学業も続いていたが不調が強まったため、担任と保護者の話合いによりA君の退校がほぼ決定した。退校相談及び退校手続きにA君・保護者が来校したその日は、短大が配置を決めたカウンセラーの勤務初日であり、カウンセラーにこの状況を話した。A君・保護者がカウンセリングに同意し心のケアーが開始された。これを境に、勉強の気力を取り戻し就職が内定した企業に就職すべく個別指導が始まった。A君は3月末無事卒業証書を手にして、就職が決まっていた企業の勤務地に旅立った。本報告は、この経過と残された課題の明確化、今後の取組みについての一考察である。学生指導の大変さと喜びを教員間で共有し、今後の学生指導の糧になれば幸いである。
著者
高木 伸哉 池田 裕美 川瀬 貴博 長澤 麻央 チョウドリ V.S. 安尾 しのぶ 古瀬 充宏
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.67-72, 2013-10-10 (Released:2014-03-20)
参考文献数
17

カテコールアミンの前駆体であるL-チロシンの長期投与は慢性ストレスがもたらす行動を緩和することが知られているが、急性ストレス時にL-ならびにD-チロシンの効果を比較した報告はない。本研究では、急性ストレスに対するL-チロシンとD-チロシンの経口投与がマウスの行動に及ぼす影響と脳内の両チロシン濃度に及ぼす影響を調査した。オープンフィールドにおける行動量にL-ならびにD-チロシンの効果は認められなかった。経口投与35分後にL-チロシン投与により血漿L-チロシン濃度は急激に上昇したが、D-チロシンの投与では血漿D-チロシンの緩やかな上昇が観察された。興味深いことに、対照区の各脳部位(大脳皮質、海馬、線条体、視床、視床下部、脳幹ならびに小脳)において、D-チロシンの濃度はL-チロシンの1.8-2.5倍高かった。すべての脳部位において、L-チロシンの投与によりL-チロシン含量は増加したが、D-チロシンの投与でD-チロシン濃度の上昇は認められなかった。上記より、急性投与したL-チロシンとD-チロシンは行動量に影響しないが、L-チロシンとD-チロシンの脳内移行の様相は異なると結論づけられた。
著者
渡辺 美知子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

言い淀んだとき,日本語では「エート」などのフィラーが頻繁に用いられる。フィラーは文節境界によく現れるが,その出現率は境界直前の文節の係り先までの距離が長いほど高くなることが明らかになった。これにより,フィラーは後続発話生成の負荷と深く関連する現象であることが示唆された。すなわち,これから伝えようとするメッセージが長く複雑なほど,スムーズな言語化が困難になり,フィラーの出現率が上昇すると考えられる。一見ランダムに現れるように見える言い淀みの背後にある規則性が示された。
著者
大蘇芳年 画
出版者
井上茂兵ヱ
巻号頁・発行日
vol.11, 1880
著者
馬養 雅子
出版者
日経BP社
雑誌
日経マネー (ISSN:09119361)
巻号頁・発行日
no.310, pp.78-83, 2008-09

ガソリンや食品の値上げが家計を直撃している今年の夏。でも、せっかく取れた夏休みだから家族で遊びたい。ここは一つ、できるだけおカネをかけずに楽しむ方法を考えよう。知恵と財布のひもを絞りながら、夏休みの予定を立ててみてはどうだろうか。