著者
加藤 久美
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.209-215, 2010

  小児の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は成人と異なり,眠気よりも学力低下や,多動性・攻撃性などの注意欠陥/多動性障害(AD/HD)様の認知・行動面の問題が生じやすく,発達に影響を及ぼすとされているが,そのメカニズムはまだ明らかではない。脳に器質的な影響を及ぼすとの報告,全例ではないが OSAS 治療後に落ち着きや集中力などが改善することより,小児 OSAS に対する早期介入が重要であると考えられる。小児睡眠診療では AD/HD,広汎性発達障害(PDD)の発達障害を持つ児の受診が多く,未診断のケースも少なくない。小児睡眠診療を行う上では,発達面に留意して診療を行い,保護者の困り感や,脳波所見など気になる所見がある場合に,小児科や児童精神科,療育センターなどにコンサルテーションできる体制を整えておくべきである。小児 OSAS では,発達面を含めた長期視野でのフォローが重要である。
著者
有川 智子 眞鍋 治彦 久米 克介 加藤 治子 武藤 官大 武藤 佑理
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
pp.15-0010, (Released:2017-05-26)
参考文献数
11

静脈穿刺による末梢神経障害は,時に痛みや感覚障害が長期に持続し,治療に難渋する.静脈穿刺に伴う末梢神経障害で受診した16例について,症例の背景,穿刺部位,症状,治療経過を診療記録より後ろ向きに検討した.対象は,女性14例,男性2例,21~79歳.穿刺部位は,肘皮静脈11例(正中5例,橈側4例,尺側2例),橈側皮静脈3例,前腕尺側静脈2例であり,初診時に14例が痛み,2例が違和感を訴えた.握力低下10例,アロディニア6例,冷覚鈍麻6例,腫脹3例,血腫2例があった.治療は薬物療法を13例,リドカイン点滴を8例,星状神経節ブロックを4例,持続硬膜外ブロックを2例で行った.転帰は軽快10例,治療中4例,転院2例であった.今回の調査では,静脈穿刺による末梢神経障害は報告が少ない肘部橈側静脈でも発生していた.末梢神経と静脈の走行と神経損傷の知識の普及が重要である一方,どの部位でも起こりうることから,末梢神経障害を疑った場合にはただちに抜針・止血し,早期より治療を開始するよう啓発する必要がある.
著者
星野 豊
出版者
筑波法政学会
雑誌
筑波法政 (ISSN:21880751)
巻号頁・発行日
no.67, pp.1-10, 2016-07-14
著者
内田 雄基 大橋 一輝 高橋 桂太 藤井 俊彰
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J99-D, no.9, pp.823-835, 2016-09-01

本論文では,代表的なlight field cameraの一つであるLytro Illumを対象とし,カメラの物理的な画素配列を考慮した超解像手法を提案する.Lytro Illumでは,イメージセンサの手前に挿入されたマイクロレンズアレーの働きにより,多視点画像の同等のデータ(light fieldデータ)がイメージセンサ上に多重化されるため,一度の撮影で三次元情報を取得できる.取得データ(RAW画像)に逆多重化を施すことで,多視点画像(sub-aperture image)を取り出せるが,個々の画像の解像度は限られる.そこで,多視点画像を相互に位置合わせして超解像を行い,解像度を向上させる方法が考えられる.しかしながら,従来の手法では,Lytro Illumのようなカメラに特有のRAW画像の画素配列の扱い方に問題がある.RAW画像では,各画素はRGBのうち一つの色情報をもち,かつ,マイクロレンズが六角格子状に並んでいる.従来の手法では,デモザイキングにより色情報を復元し,レンズ配列が正方格子状になるように画素をリサンプリングする.これらの過程には重みづけ和のような演算を伴うデータの補間が含まれるため,RAW画像のもつオリジナルの情報が損なわれ,超解像の効果を妨げると考えられる.それに対して我々は,演算を伴う補間処理を行わず,RAW画像の画素配列を維持したsub-aperture imageを用いて超解像を行う手法を提案する.また,幾つかの実写画像を用いた実験により,提案手法の有効性を示す.
著者
三神 彩子 喜多 記子 松田 麗子 十河 桜子 長尾 慶子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.300-308, 2009-10-20
被引用文献数
3

本研究では,現在の家庭での上位頻出献立10種類を取り上げ,調理機器や調理道具の選択,調理操作の違いによる省エネルギー効果およびCO_2排出量削減効果を計測した。トーストは,トースターに比べグリルは約30%,ベーコンエッグは,鉄製フライパンに比べテフロン加工フライパンで約44%,さらに油なし・水なしで調理すると約59%,コーヒーは,コーヒーメーカー方式に比べ,やかんを用いて湯を沸かすドリップ方式で約42%,チャーハンは,卵とご飯を混ぜ合わせてから一緒に炒める方法が他の方法と比べ約25%,ガスコンロでの炊飯は,電気炊飯器に比べて約39%,焼き魚は,グリルはテフロンフライパンに比べ約19%,さらに切り方の工夫で約18%,味噌汁は,煮干しを粉砕し丸ごと使用すると約38%,野菜の和風煮物は,油膜使用で約20%,落し蓋使用で約26%,青菜のおひたしは,青菜の3倍の茹で水量は6倍の茹で水量に比べ約16%,カレーライスは,ジャガイモの形状を小さく切ると約72%,さらに茹で水量を同重量にすると7倍水量と比べて約46%のCO_2排出量削減効果が得られた。
著者
植田 剛史
出版者
日本都市社会学会
雑誌
日本都市社会学会年報 (ISSN:13414585)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.26, pp.153-168, 2008-09-12 (Released:2011-02-07)
参考文献数
47
被引用文献数
2

The aim of this article is to clarify the institutional factors that have made city planning consultants dependent upon the public administration, by analysing the formative process of the use of private-sectr planning consultants by the public sector during the rapid economic growth era in Japan.The result of this analysis can be summarized as follows:Firstly, faced with increasing production of urban spaces during the rapid economic growth period and increasingly complicated procedures for urban space control, it became impossible for public administrative officials to oversee everything as they used to. For this reason, private-sector planning consultants became able to take part in urban space control which had once been exclusively under the purview of public administrative officials. Secondly, these “City Planning Consultants” had no choice but to take any such contract work in order to survive the severe competition among other private-sector professionals in the industry, because of the lack of an institution or industry board that could define or protect a clear role for city planning consultants. Lastly, the wage scale for the “City Planning Consultants” reproduced their functions as subcontractors that undertake affairs delegated by the public administrative officials.Consequently, planning consultants have been channeled into the current structure where they are completely dependent upon on the public administration system.
著者
西山 純一
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.201-209, 2017-03-15 (Released:2017-04-21)
参考文献数
13

手術体位が原因となり周術期に種々の合併症が発生することはよく知られている.非麻酔下では無理な体位になるとしびれや痛みなどによって患者自身が体を動かして障害を回避することが可能であるが,麻酔中は非生理的な状態となっていて確認が難しく,時に重篤な障害を引き起こす.私たち麻酔科医は,手術体位についての正しい知識を身につけ,体位に関連したさまざまな合併症について,発生要因の理解と適切な予防対策を行う必要がある.本稿では,体位に関連した合併症として周術期末梢神経障害,組織・臓器機能障害について説明し,各種合併症予防の観点から麻酔期管理上の注意すべき点を解説する.
著者
伊川 美保 楠見 孝
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.89.17034, (Released:2018-08-10)
参考文献数
25
被引用文献数
4

The purpose of this study is to investigate the effect of numeracy on risk and benefit perceptions of food. Previous studies have shown that people tend to rely on affect feelings when appraising risk and benefit. These studies have also shown that people manifest an inverse relationship between perceived risk and benefit. However, there have not been so many studies about the roles of numeracy and critical thinking on balanced perceptions of risk and benefit. Therefore, the present study used two online surveys to clarify their roles. Results showed that people with higher numeracy had better comprehension of food risk/benefit information. Results also showed that perceived risk and benefit had a positive correlation for people with higher numeracy after information had been provided. These results were similar between Study 1 on coffee (N = 461) and Study 2 on red and processed meat (N = 496). The results suggest that people with higher numeracy have balanced perceptions of food risk/benefit, relying more on numerical information than on affect.
著者
青木 一義
巻号頁・発行日
2011

筑波大学博士 (工学) 学位論文・平成23年3月25日授与 (甲第5699号)
著者
清水 隆裕 入江 拓
雑誌
聖隷クリストファー大学看護学部紀要 = Bulletin School of Nursing Seirei Christopher University
巻号頁・発行日
vol.26, pp.59-68, 2018-03-31

聖隷学園浜松衛生短期大学の教育理念には「人の生命は傷つき、病み、死ぬべき弱い存在である。自分と他人とが共有しているこの弱さの自覚と共感と互助こそ、人間理解と愛と感動の基本であって、それが看護の源泉である」と謳われていた。短期大学からクリストファー大学となり、その教育理念は建学の精神である「生命の尊厳と隣人愛」に包含される形になったが、弱さを人間観の根底に据えた教育理念は他大学と一線を画している。そこで弱さの自覚がなぜ看護の源泉になるのか考察した結果、弱さという自己の「不完全性」を認めることは、苦悩へと繋がるがそれを受け入れた先に、ケア者としての真の思いやりが醸成される。また弱さを受け入れることができれば、ケア者と病者が人間としての弱さを抱える者同士としての開かれた地平にあることができ、そこでの真の出会いと、静かな連帯によって「双方の可能性を開く」という意味が含まれていると考えられた。
著者
長谷川 昂宏 山内 悠嗣 山下 隆義 藤吉 弘亘 秋月 秀一 橋本 学 堂前 幸康 川西 亮輔
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.349-359, 2018 (Released:2018-07-15)
参考文献数
27

Automatization for the picking and placing of a variety of objects stored on shelves is a challenging problem for robotic picking systems in distribution warehouses. Here, object recognition using image processing is especially effective at picking and placing a variety of objects. In this study, we propose an efficient method of object recognition based on object grasping position for picking robots. We use a convolutional neural network (CNN) that can achieve highly accurate object recognition. In typical CNN methods for object recognition, objects are recognized by using an image containing picking targets from which object regions suitable for grasping can be detected. However, these methods increase the computational cost because a large number of weight filters are convoluted with the whole image. The proposed method detects all graspable positions from an image as a first step. In the next step, it classifies an optimal grasping position by feeding an image of the local region at the grasping point to the CNN. By recognizing the grasping positions of the objects first, the computational cost is reduced because of the fewer convolutions of the CNN. Experimental results confirmed that the method can achieve highly accurate object recognition while decreasing the computational cost.
著者
三谷 悠 渡邉 慎二
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第63回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.239, 2016 (Released:2016-06-30)

近年情報技術の発展に伴いオフィスでの働き方が時間や場所に制約されなくなってきている。そのような中、自由席での業務スタイルが生まれ、コストダウンのみならずコミュニケーション活性化が注目されたフリーアドレスオフィスは増加傾向にある。一方こうしたオフィス形態の変化は、個人が対応すべき環境の制約もあり全体的な仕事満足度への影響も報告されている。本研究ではフリーアドレスオフィスという環境のなかで、個人の仕事環境を向上させることを目的とした。調査を踏まえ、「交流」の場で「集中」の場を確保することと、公共空間をパーソナライズすることの2点に着目した。個人所有の机上用品にパーテーションの効果を持たせることを提案の方向性とし、デザイン要件を、①周囲は普段通り話しかけられること(交流の確保)②作業中はパーティションとして機能すること(集中の確保)③自分のものでデスク環境を構築できること(公共空間のパーソナライズ)の3つを抽出した。「交流」の場でのパーテーションのあり方という観点で試作を繰り返し、最終的にはユーザーの所作に合わせて形状が変化し、パーテーションを作るという製品を提案した。
著者
山本 眞功
巻号頁・発行日
(Released:2018-07-26)

『本佐録』は「慶安御触書」と称される文書とともに、江戸時代に幕府や諸藩がおこなった農民統制の基本的な考え方を知ることができる記述を含む史料として、かつては多くの日本史教科書等にも取り上げられていた書物である。たとえば、「幕藩体制の経済的な基礎は農業であった。武士階級は「農は国ももとなり」といって農業を重視しており、農民の生活については、「百姓は財の余らぬやう不足なきやう」(「本佐録」)に統制することを心がけた」(実教出版)といったような形でである。そうした場合、著者は引用文の書名に示されているように、徳川家康に仕えた本多佐渡守正信という人物であるとされ、それをも根拠として、この書物は長く江戸時代初期の幕府政治の基本的理念を示す典型的な史料として扱われ続けてきた。しかしながら、その一方では早くからこの書物の著者を藤原惺窩とする見方も示されてきた。『本佐録』は、著者問題からしても、少なからぬ問題をかかえた書物であった。そうした事情もあって、『本佐録』の著者問題をはじめとする成立事情をめぐる問題については、江戸時代から新井白石や室鳩巣といった人々によって様々な議論がなされていた。また、江戸時代における論議をうけて、明治三四年には中村勝麻呂氏による詳しい検討もおこなわれたが、その成立事情については未だに十分に解明されたとは言えないままの状態が続いている。ここに提出する本論文は、その解明されていない成立事情を少しなりとも明らかにしようと試みるものである。そのために本論文は、まずこの書物の成立時期を明らかにすることから検討を始めるという方法を採用した。成立時期の問題については、書誌学や文献学に基づく検討によって解明することが可能だと考えたからである。検討は具体的には以下に記すような手順でおこなった。『本佐録』には四〇本近くの版本と一二〇本程の写本、さらには十数本の関係書が残っている可能性があることが確認されている。そこで本論文においては、これに私の所蔵する十数本の史料を加えて、まず可能な限りの史料にあたって、書誌学に基づく成立時期の検討をおこなった。その結果判明したことは、『本佐録』の確認できる成立時期の可能性の上限は、延宝五年(一六七七)を少しさかのぼったあたりであるということであった。そして、続いて文献学に基づく検討を試みた。『本佐録』には『心学五倫書』は系統の書物のなかの記述が用いられているという事実があるからである。『心学五倫書』は、版本としては慶安三年(一六五〇)に現在知り得る限りではじめて著者不明のまま姿を現した書物であるが、一七世紀後半の寛文期になって『五倫書』さらには『仮名性理』という名の書物に姿を変えている。これらの書物は数度にわたる改変の過程の折々で細部の記述を変えており、したがって『本佐録』に用いられているこの系統の書物からの記述がどの折りの書物から引かれたものかを文献学の方法に基づいて検討することで、我々は『本佐録』のおおよその成立時期を特定することが可能となる。検討の結果、『本佐録』が引いているのは『仮名性理』の記述であり、その『仮名性理』の成立時期からすると、『本佐録』の成立時期は寛文七~九年(一六六七~一六六九)から延宝五年(一六七七)の間の約十年間である可能性が高いということが確認できた。この結論は、書誌学の方法に基づく検討の結果とも符合する。『本佐録』は、元和二年(一六一六)に世を去った本多佐渡守正信や同五年(一六一九)に五九年の生涯を終えた藤原惺窩には著すことのできるはずもないものであり、明らかに偽書として流布したものなのである。偽書『本佐録』は、したがって江戸時代初頭の幕府や諸藩の政治理念を問題にするための書物などではない。この書物は、むしろ幕藩体制の確立期と言われる寛文延宝期の政治状況や思想状況を探るための材料として重要である。この観点に立って本論文では、『本佐録』として流布したこの書物の思想内容を“「文道」の重視”“「百姓」への対応”“「侍」の使い方”という三つの点から検討し、続いてそれが寛文延宝期という幕藩体制史上の重要な時期において、どのような思想的機能を果たすものであったのかを問題とした。本論文は、著者を本多佐渡守正信や藤原惺窩とする見方に基づいて幕藩体制成立期の問題を扱うための史料として長く用いられ続けてきた『本佐録』という書物を、改めて実際に書かれた時期、すなわち幕藩体制の確立期の現実と突き合せて読んでみようとしたものである。それは、この書物の成立の意義、特にこの書物が成立以後に果たした思想的機能や社会的機能に対して新たな視線を向けてみるという試みでもある。 哲学

2 0 0 0 OA 菅公小伝

著者
井上哲次郎 著
出版者
富山房
巻号頁・発行日
1900