著者
田村 雲供 Unkyo Tamura
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
no.83, pp.127-151, 2009-02-28

ナチズムのユダヤ人迫害を逃れ、アメリカに渡り、生涯をアメリカで過ごしたハンナ・アーレントの思考は、社会的なものと政治的なものとを分け、後者の復権こそがナチズムのような社会現象を防ぐとみる。したがって、リトルロックの公立校での黒人・白人共学実施をめぐっての暴動のなかで、アーレントは教育という社会的な場に権力がはいって共学を実施しようとすると非難し、分離教育を主張した。しかし、その論理には第三の要素「身体」が大きく作用していたことを追う。
著者
糸井 千尋
出版者
中央⼤学⼤学院事務室
巻号頁・発行日
2021-03-17

【学位授与の要件】中央大学学位規則第4条第1項【論文審査委員主査】緑川 晶(中央大学文学部教授)【論文審査委員副査】山科 満(中央大学文学部教授),山口 真美(中央大学文学部教授),柏野 牧夫(日本電信電話株式会社コミュニケーション科学基礎研究所NTTフェロー柏野多様脳特別研究室長)
著者
竹内 真澄
出版者
桃山学院大学総合研究所
雑誌
桃山学院大学社会学論集 = ST.ANDREW'S UNIVERSITY SOCIOLOGICAL REVIEW (ISSN:02876647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.23-64, 2021-09-28

Modern social theory, from Hobbes to Simith, is based on the concept of“private man. ”According to Hegel, private man appears after the decline ofcommunities. It refers to the atomistic type of human being in modernsociety.From the point of view of young Hegel, private man lost the totality, buthe also recognizes the value of private man in history in a definite sense.Then, he establishes the schema, that is to say, community-society-highlevel of community. Correspondingly, human beings move from Individuumvia Einzelne to a high level of Individuum.Hegel examines the experimental thoughts about dialectics in the Jenaerperiod (1801-1807). Through works preceding The Phenomenology of Spirit,including The Spirit of Christianity and its Fate, The Difference betweenFichte’s and Schelling’s Systems of Philosophy, The Critics of ModernNatural Law, and Jenaer Real Philosophy, he analyzes the self-formationfrom Einzelne to general Individuum, which is the main purpose ofphenomenology.I examine that Hegel adds the concept of private man to the context ofdialectics between Individuum and Einzelne. He establishes the base forthe dialectics Allgemeinheit-Besonderheit-Einzelheit.However, he identifies Einzelheit with Individualität at the end, on thesame condition of private property, regardless of categorical distinction ofthe two. This brings about the criticisms of Kierkegaad and Marx.
著者
國田 祥子 小阪 芙由美 西 菜見子
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 = Journal of Chugokugakuen (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
no.18, pp.113-122, 2019-06-16

近年,待機児童の問題が大きく取り上げられている。保育施設の増加が必要だが,保育士不足もあって容易ではない。保育士不足の原因の1つに,早期離職者の多さがあると言われている。そこで本研究では,保育士がなぜ早期に離職してしまうのかを検討する。 保育士146名に質問紙調査を行い,離職を考えた経験とその理由,職場環境について尋ねた。その結果,20代後半以降や保育経験6年以上で離職を考えた経験のある人が増加していた。離職を考えた理由は「職場の人間関係」「残業が多い」「給与面」が,保育士を続けてきてよかったことは「子どもの成長に貢献できていると思うこと」「子どもと一緒に過ごせること」「保育を通して充実感が得られること」が多かった。また離職を考えた経験のない人は,ある人よりも現在の職場には研修機会が多く,相談相手がいると感じていた。 保育士の多くは職場の人間関係や待遇に不満を感じつつも,自分の保育を高める機会や相談できる同僚の存在に支えられ,子どもの成長を糧として仕事を続けていることが示唆された。多様な価値観を許容する職場風土の醸成や保育士の待遇改善が,早期離職者を減らすために有効なのではないだろうか。
著者
梁 媛淋
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 = NIHON KENKYŪ (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.127-151, 2016-06-30

本稿は、1830年頃に譜代大名彦根井伊家で作成された分限帳を主な素材として、同家の身分構造を明らかにする。大名家の内部構造の解明は近世の政治体制を知るために重要であり、明治維新やそれに伴う武士身分の解体を考える手がかりとなるだろう。
著者
黒木 聖司 長尾 剛司
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.792-798, 2005-07-15
著者
奥中 康人 オクナカ ヤスト
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 = Shizuoka University of Art and Culture Bulletin
巻号頁・発行日
vol.21, pp.225-241, 2021-03-31

本稿は、国立公文書館アジア歴史資料センターのデジタルアーカイブを用いて、西南戦争(明治十年)に関係する陸軍のラッパ信号の用い方を分析することを目的としている。同アーカイブを「喇叭」等のキーワードで検索し、抽出された約三二〇件のデータは、楽器としてのラッパについて、ラッパ手について、ラッパ信号についてのデータに分類することができる。とくにラッパ信号を中心に分析を進めると、数多くのフランスのラッパ信号が用いられたこと、戦争が終盤となった九月になってから数曲のマーチを練習していたことが明らかになっただけでなく、「喇叭暗号」という特殊な用法が存在したことがわかった。 ラッパ暗号とは、あらかじめ定められたラッパ信号を問答形式で交わすことによって敵・味方を識別する用法である。しかしながら、資料から読み取れるのは、ラッパ暗号が記載された手帳や文書が敵の手に渡り、何度も改正を余儀なくされたという失態である。ラッパ暗号の運用には問題はあったものの、総じてラッパ手たちは数多くのラッパ信号を吹奏していたようであり、それまでのラッパ教育が順調であったことがうかがえる。
著者
原 孝成 髙橋 弥生 おかもと みわこ 日暮 トモ子 當銘 美菜
出版者
目白大学高等教育研究所
雑誌
目白大学高等教育研究 = Mejiro University Education Research (ISSN:21859140)
巻号頁・発行日
no.27, pp.93-101, 2021-03-31

本研究は、目白大学子ども学科の卒業生の実態を把握し、現在保育福祉職を目指している在学生に対する「就職前の期待と現実とのギャップから生まれるリアリティショック(RS)への対応」への有効な支援策検討資料を作成することを目的とし、本学科の卒業生全員を対象に質問調査を実施した。現在保育・福祉職に勤務している者としていない者では、どちらも仕事にやりがいを感じていた。保育福祉職を選んだ理由として、現在勤務していない者の方が「自分に向いてる」と回答する割合が高く、そう考えて仕事を目指した者の方が現実とのギャップを感じ保育福祉職を離れてしまっていることが示唆された。また、現在勤務している者は退職の理由として「職場の方針に疑問を感じた」「継続できないような職場の雰囲気」と回答する割合が高かった。保育福祉職にやりがいを感じていれば、外的要因(職場の雰囲気など)で離職しても再度保育福祉職に勤務する可能性があるが、内的要因(RSなど)で離職した場合その可能性が低いことが示唆された。
著者
小松 仁美
雑誌
総合福祉研究 = Social welfare research bulletin (ISSN:18818315)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.143-155, 2019-03-31

メキシコ市ではホームレスが貧困問題の一つとして喫緊の課題となっている.2011-2012年に全体の半数以上を占めた18-40歳の若中年層ホームレスに着目すると,彼・彼女らは1990年代に大量のストリートチルドレンとなった層と重なる.新たにストリートチルドレンとなる子どもが大幅に減少した一方で,路上において成人年齢に達し,その後も路上生活を継続する元ストリートチルドレンのホームレスが相当数に達している.彼・彼女らは,支援の不十分さと成人年齢を境にした打ち切り,麻薬の蔓延,成人後の限定的な支援など複合的要因により路上に居続けることとなった.また,彼・彼女らは初等教育開始前後にストリートチルドレンとなったために低学歴であり,そのために社会復帰がより困難となっている.本稿では,ストリートチルドレンから若中年層ホームレスになった層への支援においては,長期の定住・就学支援が重要となる点を示唆した.
著者
竹内 理樺 Rika Takeuchi
出版者
同志社大学言語文化学会
雑誌
言語文化 = Doshisha Studies in Language and Culture (ISSN:13441418)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.359-389, 2013-03-10

何香凝の芸術活動は一般にその政治活動と密接に結びつけて論じられる。しかし、1920年代末から40年代半ばまで、彼女は政治とは一線を画し、「一国民」として絵画の「義売」(慈善販売会)や兵士の救護活動を行い、画家の立場を立脚点として独自の抗日救国活動を行っていた。その活動は孫文と夫廖仲愷の遺志を継承する政治的理念に基づいたものであったため、多くの人々の支持を集め、結果的に彼女の名声と人望を高め、彼女を政治の第一線に復帰させることとなった。