著者
三浦 恭子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.225-227, 2017

ハダカデバネズミ(naked mole-rat, <i>heterocephalusglaber</i>, デバ)は,その名の通り裸で出歯のげっ歯類である(実はよく見ると感覚毛と呼ばれる毛がまばらに生えている)(表紙写真).自然下ではエチオピア・ケニア・ソマリアの地下に,数十~数百匹の集団で生息する.ガス交換が乏しく気温が安定している地下トンネルで暮らしており,トンネル内の位置によってはかなりの低酸素(~7%)かつ高二酸化炭素(<10%)環境になる.デバは視覚が退化しており,ヘモグロビンの酸素親和性が高く,また電位依存性ナトリウムチャネル(Nav1.7 voltage-gated sodium channel)の変異により酸への非感受性を示すことが報告されている.また,体の恒温機能はほとんど失われており,外温性で低体温(約32℃)である.研究室ではアクリルボックスをパイプで複数連結したケージを用い,温度30℃・湿度60%に調節された通常大気下で飼育を行っている.自然下では根茎を食べているが,実験飼育下ではイモ・ニンジン・リンゴ・オートミールなどを与えている.<br>デバは「真社会性」と呼ばれる分業制の社会を形成することで知られている.真社会性とは,昆虫のアリ,ハチ,シロアリなどでみられる,2世代以上が共存し繁殖個体とその繁殖を手伝う不妊個体から成る社会形態を指す.現在確認されている真社会性ほ乳類は,デバと近縁のダマラランドデバネズミだけである.コロニー内で繁殖を行うのは1匹の女王と1~3匹の王のみで,その他の個体は,生殖機能が未発達なままワーカーやソルジャーとして巣内の仕事に携わる.女王化のメカニズムは,現在のところほとんど分かっていない.我々は,MRIを用いたデバ三次元脳アトラスの作製を行い,ワーカーが女王になる際の脳内変化について解析を進めている(関ら,未発表).
著者
田口 純 石橋 陽子 菅井 望 関 英幸 三浦 淳彦 藤田 淳 鈴木 潤一 鈴木 昭 深澤 雄一郎
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.1866-1873, 2010 (Released:2011-03-03)
参考文献数
17

症例は75歳女性.嚥下困難,食欲不振と唾液が常に流れてくる症状で近医を受診.上部消化管内視鏡検査で,逆流性食道炎と慢性胃炎の診断でプロトンポンプ阻害薬(PPI)を処方されていた.しかし,症状の改善を認めず当科を受診.難治性かつ上部消化管内視鏡検査にて食道粘膜に非連続性に地図状のびらんが散在し,易粘膜剥離も認めたため食道天疱瘡を疑った.抗デスモグレイン(Dsg)3抗体価が23 Indexと陽性であり,蛍光抗体直接法にて食道の表皮細胞間にIgG,IgA,C3の沈着を認めた.皮膚,口腔粘膜病変はないものの,食道天疱瘡と診断しプレドニゾロン(PSL)30mg/日を開始したところ,2日後より自覚症状が著明に改善し,食事も摂取できるようになった.その後はPSLを漸減し,現在はPSL 5.5mg/日投与中で再発を認めていない.本症例は,皮膚,口腔粘膜病変がなく内視鏡検査で食道天疱瘡の診断となった1例であり,また併存した胃病変もPSLにて改善したことから,食道天疱瘡と何らかの関係がある可能性も示唆される.
著者
福井 航 三浦 久典
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集 2017年度精密工学会春季大会
巻号頁・発行日
pp.171-172, 2017-03-01 (Released:2017-09-01)

今後、ロボットと人間が協調作業を行うためにソフトアクチュエータ、特に高分子アクチュエータが期待されている。2014年にナイロンモノフィラメントをコイル状に加工し、ヒートガンなどで加熱することで収縮する現象が報告された。本研究では、ソフトアクチュエータの特性を失わない加熱方法として、ニクロム線の電気抵抗熱とガラススリーブを利用する方法を提案する。また、アクチュエータの基本的特性についても明らかにする。
著者
阿部 隼太 三浦 徹也 彌永 拓也 岡 高史 高瀬 真衣 井石 和磨 土井 篤
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.252, 2016

<p>【目的】</p><p>平成27年度の本学会において、我々は脳卒中片麻痺入院患者に対するペダリング運動施行中の麻痺側前脛骨筋(TA)へのIntegrated Volitional control electrical Stimulator(IVES)療法が、ペダリング単独療法に比べて、歩行速度がより改善されることを報告した。今回、同様の介入プロトコールを用い、外来患者に対して同様の結果が得られるかどうかを検討したので報告する。</p><p>【対象と方法】</p><p>当院の外来リハを利用している脳卒中片麻痺患者で、(1)独歩または杖・装具を使用して10m以上の自力歩行が可能である。(2)発症から6ヵ月以降経過している。(3)研究内容の説明理解が可能である。(4)研究に同意が得られる。という4つの条件を満たす49歳と62歳の男性2名(症例1と2)、69歳の女性1名(症例3)の計3名とした。介入間隔が異なるこれら3症例(症例1:平均介入間隔5.6日、症例2:同11.6日、症例3:同4.5日)に対して、ペダリング運動とIVESを併用した期間(併用期)、ペダリングを単独に使用した期間(単独期)を交互に3日ずつ(1クール)、連続計12日間、通常の理学療法の直前に10分間実施した。ペダリング運動はリカンベント(OG技研 Cateye ergociser EC-3500)を使用した。リカンベントのシート位置は最大下肢伸展位膝屈曲10°以上で、対象者が容易にペダリング操作できる位置とした。運動様式は負荷シフトレバー1に設定し、正回転で任意のペダル回転速度で10分間施行した。電気刺激にはIVESのパワーアシストモードを使用した。介入前後の評価として10m歩行(最速歩行時間、歩数)を2回計測し、即時効果としての歩行速度改善率と歩行速度改善度、1クール単位での歩行速度改善度、10m歩行における歩数の前後比較を分析した。</p><p>【結果】</p><p>歩行速度改善率:症例1において併用期と単独期共に歩行速度の改善率は介入日数の約83%(5回/6回)、症例2と3ではそれぞれ約83%(5回/6回)と100%(6回/6回)であった。10m歩行速度の改善度(即時):症例1では併用期、単独期共に平均0.68秒、症例2ではそれぞれ平均0.21秒と0.77秒、症例3ではそれぞれ平均0.27秒と0.39秒と、併用期よりも単独期のほうが歩行速度に改善があった。10m歩行速度の改善度(1クール単位):症例1では併用期と単独期それぞれ平均1.44秒と0.62秒、症例2ではそれぞれ平均0.28秒と0.47秒、症例3ではそれぞれ平均0.66秒と0.4秒とやや併用期の方が単独期に比べ歩行速度が改善していた。10m歩行における歩数の前後比較:症例1では併用期前後で20.9歩と20.3歩、単独期前後で21.0歩と20.9歩、症例2は併用期前後共に17.3歩、単独期前後で17.6歩と17.4歩、症例3においては併用期前後で18.3歩と18.7歩、単独期前後で18.4歩と18.5歩と、全3症例において併用期と単独期で差が無かった。以上のように、リカンベントにIVESを加えた併用療法はリカンベント単独療法に比し、10m歩行の明らかな改善を示せなかった。</p><p>【考察】</p><p>単独期に比し併用期で効果が見られなかった理由として、入院患者は毎日継続して実施できるが外来患者では介入間隔が空いてしまうためではないかと推察された。</p><p>【結論】</p><p>外来患者3例に対して、低頻度であってもペダリング運動単独の効果は認められたが、ペダリング単独運動に同頻度のIVESを加えても、歩行能力改善効果は変わらなかった。今後外来の症例を増やすと共に、低頻度介入の場合に長期的な介入期間によって併用療法に効果があるのか検討することも必要であろう。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は当院の研究倫理委員会の承認を受け、対象者から書面による同意を取得後に実施した。</p>
著者
三浦 勉 飯尾 能久 SIBSON Richard H. 岡田 知己 松本 聡 PETTINGA Jarg BANISTER Stephen 平原 聡 中山 貴史 中元 真美 山田 真澄 大見 士朗 米田 格 濱田 勇輝 高田 陽一郎 深畑 幸俊 小菅 正裕 TOWNEND John REYNERS Martin GHISETTI Francesca C.
出版者
京都大学防災研究所
雑誌
京都大学防災研究所年報. B = Disaster Prevention Research Institute Annuals. B (ISSN:0386412X)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.94-101, 2014-06

We observe the seismic activity in the northern part of the South Island in New Zealand since Nov. 2009. New Zealand is located at the border between the Pacific plate and the Australian plate and the Alpine Fault runs along the boundary from southwest to northeast in the South Island. A lot of earthquakes occurred there, e.g., 1929 Murchison (M7.7), and 1968 Inanghua (M7.2). We observed aftershocks of the 2011 Christchurch earthquake for 2 years since Mar. 2011. Now, We expand the observation network with about 40 seismometers in northern part of the South Island.
著者
祢宜田 和正 山下 雅代 久保田 敏行 杉浦 洋二 三浦 崇則 勝見 章男 太田 満 齋竹 達郎 戸澤 良夫 水谷 勝
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.123-131, 2001-04-10 (Released:2011-03-04)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

Although vancomycin has been exclusively used for methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) therapy, there are many patients recently observed to suffer from gram negative bacteria, Pseudomonas aeruginosa as well as MRSA.Arbekacin (ABK), an aminoglycoside antibiotic (AG) is an alternative medication for such patients with those infection disease. However, it seems that the dosage of ABK used according to the manufacture's recommendations is insufficient for MRSA therapy to obtain a sufficient patient outcomes. Moreover, the relationship between the effectiveness of ABK on MRSA infection and the serum ABK concentration remains unclear. For the long-term treatment of AG, we can not rule out the possibility that AG may induce nephrotoxicity and ototoxicity.Therefore, the present study was carried out to clarify the significance of therapeutic drug monitoring (TDM) of ABK for patients with an MRSA infection, and elucidate the relationship between the serum ABK level and its clinical outcomes, including its antibacterial action and side effects. We investigated 30 patients with an MRSA infection, who received ABK at the Anjo Kosei Hospital from September 1996 to June 1998. The treatment of the patients by ABK but without TDM showed a 46.6% (7/15) therapeutic efficacy, while the patients with drug monitoring had a remarkably successful therapeutic efficacy (100% : 21/21) with a peak serum ABK concentration over 10μg/mL. Dysphagia badly affected the efficacy of ABK therapy in patients with an MRSA infection even when the serum ABK level was well-controlled. The incidence of ABK induced nephrotoxicity was observed in all patients when ABK was administered at a total dose of over 5, 000mg, while it was 4% at a total dose of less than 5, 000mg. When the duration of ABK therapy was longer than 2 weeks, the incidence of nephrotoxicity also significantly increased.These results thus suggest that TDM of ABK is useful for increasing the efficacy of ABK therapy in patients with an MRSA infection. In light of nephrotoxicity, these results indicate that ABK therapy may be completed within 2 weeks with an ABK dose of less than 5, 000mg, as the total dose.
著者
三浦 拓也 山中 正紀 森井 康博 寒川 美奈 齊藤 展士 小林 巧 井野 拓実 遠山 晴一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】体幹に属する筋群はその解剖学的特性からグローバル筋群とローカル筋群の2つに大別される。近年,この体幹ローカル筋群に属する腹横筋や腰部多裂筋の機能に注目が集まり,様々な研究が世界的に行われている。腹横筋の主たる機能として,上下肢運動時における他の体幹筋群からの独立的,かつ先行的な活動や腹腔内圧の上昇,仙腸関節の安定化などが報告されている。また,腰部多裂筋に関しては腹横筋と協調して,また両側性に活動することで腰椎へ安定性を提供しているとの報告がある。これら体幹ローカル筋群は主に深層に位置しているため,その評価には従来,ワイヤー筋電計やMRIといった侵襲性が高く,また高コストな手法が用いられてきたが,近年はその利便性や非侵襲性から超音波画像診断装置による筋厚や筋断面積の評価が広く行われている。腹横筋と腰部多裂筋は協調的に活動するとの報告は散見されるが,両筋の筋厚の関連性について言及した研究は少ない。本研究の目的は腹横筋と腰部多裂筋を超音波画像診断装置にて計測し,その関連性を調査することとした。【方法】対象は,本学に在籍する健常男性10名(21.0±0.9歳,173.9±6.6 cm,64.3±9.5 kg)とした。筋厚および筋断面積の計測には超音波画像診断装置(esaote MyLab25,7.5-12 MHz,B-mode,リニアプローブ)を使用した。画像上における腹横筋筋厚の計測部位は腹横筋筋腱移行部から側方に約2 cmの位置で,その方向は画像に対し垂直方向とした。腰部多裂筋の筋断面積計測におけるプローブの位置は第5腰椎棘突起から側方2 cmの位置で,画像上における筋断面積は内側縁を棘突起,外側縁を脊柱起立筋,前縁を椎弓,後縁を皮下組織との境界として計測した。動作課題は異なる重量(0,5,10,15%Body Weight:BW)を直立姿勢にて挙上させる動作とし,各重量条件をランダム化しそれぞれ3回ずつ計測,その平均値を解析に使用した。統計解析にはSPSS(Ver. 12.0)を使用し,Pearsonの相関係数にて腹横筋筋厚と腰部多裂筋筋断面積の関連性を検討した。統計学的有意水準はα=0.05とした。【結果】統計学的解析から,0%BW(r=0.78,p<0.05),5%BW(r=0.72,p<0.05)条件において腹横筋の筋厚と腰部多裂筋の筋断面積との間に有意な正の相関が認められた。10%BW,および15%BW条件においては有意な相関関係は認められなかった。【考察】本研究は,機能的課題時における腹横筋と腰部多裂筋の形態学的関連性を検討した初めての研究であり,体幹に安定性を提供するとされている両筋がどのような関連性をもって機能しているのか,その一端を示した有用な所見である。本結果より,低重量条件においては腹横筋筋厚と腰部多裂筋筋断面積との間に有意な正の相関が認められたが,重量の増加に伴い相関関係は認められなかった。先行研究によると腹横筋や腰部多裂筋は機能的活動中に低レベルで持続的な活動が必要であるとされており,かつ両筋は低レベルな筋活動で充分に安定化機能を果たすと報告されている。また,両筋は他の体幹筋群と比較して筋サイズも小さいため,高負荷になるにつれて筋厚や筋断面積の値はプラトーに達していた可能性があり,さらに,高重量条件では重量の増加に伴う体幹への高負荷に抗するため,体幹グローバル筋群である腹斜筋群や脊柱起立筋群などの活動性が優位となっていたために筋厚や筋断面積の関連性が検知されなかったかもしれない。本所見は上記の点を反映したものであると推察される。腹横筋や腰部多裂筋は活動環境に応じて協調的に働くことで体幹に対して適切な安定性を提供しているとされてきたが,様々な活動レベルを考慮したデザインにおいてその関連性を検討した研究は無く,明確なエビデンスは存在していない。本研究はその一端を示すものであり,今後は筋活動との関係性や他の体幹筋群との関係性,さらには腹横筋や腰部多裂筋の機能障害があるとされている慢性腰痛症例においてより詳細な検討が必要であると思われる。【理学療法学研究としての意義】体幹ローカル筋群である腹横筋と腰部多裂筋に関して,低負荷条件において有意な正の相関関係が認められた。本所見は,体幹へ安定性を提供するとされている両筋の形態学的関連性を示唆した初めての研究であり,リハビリテーションにおける体幹機能の評価やその解釈に対して有用な知見となるだろう。
著者
三浦周行 編
出版者
開成館
巻号頁・発行日
vol.上級用, 1913
著者
中西 真一 藤原 純一 加賀谷 結華 高橋 久美子 澤邉 淳 三浦 勉 粕谷 孝光 福岡 岳美 小野 剛
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.233-237, 2014 (Released:2014-09-26)
参考文献数
13
被引用文献数
1

目的 : 大腿静脈カテーテル留置時に上行腰静脈へ迷入すると, 後腹膜血腫等の合併症を引き起こす可能性がある. しかし, カテーテルの迷入についてはあまり認識されていない.方法 : 2011年4月から2013年3月の間に当院で大腿静脈カテーテルを留置した患者107名を対象とし後ろ向きに検討した.結果 : 上行腰静脈への迷入は11/110回 (10.0%) で認め, 左側で5/34回 (14.7%) , 右側で6/76回 (7.9%) だった. 位置確認の腹部レントゲン検査で, カテーテルが側方へ変位している場合, 頭側に急峻に立ち上がる場合に迷入の可能性があった.結論 : カテーテル迷入は稀では無く, 迷入が疑われれば積極的に腹部CT, 側面レントゲン等の追加の検査が必要である.
著者
末廣 輝男 大久保 晃男 佐藤 憲夫 三浦 浩二 古賀 秀昭 太田 照明 大久 正敏 高橋 弘之
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.121-123, 1977

気柱の開口端で音叉を鳴らしながら気柱の長さを変化させ,音の強弱を耳で聴取して共鳴点を探る実験は従来から高校あるいは大学教養課程の物理学実験のテーマとして取上げられてきた.この実験は直接的である点で秀れているが,反面,音叉の振動が早く減衰すること,音圧最大の点を耳で判断するためにあいまいさが残ること,誤差を見積るのが難かしい等の問題がある.このため充分に定量的な実験とは言いかねる欠点があった.そこで音叉のかわりに低周波発振器と低周波増幅器に接続されたスピーカーを音源に用い,更に共鳴点ではスピーカーコーンの振幅が大きくなることを利用してスピーカーボイスコイルからコーンの振幅に比例した電圧を取出し,これをメータで読むことにより共鳴点を見出すことにした.これにより実験の精度および再現性が向上し,気柱の直径を変えた時の音速の変化等も検知することができた.
著者
木村 希 松行 美帆子 中村 文彦 三浦 誌乃 有吉 亮
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.341-348, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
11
被引用文献数
1

現在、コンパクトシティが人口減少時代の都市像の一つとして、その実現が求められているが、単に都市機能を駅近くに集積させただけでは、人が中心市街地に戻ってくるとは考えられず、中心市街地自身を魅力的な空間にする必要がある。その手段の一つとして、中心市街地における公共空間の設置があると考えられ、その意義を検証する必要がある。本研究は、中心市街地における公共空間の役割として、とくに周辺エリアのイメージの向上と回遊行動の助長に着目し、南池袋公園周辺においてアンケート調査を実施し、これらの効果があるかの検証を行った。分析の結果、公共空間の認知が周辺エリアへの愛着と防災の面からの安心感などの周辺エリアのイメージに対して間接的に影響を与えていること、公共空間に立ち寄ると回遊行動が助長されることが明らかになった。
著者
遠藤 佳章 木村 和樹 三浦 寛貴 久保 晃
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0264, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】腰部多裂筋は5つの筋束から構成され,それぞれの筋束が別々の神経支配を受けることから,腰椎の微細なコントロールを可能にし,姿勢保持に関わるという報告がある。しかしながら,腰部多裂筋を研究した報告は第4~5腰椎棘突起周囲の多裂筋の筋活動を見たものが多く,その他の腰椎レベルの腰部多裂筋の筋活動を比較・検討したものは少ない。また,体幹深層筋である腰部多裂筋は脊柱起立筋と共に胸腰筋膜で1つのコンパートメントを形成している。これは腰部多裂筋と脊柱起立筋が共同して働いていることを示唆している。このことから,腰部多裂筋と脊柱起立筋の関係性をはかる必要があるといえる。よって,本研究では異なる姿勢における,第2・第5腰椎レベルの腰部多裂筋(以下,LM(L2),LM(L5)),脊柱起立筋(以下,ES)の筋厚について超音波画像診断装置を用いて検証することを目的とした。【方法】対象は,若年健常男性25名とした。年齢:22.1±1.6歳,身長:170.4±5.8cm,体重:60.4±8.8kg,BMI:20.8±2.6kg/m2(平均±標準偏差)であった。各筋厚の測定は超音波診断装置(sonosite180plus:sonosite社製)を用いた。測定部位は,右側のLM(L2),LM(L5),ESとした。測定肢位は,腹臥位・座位・立位で腰椎前後弯中間位にて測定した。測定は安静呼気時を2回測定した。得られた画像を画像解析ソフトImage Jを用いて各筋厚を算出した。2回測定した各筋厚の平均を代表値とした。各筋厚の1回目と2回目で算出された値で級内相関係数(以下,ICC)を求め,再現性について検討した。各筋厚の各肢位での変化をみるために,反復測定一元配置分散分析を行い,その後Bonfferoniの多重比較検定を行った。統計解析にはSPSS statistic 19.0を使用し,有意水準は5%とした。【結果】ICCは,すべての項目において,0.95以上の数値を示した。LM(L2)の筋厚は腹臥位で27.3±4.6mm,座位で30.4±4.0mm,立位で33.3±4.6mmとなった。同様の順でLM(L5)では30.8±4.0mm,30.1±4.5mm,34.2±4.3mm,ESでは35.8±6.1mm,40.4±6.9mm,42.1±6.6mmとなった。LM(L2),LM(L5),ESの各筋厚は,各姿勢間で主効果が認められた。LM(L2)は腹臥位,座位,立位の順で有意に筋厚が増大した。LM(L5)は,腹臥位より立位で,座位より立位で有意に筋厚が増大した。腹臥位と座位の間では有意差が認められなかった。ESは,腹臥位より座位で,腹臥位より立位で有意に筋厚が増大した。座位と立位の間では有意差が認められなかった。【結論】LM(L2)とLM(L5)とESは姿勢保持の際に作用が異なることが示唆された。LM(L2)は腹臥位,座位,立位の順で筋厚が増大することが示唆された。LM(L5)は腹臥位と座位に比べ,立位で筋厚が増大するが,腹臥位と座位の間では筋厚の変化がないことが示唆された。ESは腹臥位と比べ,座位と立位で筋厚を増大するが,座位と立位では変化がないことが示唆された。
著者
三浦 宏文
出版者
実践女子大学短期大学部
雑誌
実践女子大学短期大学部紀要 = The Bulletin of Jissen Women's Junior College (ISSN:24344583)
巻号頁・発行日
no.40, pp.43-55, 2019-03-09

本稿では宮沢賢治の作品を引用する映画『幕が上がる』に表れた初期仏教思想を検討した。本映画中で富士ヶ丘高校演劇部員たちが吉岡先生の退職という喪失から立ち上がって行く仕方は、仏弟子達がブッダの入滅を体験する中で「自らをたよりとし、法をよりどころとして生きていく」という後の「自帰依」「法帰依」と言われる教えによって乗り越えていく姿と酷似していた。そして舞台『幕が上がる』ではそこからさらに「お互いの喪失を救い合う」という大乗仏教の境地にまで進められていたのである。This study examines concepts of early Buddhism in the movie Maku Ga Agaru (The Curtain Rises) via Buddhist writer MIYAZAWA Kenji's work as quoted in the movie. It highlights similarities between how the student drama club members recover from the loss of Yoshiyoka-sensei and how the Buddha's disciples overcame their great loss after the Buddha's nirvana by adhering to the Buddha's teachings and being self-reliant. This study also emphasizes how, in the live stage versions of Maku Ga Agaru, the members gained additional psychological depth in keeping with the Mahāyāna Buddhist principle of reciprocal help, "to save each other's losses.".
著者
宗像 昭子 鈴木 利昭 新井 浩之 横井 真由美 深澤 篤 逢坂 公一 松崎 竜児 三浦 明 渡辺 香 森薗 靖子 権 京子 金澤 久美子 宮内 郁枝 鈴木 恵子 久保 和雄 尾澤 勝良 前田 弘美 小篠 榮
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.34, no.13, pp.1525-1533, 2001-12-01
参考文献数
14
被引用文献数
1

今回我々は, 当院で維持血液透析を施行している安定した慢性腎不全患者59名を対象患者として, ベッドサイドにて簡便に使用できるアイスタット・コーポレーション社製ポータブル血液分析器i-STATを用いて, 透析前後で全血イオン化Ca (i-Ca) 濃度を測定し, 血清T-Ca濃度との関係について検討し, 以下の結果を得た.<br>1) 透析前後における血清T-Ca濃度, 全血i-Ca濃度は, それぞれ9.43±0.90→10.54±0.70mg/d<i>l</i> (p<0.05), 1.26±0.10→1.30±0.07mmol/<i>l</i> (p<0.0001) と, いづれも有意な増加を示した. 2) Caイオン化率は, 53.43±0.03→49.55±0.04% (p<0.001) へと透析後有意に低下した. この原因として, 血液pHの変化の影響が考えられ, 血液pHとCaイオン化率との間には明らかな負の関係が認められた. 3) 透析前後における, 血清T-Ca濃度と全血i-Ca濃度の関係について検討したところ, 透析前ではy=7.507x+0.015 (r=0.839; p<0.001) と強い正の相関が認められたが, 透析後においては, 全く相関が認められなかった. この点について, pHならびにAlbを含めた重回帰分析法を用いて検討したところ, T-Ca=3.369×i-Ca+5.117×pH-32.070 (r=0.436, p=0.0052) と良好な結果が得られた. 4) 透析前後の全血i-Ca濃度の測定結果から, 容易に血清T-Ca濃度を換算できるノモグラムならびに換算表を作成した.<br>以上の結果より, ポータブル血液分析器i-STATを用いた, ベッドサイド ("point-of-care") での全血i-Ca濃度の測定とノモグラムの利用は, 透析室においてみられるCa代謝異常に対して, 非常に有用であると考えられる.
著者
蒲原 元 中井 一人 伊藤 藍 三浦 由美 大原 弘樹 安藤 祐一 丹羽 貴之 新村 友夏 江﨑 雅彰
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【目的】我々は平成17年より通院患者を対象に腰痛教室を定期的に開催し,平成24年度からは地域の方々を対象に豊橋市生涯学習講座の一環として当法人近隣の地区市民館で教室を開催してきた。第29回東海北陸理学療法学術大会において,我々の教室が参加者に分かり易い内容で腰痛予防の情報を提供できているか,アンケート調査の結果報告を行った。その際の結果は,教室内容に対して分かり易いが97.4%であった。そこで26年度は教室内容に対して参加者がどれくらい理解出来ているかを把握する為,教室直後に復習テストを行い調査する事とした。【方法】教室の基本方針は"生活の中で楽に腰椎の生理的前弯位を保持する"とし,内容は基礎知識,日常生活指導,運動指導の3パートで構成している。復習テストは教室で講義した内容を問う全5問とし,腰の負担が少ない姿勢について文章から正しいものを選択する問題,写真から選択する問題を各1題,日常生活での注意点についての記述問題,日常生活上で骨盤中間位を保つ為の工夫についての記述問題,どのような症状の際は病院を受診すべきかを選択する問題をそれぞれ1題とした。【結果と考察】5つの地区市民館で教室を開催し,合計参加者数301名,回収率94.0%,全体正解率89.1%。各設問の正解率は,腰の負担が少ない姿勢の文章問題94.7%,写真問題97.9%,日常生活の注意点について85.5%,日常生活の工夫について84.1%,受診すべき症状について83.4%であった。全体正解率は89.1%であり,参加者が教室内容を概ね理解していると考えられた。参加者に対し分かり易く,内容を理解してもらえる教室が行えていると思われる為,今後は教室を行う事で得られる効果を客観的に評価していきたい。そして,復習テストの点数と客観的評価の結果から,正解率の適正水準や,どの項目が効果と関係するか等を検証していき,より効果的な教室作りにつなげていければと考えている。