著者
中山 裕人
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.67-74, 2007-12-25 (Released:2018-09-21)
参考文献数
14

従来,日本では北海道と本州から知られていたヒメシカシラミバエを北部九州の犬鳴山系で発見した.本種は九州から記録される唯一のシカシラミバエ類の種である.2004年から2006年にかけての犬鳴山系の調査で本種有翅成虫が多数採集されたが,犬鳴山系には約700頭のニホンジカが生息しており,ヒメシカシラミバエはニホンジカに寄生していると思われた.ヒメシカシラミバエ有翅成虫は犬鳴山系では5月から12月に現れたが,これは本州の既産地に比べると出現終了期が遅く,結果的に長い出現期間だった.本州ではヒメシカシラミバエに加えてクロシカシラミバエが同所的にニホンジカに寄生しているが,ヒメシカシラミバエ有翅成虫は春から秋に出現する一方,クロシカシラミバエ有翅成虫は晩秋から初冬に出現している.犬鳴山系でヒメシカシラミバエ有翅成虫が晩秋から初冬にかけても現れていたのは,犬鳴山系にはクロシカシラミバエが生息していないため,ヒメシカシラミバエとクロシカシラミバエの生態的競合がないからではないかと推察された.また,ヒメシカシラミバエ有翅成虫はしばしば捕虫網の外側に飛来したが,捕虫網の色が白でも青でも飛来傾向に差は認められなかった.加えて,ヒメシカシラミバエは,ヨモギの葉を入れたシャーレ中で120〜135時間(丸5日以上)生きた個体がいたことから,羽化後未吸血のまま5,6日生きる個体も存在しうることが示唆された.
著者
島岡 隆行 中山 裕文
出版者
国際ジオシンセティックス学会 日本支部
雑誌
ジオシンセティックス論文集 (ISSN:13446193)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.1-10, 2014 (Released:2015-04-27)
参考文献数
13

廃棄物埋立地の遮水工に遮水シートが用いられてから約40年が経過し,今では最も一般的で,多くの実績を有する遮水材料となっている.その間,遮水シートの材料特性に関する知見に比べて,廃棄物埋立地への遮水材料としての適用に関する知見は不足していた.本報では,実埋立地の遮水シートを対象とした劣化の実態と耐久性の予測手法の提案を始め,リモートセンシング技術を活用した精度高い遮水シート敷設時の接合検査法の開発や広範囲にわたる迅速な遮水工の管理手法を紹介している.また,廃棄物処分場が抱える問題と解決のための遮水シートに係る研究課題について述べている.
著者
中山 裕子 大西 秀明 中林 美代子 大山 峰生 石川 知志
出版者
日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.292-298, 2008
参考文献数
17

本研究の目的は,肩甲下筋の機能的な違いを明らかにすることである。対象は健常成人6名とし,運動課題は5秒間の肩関節最大等尺性内旋運動で,筋力測定器(BIODEX)を使用した。計測肢位は肩甲上腕関節回旋中間位,内旋45度位,外旋45度位で,上肢下垂位,屈曲60度・120度,肩甲骨面挙上60度・120度,外転60度・120度の計21肢位であり,肩甲下筋上部・中部・下部の筋活動をワイヤー電極にて導出した。筋電図積分値は内外旋中間位上肢下垂位の値を基に正規化した(%IEMG)。最大トルク値と%IEMG値は挙上角度による比較を行った。肩内外旋中間位・肩甲骨面挙上および外転位での内旋運動において,最大トルク値は,120度の値が下垂位および60度の値より有意に低く,運動肢位により内旋トルクの変化が見られた。また,%IEMGについては,内外旋中間位・外転において,肩甲下筋上部は,下垂位が60度および120度に比べ高い傾向が見られた。また,内外旋中間位・肩甲骨面挙上において,肩甲下筋中部は,60度の値が,下垂位および120度の値に比べ高い傾向が見られた。下部においては,120度の値は下垂位,60度に比べ高い傾向が見られた。以上より,肩甲下筋は肩内外旋中間位における挙上角度の変更により上腕骨長軸に対し垂直に近い線維が最も強く肩関節内旋運動に作用することが示唆された。
著者
吉川 泰弘 久和 茂 中山 裕之 局 博一 西原 眞杉 寺尾 恵治 土井 邦雄
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2002

研究目的:内分泌撹乱化学物質の神経発達に対する影響の研究は比較的新しく、まだ遺伝子レベルや個体レベルの影響評価がランダムに報告されているに過ぎない。特にげっ歯類から霊長類にわたる一貫性のあるリスク評価研究はほとんど行われていない。本研究ではラット、サル類、チンパンジーの個体を用いて環境化学物質代謝のヒトへの外挿を行う。またラット胎児、げっ歯類・霊長類の神経培養、マウス・サル類のES細胞などを用いて、さまざまなレベルで環境化学物質の影響を解析する。高等動物の比較生物学を得意とする獣医学領域の研究者が研究成果を帰納的に統合しヒトへの外挿を行い、内分泌撹乱化学物質の神経発達に対するリスク評価をすることを目的とした。研究の経過と成果ラットを用いたビスフェノールA(BPA),ノニルフェノールなどのエストロゲン様作用物質、及び神経発達に必須の甲状腺ホルモンを阻害するポリ塩化ビフェニール(PCB),チアマゾール、アミオダロンなどをもちいて神経発達への影響を評価した。主として神経行動学的評価を中心にリスク評価を行い、その結果を公表した。また齧歯類を用いた評価を行うとともにヒトに近縁なサル類も対象に研究を進めた。その結果、(1)齧歯類は神経回路が極めて未熟な状態で生まれるのに対し、霊長類の神経系は胎児期に充分に発達すること、(2)BPAや甲状腺ホルモンの代謝が齧歯類とサル類では著しく異なること、(3)妊娠のステージにより、BPAの胎児移行・中枢神経への暴露量が異なることが明らかになり、齧歯類のデータを単純に、ヒトを含む霊長類に外挿することは危険であることが示唆された。サル類を用いたリスク評価ではアカゲザルでダイオキシン投与により、新生児の社会行動に異常が見られること、BPA投与では暴露された次世代オスのみがメスの行動を示す、いわゆる性同一性障害のような行動を示すこと、甲状腺ホルモンの阻害作用を示すチアマゾールでは著しい神経細胞の減少と分化の遅延が起こること、PCBの高濃度暴露個体から生まれた次世代では高次認知機能に低下傾向が見られることなどの、新しい研究結果を得た。
著者
中山 裕子 大西 秀明 中林 美代子 大山 峰生 石川 知志
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.292-298, 2008-10-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
17

本研究の目的は,肩甲下筋の機能的な違いを明らかにすることである。対象は健常成人6名とし,運動課題は5秒間の肩関節最大等尺性内旋運動で,筋力測定器(BIODEX)を使用した。計測肢位は肩甲上腕関節回旋中間位,内旋45度位,外旋45度位で,上肢下垂位,屈曲60度・120度,肩甲骨面挙上60度・120度,外転60度・120度の計21肢位であり,肩甲下筋上部・中部・下部の筋活動をワイヤー電極にて導出した。筋電図積分値は内外旋中間位上肢下垂位の値を基に正規化した(%IEMG)。最大トルク値と%IEMG値は挙上角度による比較を行った。肩内外旋中間位・肩甲骨面挙上および外転位での内旋運動において,最大トルク値は,120度の値が下垂位および60度の値より有意に低く,運動肢位により内旋トルクの変化が見られた。また,%IEMGについては,内外旋中間位・外転において,肩甲下筋上部は,下垂位が60度および120度に比べ高い傾向が見られた。また,内外旋中間位・肩甲骨面挙上において,肩甲下筋中部は,60度の値が,下垂位および120度の値に比べ高い傾向が見られた。下部においては,120度の値は下垂位,60度に比べ高い傾向が見られた。以上より,肩甲下筋は肩内外旋中間位における挙上角度の変更により上腕骨長軸に対し垂直に近い線維が最も強く肩関節内旋運動に作用することが示唆された。
著者
阿野 泰久 中山 裕之
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.89-96, 2017 (Released:2017-08-07)
参考文献数
21

我々はこれまで,カマンベールチーズ由来の成分が,アルツハイマー病モデルマウスにおいて脳内のアミロイドβ沈着および炎症を抑制することを報告した。一方,アルツハイマー病モデルマウスの腸管などの末梢組織における炎症惹起や末梢の炎症刺激による認知機能低下に関する報告がなされており,本研究では,カマンベールチーズ由来成分の腸間膜リンパ節における樹状細胞に対する作用を検証した。まず骨髄由来樹状細胞への作用をin vitroで調べた結果,カマンベールチーズ由来サンプルに炎症性サイトカイン(IL-12)の産生および抗原提示の補助刺激分子(CD86)の発現の抑制作用を確認した。続いて,カマンベールチーズ由来成分の摂取のアルツハイマー病モデルマウス腸間膜リンパ節への作用を検証した結果,カマンベールチーズ由来成分摂取群では樹状細胞の炎症状態を抑制し,制御性T細胞が増加することを確認した。これらの結果より,アルツハイマー病モデルマウスではカマンベールチーズの摂取が脳内のみならず,末梢組織でも炎症を抑制することが確認された。
著者
大澤 正明 島岡 隆行 中山 裕文
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.291-302, 2009 (Released:2009-11-25)
参考文献数
22

わが国における廃棄物対策は公衆衛生の向上を目的とすることから始まったが,衛生状態が高いレベルで安定化している今日においては,公衆衛生対策としての貢献を評価されることは少なく,また,現在まで廃棄物対策が公衆衛生の向上のために何をどのようにして行い,その効果がいつ頃から現れてきたのかということに関して十分に検証されてこなかった。本研究では,廃棄物対策とりわけごみ処理に着目し,衛生状態の向上との関連性について検討した。その結果,ごみ処理は,上水道整備や下水道整備と並び,公衆衛生の向上に大きな貢献を果たしてきたことが明らかになった。特に,清掃法施行下の取り組みが大きな効果を発揮し,昭和50 (1975) 年前後におけるごみ焼却施設の基本的な整備の完了をもって,衛生対策としてのごみ処理の役割を達成していたことがわかった。
著者
齊藤 忠彦 中山 裕一郎 小野 貴史 木下 博
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では,子どもの心を動かすことができるような音楽科教育のあり方について,脳科学からの検討を試みた。歌唱や鑑賞の具体的な授業場面を想定し,活動に伴う脳内のヘモグロビン濃度の変化をNIRSまたはfMRIを用いて計測し,そのデータをもとに考察を行った。その結果,歌唱の場面では,一人で歌う時より複数の人の声に合わせて歌う時の方が,脳内の賦活部位が拡がり,ブロードマン22野および25野,大脳基底核あたりが関与する可能性が高いことなどを指摘した。
著者
関根 正人 柴田 祐希 小方 公美子 中山 裕貴
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.I_1531-I_1536, 2018 (Released:2019-03-30)
参考文献数
8
被引用文献数
1

本研究では東京都23区の隅田川以東エリアに,近い将来発生する可能性が高い時間雨量100mmの豪雨が1時間降り続いた際の内水氾濫,さらに荒川が破堤し大規模な外水氾濫が発生した際の浸水予測計算を行った.これにより,豪雨,河川氾濫による浸水の発生,拡大プロセスを解明した.このエリアは浸水リスクが高くなると予想される地理的要因が存在する.そこで対象エリア東側の荒川以東エリアと,西側エリアである江東エリアを比較し浸水リスクの評価を行った.さらに今後の避難シミュレーションを見据えた検討も加えている.結果として床上浸水などの浸水リスクの高さが明らかになり,隅田川以東以外のエリアを含む広域避難の必要性についても示している.
著者
野嶋 素子 中山 裕子 小川 幸恵 保地 真紀子 和泉 智博
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0293, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】腰椎疾患においてL4/5とL5/S椎間は障害が多い部位である。L5神経根は前脛骨筋,中殿筋を優位に支配し,これまでに下垂足に伴い股関節外転筋力は低下し,歩行に影響することが報告されている。一方でS1神経根は下腿三頭筋,大殿筋を優位に支配しているが,S1神経根障害における臨床像と歩行能力の報告は少ない。本研究の目的はL5,S1神経根障害における筋力低下・感覚障害および歩行について調査することである。【方法】対象は2011.4~16.9に,L4/5またはL5/Sの単椎間ヘルニアで,内視鏡を含むヘルニア摘出術を施行したL4/5椎間板ヘルニア59名(以下L4/5群),男性43名,女性16名,平均46.9±14.4歳と,L5/S椎間板ヘルニア49名(L5/S群),男性31名,女性18名,平均40.0±11.7歳である。検討項目は,術前の前脛骨筋(以下TA),中殿筋(GME),ハムストリングス(HA),腓骨筋(PE),下腿三頭筋(TS),大殿筋(GMA)のMMT,感覚障害の有無とその部位,歩行速度,Timed Up and Go Test(以下TUG)であり,カルテより後ろ向きに調査した。またMMT3以下を筋力低下とし,L4/5群の筋力低下がある26名(以下L4/5-P群),男性19名,女性7名と,低下がない33名(L4/5-N群),男性24名,女性9名,L5/S群の筋力低下がある29名(L5/S-P群),男性18名,女性11名と低下がない20名(L5/S-N群),男性13名,女性7名に分類し,歩行に関する項目について比較した。統計解析はt検定を用い,有意水準は5%とした。【結果】L4/5群の筋力低下の割合は重複を含め,TA12名(20%),GME10名(17%),HA2名(3%),PE5名(8%),TS15名(25%),GMA5名(8%)であった。TAに筋力低下を認めた12名中5名(42%)にGMEの低下が見られ,4名は同時にTSが低下し,更に2名はGMAも低下していた。感覚障害はL5領域29名(49%),S1領域14名(24%)に,両領域12名(20%)に認めた。L5/S群の筋力低下は,TA6名(12%),GME9名(18%),HA7名(14%),PE3名(6%),TS22名(45%),GMA12名(24%)であり,TSに低下を認めた22名中12名(55%)にGMAの低下が見られ,そのうち3名はGMEに,更に2名はTAも低下していた。感覚障害はL5領域23名(47%),S1領域27名(55%),両領域17名(35%)に認めた。歩行速度はL4/5-P群1.4±0.4 m/s,L4/5-N群1.5±0.4m/s,TUGは10.6±2.9秒,9.7±2.6秒であり両群に差を認めず,L5/S-P群とL5/S-N群は,歩行速度が1.3±0.4m/s,1.5±0.4m/s,TUGは12.4±4.9秒,9.7±2.0秒であり,両群間に有意差を認めた。【結論】L4/5群ではTAの筋力低下に伴いGMEが低下,L5/S群もTSと同時にGMAが低下している症例が見られ,L4/5群では更にTS,L5/S群ではGMEの低下も一部認めた。感覚障害についても混在例が存在していた。これらは神経支配のオーバーラップによる障害の影響等が考えられるが明らかではない。L5/S-P群は,L5/S-N群に比べ歩行能力の低下を認めた。S1神経根障害による筋力低下は歩行障害を生じやすいため詳細な理学療法評価が重要である。
著者
鈴木 基史 飯田 敬輔 石黒 馨 岩波 由香里 栗崎 周平 多湖 淳 石田 淳 小浜 祥子 中山 裕美
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

主な実績として以下の3つを挙げる。最も重要な成果は、本研究計画に即して初年度から進めてきた分析をまとめあげるため、代表者・分担者が下記の題目の論文の作成に着手し、進めたことである。その過程として、9月に研究会を開催して代表者が方向性を提示し、その後、調整を経て各論文の題目と構成の決定を行った。いずれの論文も科研題目「国際制度の衰微と再生の政治経済分析」に合致し、研究計画で予定されている方法を駆使して作成されるものである。石黒馨「貿易協定と貿易戦争の緩衝」、石田淳「事前協議制度と同盟ディレンマの緩和」、岩波由香里「国連平和維持活動と部隊派遣」、鈴木基史「国際開発援助制度の危機とポピュリズムの台頭」、栗崎周平「外交使節制度の進化と国際システムの形成」、飯田敬輔「グローバル貿易レジームと米国リーダーシップの言説」、中山裕美(土井翔平との共著)「 国際難民制度の危機のテキスト分析」、鈴木基史(松尾晃隆・宇治梓紗との共著)「国際金融サーベイランス制度の比較テキスト分析」、多湖淳「非核三原則と国民の認識変化」、小濵祥子(大槻一統との共著)「核抑止制度と第二撃」第二の実績として、2019年6月28日に京都大学において日本学術会議の主催、本科研研究共催の学術フォーラム「グローバル政策ネットワークと国際機関」を主導した。同フォーラムは、本研究課題と合致し、代表者の鈴木が責任者として趣旨説明を行い、分担者の飯田敬輔教授が本科研課題に関連する研究報告を行った。第三に、研究協力者の宇治梓紗京都大学講師が、本科研研究の方法として掲げているサーベイ実験を気候変動制度を対象として実施した。これらの研究の進捗状況の確認と関連研究報告を行うことを趣旨とした研究会の開催を2020年3月に予定していたが、感染問題で中止とせざるを得なかった。その後、メール審議によって進捗状況の確認を行った。
著者
遠藤 秀紀 村田 浩一 鯉江 洋 中山 裕之
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

高齢動物の骨格を標本化、マクロ形態学的変化を検討し、三次元画像情報の構築に成功した。アジアゾウ、カバ、シロサイ、キリンなどにおいて、脊椎や四肢、頭蓋におけるマクロ形態学的異常を検出し、骨老化の基礎理論を構築した。アジアゾウでは、高齢での顎と臼歯の問題点を画像情報を用いて議論した。中型獣では顎や顔面の機能異常を観察、鳥類と爬虫類でも加齢と形態変化について、生理学的背景とともに把握することができた。成果は、高齢動物の直接的な研究にとどまらず、飼育動物に関する基礎生物学的また病理学的データ収集の機会を大幅に拡大することに成功した。また、動物園水族館に向けた動物福祉的提言を発展させることができた。
著者
中山 裕司 高橋 浩二 宇山 理紗 平野 薫 深澤 美樹 南雲 正男
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.163-174, 2006-06-30 (Released:2012-08-27)
参考文献数
23
被引用文献数
2

音響特性による嚥下障害診断の重要な手掛かりとなる嚥下音について, その産生部位や部位に対応した音響特性は明らかとされていない.そこで嚥下音の産生部位と音響特性を明らかにする目的で, 画像・音響分析プログラムを新たに構築し, 健常者を対象として嚥下音産生時の造影画像と嚥下音音響信号データの同期解析を行った.対象は健常成人12名で, 各被験者8嚥下ずっ計96嚥下にっいて食塊通過時間の測定, 食塊通過音の識別と出現頻度の解析, および最大ピーク周波数の評価を行った.食塊通過時間は喉頭蓋通過時間 (121.7±92.4msec), 舌根部通過時間 (184.8±70.6msec), 食道入口部通過時間 (342.9±61.1msec) の順で長くなり, 舌根部通過音, 喉頭蓋通過音, 食道入口部通過開始音, 食道入口部通過途中音および食道入口部通過終了音が識別された.このうち喉頭蓋通過音が最も出現頻度が高く (96嚥下中94嚥下), 嚥下ごとの通過音の出現状況では舌根部通過音, 喉頭蓋通過音, 食道入口部通過開始音, 食道入口部通過途中音の4音が出現するパターンが96嚥下中22嚥下 (22.9%) と最も多くみられた.また最大ピーク周波数の平均値の比較では食道入口部通過開始音 (370.7±222.2Hz) が最も高く, 続いて食道入口部通過途中音 (349.1±205.4Hz), 舌根部通過音 (341.2±191.3Hz), 喉頭蓋通過音 (258.6±208.2Hz), 食道入口部通過終了音 (231.2±149.8Hz) の順であった.本研究により嚥下音の産生部位と産生喜附に対応した音響特性が明らかとなった.
著者
神山 かおる 中山 裕子 佐々木 朋子 福島 富士子 畠山 英子
出版者
特定非営利活動法人 日本咀嚼学会
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.75-81, 2003

この研究は, 食事一食分の咀嚼量を筋電図により定量化する試みである. 和・洋の4種類の食事メニュー摂取挙動を, 咀嚼筋筋電位とビデオ観察を用いて解析した. 一食分量の咀嚼量を, 特に主食 (米飯類またはパン) について比較した.<BR>軟らかいパンであっても白飯より咀嚼量は高値であった. 和食では各料理がバランスよく咀嚼されるのに対し, 洋食では主食であるパンに咀嚼量割合が偏る傾向にあった.<BR>厚生労働省基準による「かたさ」で咀嚼困難者に適するとされても, フランスパンなどの咀嚼量が多く噛みにくい食品が存在した.<BR>近年の食事における咀嚼不足の傾向は, 食の洋風化の影響ともいわれているが, 洋食化が咀嚼量を減らすとは限らないことが示唆された.<BR>軟らかく調理された全粥を白飯と比較すると, 同一エネルギーを摂取するために, 粥では容積が増すため, より多数回・長時間の咀嚼を必要とした. この事実は, 軟らかい食品が必ずしも食べやすいとは限らないことを示している.
著者
中山 裕子 大西 秀明 中林 美代子 石川 知志
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0602, 2007 (Released:2007-05-09)

【目的】肩甲下筋は主に肩甲上腕関節の内旋作用を持つ筋で,回旋筋腱板を構成する重要な筋である.肩甲下筋はその構造や神経支配より,部位による機能の違いの可能性が報告されているものの,上・中・下部に分けた筋活動特性についての報告はみない.本研究の目的は,肩甲下筋の上・中・下部線維の機能的な違いを明らかにすることである.【対象と方法】対象は実験内容を書面にて説明し同意を得た健常成人6名(男性4名,女性2名,平均年齢35.0歳)であった.運動課題は5秒間の肩関節最大等尺性内旋運動とし,筋力測定器(BIODEX)を使用して行った.測定肢位は椅子座位とし,肩甲上腕関節内外旋中間位で,上腕下垂位,肩甲骨面挙上60度,120度に固定した肢位で2回ずつ行い,肩甲下筋の上部・中部・下部線維の筋活動をワイヤー電極にて導出した.電極はウレタンコーティングのステンレス製ワイヤー電極を使用し,電極間距離を5mmとして,肩甲骨内縁から関節窩方向に向けて刺入した.肩甲下筋の上部線維には内角,中部線維には内角より3横指尾側,下部線維には下角より1横指頭側からそれぞれ刺入し,電気刺激を利用して確認した.ワイヤー電極の刺入は共同研究者の医師が行った.筋電図は前置増幅器(DPA-10P,ダイヤメディカルシステムズ)および増幅器(DPA-2008,ダイヤメディカルシステムズ)を用いて増幅し,サンプリング周波数2kHzでパーソナルコンピューターに取り込み,運動開始後1秒後以降で最大トルクが発揮された時点から0.5秒間を積分し,上肢下垂位の値を基に正規化した(%IEMG).統計処理には分散分析と多重比較検定(有意水準5%未満)を用い比較検討した.【結果】肩甲下筋上部線維の%IEMGは,60度挙上位で93.9±11.5%,120度挙上位で79.1±23.6%であり,120度挙上位の値は下垂での値よりも小さい傾向が見られた(p=0.08).中部線維では60度挙上位で119.3±14.9%であり,120度挙上位(93.7±18.4%)より有意に高い値を示した(p<0.05).下部線維では60度挙上位で112.4±11.9%,120度挙上位で129.6±19.4%であり,120度挙上位の値は下垂位の値より有意に高い値を示した(p<0.05).【考察】肩甲上腕関節回旋中間位における等尺性内旋運動において,肩甲下筋上部線維の活動は肩関節面挙上角度の増加に従い減少する傾向があり,中部線維の活動は60度屈曲位が最も大きく,下部線維の活動は120度屈曲位が最も大きいことが示された.このことは上腕骨長軸に対しより垂直に近い線維が最も効率よく肩関節内旋運動に作用することを示唆していると考えられる.