著者
中川 雅文 杉田 玄
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.150-162, 2008 (Released:2009-10-15)
参考文献数
6

デジタル信号処理 (Digital signal processing, DSP) 技術に助けられ補聴器は飛躍的に進歩し, 現在も革新的な変化を続けている。軽度難聴者への福音となったオープンフィッティングは, 従来解決が難しかった耳閉塞感などの愁訴がほとんどないなどの理由から適応が拡大される傾向にある。しかし, その特性に関する理解不足から来る不適切な処方やオープン対応式補聴器との混同などの問題も散見するようになっている。軽度難聴者へのオープンフィッティング式補聴器の適応と限界, 処方における具体的な指示事項の在り方, 装用後の適合評価の工夫など補聴器というハードウエアを軸とした補聴器フィッティングのあり方について記す。補聴器相談医として実務に就いている医師がこれらの最新の知見や知識を補足し実際の補聴器診療に役立ててもらえれば幸いである。
著者
竹之内 耕 茨木 洋介 小河原 孝彦 宮島 宏 松原 誠 西澤 あずさ 青井 真 平松 良浩 中川 和之
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

1. はじめに 新潟県糸魚川ジオパークには,1990年に公開されたフォッサマグナパークと呼ばれる糸魚川-静岡構造線(以下,糸静線)断層露頭の見学公園がある.国道148号脇の駐車場から遊歩道をへて断層露頭まで徒歩約10分の行程である.2018年8月の改修にあたっては,断層露頭の拡張のほか,断層のはぎ取り展示の設置や野外解説板の新設や改修が行われた.断層露頭近くの野外解説板には,防災科学技術研究所が開設した「地震だねっと!」(地震活動や歴史地震を閲覧できるホームページ)に接続できるQRコードを表示して,断層と地震を関連付けて学習できるようにした.ここでは,高校生を対象にした,「地震だねっと!」を活用した地震と断層の学習例を紹介する.2. 地震と断層の学習例(神奈川県の私立高校)(1) 断層に至る遊歩道での学習 二つの河川の川原の岩石の色が違うことに気づき,糸静線を境に地質が異なることを説明する.古生代の岩石を観察し,年代が古いほど多くの地殻変動を受けて硬いがボロボロの性質になっていることを理解する.近づくと見えてくる断層露頭では, 西側の古生代の岩石(暗緑色~白色)と東側の新生代の岩石の色調が,縦方向の不連続線を境に明瞭に異なり,それが糸静線であることが容易に理解される.(2) フォッサマグナと地震についての解説(野外解説板による) 糸静線はフォッサマグナの西端断層であり,日本列島形成と密接な関係があること,また,断層が動く時に地震が起き,中でも大きな断層運動が起こると断層が地表まで達して活断層と呼ばれること,また,動くたびに生じた変位が積み重なって,山地などの地形が形成されていくことを説明する.(3) 「地震だねっと!」からの情報生徒が携帯するスマートフォンで「地震だねっと!」に接続し,過去10年間の糸魚川周辺で起きた地震を表示する.画像から生徒が気づく点は以下のとおりである.・感じない地震を含めると,多数の地震が起きている.・地震が起きている場所と起きていない場所がある.・線状,楕円状に集中して起こる地震がある.・内陸の地震は,深さ10kmよりも浅いところで起きている.・活断層に沿って起きている地震とそうでない地震がある.・同じ活断層帯でも,地震が起きている場所と起きていない場所がある.・糸魚川は地震が空白で,活断層がない.・歴史地震が起こった場所に地震が集中しているようにみえる. その後,5年間,1年間,30日間,一週間,24時間と震源分布図を表示させていくと,表示される地震数は減少していく.24時間の画像でも,最新の地震が表示され,人が気づかない地震が今も起こっていることに驚く生徒も多い.(4) 断層露頭 露頭全体がボロボロになっていて,岩石が壊されていることに気づく.断層角礫との隙間には,さらに破砕された細粒物質(断層ガウジ)が充填されており,指で断層ガウジを押すと凹んで固結していないことがわかる.断層ガウジには,断層の運動方向を示す条線が認められるので,断層ガウジは岩石が粉砕されてできたことが理解される.マグニチュード7前後の地震を伴う断層運動では変位量が1.5~2mとされているので,糸静線に沿う落差(東落ち6000m以上)を考えると,過去3000~4000回の断層運動が起こって,フォッサマグナが落ち込んでいったことが想像できる.また,フォッサマグナの落差が進展する過程で,断層の幅が成長していったことが理解される.3. まとめ 「地震だねっと!」で示される震源分布図は,日本列島が地震の多い場所だと視覚的に理解でき,地震と断層を結び付けて考えるための良いツールである.断層露頭観察では,地質現象の結果の観察で終わってしまう傾向にある.しかし,「地震だねっと!」の利用によって地震と断層が関連付けられることで,生徒たちが地下の断層運動をイメージすることができるようになると期待される.今後,高校生を対象に「地震だねっと!」を利用した野外観察授業の経験を増やし,地震防災学習を含めた豊富な学習例をつくっていきたい.
著者
中川 裕美
出版者
日本出版学会
雑誌
出版研究 (ISSN:03853659)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.63-83, 2016-03-20 (Released:2019-03-31)
参考文献数
19

本報告では,黎明期の女子体育の思想がどのように形成されたのかについて,『女学雑誌』の言説分析から明らかにする.当初,体育は女子には不必要なものとされていた.しかし,「母になるべき身体」を持つ女子の体育は国家的責務であるとする考えが次第に強くなった.時代が進むと,日本の女子に相応しい体育は西洋式の舞踏や体操ではなく,薙刀など日本古来の武道であるとされ,身体よりも心の修養が強調されるようになった.
著者
中川 圭輔
出版者
アジア経営学会
雑誌
アジア経営研究 (ISSN:24242284)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.199-212, 2018 (Released:2019-04-01)
参考文献数
42

In Korea, it sometimes happens that the individual who should take responsibility in the face of an accident is too easily able to neglect his duty, as exemplified by cases such as scandals arising from cosy relations between the government of the day and chaebols, or the captain of a ship or conductor being able to retreat from the location of an accident. Why do they act with such selfishness? This study focuses on a selection of Korean occupational ethics in the context of the identification system and Confucianism of the Li dynasty. The points clarified in this paper are as follows. Merchants and craftworkers established their own occupational ethics despite the Yangban’s disdain for them from the point of view of the identification system and Confucianism. The problem is that occupational ethics could not be established among the Yangban. In addition, there is the effect of the absence of Yangbando (similar to Bushido) leading to a lack of awareness of job responsibility. It is essential for the top of the organisation to (1) respect the work of merchants and craftworkers, (2) reeducate the‘nobles oblige’ and (3) revive an ethical spirit like the Seonbi spirit that once existed in Korea.
著者
西条 旨子 中川 秀昭 西条 寿夫
出版者
金沢医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

次世代の神経・精神発達に対するダイオキシン胎内暴露の影響を検討するために、妊娠9日より19日までの11日間、雌ウイスターラットに0.1μg/kg/dayの2,3,7,8-四塩化ダイオキシン又は同等量のコーンオイルを経口ゾンデで胃内へ直接投与した。ダイオキシン暴露群4匹と対照群5匹については、妊娠19日目に帝王切開により胎児を取り出し、その体重や脳、腎臓、肝臓、胎盤などの臓器重量を測定して、胎児期の発育を比較検討したところ、暴露群の体重、脳全体、肝臓、腎臓の平均重量はコントロールに比べ有意に少なく、特に腎臓は体重あたりの割合も有意に少なかった。この時、脳については、暴露群の視床下部は全脳あたりの割合が対照群に比べ有意に大きかった。その他の妊娠ラットは自然分娩にて出産させ、出生した仔ラットに以下2種類の行動学的実験を行い、次の結果を得た。1)生後4日から14日間、四肢の協調運動発達検査として、毎目1回、傾斜板テスト(傾斜角25度の板に仔ラットの頭を下向きに置き、体軸を180度旋回して上方に上るまでに要する時間を測定)を行った。その結果、暴露群の成長による旋回時間の短縮が生後7日目より雌雄共に遅延した。2)生後31日からの14日間、シャトルアボイダンスシステムを用いた条件回避学習課題(ブザーにより電気ショックを予知して隣の部屋へ移動することによりショックを回避する)を行い学習機能への影響を検討した。その結果、雄の暴露群の回避率や回避潜時の成長による改善が遅れた。また、非施行時の活動性も雄の暴露群で低下していた。3)行動実験終了後脳を摘出し、部位別の全脳重量に対する割合を測定したところ、雄のダイオキシン暴露群の視床下部の割合が対照群に比べ大きかった。以上より、ダイオキシン胎内暴露は次世代の運動発達や学習能力、特に雄に強い影響を与える可能性が示唆された。
著者
藤木 謙壮 小林 祐紀 中川 一史
出版者
日本デジタル教科書学会
雑誌
日本デジタル教科書学会発表予稿集 日本デジタル教科書学会第7回年次大会 (ISSN:24326127)
巻号頁・発行日
pp.47-48, 2018 (Released:2018-10-03)
参考文献数
3

本研究の目的は,対話スキルの習得を目指し,学校放送番組を活用して継続的に行う教育実践を考案し,評価することである。公立小学校6年生1学級(14名)を対象に,朝学習(20分)において,NHK for Schoolの学校放送番組「Q~子どものための哲学~」を用いた授業を全7回実施した。授業初回・最終回終了後に質問紙調査を行い,Wilcoxonの符号付順位検定を実施した。結果,複数の質問項目において有意差が認められ,意識の変化が確認できた。要因として,全回同様の学習展開によって児童が見通しを持てたこと,自己対話シートの活用によって対話の心理的負担が軽減したこと,番組の内容や構成によって児童の興味・関心が高められたこと等が考えられた。
著者
依田 八治 中山 一栄 遊佐 智栄 佐藤 重男 福田 三五郎 松本 幸蔵 中川 雅郎
出版者
公益社団法人 日本実験動物学会
雑誌
実験動物 (ISSN:00075124)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.7-11, 1976 (Released:2010-08-25)
参考文献数
24
被引用文献数
1 3

種々の動物におけるBordetella bronchisepticaの分布を知る目的で, 過去10年間にわたりマウス, ラット, スナネズミ, ゴールデンハムスター, モルモット, ウサギ, イヌ, ネコ, カニクイサルの呼吸器について本菌の検索を試みた。その結果, マウス, スナネズミ, ゴールデンハムスターはいずれも陰性であったが, 他の動物種からはすべて本菌が分離された。すなわち, ラットでは7/25 (28.0%) コロニーから菌が分離され, これらのコロニーにおける陽性個体の検出率は10.0~61.3% (平均50.0%) であった。モルモットでは22/60 (36.7%) コロニーが本菌に汚染し, 各コロニーにおける陽性個体の検出率は6.7~58.2% (平均18.3%) を示した。ウサギの場合は被検個体の由来によって検出率に大きな差がみられ, 一般農家から集めたウサギでは3.0%が陽性であったのに反して, 実験動物として比較的大きな規模で生産されたコロニーでは51.5~77.2%の高い陽性率を示した。イヌ, ネコは一般家庭で愛玩動物として飼育していたものを検査の対象にしたが, 前者では12/226 (5.3%) 匹, 後者では4/126 (3.2%) 匹より本菌が検出された。サルについては, 健康な動物の気管で3/48 (6.3%) 匹が陽性であったが, 肺病変を有するものについて病変部の培養を行ってみると16/39 (41.0%) 匹より本菌が分離された。
著者
中川 祐志
出版者
別府大学史学研究会
雑誌
史学論叢 (ISSN:03868923)
巻号頁・発行日
no.42, pp.1-12, 2012-03
著者
中川 健一 長谷川 裕晃 村上 正秀 大林 茂
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.83, no.856, pp.17-00165-17-00165, 2017 (Released:2017-12-25)
参考文献数
13
被引用文献数
1

Badminton is one of the most popular sports in the world and is famous as the sport having the fastest initial velocity of a batted ball among all ball games. Initial velocity immediately after smashing may reach up to 408 km/h (113 m/s) at maximum. A badminton shuttlecock generates significant aerodynamic drag and it was confirmed that the high deceleration characteristics was related to the slots located at the leg portion of a shuttlecock in the previous study. Turnover refers to the flipping experienced by a shuttlecock when undergoing heading change from nose pointing against the flight path at the moment of impact and a shuttlecock indicates the aerodynamically stable feature for the flip movement just after impact. The purpose of this study is to investigate the effect of gaps on the aerodynamic stability (turnover stability) of a badminton shuttlecock during the flip phenomenon. In the present study, the flow field around the shuttlecock during impulsive change of an angle of attack (flip movement) was measured by using the smoke flow visualization and the behavior of the shuttlecock during the flip movement was evaluated in comparison with that of the conic model (with no gaps). The turnover stability of a badminton shuttlecock is affected by gaps of the shuttlecock skirt.
著者
中川 成美
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.52-63, 2001

カルチュラル・スタディーズが真に衝撃的だったのは、既存の学問的な思考分類がそれ自身のためにあったのだということに気付かせた点にあるだろう。ハイ・カルチュアーを構成してきた知識人や大学人によって排除・疎外されてきた大衆文化の見直し作業は、<制度>として機能してきたアカデミックな領域そのものへの痛烈な自己批判として出発した。それは「方法」ではなく、思考の転回を期するものであったはずだ。しかし、文学研究の領域で「推進」されようとしている<文化研究>と呼称されるものは、果たしてそうした起点を持ちえていたであろうか。文学におけるカルチュラル・スタディーズとは何を目的とするものなのか、また文学とカルチュラル・スタディーズを繋ぐものは何なのか、本稿で考えたい。
著者
伊田 政樹 中川 聖一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声
巻号頁・発行日
vol.96, no.92, pp.1-8, 1996-06-13
参考文献数
15
被引用文献数
4

音声認識システムの実用化には高精度認識と実時間処理という2つの課題がある。近年、より大規模な連続音声認識システムが求められており、全ての候補との照合を行なうことなく高精度かつ効率的な探索処理が必要となってきている。ここでは、ビームサーチ法とA^*探索法による認識性能の評価について述べる。認識実験より、ビームサーチ法は最適性が保証されていないが、適当なビーム幅と枝刈りのしきい値を与えることで、最適解を失う可能性は非常に小さくなり、枝刈りによって探索空間を大幅に削減できるために高速処理が可能となる。さらにここでは、ビーム幅の範囲内に最適バスが存在していることから、A^*探索法の探索空間をビーム幅で制限する方法について提案する。