著者
中川 義章 野口 雅滋 竹村 匡正 吉原 博幸
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.511-518, 2009-03-01 (Released:2011-03-16)
参考文献数
14
被引用文献数
1

DPC調査提出用データを有効利用する形で新たに開発した経営分析システムを用いて、中核市中病院Aが診断群別包括制度 (DPC) となる前後の分析を行った。病院A (一般病床数535床) ではDPC参入にあたり、経営戦略として病床稼働率にこだわらず病床回転率の上昇を単純な目標として掲げた。その結果、2005年と2006年10月の単月比較で病床稼働率が86.9%から75.0%へ減少したが病床回転率が1.6から2.0となり、平均在院日数も18.8日から15.5日へと短縮された。結果として一人一日入院単価が50,540円から53,313円へと増加し、材料費が年間8.5%縮減出来た。単年度病院医業収支は約0.5億円の赤字から約2.2億円の黒字となった。今回この収益構造の変化ともいえる大幅な変化の分析を試みたところ、黒字化した主たる要因は「病床回転率の向上」が副次的にもたらした診療形態の変化であり、外来誘導化であったことが明確となった。
著者
池田 真利子 坂本 優紀 中川 紗智 太田 慧 杉本 興運 卯田 卓矢
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.207-226, 2019 (Released:2020-03-25)
参考文献数
74

本稿は,隣接諸領域において長らく術語となってきた景観を夜との関係から考察することで,景観論に若干の考察を加えることを目的とする。景観の原語とされるラントシャフトは,自然科学分野にて紹介され,方法論的発展の必要と相まって視覚的・静態的・形態的に捉えられた。他方の人文学領域においては,景観・風景の使い分けがなされてきたが,1970年代の景観の有するモダニティに対する批判的検討以降も視覚的題材がその考察の主体であった。夜を光の不在で定義すると,人間が視覚で地表面を捉えることのできない夜の地域の姿が浮かび上がってくる。これは,視覚を頂点とするヒエラルキ−を再考することでもある。同時に夜に可視化される光と闇に,近代以降,人間は都市・自然らしさという意味を見出してもきた。それは,光で演出する行為であり,星空を見る行為でもある。現代はその双方が自然と都市に混在するのである。
著者
中川 勝吾 八神 寿徳 小玉 一徳
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1_59-1_71, 2021-12-31 (Released:2022-03-01)
参考文献数
42

大学を取り巻く環境は大きく変化しており,大学は,大学ブランドを構築する必要性が高まっている.ブランド戦略を基礎付けているのは,主として商標権であり,商標権を利用することでブランドを強化または保護することができる.商標権を取得するためには,マーク,ロゴ,文字等の商標だけでなく,指定商品又は指定役務を決定する必要がある.しかしながら,教育,研究,附属病院等に関する大学の業務 (以下,大学業務) は,国立大学法人法や私立学校法で定められており大学は大学業務以外の業務 (以下,非大学業務) を行うことができない.そこで,大学商標に係る指定商品・指定役務が大学業務と非大学業務の場合における大学商標の取得目的及び活用の傾向について分析を試みた.
著者
親里 嘉展 中川 温子 西山 敦史 足立 昌夫
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.323-325, 2013 (Released:2014-10-11)
参考文献数
9

乳児期に小児交互性片麻痺と診断した7歳男児, 寝返り以上の粗大運動は不能で言語も獲得していない. てんかんを合併し, 4歳半以降は片麻痺発作に嚥下障害を伴うようになり重症な経過を辿っていた. Flunarizine hydrochlorideと抗てんかん薬による治療では効果は乏しく, 重度の片麻痺発作やてんかん発作に対してはdiazepam坐薬で対応していた. 検査入院時に嚥下障害を伴う片麻痺発作を呈していたが, 五苓散を投与したところ短時間で症状は消失した. その後も五苓散の使用を継続したところ, 片麻痺発作短縮と回数減少, 発作時の嚥下障害の消失といった発作の軽症化を認めた. 本症例には五苓散が有効であり, 五苓散が小児交互性片麻痺の治療薬の1つとなる可能性が示唆された.
著者
中川 敏子
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.81-89,110, 2004

これまでの日本におけるスポーツとジェンダーに関する研究の多くは、ステレオタイプに基づいた女性選手像とそれを報道するマスメディア批判に終始している。女性たちは、歴史的にスポーツの発展に貢献していることが明らかにもかかわらず、表象においては、保守的な男女の性役割に基づいた言説におしとどめられてきた。フィギュアスケートは、かつて男性のスポーツとされていたが、女子選手が進出し、今日では女性のためのスポーツとさえ言われている。こうしたなかで、女子選手がどのように表象されてきたのかを分析することは重要と思われる。本論文では、1920年代から1930年代に活躍し「銀盤の女王」と呼ばれたソニヤ・ヘニーを取り上げる。彼女の氷上での功績および映画での役柄、実人生を見ながら、女子フィギュアスケーターがどのように表象され、どのように位置づけられてきたのかを歴史的コンテクストに着目して考察する。まず、1900年以降においては、フィギュアスケートの発展に貢献した4人の女性たちに着目し、彼女たちの功績があってヘニーの活躍が可能になったことに言及する。つぎに、1930年代にヘニーが出演した映画作品6本からヒロインの表象のされ方を明らかにする。それによって、「銀盤の女王」のステレオタイプがどのように形成されたのかを分析する。そして、どのように新しい理想の女性像が出現し、その一つであったはずの「銀盤の女王」が保守的で伝統的な男性中心の思想により歪曲されてしまったのかを論じる。
著者
佐藤 和紀 三井 一希 手塚 和佳奈 若月 陸央 高橋 純 中川 哲 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.45019, (Released:2021-09-14)
参考文献数
24

GIGA スクール構想の標準仕様にしたがってICT 環境が整備され,1人1台の端末を活用している学級へのICT 活用に関する児童と教師への調査から,導入初期の児童によるICT 活用と教師の指導の特徴を検討した.その結果,児童は1人1台の情報端末を日々の活動の中で,さまざまなアプリケーションを組み合わせて活用しながらクラウド上でコミュニケーションを取っていたこと,教師は学校内の情報端末の活用については指導できるが,家庭学習については自治体のルールや情報モラルの観点から指導できていないことが特徴として挙げられた.
著者
大東 真理子 藤田 大樹 足達 尚美 中川 直人
出版者
一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
雑誌
日本腎臓病薬物療法学会誌 (ISSN:21870411)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.337-345, 2021 (Released:2021-12-29)
参考文献数
15

薬剤師が保険薬局で処方監査を行う際、腎機能評価の指標として体表面積未補正eGFR(個別化eGFR)の使用が推奨されるが、後期高齢者に多いフレイル・サルコペニア症例では、推算クレアチニンクリアランス(推算CCr)を使用すると個別化eGFRよりも過大評価されにくく、予測精度が高くなることがあるという意見がある。しかし院外処方箋には体表面積補正eGFR(標準化eGFR)が記載されることが多く、また処方箋に検査値が全く記載されていない患者では腎機能評価に苦渋することが多い。そこで、後期高齢者の腎排泄型薬剤処方監査時に要注意患者を把握するため、体重・年齢の指標の算出を試みた。2019年3月~8月にあすかい病院の処方箋をすこやか薬局に持参した標準化eGFR:40 mL/min/1.73m2以上の後期高齢者の中で、あすかい病院の診療録調査により血清Cr値・体重が判明した1026名において、推算CCrが40 mL/min未満となる症例(男性42人、女性121人)の体重・年齢の指標をROC曲線を用いて算出したところ、男性51.9 kg以下・83歳以上、女性48.6 kg以下・84歳以上となった。他施設のeGFR:40 mL/min/1.73m2以上の症例にて検証したところ、体重・年齢非該当群の推算CCr(mean±SE(mL/min):男性57.0±2.4、女性66.5±5.4)はすべて40 mL/min以上となり、体重・年齢該当群(mean±SE(mL/min):男性43.9±4.4、女性39.5±3.9)より有意に高かった。よって、本研究で求めた体重・年齢の指標に該当する後期高齢者の推算CCrは40 mL/min未満となる可能性が高く、腎排泄型薬剤の投与量が適正でないと考えられる場合、腎機能が不明であっても疑義照会やトレーシングレポートの活用等何らかのアプローチを行う必要があると考える。
著者
中川 敏宏
出版者
専修大学法科大学院
雑誌
専修ロージャーナル (ISSN:18806708)
巻号頁・発行日
no.8, pp.153-166, 2013-01

2012年5月24日,韓国大法院は,日本による植民地統治下において三菱重工(旧三菱)・不二越により強制徴用を受けたとして,その被用者らが同会社を相手に損害賠償と未払賃金の支払いを請求した事件において,原審である釜山高等法院が同じ請求を棄却した日本における判決(最高裁で本件原告らが敗訴確定)を受け入れ原告らの請求を棄却したのに対して,その原判決を破棄し,釜山高等法院に事件を差し戻した。この日本企業に対する戦後補償の可能性を認めた大法院判決は,韓国のマスコミでも大きく取り上げられ,さらなる追加訴訟を提起する動きも伝えられている。その意味で,本判決は,韓国において,対日本企業のみならず対日本国の戦後賠償問題に関し象徴的な意味を有するものになるであろう。本判決については,今後わが国でも様々な観点からの検証・分析が求められるが,そのような多角的な検証・分析は訳者の能力の域を出ており,ここでは,本判決の重要性に鑑み,公表されている三菱重工に対する訴訟の大法院判決を取り上げ,判決文の翻訳を試みたい。翻訳に際して,できるかぎり原文のニュアンスを尊重したが,日本人読者への便宜から,日本における一般的呼称等に従っている箇所がある(例えば,韓国と日本を指す際,韓国語では「韓日」と表現されるところは「日韓」と訳出している)。
著者
中川 大 鈴木 克法 松中 亮治 大庭 哲治
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.316-329, 2021 (Released:2021-11-20)
参考文献数
23
被引用文献数
1

毎時同時刻に列車が発車する「パターンダイヤ」は,欧州等では多くの路線で取り入れられ,それに伴って利用者数も増加していると報告されている.一方,わが国においてはパターンダイヤの実施状況に関して分析した例は少なく,パターンダイヤと利用者数の変化との関係について分析した例もみられない.そこで本研究では,パターンダイヤの設定状況を表す「パターン率」を定義し,全国の地方鉄道路線におけるパターンダイヤの実施状況とその変化を2時点において明らかにした.また,各路線のパターン率と輸送密度の増加比率のデータを用いてその関連性を分析した.それらの結果,パターン率は事業者分類によって大きく異なることや,パターンダイヤを継続的に採用してきた路線は,採用していない路線より輸送密度の増加率が高いことなどを明らかにした.
著者
今西 規 木村 亮介 瀧 靖之 安藤 寿康 中川 草
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

一卵性双生児は非常に類似した顔をしていることから、ヒトの顔形状はほぼ遺伝的に決定されていると考えられる。そこで本研究では、双生児を中心とする約250組の日本人ボランティアからゲノム情報と顔形状データを取得し、計算機による大規模な関連解析を実施することにより、顔形状の個人差を規定する遺伝要因を解明する。これと並行して、東北メディカル・メガバンクが収集した約1000人分の頭部MRIデータとゲノム情報を解析し、顔形状に関わるゲノム多型の特定を試みる。以上の結果を利用して、個人のゲノム情報から顔形状を予測するためのソフトウエア「ゲノム・モンタージュ」を開発し、生命情報学における新分野の開拓をめざす。平成29年度は【課題1】顔形状の遺伝性推定と関連ゲノム多型の探索について、前年度に引き続いてゲノム情報と顔形状データの収集を進め、その解析に着手した。慶應大学、琉球大学、東海大学が参加して、双生児ボランティアに対する測定会を3回にわたり開催した。その結果、前年度の68名に加えて新たに94名の測定を完了し、合計で162名の顔形状データおよび口腔内細胞試料を取得できた。得られた顔形状データについては琉球大学でのデータ解析を開始し、口腔内細胞試料については東海大学でDNA抽出およびSNP解析を開始した。【課題2】MRIデータを用いた頭顔部形状解析と全ゲノム関連解析については、東北大学、琉球大学、東海大学が参加して解析の準備を進めている。このほか、【課題3】「ゲノム・モンタージュ」の開発についても、テストデータを用いた解析ソフトの開発を進めている。
著者
山本 幹雄 小林 聡 中川 聖一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.11, pp.1322-1330, 1992-11-15
参考文献数
11
被引用文献数
20

音声対話における発話文は 言い淀み 言い直し 間投詞 助詞の省略 倒置などの話し言葉特有の特徴を持つため これまでの書き言葉に対する自然言語の解析手法をそのまま適用するには問題がある・本論文では解析において まず問題と通る名詞文節の助詞落ちと倒置について 実際の音声対話文約1 800文を分析し その結果をもとに解析手法を提案する.音声対話文では 名詞文節の約4%の助詞が省略されていた.省略される助詞は「が を に は」など述部に係る場合に必須格の機能を持つものが80%を占めていた.係り先の性質としては 述部に係る助詞落ち名詞文節の99%が最も近くの述部に係る.また 文頭にある助詞落ち名詞文節は「は」が省略される可能性が高く(68%) 遠くに係る可能性を持っているまた 係り関係(格)については 述部の格構造の簡単な意味制約によって 90%が推定できることが分かった.倒置に関しては 述部に係る文節が倒置される場合が94%を占めており 倒置された句が1つ前の文節に係る場合が91%であった.また 倒置された句の直前の文節は必ず終止形で終わっていることが分かった.以上の分析を反映したヒューりスティックスを助詞落ちに関して5つ 倒置に関して2つ提案した.語彙が700の小規模な実験タスクで評価した結果 助詞落ち 倒趣共に約90%の例を正しく解析できることが分かった.
著者
中川 さつき
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.79-93, 2008-03

メタスタジオのオペラ『シーロのアキッレ』は1736年にマリア・テレジアの結婚式において初演された。この作品の特徴は主人公が女装していることである。アキッレは劇の冒頭から第二幕の終わりまで女性の姿で現れる。生まれながらの戦士は,リコメーデ王の宮廷で完璧に侍女になりすましているのである。このオペラは初演で大成功を収め,女装という主題にもかかわらず婚礼の祝典にふさわしいと考えられた。その理由は二つ考えられる。第一に十八世紀のイタリア・オペラにおいて英雄役はカストラートが歌い,彼らの高い声は女性性よりも偉大さの象徴であったこと。第二にアキッレはスカートや竪琴につねに嫌悪を催しており,栄光を求める彼は最終的にはトロイア戦争へと船出すること。この台本にはバロック・オペラ的な性的曖昧さとアンシャン・レジームにおける男性的な美徳の双方が読み取れるのである。
著者
南 裕介 中川 光弘 佐藤 鋭一 和田 恵治 石塚 吉浩
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.211-227, 2021-09-30 (Released:2021-10-29)
参考文献数
30

Meakandake Volcano is a post-caldera active stratovolcano located on the south-eastern rim of Akan Caldera, eastern Hokkaido, Japan. Recent eruptive activity has occurred in 1955-1960, 1988, 1996, 1998, 2006, and 2008 at Ponmachineshiri, which is one of several volcanic bodies that form the stratovolcano. These events indicate that Ponmachineshiri has a high potential for future eruptions. In order to better understand the hazards posed by Meakandake Volcano, this study focused on the modern eruptive activity of Ponmachineshiri during the last 1,000 years. The authors conducted field observations at outcrops in the summit area, excavation surveys on the volcanic flanks, component analysis for pyroclastic deposits, and radiocarbon dating for intercalated soil layers. As a result, at least four layers of pyroclastic fall deposits derived from Ponmachineshiri during the last 1,000 years were recognized, ranging from Volcanic Explosivity Index (VEI) levels of 1 to 2. In chronological order, the major pyroclastic fall deposits consist of Pon-1 (10th to 12th century; VEI 2), Pon-2 (13th to 14th century; VEI 2), Pon-3 (15th to 17th century; VEI 1), and Pon-4 (after AD 1739; VEI 1), with small-scale (VEI<1) phreatic and phreatomagmatic eruption deposits intercalated within Pon-1, Pon-2, and Pon-3 pyroclastic fall deposits. The presence of scoria and minor pumice in the Pon-1, Pon-2, and Pon-3 pyroclastic fall deposits suggests that these eruptions were phreatomagmatic events. On the other hand, the absence of juvenile materials in the Pon-4 pyroclastic fall deposits suggests that the activity was a phreatic eruption. The decreasing proportion of juvenile materials in eruptive deposits over the last 1,000 years is consistent with a reduced magma contribution and indicates that the development of the hydrothermal system is likely to play an important role in future eruption scenarios for Meakandake Volcano.