著者
中川 邦昭
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.198-206, 2004-04-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
10

京都での写真撮影の始まりを検討し, 定説であった堀与兵衛ではなく, 堀内信重が先駆であること, また, 彼が撮影条件の一定しない屋外で, すぐれた技術を駆使して観光写真を撮影していたことを示す.知恩院の寺徒の家に生まれた堀内信重は, 江戸時代末期に京都で亀谷徳次郎と出会い, 写真術を修得した.堀内は被写体が特定でき, 写真業を生業とした, 京都で最も古い写真師であると判定される.知恩院を訪れた参拝客や観光客を対象に写真撮影の営業を行なっていた彼は, 京都で初めての観光写真家であったと考えられる.堀内の写真について, 当時の風俗との関係, 同時代の写真や絵画からの影響などについても考察する.
著者
池田 重美 中川 致之 岩浅 潔
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1972, no.37, pp.69-78, 1972-06-20 (Released:2009-07-31)
参考文献数
6
被引用文献数
9 5

煎茶の味と成分組成の関係,あるいは,うまい茶の飲み方の基礎資料として茶69に対して180mlの湯量で40,60,80,95℃の温度と,2,4,6,8,10分の時間を組み合わせた条件で浸出した場合,茶成分がどのように溶出するかを調べた。次に茶の粒度を変えた場合の窒素,タンニン溶出度についても同様の実験を試みた。実験結果から1 温度60℃と80℃の間に成分溶出害胎に特に差のあることが判明した。2 窒素,カフェイン,タンニンは上級茶,並級茶ともに共通した傾向が認められたが,高温におけるエピガロカテキンガレート,およびカテキン合計値の溶出割合は上級茶が高かった。3 各種の成分中,全アミノ酸は上級茶,並級茶ともに溶出割合は高かった。4 粒度については窒素,タンニンともに細かいほど容易に溶出したが,タンニンは細かい粒度を除いて高温では大差がなかった。5 窒素に対するタンニンの比率は全体的には並級茶のほうが大きかったが,両者とも浸出温度の上昇とともに増加し上級茶は60℃と80℃の間に,特に差が認められた。以上の結果から高級茶は低温でゆっくり,下級茶は高温で短時間に茶を入れるのが適当と思われた。なお,本研究は著者の1人池田が,農林省茶業試験場に国内留学中に行なったものであり,実施にあたって種々の御指導,御協力をいただいた同場,久保田技官およびその他の方々に深く感謝します。
著者
小紫 公也 中川 樹生 大村 俊介 荒川 義博
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.54, no.624, pp.18-22, 2006 (Released:2006-02-20)
参考文献数
15

Main-lobe energy transmission using an optical phased array is proposed. Effects of spatial and temporal coherence of rectangular-symmetric laser arrays on energy transmission performance are evaluated in terms of the main-lobe beam quality factor and the main-lobe energy transmission efficiency. As a result, the efficiency is found independent of the number of laser elements and their spectral broadening, and sensitive to the aperture fill factor. The main-lobe beam quality factor remains constant for any cases.
著者
中川 大也 辻 直人 川上 則雄 上田 正仁
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.88-92, 2022-02-05 (Released:2022-02-05)
参考文献数
28

外部環境と相互作用し,エネルギーや粒子をやり取りする量子系を開放量子系という.環境との結合はデコヒーレンスなどの散逸を引き起こすため,開放量子系の物理は量子論の基礎的な問題に留まらず,環境との結合から望みの量子状態を保護しながら量子操作や量子情報処理をいかに行うかという実際的な問題にも深く関わっている.このような開放量子系においては,多くの場合,系と環境との結合は複雑で一般に制御不可能なものだと考えられる.しかし,冷却原子気体をはじめとした大規模量子シミュレーターの発展に伴い,開放量子系に対する新たなアプローチが可能になった.これらの系は非常に制御性の高い量子多体系であり,原子は超高真空中にトラップされているため通常は環境との結合が無視できるほど小さい.このことを逆手に取り,原子にレーザーを照射することなどによって人工的に散逸過程を引き起こすことで,量子多体系に制御された散逸を導入することができる.これらは「制御可能な開放量子系」という新しいクラスの物理系であり,量子系への散逸の効果を系統的に調べる理想的な舞台となる.さらに,散逸による非ユニタリな時間発展によって量子多体系の状態を制御し,熱平衡系では実現不可能な興味深い状態を作り出すことにも繋がる.我々は,冷却原子気体で実現されるHubbard模型や近藤模型に代表される強相関量子多体系について,散逸による非ユニタリ性が多体物理にいかに影響を及ぼすかを理論的に調べた.その結果,通常の熱平衡系や孤立系では現れない秩序や転移が起こることが明らかとなった.例えば,開放系の定常状態は熱平衡系のようにエネルギーの大小ではなく状態の寿命によって特徴づけられる.そのため,非弾性衝突による粒子の散逸があるようなHubbard模型において,その磁性が散逸によって反強磁性から強磁性に反転するという特異な現象が起こる.さらに,近藤模型においては,量子多体物理からユニタリ性という制約が外れることにより,ユニタリな量子系では禁止されていたタイプのくりこみ群フローが出現する.散逸はデコヒーレンスや緩和を引き起こすため,従来は多くの場合避けられるべきものとして扱われてきた.しかし,これらの系では,散逸による非ユニタリ性が熱平衡系・孤立系では現れない新たな量子多体効果の源泉となる.開放量子系の時間発展は非ユニタリであるため,ハミルトニアンとは異なる非エルミートな演算子で生成される.このことは,熱平衡系・孤立系の多体物理がエルミート演算子であるハミルトニアンの性質に基づいていることに対し,開放量子系では非エルミートな多体演算子の性質が重要な役割を果たすことを意味している.我々は,Hubbard模型や近藤模型について,Bethe仮設法を非エルミート領域に拡張することにより開放量子多体系に対する厳密解を得た.冷却原子気体をはじめとした量子シミュレーターによる開放量子多体系の研究を契機として,従来の量子多体物理の枠組みを超え,非エルミート演算子を中心に据えた多体理論の発展が期待される.
著者
渡邊 法男 山田 卓也 吉田 知佳子 細川 佐智子 中川 千草 安村 幹央 山村 恵子
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.40-42, 2016 (Released:2016-03-25)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

症例は40代男性, 原発不明がん, 肺転移, 脊椎転移 (T5-6) . モルヒネ硫酸塩徐放錠, ナブメトン錠, アミトリプチリン塩酸塩錠で疼痛治療中に, 腫瘍の進展に伴う脊髄圧迫部位以下の麻痺が完成し, 同時期から, 高度の腹部膨満感, 便秘を認めた. 各種腸管蠕動亢進薬を使用したが症状は改善しなかった. そこで, モチリン受容体アゴニストとして, 自律神経系の麻痺による消化管運動障害改善効果が報告されているエリスロマイシン点滴静注 (1回500mg, 3回/日) を開始したところ, 症状が著明に改善した. その後, エリスロマイシン錠 (1回200mg, 3回/日) へ変更し, 良好な排便コントロールを得ることができた. エリスロマイシンは, 各種腸管蠕動亢進薬が無効な腫瘍の脊髄圧迫など麻痺性の消化管運動障害による便秘に対し有用な治療薬の一つであると考える.
著者
西野 保行 小西 純一 中川 浩一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.253-258, 1995-06-09 (Released:2010-06-15)
参考文献数
16

わが国における鉄製鉄道橋梁については、トラス橋及びプレートガーダーについては、その記録も多く、またかなり系統的設計がなされたため、その現況ならびに歴史的経緯についても、かなり明らかになってきている。この中にあって、第1次世界大戦のために、大形鋼板が入手しにくくなった時代において、突如として出現したラチス桁は、ヨーロッパにおいてはかなり一般的な存在ではあったけれども、わが国の鉄道用鉄 (鋼) 製桁の流れの中においては、異流に属するものであった。それでもその使用範囲は北海道から中国地方に及んだが、本格的採用とはならず、その後は撤去による減少を重ね、現在は3橋梁を残すのみとなっている。また橋梁架設時の仮桁として使用されたものも現存している。本論文は、その現況から入って、過去の使用状況を中心として、その歴史的経緯を探ろうとするものである。
著者
中川 三千代
出版者
文化資源学会
雑誌
文化資源学 (ISSN:18807232)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.35-52, 2018 (Released:2019-07-12)
参考文献数
14

本稿では、フランス人美術商エルマン・デルスニス(Herman d’Oelsnitz)が日本で開催した展覧会活動について論じる。デルスニスは1922年から1931年まで、ほぼ毎年の仏蘭西現代美術展覧会と、その他大小さまざまな展覧会を開催した。更に1934年から3年間は、作品斡旋という形でフランス絵画を日本に紹介した。これら全期間を対象としてデルスニスの活動を明らかにする。まずデルスニスの関与した展覧会を分類整理する。その上で、主要な展覧会の実施体制、出品内容、入場者数などについて考察する。更に、三越、大阪朝日新聞社、国民美術協会の協力について考察し、展覧会を継続可能にした要因を論じる。1931年までの展覧会活動を3つの時期に区分し、その後の活動を加えて4つの時期区分とする。具体的にはデルスニスが個人で企画し、政府や美術団体の協力を得て開催した時期を初期とし、1924年設立の日仏芸術社を拠点として活動を拡大し、美術月刊誌『日仏芸術』の発行も併せて行った時期を中期とし、それ以降、日仏芸術社の閉鎖までを後期とする。更に、デルスニスの活動終了までを晩期とする。時期区分に従い仏展などの展覧会について特徴をまとめる。特に1934年にデルスニスの活動が復活できた要因として、教育機関、美術団体に属する多くの日仏芸術社時代の協力者との人的関係の重要性を明らかにする。本稿はデルスニスの展覧会活動について通観し、デルスニスと日仏芸術社が日本でのフランス美術普及に果たした役割を見直す基礎を与えると考える。
著者
中川 忠彦
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

眼から入る光刺激は内因性光感受性網膜神経細胞を介し脳内ホルモンやコルチコステロイドの分泌を促進する。このため日常生活における照明光は脂質代謝に影響を及ぼし、脂質代謝異常症の発症や増悪に関与する可能性が考えられる。本研究では、普及の進む新たな照明源であるLED光によって生じる脳内ホルモンならびに脂質分解・合成酵素の変化についてマウスを用いて評価した結果、脂質代謝に影響を及ぼす可能性が示唆された。
著者
中川 種昭 池上 暁子 鷺 二郎 伊藤 幸高 林 智子 大島 みどり 島 信博 山田 了
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.901-906, 1992-12-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
15
被引用文献数
2

本研究は, スクラビング方式の電動歯ブラシを用い, 刷掃時間, 振動数などの違いによるプラーク除去効果および手用歯ブラシとの比較検討を行った。被験者は本大学保存科医局員10名とした。プラークの付着状態を各条件のブラッシング前後で比較した結果, スクラビング方式の電動歯ブラシのプラーク除去効果は手用歯ブラシと同程度であり, 短時間で高い刷掃効果は得られなかった。刷掃時間は電動歯ブラシ, 手用歯ブラシともプラーク除去効果に与える影響が大きく, 刷掃時間が短いと刷掃効果は著しく低下し特に隣接面におけるプラーク除去効果の低下が認められた。
著者
職域における喫煙対策研究会 大和 浩 姜 英 朝長 諒 藤本 俊樹 中川 恒夫 平野 公康
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.146-151, 2022-05-20 (Released:2022-05-25)
参考文献数
6

目的:改正健康増進法では,バスやタクシーなど旅客運送用車両での喫煙は禁止され,屋外や家庭,それ以外の車両等で喫煙する場合についても「望まない受動喫煙が発生しないように配慮すること」が求められている.しかし,一般企業の業務車両や自家用車で同乗者が居るにもかかわらず喫煙している状況が散見される.本研究では,車両の中で喫煙した場合の受動喫煙の実態を明らかにすることを目的とした.対象と方法:5人乗りの自動車内で運転者が紙巻きタバコを1本喫煙し,すべての窓を閉鎖した状態,一部の窓を開けた状態,すべての窓を開放した状態の計6パターンで,助手席と後部座席において喫煙により発生する微小粒子状物質(PM2.5)の濃度をデジタル粉じん計で測定した.なお,結果:すべての窓を閉鎖した状態では車内のPM2.5 は 3,400 μg/m3 に達した.一部の窓を 10 cm開けてもPM2.5 は 500~3,000 μg/m3,すべての窓を開放しても数百~1,500 μg/m3 と高い濃度になることが認められた.考察と結論:業務車両や自家用車で同乗者の望まない受動喫煙を防ぐ配慮としては,窓を開放する対策では不適切であり,車内で喫煙しないことが求められる.
著者
福元 健太郎 中川 馨
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.118-128, 2013 (Released:2017-12-06)
参考文献数
29

本稿の課題は,現代日本政治において世襲議員が何故多いのかを考えるために,得票継承率(ある選挙である候補に投票した有権者のうち,次の選挙でその候補の後継候補にも投票する者の割合)に対する世襲の効果を推定することである。本稿はそのための統計分析の方法として,世襲新人候補と非世襲新人候補を比較することを提唱する。これにより,選挙研究におけるより大きな課題である政党投票と候補者投票の割合も,集計データから分かるようになる。小選挙区の自民党公認候補のデータを分析すると,①世襲新人候補は,前職候補と少なくとも同程度に,非世襲新人候補より有利である,②政党投票の大きさは世襲の効果と同程度だが,候補者投票の存在は確認できない,③世襲候補の特徴である若年や多選それ自体は選挙で有利に働くわけではない,ことが明らかとなった。