著者
小松 聖史 矢田部 智昭 栗山 直英 中村 智之 幸村 英文 西田 修
出版者
一般社団法人 日本呼吸療法医学会
雑誌
人工呼吸 (ISSN:09109927)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.58-62, 2022 (Released:2022-05-30)
参考文献数
18

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の他臓器合併症の1つに、膵臓への直接的な臓器障害が疑われる急性膵炎の報告がある。今回、ICUに入室したCOVID-19患者における膵障害発生頻度および因子を検討するために後方視研究を実施した。2020年3月から2021年6月にICUに入室した30症例を対象とした。膵障害は、アミラーゼまたはリパーゼの正常上限値の3倍以上または、CT上膵臓に急性膵炎に伴う異常所見を認める場合とし、両者を満たしたものを急性膵炎と定義した。膵障害を22例(73%)で認め、このうち3例は急性膵炎を発症した。APACHE(acute physiology and chronic health evaluation)Ⅱスコア、入室時のP/F比に膵障害群と非膵障害群の両群間で有意差はなかった。SOFA(sequential organ failure assessment)、人工呼吸管理患者の割合、ステロイド使用患者の割合は膵障害群で有意に高かった(8[5,10]vs. 5[1,6],p=0.04;95 vs. 50%,p=0.01;100 vs. 50%,p=0.003)。腹臥位の実施、入室から腹臥位開始までの日数、および施行期間に両群で有意差はなかった。本研究から、集中治療を要するCOVID-19患者の73%で膵障害を有することが明らかになった。
著者
中村 智幸 片野 修 山本 祥一郎
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.287-291, 2004-09-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
30
被引用文献数
1

コクチバスによる在来魚への捕食圧を軽減するうえでの水草帯設置の効果を実験的に検証した。屋外実験池8面のうち4面に, クサヨシを1m2の範囲に100本植え, 他の4面は無植栽とした。そして, 各池にコクチバス3尾とフナおよびウグイを各20尾放流し, 1期14日間, 計2期, フナとウグイの被食数を調べた。その結果, 両種ともにクサヨシ帯を設置した池では, 被食数が有意に減少することが明らかになった。この結果は, 自然水域における水草帯の保全・拡大が, コクチバスによる在来魚への捕食圧を軽減するうえで効果的であることを示す。
著者
土居 隆秀 中村 智幸 横田 賢史 丸山 隆 渡邊 精一 野口 拓史 佐野 祐介 藤田 知文
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.348-353, 2005 (Released:2005-07-20)
参考文献数
31
被引用文献数
2 2

実験池において,イワナとヤマメの体内に残留させた釣り鈎の動向を調査した。両種ともに,口腔に残留させた餌釣り用と毛鈎釣り用の鈎はいずれも 21 日以内にその多く(70.0~100%)が脱落した。口腔より奥に残留させた餌釣り用の鈎の体外への排出率は 21 日後に 0~16.7% であり,81 日後でも 15.0~50.0% であった。口腔より奥に残留させた鈎の多くは 81 日後には錆びていたが,崩壊したものは少なかった。以上の結果から,口腔に残留させた鈎は比較的短期間で脱落するが,口腔より奥に残留させた鈎は体外に排出されにくいことが明らかになった。
著者
中村 智幸
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.398-405, 2019-07-15 (Released:2019-07-31)
参考文献数
34
被引用文献数
1 13

インターネットアンケート調査により,2015年の日本の釣り人数を推定した。釣り人数は海面487.5万人,内水面336.0万人,釣り堀・管理釣り場177.7万人であった。釣り堀・管理釣り場を除く自然水面についてみると,釣り人の割合は海面59.2%,内水面40.8%であった。内水面の上位8魚種の釣り人数はヤマメ・アマゴ118.8万人,イワナ88.7万人,ニジマス82.4万人,アユ77.6万人,フナ76.7万人,ブラックバス66.6万人,コイ56.1万人,ウグイ35.5万人であった。
著者
中村 智栄 新井 学 原田 康也
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.155, pp.1-33, 2019 (Released:2019-10-02)
参考文献数
59

本稿は,母語話者と学習者の文理解における質的差異を明らかにするため,英語母語話者と日本人英語学習者の英文理解における動詞の下位範疇化情報が与える影響について統語的プライミングを用いた検証を行った。実験の結果から,日本人英語学習者は動詞に対して正しい下位範疇化知識を持っており,自動詞と他動詞両方に見られる処理負荷は異なる漸次的処理から引き起こされている。そして,エラーに基づく学習効果は動詞を見た時点での予測の誤り(エラー)が補正されることによって起きていることが示された。これらの結果は,学習者が正しい下位範疇化情報を持っているにもかかわらずその情報をオンラインの統語構造分析で使えないという矛盾を説明し,学習者に特徴的な文処理方略を理解する上で重要な結果となった。さらに本研究は,文構造の予測が過去の言語使用の経験から蓄積された情報に基づいて計算されるとする文理解モデルを支持し,第二言語習得研究のみならず人間の文理解モデルを明らかにする上でも重要な証左となった。
著者
土居 隆秀 中村 智幸 横田 賢史 丸山 隆 渡邊 精一 野口 拓史 佐野 祐介 藤田 知文 TAKAHIDE DOI TOMOYUKi NAKAMURA MASASHI YOKOTA TAKASHI MARUYAMA SEIICHI WATANABE HIROFUMI NOGUCHI YUSUKE SANO TOMOFUMI FUJITA 栃木県水産試験場 (独)水産総合研究センター 東京海洋大学海洋生物資源学科 東京海洋大学海洋環境学科 東京海洋大学海洋生物資源学科 東京海洋大学海洋環境学科 東京海洋大学海洋環境学科 東京海洋大学海洋生物資源学科 Tochigi Prefectural Fisheries Experiment Station Freshwater Fisheries Research Division National Research Institute of FIsheries Science Department of Aquatic Biosciences Department of Marine Environmental Sciences Tokyo University of Marine Science and Technology Department of Aquatic Biosciences Department of Marine Environmental Sciences Tokyo University of Marine Science and Technology Department of Marine Environmental Sciences Tokyo University of Marine Science and Technology Department of Aquatic Biosciences
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.706-713, 2004-09-15
参考文献数
28
被引用文献数
2 3

イワナ・ヤマメ養殖魚の小型魚と大型魚の釣獲放流後の死亡率と成長を実験池において調査した。餌釣り, 毛鈎釣りともに, 口腔にかかった鈎を除去した場合, いずれの魚種においても死亡率は低かった。餌釣りで口腔より奥にかかった鈎を除去した場合, イワナ小型魚とヤマメ大型魚では死亡率は高かった。口腔にかかった毛鈎を残留させた場合, イワナ大型魚では死亡率は高かった。死亡のほとんどが釣獲放流後14日以内に観察された。釣獲方法, 鈎がかりの部位, 鈎の処理方法は成長と肥満度に影響しなかった。
著者
矢田 達 安部 正真 岡田 達明 中村 智樹 野口 高明 岡崎 隆司 石橋 之宏 白井 慶 上椙 真之 唐牛 譲 八亀 彰吾 上野 宗孝 向井 利典 吉川 真 川口 淳一郎 藤村 彰夫
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.68-77, 2013-06-25

地球外物質の採取・記載・保管および配布の目的で発足したJAXAキュレーションセンターでは,現在は小惑星イトカワにタッチダウンした探査機「はやぶさ」の試料を取り扱っている.「はやぶさ」から分離して地球帰還した再突入カプセルを受け入れ,その内部の試料コンテナを取り出してクリーンチェンバー内に導入し,開封を行った.試料コンテナ内の残留ガスから地球外起源の希ガスは検出できなかったが,キャッチャー内部からは主にケイ酸塩鉱物から成る微粒子を回収した.初期記載の結果,それらの鉱物比・鉱物組成がLL4-6コンドライト隕石に近いことが分かり,イトカワ試料と確認された.現在までに400個以上の粒子の回収・初期記載を行い,そのうち8割がイトカワ粒子だった.キュレーションセンターではこの試料を初期分析チーム,NASA,国際公募研究に対して配布し,多様な科学成果が挙がっている.
著者
倉本 圭 川勝 康弘 藤本 正樹 玄田 英典 平田 成 今村 剛 亀田 真吾 松本 晃治 宮本 英昭 諸田 智克 長岡 央 中川 広務 中村 智樹 小川 和律 大嶽 久志 尾崎 正伸 佐々木 晶 千秋 博紀 橘 省吾 寺田 直樹 臼井 寛裕 和田 浩二 渡邊 誠一郎 MMX study team
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.207-215, 2018-09-25 (Released:2018-12-21)

火星衛星Phobosからのサンプルリターンに挑む火星衛星探査計画 (Martian Moons eXploration: MMX) は,現在,宇宙航空研究開発機構 (JAXA) プリプロジェクトとして,2024年の打ち上げと5年の往還期間を設定し,精力的な検討・初期開発が進められている.MMXは,サンプル分析,Deimosを加えた火星衛星の近接観測,そして火星大気および火星圏のモニタリング観測を組み合わせることにより,惑星に寄りそう衛星という切り口と視座から,太陽系における大気と水を湛えたハビタブル惑星の形成と進化の解明に迫ろうとしている.
著者
中村 智美 石倉 宏恭 中野 貴文 仲村 佳彦 神村 英利
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.589-596, 2018-08-31 (Released:2018-09-01)
参考文献数
12

播種性血管内凝固症候群(DIC)治療薬の遺伝子組み換えヒト可溶性トロンボモジュリン(rTM)の急性腎障害(AKI)患者への至適用量を検討した。rTM を1日1回380U/kgまたは130U/kgで投与したDIC合併AKI患者129例を対象とし,持続的血液濾過透析(CHDF)の有無およびrTMの投与量別に,有効性・安全性を評価した。DIC離脱率は,CHDFを施行しなかった患者群ではrTMの用量による違いはなかったが,CHDF施行群では380U/kg群のほうが高い傾向であった(p=0.050)。出血率はCHDFの有無およびrTMの用量間で差はなかった。以上より,AKI合併DIC患者にはrTM 130U/kgと380U/kgで有効性,安全性に差はないものの,CHDF施行時には380U/kg投与によりDIC離脱の可能性が高まることが示唆された。
著者
中村 智幸
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.274-282, 2015 (Released:2015-03-20)
参考文献数
19
被引用文献数
8

レジャー白書の「釣り」に関するデータをもとに,日本における遊漁の推移を分析した。1998 年前後以降,参加率,参加人口,参加希望率は経年的に減少していた。しかし,参加順位,潜在需要は減少しておらず,レジャーの中で低くなかった。年間活動回数は減少していたが,1 回当たり費用は減少しておらず,2010 年前後の年間総支出額は約 5,000 億円であった。このように,遊漁は国民にとって重要なレジャーのひとつである。今後は魚種別や釣り方の似通った魚種群別に分析を行い,具体的な振興策を検討する必要がある。
著者
中村 智幸
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
pp.18-00050, (Released:2019-06-20)
参考文献数
34
被引用文献数
13

インターネットアンケート調査により,2015年の日本の釣り人数を推定した。釣り人数は海面487.5万人,内水面336.0万人,釣り堀・管理釣り場177.7万人であった。釣り堀・管理釣り場を除く自然水面についてみると,釣り人の割合は海面59.2%,内水面40.8%であった。内水面の上位8魚種の釣り人数はヤマメ・アマゴ118.8万人,イワナ88.7万人,ニジマス82.4万人,アユ77.6万人,フナ76.7万人,ブラックバス66.6万人,コイ56.1万人,ウグイ35.5万人であった。
著者
片野 修 中村 智幸 山本 祥一郎 阿部 信一郎
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.902-909, 2004 (Released:2005-07-08)
参考文献数
25
被引用文献数
8 9

浦野川において魚類の種組成, 個体密度, 成長率および食物関係について調査した。合計で14種, 7,052個体の魚類が採集された。オイカワがもっとも優占し40%以上の個体数を占め, ついでドジョウ, ウグイ, カマツカが多かった。これらの魚種は6月から8月にかけて正の成長を示した。大半の魚はユスリカなどの水生昆虫を捕食していたが, オイカワだけは底生藻類を主食としていた。浦野川の調査区においてはナマズなどの魚食性魚類がほとんど生息しておらず, その生態的地位が空白となっている。したがって, オオクチバスなどの外来魚食魚の侵入が危惧される。
著者
野口 高明 平田 成 土山 明 出村 裕英 中村 良介 宮本 英明 矢野 創 中村 智樹 齋藤 潤 佐々木 晶 橋本 樹明 久保田 孝 石黒 正晃 ゾレンスキー マイケル・E
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.12-22, 2010-03-25

はやぶさ探査機による小惑星イトカワ表面の画像から小惑星表面の巨礫の組織観察を行うことができた.イトカワ表面の巨礫は,大まかにいって不均質な破壊強度を持つものと,均質な破壊強度をもつものに分けられる.前者は角礫岩と考えても矛盾はない.一方,後者の組織は一般的なLLコンドライトには見られない.衝撃によってかなり溶融した普通コンドライト隕石は,そうでないものよりも均質でより高い破壊強度を持つことを考慮すると,後者の巨礫はそのような隕石と類似の岩質をもつかもしれない.これらの巨礫はイトカワの祖先天体で形成されたと考えられる.高解像度画像は小惑星の地史を検討する手段として非常に有効である.
著者
片野 修 中村 智幸 山本 祥一郎
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.733-737, 852, 2003-09-15
被引用文献数
2 5

水槽内でブルーギルに捕食されるモツゴの個体数および最大体長を調べた。初期標準体長が2.5〜7.9cmの生きたモツゴ15個体と,標準体長5.7〜14.3cmのブルーギル1個体を水槽に収容し,ブルーギルによるモツゴの捕食を10日間調べた。体長5.7cmの1個体を除くすべてのブルーギルがモツゴを捕食した。ブルーギルに捕食されたモツゴの最大体長および総重量はブルーギルの体長と相関し,1個体のブルーギルは最大で1日あたり5.8g(ブルーギルの体重の5.6%)のモツゴを捕食した。
著者
中村 智
出版者
九州大学
雑誌
Comparatio (ISSN:13474286)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.119-130, 2001

This paper discusses why Shiga Naoya chose to write about Korea then a Japanese colony, in his novel "A dark night's passing". The question is not what part Korea played in the novel, but why Shiga was interested in Korea. A noteworth point is the relationship between Shiga and his friend, Yanagi Muneyohi. Yanagi was a scholar of Korean ceramics. In the 1930s, he criticized, through critical essays, in a roundabout way, the then Japanese Government for not considering and working for Korea sufficiently. One of the reasons Shiga wrote about Korea was that he shared Yanagi's opinion and wished to assist Yanagi's work. However, a more significant reason was that Shiga wanted to get readers of his own work to face the situation in Korea. He chose a different way from Yanagi's. He faced that problem not as an activist but as a novelist.
著者
中村 智幸 片野 修 山本 祥一郎
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.745-749, 2004 (Released:2005-07-08)
参考文献数
27
被引用文献数
4 2

コクチバスとオオクチバスの成長に対する流水と水温の影響を実験的に検討した。給餌下では, 両種ともに流水池と止水池との間で成長率に有意差は認められなかった。しかし, オオクチバスに対するコクチバスの成長比は, 水温の低い時期に大きかった。無給餌下では, オオクチバスの体重の減少率は止水池に比べて流水池において大きかったが, コクチバスでは両池の間で体重の減少率に有意差は認められなかった。以上の結果は, コクチバスのほうがオオクチバスに比べて, 流水と低水温に対する適応能力において優れていることを示している。
著者
安達 雄裕 山田 大樹 中村 智 徐 哲俊 内藤 英樹 秋山 充良
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
AI・データサイエンス論文集 (ISSN:24359262)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.10-19, 2023 (Released:2023-11-14)
参考文献数
21

近接目視に代わり,ドローンを用いた撮影に基づく点検が可能になった.一方,現状はひび割れの確認に留まっており,その画像を用いた対象部材の健全性,特に耐荷力の評価には至っていない.塩害環境下の鉄筋コンクリート(RC)構造物は,鉄筋腐食に伴い部材表面に腐食ひび割れが生じるため,これをドローンにより撮影し,RC部材内部で生じている鉄筋腐食量を推定できれば,劣化RC部材の耐荷力評価が可能となる.本研究では,有限要素解析,確率場理論,および機械学習に加えて,ドローン撮影により取得した腐食ひび割れ幅の情報を用いることで,劣化RCはり部材の耐荷力の確率論的評価を可能にした.また,ドローンを用いて撮影した画像では,近接撮影したものよりも腐食ひび割れの同定が難しく,それがRC部材の耐荷力の推定結果に及ぼす影響を検証した.
著者
日方 希保 諸橋 菜々穂 樽 舞帆 鈴木 雄祐 中村 智昭 竹田 正裕 桑山 岳人 白砂 孔明
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.127-134, 2021-12-24 (Released:2022-02-28)
参考文献数
13

ミナミコアリクイ(Tamandua tetradactyla)は異節上目有毛目アリクイ科コアリクイ属に分類される哺乳類の一種である。コアリクイの計画的繁殖には,基礎的な情報の蓄積による繁殖生理の解明が必要である。これまでミナミコアリクイの妊娠期間中の血中ホルモン変動に関しては,1個体で1回分の妊娠期間についての報告がされているが,同一個体で複数回の妊娠期間中のホルモン変動に関する報告は存在しない。本研究では,同一雌個体のミナミコアリクイに対して長期間における経時的な採血(約1回/週)を実施し,同一雌雄ペアで合計6回の妊娠期間における血漿中プロジェステロン(P4)またはエストラジオール-17β(E2)濃度の測定を実施した。全6回の妊娠期間中のP4濃度測定の結果から,妊娠期間は156.8±1.7日(152~164日)と推定された。各時期のP4濃度は,妊娠前では0.6±0.1 ng/ml,妊娠初期(妊娠開始~出産100日以上前)では13.2±1.8 ng/ml,妊娠中期(出産50~100日前)では28.1±4.3 ng/ml,妊娠後期(出産日~出産50日前)では48.2±11.8 ng/mlであった。出産後のP4濃度は0.4±0.1 ng/mlと出産前から急激に低下した。血漿中E2濃度は妊娠初期から出産日に向けて徐々に増加した。また,妊娠期間前後で6回の発情周期様の変動がみられ,P4濃度動態から発情周期は45.5±2.4日(37~52日)と推定された。以上から,ミナミコアリクイの同一ペアによる複数回の妊娠中における血漿中性ステロイドホルモン動態を明らかにした。また,妊娠初期でP4濃度上昇が継続的なE2濃度上昇よりも先行して観察されたことから,P4濃度の連続的な上昇を検出することによって早期の妊娠判定が可能であることが示唆された。
著者
松田 圭史 関根 信太郎 中村 智幸
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.89, no.5, pp.438-446, 2023-09-15 (Released:2023-09-23)
参考文献数
15

2017年度の全国の内水面漁協の業務報告書から,各組合の主要放流種(類)とこれらの放流漁場を抽出および分類した。解析を行った470組合の中から,総収入額に占める遊漁料収入額の比率が高い47組合(上位47組合と略す)を抽出し,その遊漁の特徴を解析した。上位47組合はワカサギやゲンゴロウブナを主要放流種(類)として,湖沼に放流していることが明らかになった。上位47組合の85.1%が人口の多い都府県やその隣県に存するか,人口の多い都府県からアクセスの良い県に存することがわかった。
著者
森 裕也 小谷 遥 伊藤 知行 枦 秀樹 横山 雄太 中村 智徳 太田 哲徳
出版者
一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
雑誌
日本腎臓病薬物療法学会誌 (ISSN:21870411)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.165-169, 2021 (Released:2021-12-29)
参考文献数
9

酸化マグネシウム(Mg)は便秘の治療に使用されているが、腎機能低下患者に使用する場合、Mgの排泄量が低下し、血清Mg濃度が上昇することがある。そのため、定期的な血清Mg値の測定が推奨される。しかしながら、急性期病院において、酸化Mgを使用している腎機能低下患者における血清Mg値の測定率と薬剤師の介入の有用性を調査した報告はない。そこで、各腎機能群における酸化Mg錠を使用した患者を対象として、血清Mg値の測定率を調査した。さらに血清Mg値を測定している患者を対象に各腎機能群における高Mg血症発生率や薬剤師の介入の有用性について調査を実施した。東京ベイ・浦安市川医療センターにおいて、2016年4月1日~2017年3月31日の1年間、入院中に酸化Mg錠を使用した患者を対象に、体表面積補正を外した個別の推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate;eGFR)(mL/min)をA群:45≦eGFR<60、B群:30≦eGFR<45、C群:eGFR<30に分けて検討した。対象期間中の酸化Mg錠使用患者数は283人、血清Mg値の測定率は145人(51.2%)であった。薬剤師の介入患者数はB群で1人(1.0%)、C群で6人(7.1%)と計7人(2.5%)であった。各腎機能群における血清Mg値の測定率は、A群(n=33(33.4%))、B群(n=53(51.5%))およびC群(n=59(70.2%))であった。血清Mg値の測定患者における高Mg血症発生率は、27.3%、37.7%および61.0%であり、高Mg血症の発生率に有意な差を認めた(p<0.01)。腎機能低下群ほど血清Mg値の測定率は高く、血清Mg値測定患者においては、腎機能低下群ほど高Mg血症患者の割合も高かった。また、血清Mg値の測定率は51.2%で、検出されていない高Mg血症症例が存在していることが示唆された。特に腎機能低下患者に対して酸化Mg錠を使用する際は、薬剤師が介入し、血清Mg値測定を推進することが、高Mg血症の早期発見に寄与すると考えられた。