著者
倉橋 ともみ 小林 洋介 白浜 功徳 渡邉 峰守 中野 浩 浅岡 峰雄
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.12-18, 2020-02-29 (Released:2020-02-29)
参考文献数
20

目的:当地区で救急救命士の処置が拡大された2015年度以降,来院時低血糖の症例に対し救急車内で血糖測定・ブドウ糖溶液投与が行われなかった理由を検討した。方法:2015年度からの3年間に当院救急外来に救急車で来院,15歳以上で来院時血糖値70mg/dL 未満の患者を対象に,救急車内のJapan Coma Scale(以下JCSと略す),血糖測定・ブドウ糖溶液投与の有無,来院時血糖値などを調査した。結果:対象は397例で,血糖測定50例,ブドウ糖溶液投与は8例に行われた。ブドウ糖溶液未投与389例のうち297例が血糖未測定であり,その74.7%はJCS Ⅱ桁未満であった。救急車内の血糖値が50mg/dL 以上の17例すべてで来院時さらに血糖値が低下した。結論:JCS Ⅱ桁未満,血糖値50mg/dL 以上でも血糖測定・ブドウ糖溶液投与が可能になるようプロトコールの再検討が必要である。
著者
佐野 優衣菜 磯野 靖夫 中野 渉 藤山 啓太 金刺 優 下平 有希
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.195-200, 2023-10-20 (Released:2023-10-20)
参考文献数
30

【目的】原因が特定されていない慢性めまい症に対して,医師の指示のもと短期間の集中的な前庭リハビリテーションを実施し,バランス機能・日常生活動作の改善を認めた症例を経験した。先行研究と比較し,移動能力改善に大幅な効果が得られたと考えられたため報告する。【症例】60歳代男性。診断名:めまい症。めまいの増悪があり救急搬送され入院となった。主治医よりめまいのリハビリテーションの適応と判断され,理学療法介入をした。前庭リハビリテーションは1日40分,頻度は週5回とし,1回10分1日4回の自主トレーニングを指導した。第20病日に自宅退院となった。自覚症状の強度に改善はみられなかったが,バランス機能,移動能力,日常生活動作能力で改善がみられた。【考察】低頻度の介入である先行研究と比較し,移動能力は短期的に大幅な改善がみられた。【結論】短期間の集中的な前庭リハビリテーションは効率的に効果を得られる可能性があると考えられる。
著者
秋元 郁美 中野 順子 鴨志田 麻実子
出版者
一般社団法人日本医療機器学会
雑誌
医療機器学 (ISSN:18824978)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.349-353, 2014 (Released:2014-07-24)
参考文献数
10

Heat and moisture exchanger filters (HMEFs) are commonly used in mechanical ventilation practices. We described the performances of HMEF in extreme conditions which may decrease expected moisture returns from HMEF. The experiments with dry gases were performed on the model lung-ventilator system. The test lung with soaked cotton inside was placed in the incubator where temperature was maintained at 37 °C. Relative (RH) and absolute humidity and temperature of the circuit was measured electronically (Maphy+, S.K.I. Net, Inc.). The results showed, firstly, RH went down below 90% when minute volume exceeded 12L/min. Secondary, air leak of 20% of the inspiration volume decreased RH below 90% when inspired minute volume exceeded 8L/min. Thirdly, addition of unheated cascade humidifier kept RH of the circuit at 100% in both of the above conditions throughout the minute volume of up to 20L/min by providing additional humidity of between 6 and 12 mg/L. We also reported additional effects of the atmospheric humidity as turbine ventilator inspired room air instead of dry gasses. Water content of HMEF increased approximately 8grams in seasons of high humidity whereas, that with dry gases was constantly 1.5±0.3grams(n=39). HMEF with water content of 8grams increased the inspiratory airway resistance by 33%.
著者
山﨑 裕司 片岡 千春 大倉 三洋 酒井 寿美 栗山 裕司 稲岡 忠勝 宮崎 登美子 柏 智之 中野 良哉
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.61-66, 2009-03-31 (Released:2018-11-06)
参考文献数
13
被引用文献数
2

固定用ベルトを併用したHand Held Dynamometer(以下,HHD)による新たな股関節外転筋力(以下,股外転筋力)測定方法を考案し,その再現性について検討した.<研究1:検者内再現性>健常者20名の両下肢40脚を対象とした.固定用ベルトを使用したHHDにはアニマ社製徒手筋力測定機器μTasMF-01を用いた.固定用ベルトを使用しないHHDには酒井医療社製徒手筋力センサEG-230及び220を使用した.股外転筋力値は1日目,2日目とも固定用ベルト不使用下(23.1kgf,23.0kgf)に比較し,固定用ベルト使用下(28.2kgf,28.7kgf)において有意に高値を示した(p<0.01).ベルト不使用下,使用下での級内相関係数(以下,ICC)は,それぞれ0.917,0.953であった.両測定方法間での筋力差とベルト使用下における筋力値の間には,有意な相関(r=0.783,p<0.01)を認め,筋力値が大きいほど測定方法間での差が大きくなった.<研究2: 検者間再現性>健常成人17名の両下肢34脚を対象とした.体格の異なる2名の検者によって,研究1と同じ固定用ベルトを使用したHHDを用いて股外転筋力の測定を実施した.筋力値は検者A,Bの順に31.1kgf,32.8kgfであり,検者間に有意差は認めなかった.検者間ICCは0.915であった.以上の結果から,今回の固定用ベルトを使用した股外転筋力測定方法は良好な検者内,検者間再現性を有することが明らかとなった.一方,固定用ベルトを使用しない方法は,筋力値の大きな対象群において測定値の妥当性に問題があるものと考えられた.
著者
永見 邦篤 中野 昭一
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.112-121, 1979-06-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
22
被引用文献数
1

本研究は, ヒトの動作にみられる筋弛緩現象のうち, 拮抗筋の収縮によって主働筋活動を抑制する場合 (PR) と, 収縮している筋のみを弛緩させる (AR) , いわゆる脱力時にみられるものの2つの弛緩動作について, 筋弛緩時間を指標として, その遅速を生じる要因, ならびに生理的意義を検討したものである。動作は, 左右の上肢とも前腕部を回内および回外位とし, 肘関節を90°に固定して, 最大屈腕力の10, 30, 50%の筋力を発揮した後, 筋弛緩を行う方法であった。また, 筋力発揮条件は, 低周波発生装置によってブラウン管面上に示された鋸歯状波および矩形波に追随させる場合と, 検者の合図に従わせるものの3つである。筋電図は, 上腕二頭筋と上腕三頭筋から表面誘導法によって記録した。筋弛緩時間は, 実験装置の一部に取りつけた高感度の歪計で張力減少時を決定し, この時点と上腕二頭筋の棘波状放電の消失時点との差から計測した。その結果1) 筋弛緩時間は, ARよりPRの方が速かった。いずれの動作でも負荷の増加に従って, その時間は遅延した。また, 1例を除いて, 左右, 回内回外位それぞれで有意差が認められなかった。筋力発揮条件による差異は, ARの場合にみられ, 矩形波に追随したときにおいて速くなる傾向を示した。2) 被検者間で比較すると, ARで弛緩時間の速いものは, 弛緩動作後, いずれの筋放電も完全に消失していた。遅いものでは, 微弱な放電が続く傾向にあった。PRの場合, 上腕二頭筋放電の消失から上腕二頭筋放電の開始までの時間の短いものほど, 筋弛緩時間が速い成績を示した。3) AR, PRともに弛緩動作時に, 張力が一過性に増加する現象が認められた。この張力増加の勾配は, 負荷の増加に従って大きくなり, また, PRにおいて大であった。被検者間でみると, 筋弛緩時間の遅いものほど, この勾配が大きくなる傾向にあった。以上の結果から, ARの筋弛緩時間の遅速は, PRに比べて, より上位の中枢に想定される抑制系の疎通ならびに活動の強弱を反映するものと推察された。そして, 拮抗筋の性質およびその活動に関連する神経系の抑制作用に強く依存するPRとは, その抑制機構を異にすることも示唆された。
著者
蔦原 宏一 栗林 宗平 山道 岳 川村 正隆 中野 剛佑 岸本 望 谷川 剛 今村 亮一 高尾 徹也 山口 誓司
出版者
日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.97-100, 2016 (Released:2016-06-10)
参考文献数
10

鏡視下ドナー腎採取術においては左腎の方が右腎より血管長の確保が容易であることから,左側の腎採取が選択される場合が多い.手術成績について採取側別に比較検討した. 対象は2003年1月から2014年6月までに当科で後腹膜鏡下ドナー腎採取術を施行した98例を対象とした.右腎採取は26例(26.5%)であった.手術時間,出血量,温阻血時間など各因子について検討した. 手術時間は左257.5(182-506)分,右256(196-374)分,温阻血時間は左150(60-330)秒,右204(120-393)秒,総阻血時間は左120(69-637)分,右104(60-183)分であった.温阻血時間については右腎採取において有意な延長を認めたが,総阻血時間については逆に左腎採取において有意に長かった. 左腎採取に比べ右腎採取では温阻血時間の延長を認めたが,総阻血時間については右腎採取で短く手術成績は両側とも遜色ないものと考えられた.
著者
松井 敏幸 飯田 三雄 末兼 浩史 富永 雅也 八尾 恒良 櫻井 俊弘 瀬尾 充 岡田 光男 野見山 祐次 渕上 忠彦 中野 元 吉永 一彦
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.134-143, 1993 (Released:2007-12-26)
参考文献数
25
被引用文献数
6

潰瘍性大腸炎症例のうち10年以上経過例124例の長期予後を分析した. 最近数年間の臨床経過より長期予後を良好, 中等, 不良の3段階に分けると, その比率は約2:1:1であった. 初発時より経年的に活動年を有する頻度をみると, 次第に減少する傾向が観察され, 長期予後3群別にみると, 3群間に有意差がみられた. また初回治療前未治療期間の長いこと, 初発時重症度が重いこと, および高齢発症は予後不良の因子であった. 手術例は26例 (21.0%) あり, 発症10年後の累積手術率は16.5%で, 10年以後も手術率は上昇した. 悪性腫瘍併発例は3例, 異型上皮巣併発例は1例にみられた. 死亡例は6例であった. 累積生存率は期待生存率と有意差がなかった.
著者
中野 浩
出版者
日本科学史学会
雑誌
科学史研究 (ISSN:21887535)
巻号頁・発行日
vol.30, no.178, pp.138-146, 1991 (Released:2021-08-27)

Kenji Miyazawa (1896-1933) is the most popular poet among the modern Japanese. Because his literary works had been incorporated the nature. That is, his views of nature calls forth many modern Japanese responses. And as his views of nature was based on the science on Taisho Era in Japan, we can recognise that his views of nature had included an element of scientific one. Therefore, we may point out that many of modern Japanese whose have acquired science education have scientific views of nature common with Kenji Miyazawa's one. Now, this study tries to definite the concept "scientific views of nature" on Kenji Miyazawa. Especially, this study analyzes the teaching materials for Kenji Miyazawa's science lecture at RASUTIJINKYOKAI which was his personal association on agricalture. The materials are composed of some fields of science; the outline on chemistry, botanical physiology and some essential knowledges on soil and 49 scientific sketches for teaching. From the result, on the things of nature which are chemical substances, plants and minerals, Kenji Miyazawa had strongly believed that those all are made up of "ATOM"
著者
菅沼 慎一郎 中野 美奈 下山 晴彦
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.229-239, 2018 (Released:2018-08-28)
参考文献数
46
被引用文献数
3 1

Recently, the adaptive function of resignation in psychological health is widely noted, especially from the standpoint of its relationship with mindfulness and acceptance. In this study, we developed two scales: one for measuring the stress-monitoring intention and one for measuring adaptive resignation. Then, we examined the relationship between stress-monitoring intention and psychological health in the light of the adaptive function of resignation. A questionnaire study was carried out with 600 Japanese workers in their 20s to 40s (300 males and 300 females: mean age = 35.37 years, SD = 7.66 years). The questionnaire’s reliability and validity were demonstrated. Mediation analysis revealed mediated effects of adaptive resignation in the relationship between stress-monitoring intention and psychological health. This result suggested that stress-monitoring intention has a dual face to psychological health, and the adaptive resignation eases the negative relationship, and amplifies the positive relationship. Finally, the meaning of this study’s results in terms of cognitive behavioral therapy and stress education in Japan are discussed.
著者
中野 誠
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.18-27, 2023-09-20 (Released:2023-09-30)
参考文献数
12

本稿の目的は,人的資本を会計・ファイナンスの視点から問い直すことにある.そのため,第1に人的資本会計の概念整理を行い,貸借対照表(以下,BS)借方を「人的資産」,貸方を「従業員持分」として明示的に峻別する.第2にBSに計上されている人的資産の事例を取り上げる.サッカーチームの「選手登録権」は個人を測定単位とした人的資産の事例である.組織を測定単位とした人的資産の事例としては,R&D活動のうちの「開発資産」を取り上げる.第3にBS貸方に目を転じて,「従業員持分」概念の提示を通じて,マルチ・ステークホルダー型のBS,「従業員資本コスト」,マルチ・ステークホルダー型WACCという考え方を紹介し,未来の会社の姿をイメージする.
著者
秋本 眞喜雄 池田 光里 中野 慎也 ボーマン サムエル 早津 勇一 畑 三恵子 前田 憲寿
出版者
自動制御連合講演会
雑誌
自動制御連合講演会講演論文集 第57回自動制御連合講演会
巻号頁・発行日
pp.1115-1118, 2014 (Released:2016-03-02)

皮膚色の違いを定量的に評価する方法はCIELAB空間の色差式が利用されているが,色差式から予測される色差と視感で感じられる色差とは必ずしも一致しない.この問題を解決するために,CIEはCIEDE2000色差式を推奨しているが,十分に活用されていない.我々は皮膚色の評価に新しい色差式を利用した場合の有用性について検討した.CIEDE2000色差式はCIELAB色差式に色相,明度,彩度に対応する係数を付加して色差を算出する方法である.CIE2000色差式は視感的な評価と比較的よく対応することが示唆され,皮膚色評価の標準化に寄与できると考える.
著者
北崎 充晃 中野 智亮
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.17-25, 2010-03-31 (Released:2017-02-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1

'Sensory conflict' theory is one of well-known theories for motion sickness. We conducted two experiments to determine the effects of the conflict between actual (extra-retinal) eye-movement and visually-simulated (retinal) eye-movement on motion sickness in a virtual environment. In results, we found that motion sickness was significantly decreased by controlling observers' eye-movement with a stationary/moving fixation point. When the extra-retinal and the retinal eye-movements were incongruent during the observer's head moving, the motion sickness was increased for sickness-sensitive observers. These results suggest that we can decrease motion sickness by controlling eye-movements with a stationary/moving fixation point to remove conflict between the extra-retinal and the visual eye-movements. This proposal represents a new approach to decreasing or preventing motion sickness in virtual environments.