著者
伊藤 俊一 久保田 健太 隈元 庸夫 森山 秀樹
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.45-51, 2009 (Released:2009-12-19)
参考文献数
11
被引用文献数
1

慢性腰痛に対する筋ストレッチングとセルフエクササイズの効果に関して検討した. 研究デザインは無作為化対照試験とし,外来受診からの治療期間を最大3カ月間として,コントロール群と,SLRと体幹筋強化を行ったエクササイズ1(E1)群,SLRと体幹筋強化とさらに腰背部ストレッチング加えたエクササイズ2(E2)群として,3カ月後,6カ月各群の痛みと身体機能変化と健康関連QOLをご検討した. 結果,E2群では痛みおよび身体機能は3カ月以内の改善を認め,E1群も6カ月では同様の結果を示した.痛みの軽減と最も関連が高かった項目は,体幹の柔軟性と伸展筋力であった. 以上の結果,慢性腰痛にけるセルフエクササイズによる体幹伸展筋力強化と柔軟性の改善を優先しての外来でのフォローアップは,疼痛および身体機能改善と患者満足度の改善により効果的と考えられた.
著者
境田 英昭 小久保 秀之 山本 幹男 平澤 雅彦 河野 貴美子 町 好雄
出版者
International Society of Life Information Science
雑誌
国際生命情報科学会誌 (ISSN:13419226)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.276-282, 2000-03-01 (Released:2019-04-30)
参考文献数
5
被引用文献数
1

気功は、中国の心身鍛練方法の一種と言われている。その気功練習者の身体からある周期に変調された放射赤外線が検出されたという報告がある。さらに、その周期は呼吸周期と一致するという報告もある。著者らは、放射赤外線を検出する装置を自作し実験を行った。この放射赤外線検出装置においても放射赤外線に呼吸周期と一致する周期が測定された。また、放射赤外線は皮膚表面温度と深く関係しているので、皮膚に直接温度センサを付けた実験も行われた。このセンサにおいても呼吸周期と一致する周期が測定された。また、他の分野で、皮膚表面温度から呼吸数を推定する研究報告がある。本研究によって、気功時における放射赤外線の変調は、呼吸の変化が皮膚表面温度の変化として表れたことに起因すると示唆された。
著者
村上 敬宜 金崎 俊彦 福島 良博 田中 裕之 戸室 仁一 久保山 孝治 松栄 雅樹 伊藤 義雄 安藤 晴彦
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 A編 (ISSN:03875008)
巻号頁・発行日
vol.75, no.749, pp.93-102, 2009-01-25 (Released:2017-06-09)
参考文献数
6
被引用文献数
4 7

The fatigue failure analysis of SUS316L flexible hose of the hydrogen station which was demonstrated during EXPO 2005 in Nagoya was carried out. The fatigue fracture surface where hydrogen leakage was detected showed clear striations which revealed a unique evidence of hydrogen effect on the ratio of striation height and spacing. The number of striations observed on the leakage fracture surface was 270. Considering that the number of hydrogen supply to the fuel cell buses was 280, it can be concluded that the fatigue fracture process during the demonstration is completely controlled by microplasticity resulting ductile fracture contrary to the conventional concept expressed with a term of decohesion or hydrogen embrittlement. The striation data were used to make the fatigue crack growth rate equation which was applied to the life prediction and structural integrity assessment for a new hydrogen station. The fatigue crack growth data showed the evidence of a strong frequency effect of fatigue crack growth rate of SUS316L used in the hydrogen environment with 8 minutes hydrogen supply time at the hydrogen station.
著者
久保田 義弘
出版者
札幌学院大学総合研究所
雑誌
札幌学院大学経済論集 = Sapporo Gakuin University Review of Economics (ISSN:18848974)
巻号頁・発行日
no.6, pp.59-82, 2013-10

本稿で取りあげる北部アイルランドとスコットランド北西部で活動したダル・リアダ王国は,6世紀の初めに建国し,アイダーン王(Áedán mac Gabráin)(在位574年?-608年)の支配下のときに,その周辺国との戦いによる勝利によって,その領土を発展・拡充し,その最盛期に至した。しかし,603年頃のDegsastanの戦いにおいて,その王はノーサンブリア王国のエゼルフリス王(AEthelfrith)(在位593年-616年)に敗れ,その後,彼の勢力は衰え,同時にダル・リアダ王国の力も衰えた。さらに,彼の後継者は,周辺国との戦いに敗北するのみならず,内部抗争(ケネル・ガブラーン家とケネル・コンガル家の王家の抗争)を繰り返し,その勢力は一層衰退した。また,637年のMag Rath(ダウン州のMoira)の戦いの後,北アイルランドのダル・リアダ王国は滅ぼされ,同時に,スコットランドのダル・リアダ王国はその政情も不安定化し,ノーザンブリア王国に従属し,さらに,685年にノーザンブリア王国がピクト王国の王ブリィディ(ブルード)3世(在位671年-693年)に敗北し,730年頃にはその王国は,オエンガス1世のピクト王国の支配下に入り(従属し),その王国の上王(大君子権)がピクト王に支配に入った。最後に,ピクトとダル・リアダの融和に果たしたキリスト教の役割を調べる。第1節では,伝説のダル・リアダ王国と実在のダル・リアダ王国について,伝説のファーガス・モーによるダル・リアダ王国の建国とケネル・ガブラーンとケネル・コンガルそして,アイダーン王の全盛期その後のその勢力の陰りとその衰退,第2節では,ダル・リアダ王国の内部抗争とノーザンブリアおよびピクト王国への従属を概観し,第3節ではダル・リアダ王国とキリスト教の関係を説明する。
著者
大久保 紀一朗 和田 裕一 窪 俊一 堀田 龍也
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.13-29, 2020 (Released:2020-09-17)
参考文献数
29

本研究ではマンガの読解指導について検討するための基礎的知見を得るために,小学校高学年を対象に,(1)マンガを含むメディアへの接触頻度,(2)マンガの読み方,(3)マンガへの意識・態度に関する調査を行った。その結果,マンガの読み頻度は1990年に行われた調査と比較して低いことが示された。一方で,児童を取り巻くメディア環境が大きく変化した今日においても,小学校高学年児童の多くはマンガに対して肯定的な意識をもっていることが示された。マンガに対する意識を測る尺度得点について因子分析を行った結果,マンガの有用感,マンガの分かりやすさ,マンガの悪影響,マンガへの低評価という4因子構造が得られた。それらの下位尺度得点と,読み方の関係を検討するために相関分析を行った。その結果,マンガに対して肯定的な意識をもっている児童は,マンガを深く理解する読み方をしていることが示唆された。そこで,マンガの読み方を目的変数,マンガに対する意識を構成する4つの因子の下位尺度得点を説明変数として重回帰分析を行ったところ,マンガに対する有用感がマンガの読み方に影響を与えていることが示唆された。
著者
久保 徹
出版者
日本西洋古典学会
雑誌
西洋古典学研究 (ISSN:04479114)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.63-75, 1999

『パノレメニデス』第II部の意義をめぐっては,とりわけ第I部のイデア論批判との関連でこれまでさまざまに論じられてきた.近年では,C.C.Meinwald らの論考が口火となって再びさかんに論じられている.しかし多くの解釈が試みられてきたにもかかわらず,いまだに研究者らの見解は大きく分かれており,基本的な合意さえ得られていない.だがこの第II部をどのように理解するかは,第I部のイデア論批判の解釈にも関わり,その意味は大きい.本稿は,あらためて第II部の意義をとらえ直し,そこから第I部のイデア論批判の議論に対するプラトン自身の応答を読み解こうとする一つの試みであり,このようなアプローチから『パルメニデス』におけるイデアの分有について考察することを意図する.
著者
大久保 淳一 長谷川 翔一 髙橋 梓 竹内 頌子 若杉 哲郎 鈴木 秀明
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.277-282, 2019 (Released:2019-04-13)
参考文献数
15
被引用文献数
1

当科における過去15年間の咽頭・頸部食道義歯異物症例について検討した。症例は26例で年齢中央値は79.5歳,クラスプ介在部位最深部は食道入口部〜頸部食道11例,下咽頭10例,中咽頭4例,上咽頭1例であった。全身麻酔を要した例は14例,気管切開術を要した例が4例,頸部外切開を要した例が1例,死亡例が1例あった。全身麻酔症例は,食道入口部〜頸部食道介在義歯11例中9例(82%),U型義歯14例中9例(64%)であった。気管切開症例の義歯は全てU型で,この中には死亡した1例が含まれていた。頸部外切開例ではU型義歯が食道入口部に介在していた。以上より,介在部位が食道入口部〜頸部食道の場合やU型義歯では重症化しやすいと考えられた。

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著者
久保より江 著
出版者
政教社
巻号頁・発行日
1925
著者
福沢 朋子 新井 涼介 北島 博 所 雅彦 逢沢 峰昭 大久保 達弘
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.101, no.1, pp.1-6, 2019-02-01 (Released:2019-04-01)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

カシノナガキクイムシ(以下,カシナガ)によるナラ類集団枯損被害(以下,ナラ枯れ)は標高300 m以下で多く発生するが,富山県などで標高1,000 mを超える被害が確認されているため,被害が高標高域へと拡散している可能性がある。カシナガの繁殖成功度などは標高の上昇・気温の低下と負の関係があり,今後ナラ枯れの拡大予測や予防を行う上で,高標高域におけるカシナガの脱出・飛翔に関する生態的知見は重要である。本研究では,標高傾度に沿ったカシナガ成虫の脱出消長や数,林内における飛翔数とその季節変化を明らかにすることを目的とした。2015年6~12月,2016年6~11月にかけて,標高600~1,000 mの標高100 mごとに衝突板トラップと脱出トラップを設置し,カシナガ成虫を捕殺した。本研究の結果,標高600 m以上の高標高域では低標高域に比べてカシナガの繁殖成功度は極めて低く,標高600~900 mの範囲では,標高傾度の影響はなかった。さらに標高900 m以上では,樹種組成の変化で主な寄主であるミズナラが減少する影響を受けて,飛翔成虫が極めて少ないと考えられた。
著者
河端 将司 島 典広 久保田 武美
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0122, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】理学療法の領域を超えて様々な呼吸法を用いた運動療法が行われている。例えばピラティス式呼吸法や長息法など胸腹部横隔膜を活性化させることで健康増進や腰痛予防を期待するものがある。またスポーツ動作ではタックルのように瞬間的に息む競技や,水泳や走行のように持続的な腹部緊張を保ちつつ継続的な呼吸が求められる競技がある。このように様々な呼吸法が存在するが,それぞれの呼吸時の腹部筋活動の程度や,それに伴って生じる腹腔内圧の上昇量を定量化したデータは見当たらない。本研究では,様々な呼吸法における腹部筋活動と腹腔内圧の観点から呼吸特性と強度を明らかにし,それをもとに運動処方に有用なトレーニング方法と強度について検討することを目的とした。【方法】健常男子大学生8名(20±1歳,170±3cm,64±4kg)を対象にした。全対象者は端座位にて,以下の7種の呼吸法を行った。①安静呼吸(以下,「安静」),②口すぼめ強制長呼息(以下,「強制呼気」),③腹式呼吸(以下,「腹式」),④ピラティス呼吸(以下,「ピラ式」,腹部凹みのまま胸式呼吸を続ける呼吸法),⑤吹き矢様の口すぼめ強制短呼息(以下,「吹き矢」),⑥最大下いきみ3秒(以下,「長息み」),⑦タックル様いきみ(以下,「短息み」)とした。腹腔内圧の測定は,直径1.6mmカテーテル型圧力センサー(Millar社製)を用いて肛門から約15cmの直腸圧を測定し,最大怒責時のIAP上昇量(差分)で正規化した(%IAP)。腹部筋活動の測定は,表面筋電図(日本光電社製)を用いて,腹横筋-内腹斜筋複合部(以下,「TrA-IO」,上前腸骨棘から約2cm内下方),外腹斜筋(以下,「EO」,臍と前腋窩線の交点)の右側2筋のRoot Mean Square(RMS)値を算出し,各筋の最大等尺性筋収縮時のRMS値で正規化した(%MVC)。呼吸流量は流速計(Acro System社製)とマスク(Hans Rudolph社製)を用いて採取した。呼吸流速データから吸気相と呼気相に分け,各相のIAP上昇量と筋活動量の同一3試技の平均値と標準偏差を算出した。一元配置分散分析および多重比較(Tukey法)を用いた。有意水準は5%未満とした。【結果】呼気量に主効果を認め(p<0.05),安静(0.7±0.3 L)はそれぞれ強制呼気(3.8±1.3 L)と吹き矢(1.9±1.1 L)に有意差を認めた(p<0.05)。腹腔内圧は呼気相のみ主効果を認め(p<0.05),安静(1.9±0.9%IAP)はそれぞれ強制呼気(31.4±9.3%IAP),吹き矢(29.3±6.3%IAP),長息み(46.7±21.1%IAP),短息み(64.3±14.3%IAP)と有意差を認めた(p<0.05)。TrA-IOとEOは吸気相呼気相ともに主効果を認め(p<0.05),吸気相では安静(TrA-IO:4.2±1.9,EO:1.8±0.9%MVC)とピラ式(TrA-IO:31.3±25.9,EO:7.0±7.3%MVC)のみ有意差を認めた(p<0.05)。一方,呼気相では安静(TrA-IO:4.2±1.9,EO:1.9±1.2%MVC)はそれぞれ強制呼気(TrA-IO:45.6±34.7,EO:10.1±3.3%MVC),長息み(TrA-IO:42.6±21.4,EO:12.9±8.8%MVC),短息み(TrA-IO:41.9±20.3,EO:13.2±6.7%MVC)と有意差を認めた(p<0.05)。【考察】まず今回の呼気量の結果より,7種の呼吸法は概ね妥当な呼気量で遂行されたと見なすことができた。腹腔内圧は呼気を強調した時に有意に上昇し,特に息む呼吸法で顕著であった。例えば短息み時の64%IAPは高重量物挙上時と同等であり(筆者先行研究。2010, 2014),タックルなど瞬間的に息む場面では腹腔内圧の増大に有利な呼吸法であることが示された。TrA-IOは吸気相でピラ式が有意に高活動を呈した。これは吸気時でも腹部凹みを維持し続けるという課題によって腹部が等尺性収縮(一部伸張性収縮)を要求されたことに起因すると考えられた。また呼気相では強制呼気が最も高活動を示したことから,TrA-IOのトレーニング強度について考えれば,ピラ式と強制呼気の混合型が効果的な刺激をもたらすかもしれない。EOもTrA-IOと同様の筋活動パターンを示したもののTrA-IOに比べると変化量が極めて小さいため,呼吸法による影響は直接的ではないと思われた。したがって,腹腔内圧の増大を伴う腹筋強化には瞬間的に息むような呼吸法,一方,腹部の持続的な筋緊張を維持するにはピラ式と強制呼気を混合させた呼吸法が有用かもしれない。【理学療法学研究としての意義】本研究は腹部筋活動と腹腔内圧の観点から,様々な呼吸法の特性と強度を明らかにした最初の基礎データであり,その参考値は運動やトレーニングの処方において有益な示唆をもたらすと考える。また理学療法の領域をまたぐ知見として活用できると思われる。
著者
久保 和良 青島 伸治
出版者
The Society of Instrument and Control Engineers
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.712-721, 1995-06-30 (Released:2009-03-27)
参考文献数
22

Piano and guitar tone decay analysis has been carried out using reverberation responses calculated by Wigner distributions. The responses are investigated in comparison with record of the conventional short time spectra. The reverberation responses which are intimately related with the internal energy of instrumens represent 1) the envelope of tone decay without fluctuation induced by interference, reflect 2) mutual load effect associated with the oscillators, thus, clearly show 3) the gradients of energy decay curves, and are 4) less influenced by window function length. A guitar under investigation is shown to provide 1) two-step tone decay curve not caused by difference between decay rates of horizontal and vertical vibration modes of the strings (single string tone), and 2) multi-step energy curve with each step having much longer duration than the interference period (two string tone).On the other hand, the analysis of a grand piano reveals the following features:1) two power peaks in the spectra of aftersound are caused by different reasons from each other, 2) multistep energy decay curve is altered by performance style or piano condition, and 3) the partials are exhausted after absorbing energy of the other vibration modes.
著者
江部 晃史 久保 雅昭 山下 茂雄 鈴木 謙介 福島 隆史 河﨑 賢三 山口 智広
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ca0939, 2012 (Released:2012-08-10)

【目的】 投球動作はコッキング期から加速期にかけて外反ストレスが生じ内側に牽引ストレス、外側には圧迫力が加わる。この外反ストレスは投球肘障害を招く一要因である。Parkらは尺側手根屈筋と浅指屈筋を合わせた筋活動時に外反角度が有意に減少すると報告しており、外反ストレスを制御する働きがあるといわれている。我々は前回、投球時に疼痛を有する選手を対象に手指対立筋の筋機能における客観的評価として手指対立筋筋力を数値化し検討を行った。結果より有症状選手における手指対立筋の筋機能低下が示唆された。そのことから手根骨の不安定性による尺側手根屈筋の機能低下が考えられた。宮野らは握力発揮時には橈側手根伸筋が手関節固定、母指球筋が母指の固定に働き浅指屈筋が握力発揮に主として働いていると考察している。しかしながら、投球肘障害におけるピンチ力と握力の関連性についての報告は少ない。そこで今回我々は高校野球選手におけるピンチ力と握力の傾向を調査した。投球時に肘疼痛を有する選手においてピンチ力との関連性に若干の知見を得たので報告する。【方法】 2011年3月から10月に当院スポーツ整形外科を受診した選手で、初診時筋力測定が可能であった選手のうち高校生のデータを抽出し対象とした。そのうち、投球時に肘疼痛が出現した選手を疼痛群19名(15歳~18歳、平均年齢:15.5歳)、比較対象として既往、来院時に肘疼痛を有さない選手を非疼痛群18名(全例年齢15歳)とした。ピンチ測定はピンチ計を用いて、投球側、非投球側を計測した。対象となる対立手指は、環指/母指、小指/母指とした。測定条件として、立位肘関節伸展位(体側に上肢を下垂させた状態)にて行った。握力測定は握力計を用いて、ピンチ測定と同様の条件で測定した。得られた筋力値を投球側と非投球側の比較と疼痛群と非疼痛群で比較した。尚、統計学的検討にはT検定を用い有意水準は5%とした。【説明と同意】 対象選手が未成年のため保護者に研究の趣旨を説明し同意を得た。【結果】 ピンチ力では疼痛群の小指/母指は投球側0.96kg、非投球側1.15kgであり投球側が有意に低値であった。環指/母指は投球側2.76kg、非投球側2.48kgであり有意差を認めなかった。握力では疼痛群において投球側41.89kg、非投球側44.05kgであり、有意差を認めなかった。非疼痛群ではピンチ力、握力ともに投球側-非投球側間で有意差を認めなかった。また、疼痛群-非疼痛群間での比較についても有意差は認めなかった。【考察】 今回の結果より有症状選手において投球側小指の筋力低下が認められた。我々の先行研究と同様の結果が得られた。宮下らは小指球筋群の収縮不全は手関節尺側の機能低下を招き、結果として尺側手根屈筋の収縮力を低下させていると報告している。また、握力においては疼痛群、非疼痛群ともに有意な差を認めなかった。河野らは競技特性について検討しており野球選手は握力に左右差がないと報告している。今回、有症状選手でも同様の結果を得られ浅指屈筋群を含む前腕筋群の筋機能が保たれていることが示唆された。Parkらは浅指屈筋単独の筋活動では外反角度は減少傾向にあるが有意差はなかったと報告している。よって有症状選手は前腕筋群の機能は保たれているが、手内在筋の筋機能が低下したことにより投球時の外反ストレスによって肘疼痛を有したと考えられた。このことから高校野球選手においては握力測定のみならずピンチ測定を行うことが投球肘障害の機能評価として重要であり、今後の課題として各年代に対して傾向を調査し有効性を明確にしていく必要がある。【理学療法学研究としての意義】 今回の研究より高校野球選手で投球時に肘疼痛を有する選手において投球側小指対立筋の筋力低下を認めた。一方、握力では有意差を認めなかった為、投球肘障害の機能評価を行う上では握力測定のみならずピンチ測定を行うことが重要であると考えられる。
著者
久保田 信雄 柄川 伸一 松岡 彰 清水 徹
出版者
Japan Concrete Institute
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.29-43, 1992
被引用文献数
1

高速湾岸線の多摩川・川崎航路トンネルは沈埋工法で建設が進められている。本報告は, 沈埋函の函体, 基礎ぐい, 函体, 継手部の設計, ひびわれ制御対策, 函体製作工事, 函体艤装工事について紹介するものである。