著者
原田 大 中込 早苗 影山 明 加藤 潤一郎 川久保 孝
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.723-731, 2019-10-31 (Released:2019-10-31)
参考文献数
9

東日本大震災では東北地方を中心に甚大な被害をもたらした。今後,首都直下型地震においても高確率で発生すると予測されているなか,患者がどの程度常用薬を備蓄しているかに関する情報は少ない。そこで本研究では,外来患者を対象に常用薬およびお薬手帳に関するアンケート調査を行った。その結果,常用薬がある患者のうち27.4%は常用薬の名称・用法・用量のいずれか1つ以上を覚えておらず,かつ常用薬に関する情報も備蓄していなかった。また,約6割の患者は常用薬を備蓄しておらず,備蓄していても5人に2人は1週間未満しか備蓄していなかった。お薬手帳に関しては,医師または薬剤師に対し患者が提示する頻度に有意差が認められた(p<0.001)。今後,薬剤師は患者の薬識向上やお薬手帳の正しい活用法の指導を強化するとともに,常用薬の備蓄を1週間程度可能とすることは,大規模災害に対する有用な対策のひとつとなると考えられる。
著者
大久保 慧 小野 健 中野 和之 宇城 真 藤原 建紀
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.233-240, 2016 (Released:2016-11-10)
参考文献数
14
被引用文献数
2 4

大阪湾をはじめとする閉鎖性海域では, 夏季の底層水の貧酸素化が問題となっている。貧酸素が環境や底生生物に与える影響には, 貧酸素の持続時間が重要な指標となる。国土交通省近畿地方整備局が公開している大阪湾水質定点自動観測データ配信システムの毎時データを用いて, 大阪湾の底層貧酸素の変動状況及び貧酸素状態の持続時間を2011年から2013年まで整理した。その結果, 多くの地点で夏季の底層DO (溶存酸素) の日変動幅は平均1 mg L-1以上, 月内での標準偏差は1 mg L-1以上を示した。大阪湾南東側の地点では, 強風時に貧酸素から回復する事例が多くみられ, 貧酸素が最も強くなる8月を除き, 貧酸素状態から頻繁に回復し, 貧酸素の持続時間は24時間未満となることが多かった。一方, 大阪湾北側の地点では, 強風に対する応答が南東側の地点より弱く, 貧酸素の持続時間も長い傾向にあった。
著者
樋口 寿 藤田 朋子 久保 美帆
出版者
近畿大学農学部
巻号頁・発行日
no.41, pp.17-25, 2008 (Released:2011-01-18)

近年、「キレる」などに代表される精神的な健康問題は、深刻な事件と結びつくものがあり、その社会的関心も高い。その原因の一つとして食生活が注目されている。過食や偏食、欠食等が身体的な健康に影響を与える因子であることから、食生活は精神的な健康にも影響を与える因子であることが推測できる。そこで本研究では、大学生の食生活や生活習慣における実態を調査し、特に精神的健康との関連について検討した。平成18年6月に近畿大学農学部1・2回生268名を対象に食物摂取頻度、生活習慣、自覚症状、食行動に関する項目について自己記入式のアンケート調査を行った。1)朝食は全体の75%が「毎日食べる」と答えたが、朝食の欠食は有意に男子で高かった。間食の頻度は女子が有意に高かった(p<0.01)。2)食物の摂取頻度では、野菜類、菓子類は女子の摂取頻度が多く、嗜好飲料、インスタント麺、ファーストフード、お酒は男子が多く、性差が認められた。女子に便秘傾向の者が多く、男子に運動習慣のある者が多かった。3)自覚症状を因子分析した結果、3つの因子が抽出され各因子を「精神的不安定」・「睡眠障害」・「身体的症状」とした。各項目で性差が認められたのは、「精神的不安定」の「自分がうつだと感じることがある」「イライラすることが多い」「頭がぼんやりする」と、「身体的症状」の「肩がこる」「疲れやすい」「目が疲れる」「目の前が真っ暗になり倒れそうになったことがある」の7項目で、いずれの項目においても女子が有意に高かった。4)食行動を因子分析した結果、3つの因子が抽出され各因子を「外発的刺激摂食」「体質認識」「食べ方」と名付けた。「外発的刺激摂食」と「体質認識」の全項目で、男子より女子が有意に高く、食べ方では男子の「早食いである」が有意に高かった。5)「精神的不安定」と関連する因子をパス解析で検討した。「精神的不安定」に直接影響を与えている因子は、自覚症状から抽出された「睡眠不足」と「身体的症状」の2因子であった。食品摂取頻度から抽出された「加工食品」と「食生活」「生活習慣」は間接的に「精神的不安定」に影響を与えていた。
著者
佐々城 真 飯久保 正弘 下里 舞 佐藤 しづ子 笹野 高嗣
出版者
Japanese Society for Oral and Maxillofacial Radiology
雑誌
歯科放射線 (ISSN:03899705)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1-6, 2014 (Released:2014-06-17)
参考文献数
17

Objective: To clarify the relationship between edematous changes and pain in the masseter muscle, we investigated whether plasma extravasation might be induced in the mouse masseter muscle when muscle fatigue with gnawing behavior occurred.Study design: When a mouse is restrained in a narrow cylinder with blocking at the front end with a thin plastic strip, it gnaws away at the strip to escape. The mice in the experimental group were restrained in such a cylinder for two hours. In a control group, the mice, whose tails were fixed to the cylinder using tape, could not reach the strip and thus could not bite it. Using these models, we examined plasma extravasation by the Evans blue (EB) dye method. Furthermore, to investigate the relationship between masseter muscle pain and plasma extravasation, local anesthesic was injected into the right masseter muscle, with the control side injected with saline alone. Results: The level of EB dye in the masseter muscle of the experimental group was higher than that of the control group. There was a high correlative relationship between the weight reduction of the plastic strip and the EB dye. The level of EB dye at the anesthetized side was significantly decreased compared with that at the saline-injected side.Conclusion: This result suggests that the masseter muscle pain induced by muscle fatigue evokes plasma extravasation, resulting in edematous changes in the masseter muscle.
著者
久保田 寛和 中沢 正隆
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-I, エレクトロニクス, I-光・波動 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.147-157, 1993-05-25
参考文献数
26
被引用文献数
2

最近,エルビウム光ファイバ増幅器(EDFA)を用いた光ソリトン通信が実現しているが,その中でGordon-Hausジッタ,光増幅器の自然放出光雑音(ASE)の蓄積等による伝送限界が生じてきている.今までこれらの劣化は光ソリトン伝送では不可避なものと考えられてきた.本論文ではこれらの問題点を解決する方法として,伝送クロックに同期した変調を光ソリトンに加えて波形整形を施し,光フィルタによってスペクトルを整える「ソリトン制御」の導入を提案する.そしてこの方法を用いることにより,光ソリトンを無制限の距離にわたって伝送できることを示す.
著者
中沢 正隆 久保田 寛和 山田 英一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-1, エレクトロニクス 1-光・波動 (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.265-277, 1996-08-25
参考文献数
31
被引用文献数
1

最近の光ソリトン通信技術は, エルビウム光ファイバ増幅器の研究開発と共に数々の新しい技術が提案され, 今では優れた光ソリトン通信実験が数多く報告されている. ソリトン伝送にはトランスフォームリミットなパルスが重要であるため本論文ではまず, モード同期半導体レーザ, ファイバレーザ, 利得スイッチ半導体レーザ, 電界吸収形変調器などを用いた光ソリトン発生技術について述べる. 後半ではどのようにしてソリトン伝送が実現されつつあるか,最近の技術展開を含めて報告する. 特に, 分散アロケーションを用いたソリトン伝送はパワーマージンと分散許容度が大きく実用性が高いことを示す.
著者
久保 裕也 丸岡 伸洋 佐藤 嘉将
出版者
一般社団法人 日本鉄鋼協会
雑誌
鉄と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.105, no.9, pp.871-876, 2019 (Released:2019-08-31)
参考文献数
12
被引用文献数
3

Fundamental experiments were conducted with the aim of crude separation of the phosphorus contained in high-P iron ore prior to the ironmaking process. By reducing high-P iron ore with lime and graphite at an appropriate blending ratio and temperature, a reduction product was obtained consisting of a P-concentrated phase, metallic Fe with low P, and an Fe oxide-containing phase. The reduction product was pulverized by electrical pulse disintegration, and a magnetic separation experiment was performed for each particle group. As a result, 57.5% of the P contained in the reduction product was removed by removing particles of 250 μm or less. Samples simulating the constituent phases of the reduction products were synthesized and subjected to magnetization measurement. It was assumed that the Fe oxide-containing phase was paramagnetic and the P-concentrated phase was diamagnetic. We calculated the magnetic and drag forces acting on the paramagnetic particles in wet magnetic separation. When the magnetic field gradient was low, the magnetic forces acting on the fine particles were low, and attraction was difficult due to the drag force of water.
著者
前橋 健二 久保田 紀久枝
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

味と香りの複合刺激並びに単一物質の複雑味の分子機構を明らかにするために、香気物質が味覚受容体の味応答に及ぼす影響、並びに単一味物質による複数味覚受容体への作用を調べた。官能評価によってカルダモン香気成分は匂閾値以下の濃度で茶カテキンEGCgの苦味を有意に抑制した。さらに、HEK293細胞を用いたセルベースアッセイにおいて、カルダモンの香気成分存在下ではEGCgに対する苦味受容体T2R14発現細胞の応答が抑制されることが示された。また、セルベースアッセイによって、清酒の甘味成分であるα-エチルグルコシドが甘味受容体T1R2-T1R3だけでなく各種苦味受容体も活性化することが見いだされた。
著者
谷川 建司 小川 順子 小川 翔太 ワダ・マルシアーノ ミツヨ 須川 まり 近藤 和都 西村 大志 板倉 史明 長門 洋平 木村 智哉 久保 豊 木下 千花 小川 佐和子 北浦 寛之
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、日本映画史上最大の構造的転換期・構造的変革期をなす1960年代末~70年代を対象とし、その社会経済的実態を次に掲げる問題群の解明を通して明らかにし、その歴史的位相を確定する。即ち、①スタジオ・システムの衰退・崩壊の内実とその産業史的意味、②大量宣伝・大量動員手法を確立した角川映画の勃興、③映画各社が試みた経営合理化と新たな作品路線の模索、④「ピンク映画」の隆盛の実態とその影響、⑤異業種からの映画産業界への人材流入の拡大とそのインパクト、である。上記の五つの括りに因んだ映画関係者をインタビュイーとして抽出し、研究会一回につき1名をゲストとして招聘し、精度の高いヒアリングを実施する。
著者
水口 浩一 久保田 雅也
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.337-341, 2016 (Released:2016-09-09)
参考文献数
20

【目的】人工呼吸器に依存する重症心身障害児 (重症児) は, 少ない摂取エネルギーでも, ときに栄養過多による肥満が問題となる. 長期人工呼吸管理中の蘇生後脳症児5例に対し, 生体インピーダンス法 (BIA) で体組成を測定, 病態とエネルギー必要量を検討した. 【対象・方法】年齢1~9歳. 体組成は多周波数BIA (InBody S20®) を用い, 体脂肪率, 骨格筋量, 除脂肪体重 (FFM) を測定した. 各症例の経過を後方視的に検討した. 【結果】体脂肪率は40~60%と高く, 全例で肥満, 過栄養状態であった. また, 骨格筋量と, FFMが減少していた. 適切な摂取エネルギー量の検討後は210~350kcal/日と極めて少なく, FFMあたり25~42kcal/kg/日で維持できていた. 【考察】人工呼吸管理を要す蘇生後脳症児の体組成は, 体脂肪が増加し, FFMは減少する. FFMが基礎代謝量に強く相関するため, 本病態では体重を用いたエネルギー必要量の設定では過栄養となる. FFMを基準にしたエネルギー必要量の設定が望ましい. 【結語】BIAを用いた体組成の把握は, 重症児の栄養管理の一助となる.
著者
添田 直樹 久保 拓真 根本 幾
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.367, pp.27-29, 2011-12-20

音楽聴取時における,注意の脳活動に対する影響を測定するために,音色(timbre)注意,旋律線(melody注意時のfMRIを撮像し,統計解析を行った.4種類の旋律,3種類の音色を組合せた第1フレーズ(non-manipulated)を作成した.それと比較するために第1フレーズに「変化をさせない」「旋律の1音のみを変化させる」「音色のみを変化させる」「音色と旋律の1音を変化させる」いずれかの操作をした第2フレーズ(manipulated)を続けて配置した.ただし,第2フレーズは第1フレーズより全音高くした.被験者にはランダムに配置した2フレーズ(第1フレーズ+第2フレーズ)を続けて聞かせ,2フレーズの間の違い(全音の違いは考慮しない)の有無を判断させた.コントロール刺激としてホワイトノイズを使用した.14人の被験者のグループ検定で,音色注意時,旋律線注意時で共通する賦活部位は,一次聴覚野を含む左右の上側頭回であった.旋律注意時のみに賦活する部位は,左の運動前野であった.音色注意時のみ賦活する部位は見られなかった.
著者
大久保 史郎 徐 勝 上田 寛 赤澤 史朗 松本 克美 中島 茂樹 松宮 孝明
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究では、民主化以降の現代韓国の法・政治構造の転換を主題とし、日本との比較の中で、韓国側の新進気鋭の法学者を網羅し、3年間の研究を進めてきた。韓国の民主化の転換点を1987年の「6月民主化大抗争」に置いて、盧泰愚政権以降の韓国政治の民主化過程に対応する憲法・刑事法・労働法・行政法・経済法等の変動に関する分析を行い、その過程と到達点、限界などを明らかにした。そこでは、憲法裁判所の役割や国家人権委員会設立過程などで見られるように、司法の権力統制と人権保障機能の段階的強化、司法権の独立および司法制度改革への模索、市民運動の興隆と市民の政治・司法への参加の増大などが認められた。しかし、反面、分断体制からくる制約や権威主義体制の遺産などもあり、国家保安法を存置させている問題も指摘された。3年間の共同研究の経過を下に示す。第1回共同研究(99年4月・ソウル)では、日本側から2本、韓国側から5本の報告がなされた。第2回共同研究(99年10月・京都)では、日本側から3本、韓国側から4本の報告と、園部逸夫氏の記念講演がなされた。第3回共同研究(2000年6月・韓国慶州)では、日本側から4本、韓国側から4本の報告がなされた。第4回共同研究(2000年12月・京都)日本側から1本、韓国側から3本の報告がなされた。第5回共同研究(01年5月・釜山)では、韓国側から3本の報告と、全体の総合討論がなされた。3年間で30本の報告がなされたことになるが、以上の報告のうち、9論文は『立命館大学法学』に翻訳掲載され、全体のなかから選んで、『現代韓国の法・政治構造の転換』として、2002年度に公刊される。