著者
大島 幹弘 中村 安孝 池田 直人 西山 博隆 小菅 和仁 山田 浩 伊藤 邦彦 松山 耐至
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.8, pp.499-503, 2013-08-10 (Released:2014-08-10)
参考文献数
3
被引用文献数
4 2

Tablet-splitting is an important practice for pharmacists in hospitals and pharmacies. We investigated the variation of line tablet containing splitting score using 4 splitting methods (scissors, automatically, knife and spoon). We evaluated variation using the coefficient of variation. As a result, scissors and automatically showed small variation, but knife showed big variation. Furthermore, as individual difference using a warfarin tablet was investigated, the scissors showed small variation compared with other methods. As the splitting methods and individual difference results, the tablet scissors method was the most useful division method. We investigated the variation of line tablet non-containing splitting score using scissors and crushing tablet on/off diluting agent. As a result, crushing tablet on a diluting agent showed small variation. Using a score line tablet divided by the tablet scissors method, the non-score line tablet divided by crushing tablet on the diluting agent was small variation.
著者
伊藤 幸郎
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.25-31, 2002-09-17 (Released:2017-04-27)
参考文献数
7
被引用文献数
2

20世紀末から医学界に流行したEBMは、複雑な現実世界に決定論的因果関係を求める代わりに、着目する集団に見られる諸現象の特性を確率論的な関係として明らかにする。EBMは19世紀に起こった実証主義に端を発する方法論で、帰納論理に基づいているから、その結果はだれでも納得するエビデンスとして示される。EBMは医療の標準化に役立ち、臨床医学の予言が確率的でしかないことをわれわれに自覚させるという点で意義がある。従来の機械論的生物医学とEBMとは科学的医学の車の両輪である。しかし科学は人生の価値や意味に中立的で、確率論的な予測を提供するのみである。EBMは人生にとって価値あることのために利用すべき道具なのだ。
著者
伊藤 俊秀 宮澤 樹 山本 恭輔
出版者
関西大学
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.1-10, 2020-01-30

二酸化炭素の排出が地球温暖化にどの程度影響しているかは議論の余地の残るところではあるが,現時点で商用化されている水素自動車(燃料電池車)は走行時に二酸化炭素を排出しないので,地球温暖化防止に有効であると広く認識されている.しかし,水素は,工業的には天然ガスから製造されているので製造時点で二酸化炭素が排出される.そこで,水素自動車が実質的に排出する二酸化炭素量を推計し,ガソリン車,ハイブリッド車,電気自動車が排出する二酸化炭素量と比較して考察した.ここで,電気自動車については発電時の排出量であるので,各国の電力ミックスに大きく依存する.比較考察した結果,日本の場合,水素自動車と電気自動車の二酸化炭素排出量は,現時点ではほぼ同量であるが,政府が2030年に目標としている電力ミックスで考えるとむしろ電気自動車の方が少なくなることがわかった.したがって,水素ステーションなどに膨大な設備投資を行って取り扱いが難しく非常に危険な水素で走行する水素自動車の普及を推進するより,現時点でもかなり普及している電気自動車の更なる普及を促進する方が合理的である.本稿では,最後に,水素の製造や発電の際に排出される二酸化炭素の地中への貯留手法であるCCSの現状と実現性についても言及した.
著者
矢後 勝也 平井 規央 小沢 英之 佐々木 公隆 谷尾 崇 伊藤 勇人 遠藤 秀紀 中村 康弘 永幡 嘉之 水落 渚 関根 雅史 神宮 周作 久壽米木 大五郎 伊藤 雅男 清水 聡司 川口 誠 境 良朗 山本 以智人 松木 崇司
出版者
公益財団法人 自然保護助成基金
雑誌
自然保護助成基金助成成果報告書 (ISSN:24320943)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.233-246, 2020-01-10 (Released:2020-01-10)
参考文献数
11

シカの急増に伴う林床植生の食害により国内で最も絶滅が危惧されるチョウと化したツシマウラボシシジミの保全を目的として,a)保全エリアでの実践的な保護増殖活動,b)保全エリア候補地の探索に関する活動,c)希少種保全と農林業との連携に関する活動,の大きく3つの課題に取り組んだ.保護増殖活動では,環境整備やシカ防護柵の増設により保全エリアの改善を試みた他,現状の環境を把握するためにエリア内の林床植生および日照・温度・湿度を調査した.今後の系統保存と再導入のために越冬・非越冬幼虫を制御する光周性に関する実験も行った結果,1齢幼虫から日長を感知する個体が現れることが判明した.保全エリア候補地の探索では,本種の好む環境を備える椎茸のホダ場30ヶ所を調査し,良好な環境を保持した11ヶ所のホダ場を見出した.保全と農林業との連携では,アンケート調査から多くの地権者や椎茸農家の方々は本種の保全に好意的なことや,本種を育むホダ場で生産された椎茸のブランド化に賛成で,協力可能であることなども明らかとなった.
著者
伊藤 真也 温品 悠一
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11863, (Released:2020-10-16)
参考文献数
16

【目的】新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)による重症肺炎にて体外式膜型人工肺療法(以下,ECMO)を導入された症例に対して理学療法を行い,歩行獲得まで至る経過を得たので報告する。【症例紹介】71 歳男性,COVID-19 による肺炎にて入院後急激に症状が増悪し,人工呼吸器管理に加えてECMO 導入。気管切開施行後,第10 病日に理学療法開始となった。【経過】導入後深鎮静管理中は関節可動域練習,体位交換,体位ドレナージを実施し,鎮静終了後はECMO 管理下にて端座位練習を行い,呼吸法指導・骨格筋トレーニング・起居動作練習・歩行練習を実施した。最終的には自立歩行が可能となり自宅退院の転帰を得た。【まとめ】感染防護を確実に行いECMO 管理下COVID-19 症例に有害事象なく理学療法が提供できた。今後はよりCOVID-19 症例に対する安全で効果的な理学療法を検討する必要がある。
著者
泉 北斗 根岸 淳二郎 三浦 一輝 伊藤 大雪 PONGSIVAPAI Pongpet
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1-20, 2020-09-28 (Released:2020-11-30)
参考文献数
56
被引用文献数
1 2

本研究は,自然再生計画の具体化に向けて生態系保全のための情報蓄積が急務である石狩川の氾濫原水域を対象に,イシガイ目二枚貝の生息の現状と水域管理上の課題を明らかにすることを目的とした.複数種の現状について,生息水域タイプの選好性,繁殖時期の特定とともに採取個体数に対する妊卵の割合,近年の新規加入(再生産)の程度,そして再生産に重要である魚類への寄生状況の 4 項目を調べた.30 水域を人工短絡湖沼,自然短絡湖沼,後背湿地の 3 タイプに分類した.そのうち 27 水域においてベルトトランセクト法および方形区法を用いてヌマガイ,イシガイ,フネドブガイの生息数を推定した.また,12 水域を対象に,採取した個体の外鰓の観察により成熟・妊卵状況を確認した.さらに,自然短絡湖沼 4 水域で,採取した魚類から切除した鰭と鰓の観察により,グロキディウム幼生の寄生数を計数した.フネドブガイの採取個体数が最も多く,その他 2 種が少なかった後背湿地で CPUE の値が高かった.フネドブガイでは,未成熟個体の占める推定割合は低く,多くの水域で全体個体数の 3%程度以下であった.他 2 種も 1-2 水域以外では未成熟個体が確認されなかった.ヌマガイとイシガイは 7 月と 8 月に 15 .52%の個体で妊卵し,フネドブガイは 9 月から 11 月にかけて 3 .43%の個体が妊卵していた.魚類相は水域間でその構成に大きな差は見られなかったが,タイリクバラタナゴが各水域の魚類総個体数の 26 .0%から 70 .2%を占め共通して優占した.一方で,イシガイ類の幼生に寄生された個体は見つからなかった. 管理上の方策として成立要因・物理水文特性に基づく水域タイプを認識し,タイプの多様性を維持するように水域を管理していくことがイシガイ目の保全に重要であることが示唆された.また,イシガイ目の個体群の再生産が 2 年程度は停滞しており,その原因として水質の劣化と外来種が優占する魚類相が考えられた.したがって,管理上の課題として長期的な観点からイシガイ目の健全な個体群の維持に有効な対策を検討することが必要である.
著者
伊藤 江美 中村 かおり
出版者
拓殖大学日本語教育研究所
雑誌
拓殖大学日本語教育研究 = Journal of research in teaching Japanese language (ISSN:24239224)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.211-233, 2021-03-25

拓殖大学別科日本語教育課程の入門漢字クラスでは,非漢字圏学習者の心理的,時間的な負担を軽減することを目指し,Kanji in 6 & 4,語彙先習,漢字クイズマラソンによる段階的な漢字語彙学習に取り組んでいる。Kanji in 6 & 4は拓殖大学大学院に在学中だったイマーン・タハ氏が考案した字形学習法で,字形の点画をコード化して示した上で,字形の構造を階層的に分解,分類し,字形を認識する。筆者らはKanji in 6 & 4の第一段階の点画のコード化をKコードと呼び,Kコードによる漢字字形学習の実践を行っている。本稿では,Kコードによる漢字字形学習の実践例から,Kコードが共通言語の機能を持ち,学習の効率化に役立っていることを述べた。そして,当クラスの学習項目全体を改訂版タキソノミーによって分析し学習目標分類表を作成することによって,学習行動の認知次元過程の各段階におけるKコードの有用性を示した。以上のような実践と分析を通して,漢字の字形学習におけるKコードの共通言語機能と実用性について考察した。
著者
下村 五三夫 伊藤 大介
出版者
国立大学法人北見工業大学
雑誌
人間科学研究
巻号頁・発行日
no.4, pp.13-62, 2008-03

From the viewpoints of cultural anthropology and experimental phonetics, this paper dealt with a mysterious and little known game called rekukkara or rekuhkara performed by Sakhalin Ainus. This game is conducted by a pair of women, facing each other in a mouth-to-mouth distance, in the following way. One partner sends her guttural voice sounds into the mouth cavity of the other through a tube made of their hands. The guttural voice being applied into the receiver’s mouth can be modulated by the volume alteration of the mouth cavity. Similar games are recognized only among Chukchas and Canadian Inuits. In the framework of ‘speech synthesis by vocal tract simulation’, we proved that rekukkara is a kind of speech synthesis game. The key secret is for the voice receiver to hold her glottis shut and conduct some pantomimed articulation while the sender is sending her guttural voice into her mouth cavity. We argued that the game might be originated in the speaking jews-harp cultures and black-smith shamanism, one or both of which we can recognize among Ket, Sayan-Altaic, Tuvan, Buryat, Yakut, and Tungusic players of orally resonating instruments. We also pointed out that there is a correlation found between the bellows blowing air into the furnace at a black-smith’s work place and the guttural voice flowing into the mouth cavity of the game player. In the period of Mongolic domination, ancestors of the Sakhalin Ainu, who happened to move from the island to the Coast districts of now Russia, might have acquired from Tungusic players how to make orally applied noises transform into speech sounds. We also discussed the etymological question of a metallic jews-harp called kobuz, whose etymology is still unknown. Based on Tang dynasty 唐代 phonological reading of the eight names 渾不似,胡不兒,火不思,虎拍子, 琥珀 思,虎撥思,胡撥四,呉撥四cited in an Edo.period archive Geiennisshou .苑日 渉, we attested that the word 胡不兒belongs to Bulghar Turkic while the other seven variants to General Turkic. The phonological notation for 胡 不兒 is γοpur, whose ending 兒 /r/ seems to be a plural marker {-r} in Bulghar Turkic. The ending 兒/r/ contrasts with all the other endings 似, 思,子,四, whose phonetic value of the period of Tang dynasty is /s/, whose voiced variation /z/ is also a plural marker in General Turkic. Therefore, kobuz and its phonetic variations may be Turkic words, which can be decomposed into the two components, *kob- (noun) + -uz or -ur (plural marker). We conducted spectrographic analysis on the sound archives of rekukkara recorded by Bronislaw Pilsudski, a Polish exile to Sakhalin island from 1887 to 1903. We compared their sonograms with those of the sound recordings of the same game collected by NHK in 1950s and the sound recordings of its Chukcha and Inuit versions collected by K. Tanimoto in 1979 and 1992, respectively. We recognized that there appear speech synthesizing processes in the sonograms of the speech samples from Ainu sound archives compiled by NHK, which reinforces our hypothesis that the throat-exchange game rekukkara might have originated in speaking jews-harp cultures combined with black-smith shamanism in southern Siberia. As to the question of whether the Ainu rekukkara can be related with the Chukcha and Inuit versions, the answer solely depends on whether their sound recordings reveal the speech synthesizing processes in their sonograms.
著者
伊藤 太一
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 = Journal of the Japanese Forest Society (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.91, no.2, pp.125-135, 2009-04-01
参考文献数
38
被引用文献数
4

近年自然地域におけるレクリエーションのための入域や施設利用, インタープリテーションなどのサービスに対する費用負担が国際的課題になっているが, 日本では山岳トイレなど特定施設に限定される。ところが, 江戸時代の富士山においては多様な有料化が展開し, 登山道などの管理だけでなく地域経済にも貢献し, 環境教育的活動の有無は不明であるが, 環境負荷は今日より遙かに少なくエコツーリズムとしての条件に合致する。そこで本論ではレクリエーション管理の視点から, 登山道と登山者の管理およびその費用負担を軸に史料を分析し, 以下の点を明らかにした。1) 六つの登山集落が4本の登山道を管理しただけでなく, 16世紀末から江戸などで勧誘活動から始まる登山者管理を展開することによって, 19世紀初頭には庶民の登山ブームをもたらした。2) 当初登山者は山内各所でまちまちの山役銭を請求されたが, しだいに登山集落で定額一括払いし, 山中で渡す切手を受け取る方式になった。さらに, 全登山口での役銭統一の動きや割引制度もみられた。3) 同様に, 登山者に対する接客ルールがしだいに形成され, サービス向上が図られた。4) 一方で, 大宮が聖域として管理する山頂部では個別に山役銭が徴収されるという逆行現象もみられた。
著者
芹沢 浩 雨宮 隆 伊藤 公紀
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.405-420, 2011 (Released:2012-09-01)
参考文献数
15

エントロピーに関しては,その増減を支配する2つの重要な法則がある.外界から隔絶された閉鎖系で成り立つ熱力学の第2法則と物質やエネルギーが絶えず出入りする開放系で成り立つエントロピー生成率最大化(MEP)の原理である.前者はエントロピー増大の法則として以前よりよく知られているが,後者は近年の非平衡熱力学,複雑系研究の成果として得られた新たな知見で,社会科学の研究者の間で,その存在を知っている人はそれほど多くない.エントロピーについて深く理解するためには双方を熟知している必要があり,前者だけではエントロピーの破壊的な側面は理解できても,創造的な側面は見落とされてしまう.本論文はあまり知られていないMEP原理に焦点を当て,それを社会科学に移植する試みである.簡単な人間社会モデルによってMEP原理の基本的な考え方を説明した後に,社会現象においてもこれが機能すると仮定し,地球上に存在する社会形態の多様性とMEP原理の関連を考察する.
著者
伊藤 元信
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.242-252, 1990-04-25 (Released:2010-06-22)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

左大脳半球のブローカ領域ないしその周辺の損傷による特異な構音と韻律の障害を, 発語失行症という.この障害は, 言語表象の操作機能の障害としての失語症とも, 発声・発語器官の麻痺や筋力低下による麻痺性 (運動障害性) 構音障害とも異なる特殊な構音障害である.この障害の本態の解明はいまだ十分とはいえないが, その出現率は低くなく, 臨床上, この障害の取り扱いは重要である.本稿では, 発語失行症の構音障害の特徴, 構音器官の動態などについてのこれまでの研究結果を概括し, 障害像を浮き彫りにするとともに, 評価・診断を中心とした臨床的アプローチについても考察を加える.最後に, 臨床場面での今後の課題について若干私見を述べる.
著者
中山 一麿 落合 博志 伊藤 聡
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

昨年度後半から本格始動させた覚城院の調査であるが、調査が進むにつれて新たな発見があり、多義に亘る史料の宝庫として、その実態把握を加速させている。字数制限上、覚城院に関する主たる成果のみ以下に記す。6月には、中山一麿「寺院経蔵調査にみる増吽研究の可能性-安住院・覚城院」(大橋直義編『根来寺と延慶本『平家物語』』、勉誠出版)において、新出の増吽関係史料を中心に、増吽やその周辺の研究を進展させると共に、聖教調査研究が新たな発展段階にあることを示唆した。9月には本科研を含めた6つのプロジェクトの共催で、「第1回 日本宗教文献調査学 合同研究集会」が行われたが、中山はその開催に主導的役割を果たし、二日目の公開シンポジウム「聖教が繋ぐ-中世根来寺の宗教文化圏-」では基調報告として「覚城院所蔵の中世期写本と根来寺・真福寺」を発表し、覚城院から発見された根来寺教学を俯瞰する血脈の紹介を交えつつ、覚城院聖教が根来寺・真福寺などの聖教と密接に関係することを報告した。加えて、同時に開催された寺院調査に関するポスターセッションでは、全29ヵ寺中、本科研事業に参加する研究者5名で計10ヵ寺分(覚城院・安住院・随心院・西福寺〈以上中山〉・木山寺・捧択寺〈以上向村九音〉・善通寺〈落合博志〉・地蔵寺〈山崎淳〉・薬王寺〈須藤茂樹〉・宝泉寺〈中川真弓〉)のポスターを掲示した。3月には「第1回 覚城院聖教調査進捗報告会―今目覚める、地方経蔵の底力―」を開催し、覚城院調査メンバーから9名の研究者による最新の研究成果を公表した。同月末刊行の『中世禅籍叢刊 第12巻 稀覯禅籍集 続』(臨川書店)においては、覚城院蔵『密宗超過仏祖決』の影印・翻刻・解題を掲載し、翻刻(阿部泰郎)・特論(中山一麿)・解題(伊藤聡・阿部泰郎)がそれぞれ担当して、本書の持つ中世禅密思想上の意義やその伝来が象徴する覚城院聖教の重要性を論じた。
著者
堀江 秀樹 伊藤 秀和
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.357-361, 2006-12-20
被引用文献数
2 2

我が国では,ホウレンソウ葉中のシュウ酸がホウレンソウを食べる時のえぐ味に関係すると広く解釈されている。本報では,シュウ酸塩溶液を味わった後に残る不快な感覚をシュウ酸味と定義した。ホウレンソウの茹で汁は強いシュウ酸味を示したが,ホウレンソウ葉に水を加えて調製した抽出液では,シュウ酸濃度は茹で汁より高いにもかかわらず,シュウ酸味はごく弱かった。さらに,ホウレンソウの生葉を食してもシュウ酸味はほとんど感じられなかった。これらの現象は唾液由来のカルシウムイオンとホウレンソウ葉由来のシュウ酸イオンの間で,シュウ酸カルシウムの微細な結晶が生成され,これが口腔内を物理的に刺激するのがシュウ酸味である考えれば解釈可能であった。モデル系において,シュウ酸イオンとカルシウムイオンを混合すれば,シュウ酸カルシウムによる白濁が生じた。ホウレンソウ葉中にはクエン酸イオンも含まれ,クエン酸イオンの濃度が十分に高い場合には,シュウ酸カルシウム結晶生成に伴う濁りを抑制したが,クエン酸イオン濃度が低い場合には濁りが生じた。シュウ酸味には,シュウ酸カルシウムの生成を抑制する成分の寄与が大きいものと推定された。ホウレンソウの水抽出物は固相抽出法によって,水溶出画分とエタノール溶出画分に分離できた。シュウ酸イオンとシュウ酸味は水溶出画分に回収され,苦味はエタノール溶出画分に回収された。ホウレンソウの苦味については,シュウ酸とは異なる成分によるものと考えられる。