著者
筒井 清次郎 伊藤 文浩
出版者
愛知教育大学大学院・静岡大学大学院教育学研究科 共同教科開発学専攻
雑誌
教科開発学論集 (ISSN:21877327)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.129-138, 2014-03-31

本研究は、フィードバック頻度と注意の向け方が運動習得にどのように影響するかを調べるために、スポーツ課題であるサッカーの的当て課題を用いて、経験者と初心者を対象とし比較した。その結果、以下のことが明らかになった。1)練習試行において、経験者は注意の向け方に関わらず、1日目から3日目にかけて平均得点が向上した。External Focus(身体外部への注意)群の初心者は3日目に平均得点が向上したが、Internal Focus(身体への注意)群の初心者は3日間で平均得点が向上しなかった。2)保持テストにおいて、経験者と初心者の両方でExternal Focus群はInternal Focus群よりも平均得点が高かった。3)練習試行においても、保持テストにおいても、フィードバック頻度の違いはみられなかった。
著者
中山 康之 伊藤 真
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.38, no.10, pp.787-793, 1983

原子を形づくる原子核と電子の間の空間には何が存在するだろうか. そこにはもはや他の分子や原子が入り込めないことを我々はよく知っている. そこにはどんな物も存在し得ない, まさしく虚とか空とか言えそうな場所である. 我我の物理学ではその空間は負のエネルギーをもった電子で満たされていると解釈し, それを真空と呼ぶ. この真空は外からエネルギーを与えれば簡単に確認出来るが, 原子番号が173をこえるような超重原子では外からエネルギーを与えなくても, 真空から自発的に電子-陽電子対が発生して真空が崩壊する. これは真空中に実在の電子が出来ることを意味し, 真空の全く新しい側面である. こんな理論的予測を実証しようとする実験が永い間続けられている.
著者
吉川 直孝 伊藤 和也 堀 智仁 玉手 聡 豊澤 康男
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_125-I_130, 2011 (Released:2012-01-20)
参考文献数
6

本論文ではトンネル切羽の肌落ちにより発生した死傷災害を調査し,その発生状況を分析した.山岳トンネルでは,装薬や支保工の建て込みに際して作業員が切羽に接近して作業するが,多くの災害はそのような作業時に発生している傾向が見られた.また,肌落ちした岩塊の大きさは0.6m角程度と比較的小さいことから,肌落ち・落石災害防止対策として,切羽変位計測,十分な照度の確保,鏡吹付,導水・さぐり削孔といったソフト・ハード両面からの対策を提示した.
著者
重松 潤 尾形 明子 伊藤 義徳
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.179-189, 2020-09-30 (Released:2020-12-23)
参考文献数
29

認知行動療法の技法論に関する知見は多いが、認知行動療法で想定される治療的な認知変容のプロセスを辿っているか判別する視点に関する知見は乏しい。近年、その視点の一つとして「腑に落ちる理解」が提案されている。しかし、セラピストがどのようにクライエントの「腑に落ちる理解」を観察しているかは不明である。そこで、本研究では、認知行動療法において「腑に落ちる理解」を扱う重要性の確認も踏まえて、認知行動療法を専門とする心理士21名にインタビュー調査を行った。その結果、臨床場面で「腑に落ちる理解」を観察した報告と「腑に落ちる理解」を捉える具体的な視点が抽出された。今後は臨床場面で使用できる「腑に落ちる理解」の指標の作成が求められる。
著者
伊藤 邦彦
出版者
東京都立産業技術高等専門学校
雑誌
東京都立産業技術高等専門学校研究紀要 (ISSN:18831990)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.112-106, 2009-03

鎌倉幕府守護の管国統治機構については、佐藤進一『増訂鎌倉幕府守護制度の研究-諸国守護沿革考証編-』(東京大学出版会、一九七一年。初版一九四八年。引用は、一九九八年第四刷に拠る。以下、『鎌倉幕府守護制度の研究』と略記)をはじめ、個々に言及されていることは勿論であるが、専論として全体を包括したものはほとんど見当たらない。前号では管国統治機構を構成する正員・守護代以下の職員の問題を取り上げたが、本号では「守護所」について、まずその語義を整理しておきたい。
著者
高岩 義信 九後 太一 早川 尚男 棚橋 誠治 金谷 和至 五島 敏芳 小沼 通二 伊藤 憲二 伊藤 和行 九後 太一 受川 史彦 平田 光司 小長谷 大介 田中 希生 田中 正 難波 忠清 西谷 正 吉川 直志 坂東 昌子
出版者
筑波技術大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-11-18

日本の素粒子論研究が世界的に評価される礎を築いた湯川秀樹・朝永振一郎・坂田昌一の遺した資料を活用してその学問の系譜を研究することを目標とし、その資料の利用環境整備を行った。史料データベースを充実させネットワーク上のサーバーを介して一般に公開している。このサーバで稼働するオープンソフトウェアの検討およびカスタマイズ、さらにその後継ソフトウェアの検討を行った。またこれらの資料を科学史研究に利用するのに有益な史料作成者データのデータベースを、史料カタログと連携するものとして構築することによって、史料の有効利用に資することができるようにすることを検討した。また今後へ向けての課題の検討を行った。
著者
伊藤 潤一郎
出版者
首都大学東京人文科学研究科 人文学報編集委員会
雑誌
人文学報, フランス文学 (ISSN:08368729)
巻号頁・発行日
vol.515, no.15, pp.55-69, 2019-03-23

特集=68年5月(責任編集=西山雄二)
著者
伊藤 嘉余子
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.82-95, 2010-02-28

本研究の目的は,児童養護施設入所児童を対象に行った,施設生活に関するインタビューの結果から,子どもたちが児童養護施設や職員に求めている生活の質,支援,役割について明らかにすることである.C児童養護施設(A県B市)の入所児童10人を対象に1対1の半構造化面接によってインタビューを行い,データを分析した.その結果,多くの子どもが,実家庭とは異質な施設生活に満足や喜びを感じており,物的環境の充実が子どもに与える影響の大きさが明らかになった.しかし,その一方で,施設生活の質の高さに満足すると同時に,多くの子どもが「できれば実家に帰りたい」という葛藤を持ち続けている実態も明らかとなった.また,子どもの感じる施設生活への満足度の高低には,子ども自身が施設内の人間関係をどうとらえているかが影響していることが明らかとなり,人間関係構築やコミュニケーションにおける職員の資質や力量が重要となることが分かった.さらに,多くの子どもが施設入所前/入所時の不安について語っており,アドミッション・ケアの充実の必要性が示唆された.
著者
川島 亜紀子 眞榮城 和美 菅原 ますみ 酒井 厚 伊藤 教子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.353-363, 2008-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
34
被引用文献数
5 8

本研究は, 青年期の子どもがいる家族を対象に, 両親の夫婦間葛藤が子どもによる両親間葛藤認知を媒介として子どもの抑うつ傾向と関連するかどうかを検討することを目的として実施された。父親, 母親, および子どもを対象に, 質問紙調査を実施し, 両親回答による夫婦間葛藤の深刻さ評価と子ども回答による両親間葛藤認知, 父母への情緒的つながり, および抑うつ傾向を測定した。その結果, 男女ともに両親間葛藤が深刻なほど葛藤への巻き込まれ感が強まり, さらに両親の夫婦間葛藤に対する自己非難や恐れの認知につながっていた。男子については, こうした自己非難や恐れの認知が抑うつに関連していたが, 女子についてはこうした相関は見られなかった。一方, 両親間葛藤の深刻さは両親への情緒的つながり, 特に, 父親への情緒的つながりにより強い関連が見られた。抑うつとの関連では, 同性の親との情緒的つながりが重要であることが明らかになった。母親による夫婦間葛藤認知は子どもの葛藤認知に有意に関連していたが, 父親のそれは有意ではなく, いずれも子どもの抑うつ傾向とは直接関連しなかった。
著者
伊藤 研一 清水 一雄 吉田 明 鈴木 眞一 今井 常夫 岡本 高宏 原 尚人 筒井 英光 杉谷 巌 杉野 公則 絹谷 清剛 中駄 邦博 東 達也 野口 靖志 阿部 光一郎 内山 眞幸 志賀 哲
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.310-313, 2014 (Released:2015-02-17)
参考文献数
4

本邦においても進行甲状腺癌に対する分子標的薬が承認され,放射性ヨウ素治療(RAI)抵抗性進行性分化型甲状腺癌に対する治療が新しい時代に入った。しかし,適応患者の選択に際しては,病理組織型,進行再発後の放射性ヨウ素(RAI)治療に対する反応などを適切に評価した上で判断することが重要であり,分子標的薬特有の有害事象に対する注意も必要である。分子標的薬の適正使用に際しては治療による恩恵と有害事象を十分に考慮した適応患者の選択が肝要である。また,未解決の問題に関しては,本邦での臨床試験による検討が必要と考えられる。
著者
江原 英俊 伊藤 慎一 泉 久美子
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.519-521, 2012-09

We report an unusual case of a 14-year old boy who presented with proteinuria and pyuria detected in a medical checkup at school. After denial of kidney disease, computed tomography of the pelvis showed a bladder stone with an internal low density and urethroscopy showed an odd stick at the prostatic urethra. Because of the failure of removal by the transurethral technique, he underwent suprapubic cystostomy against the foreign body stuck into the prostatic urethra. After surgery, he admitted that he had self-introduced a sewing instrument into the bladder for the purpose of masturbation one year three months previously.
著者
栗原 崇 伊藤 公紀 亀山 秀雄
出版者
一般社団法人 国際P2M学会
雑誌
国際P2M学会誌
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.61-72, 2012

世界の国々を取り巻く気候変動問題は、地球温暖化対策やカーボン市場などの環境ビジネスを牽引する西洋諸国が主導権を握る状況にある。背景にある「気候変動は人為的CO2排出が原因」という要因の単純化は、西洋メンタリティが関与していると考える。このような単純化は、非効率的かつ非効果的な対策に繋がり、社会のレジリエンスを低くする。本稿では、東洋的なリスクマネジメントを可能にするP2Mフレームワークの形成を目指して、西洋主導の気候政策にP2M手法を適用する。これにより、気候変動に対して高レジリエンスな社会の構築に資する。具体的には、方法論としてのアジア的アプローチに関する議論を通じて、西洋的及び東洋的アプローチの各利点を生かすことにより、気候変動政策に対する中庸的リスクマネジメントを従来のP2M線形モデルから導くための考察を行う。
著者
神谷 貴文 中村 佐知子 伊藤 彰 小郷 沙矢香 西島 卓也 申 基澈 村中 康秀
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

岩石や鉱物に含まれるストロンチウム(Sr)の安定同位体比(87Sr/86Sr)は、これまで主に地質学や岩石学の分野で活用されてきたが、植物は地域基盤である岩石・土壌・水の同位体組成を反映することから、農産物の産地トレーサビリティー指標としても用いられつつある。ワサビ (Wasabia japonica)の栽培地は主に河川最上流部の湧水や渓流水であり、このような立地は、大気降下物や肥料などの人為的な影響が少なく、湧水は各地の地質を直接反映した同位体組成となると考えられる。そこで本研究では、Sr安定同位体比によるワサビの産地判別の可能性を評価することを目的とした。日本の主要なワサビ産地である静岡県、岩手県、長野県、東京都、島根県から計34地点においてワサビ97サンプルおよびその栽培地である湧水・渓流水95サンプルを採取し、微量元素と87Sr/86Srを測定した。その結果、87Sr/86Srは地質の特徴によって異なる値となり、同地点のワサビと湧水の値がほぼ一致することを確認した。第四紀の新しい火山岩地域である静岡県の伊豆・富士山地域では87Sr/86Srがほとんど0.7040以下と最も低い値となり、中生代の花崗岩や堆積岩が分布する長野県や東京都では0.7095以上で高い値となった。このように、87Sr/86Srによってワサビ生産地を判別できることが明らかになった。
著者
山内 星子 伊藤 大幸
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.294-304, 2008

両親の夫婦関係が青年の結婚観に影響を与える過程として,連合学習のようなシンプルなメカニズムによって直接的に影響する「直接ルート」と,青年自身の恋愛関係を媒介して間接的に影響する「モデリングルート」とを想定し,実証的に検討した。さらに,モデリングルートのうち,親の夫婦関係から青年の恋愛関係への影響については,親の夫婦関係に対する青年の主観的評価が調整変数として機能するという仮説を立て,検証を行った。大学生213名(男性95名,女性112名,不明6名)から得られたデータに対して共分散構造分析を行った結果,親の夫婦関係に対する青年の主観的評価が高い群においては,親の夫婦関係が直接に青年の結婚観に影響を与え,また,青年自身の恋愛関係を媒介して間接的にも影響を及ぼしていた。一方,親の夫婦関係への評価が低い群では,親の夫婦関係から青年の恋愛関係への影響は見られず,親の夫婦関係と青年の恋愛関係が独立に青年の結婚観に影響を与えていた。これらの結果は,直接ルートが親の夫婦関係への青年の評価にかかわらず成立するのに対し,モデリングルートは評価が高いときにのみ成立することを示している。