著者
亀井 淳 佐々木 真理 赤坂 真奈美 千田 勝一
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.348-352, 2002-07-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
20

Epstein-Barr (EB) ウイルス脳症に起因する不思議の国のアリス症候群において, これまで頭部画像検査による特異的な異常は記載されていない.今回, EBウイルス脳症に罹患して本症候群に特徴的な身体像の奇妙な変形, 幻視, 離人症状を呈し, 頭部CTで異常がなく, MRIの T2強調像で大脳灰白質に広範かつ散在性の高信号と腫脹を認めた10歳の女児を経験した.このM RI所見は1週間後に改善した.EBウイルス脳炎・脳症で視覚性錯覚や精神症状を示した症例の中には, 本症候群が診断名としては用いられていないが, MRIの異常を一過性に認めたとする報告がある。したがって, 本症候群を形成する症状がみられた場合は, タイミングを逃さずにMRI検査を行う必要があると考えられた.
著者
佐々木 雅也
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.637-642, 2012 (Released:2012-05-10)
参考文献数
18
被引用文献数
4

経腸栄養剤の種類が多様化し、疾患や病態に応じた使い分けが可能となっている。クローン病の経腸栄養療法、あるいは短腸症候群や膵外分泌不全などの吸収不良症候群における成分栄養剤・消化態栄養剤の使用は病態別経腸栄養法として有用性が確立されており、経腸栄養法が適応となる代表的な疾患である。近年、経腸栄養剤の種類が多様化し、病院で特別食を提供するのと同じように、病態別経腸栄養剤を選択することが可能となった。しかし、医薬品の病態別経腸栄養剤は肝不全用のヘパンED®配合内用剤とアミノレバン®EN配合散の2剤に過ぎず、それ以外は全て食品扱いの経腸栄養剤である。これらは、糖尿病、腎不全、呼吸不全など種々の病態に適した組成となっている。また近年、免疫調整栄養素を強化したimmunonutritionも注目されている。しかし、なかには組成上の特徴だけで病態別経腸栄養剤に位置づけられ、十分なエビデンスがない栄養剤も少なくない。病態別経腸栄養剤の使用においては、個々の症例において確かな有用性を評価して用いるべきである。
著者
築島 隆尋 高野 政晴 佐々木 健 井上 健司
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.8, no.6, pp.699-711, 1990-12-15 (Released:2010-08-25)
参考文献数
11
被引用文献数
4 9

This paper proposes a general theory for kinematics and dynamics of wheeled mobile robots (WMRs) . This study has two features: 1) The proposed method can deal with various WMR system ranging from typical three or four-wheeled mobile robot to multi-WMR systems where multiple WMRs are connected by joints. A WMR is regarded as a planar linkage mechanism with several ends: wheels correspond to the ends. Generally, a WMR system has active joints such as steering axis, passive joints such as casters and couplers, and driven/non-driven wheels. A model of WMR system called tree structure link covering these configurations is proposed. 2) This theory deals with kinematics and dynamics of WMR including slip of wheels. WMR dynamics is derived regarding frictional force between wheels and the ground as an external force which is a function of the slip speed. When no slip is assumed in wheels, WMR's motion is expressed by kinematics. In this manner, the proposed method is applied systematically on the kinematics when slip can be neglected and the dynamics when slip exists. Furthermore, velocity input dynamics is proposed which gives the motion of WMR when the velocity commands are inputs to active joints and wheels under the condition that wheels slip.
著者
佐々木 尚之
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.152-164, 2012-10-31 (Released:2013-10-31)
参考文献数
29
被引用文献数
6 3

近年の社会経済環境のなか,少子高齢化の主な要因として晩婚化や未婚化の進行が指摘されている.しかしながら,これまでの初婚に関する研究では,一貫した結果が得られていない.その原因の一つとして,初婚の要因となる変数の時間的変化をとらえることができないという,データ上の制約があった.そこで本稿では,「日本版General Social Surveyライフコース調査(JGSS-2009LCS)」の詳細なライフヒストリー・データを用いて,学歴,就業状態,居住形態の結婚に対する影響力が時間とともに変化するのかどうかに焦点をあてたイベントヒストリー分析を行った.その結果,それぞれの要因の結婚に対する効果が加齢とともに増減することが明らかになった.雇用環境の急速な悪化にもかかわらず,結婚における男性の稼得力が重視され続けている一方で,女性の稼得役割も期待され始めている可能性がある.将来の経済的展望が不確実な現状では,家族形成は大きなリスクとみなされている.
著者
佐々木 光信
出版者
生命保険経営学会
雑誌
生命保険経営 (ISSN:02872641)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.39-59, 2004-07
著者
上瀬 由美子 佐々木 優子
出版者
立正大学心理学部
雑誌
立正大学心理学研究年報 The journal of psychology Rissho University (ISSN:21851069)
巻号頁・発行日
no.7, pp.13-23, 2016

This study examines gender roles portrayed by princess characters in Disney movies, focusing on their agency. Thebehavior of 12 princess characters in 11 Disney movies are analyzed on the basis of the following: the amount of talkingtime, the amount of aggressive behavior, the amount of helping behavior, and the amount of time spent with the prince.The results suggest that princess characters differ in their agency and association with their prince. Although princessmovies portray some stereotypical representations of gender, the female roles have changed over time in the Disney Princessline.
著者
所 雄章 香川 知晶 西村 哲一 佐々木 周 村上 勝三 山田 弘明 持田 辰郎
出版者
中央大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1990

デカルトの『省察』のラテン語原典(「Meditationes de Prima Philosophia」)のー共同作業によるー包括的な研究、それがわれわれの目的であって、過去二回(昭和58ー60年度と昭和63年度と)の実験を承け、今回は「第五省察」(昨年度)と「第六省察」(本年度)とをその対象とした。彼のこの形而上学的主著についてわれわれは、(イ)字句の釈義を踏まえたテクストの正当的な読み方の探求、(ロ)それら二つの「省察」に含まれる本来的に哲学的な諸問題の問題論的究明、という二つの作業とを軸として、即テクスト的な研究を遂行した。先ず、「テクストの読み」という点について言えば、この作業は主として研究代表者が担当したが、その際、語句の釈義と併せて、『省察』の古典的な(duc du Luynesの)仏訳本は固よりのこと、近時公刊の英訳書や仏訳書における原テクストの(言うならば、新しい)読み方をも参照し、かつまた古版本ー1642年の初版本や1642年の二版本ーと現行のAdamーTannery版とのテクスト的異同も視野のうちに置いた。次に、「哲学的な諸問題の究明」という点について言うと、「第五省察」と「第六省察」とにおいては、「神存在の存在論的証明」と「デカルトの循環」と「<物心の実在的な区別>によるデカルト的<二元論>」と「<物心分離>的アスペクトと<物心結合>的アスペクトとのデカルト的<二元性論>」とが最も重要な問題であるが、それら四つを主要な対象とする究明の作業は、担当の研究分担者がその問題に係わる今日の代表的なデカルト史家幾人かの解釈を要約したリポ-トを元にして全員で討議し、全員のいわば最大公約数的なーあるいはむしろ、最小公倍数的なー見解を集約するという、そういう仕方で推進された。以上の二点を軸とする研究成果の委細は、テクストの即テクスト的な研究というわれわれの研究の性格上、「実験報告書」の閲読に俟つ。
著者
佐々木 淑子
出版者
日本幼稚園協会
雑誌
幼児の教育
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.20-22, 1955-10-01
著者
佐々木 孝浩
出版者
慶應義塾大学附属研究所斯道文庫
雑誌
斯道文庫論集 (ISSN:05597927)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.319-349, 2011

はじめに一 書誌学文献における題簽位置の記述二 入木道伝書における題簽位置の記述三 歌書の古写本にみる外題の位置四 物語の古写本にみる外題の位置五 外題位置の違いが意味することおわりに
著者
甫水 佳奈子 脇田 建 佐々木 晃
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.85-101, 2013-08-29

本稿は,JavaScriptの構文拡張を可能にするHygienic構文マクロシステムの実装技法を提案する.Hygienic構文マクロシステムは,マクロ展開の前後で変数の束縛や参照関係を破壊しない安全な構文マクロシステムである.このHygienic構文マクロシステムを利用することによって,プログラミング言語の構文の自由な拡張が可能になる.しかし,Hygienic構文マクロシステムは,S式という一貫した構文構造を持つSchemeには標準で組み込まれているものの,その他の一般的なプログラミング言語に実装された例はほとんどない.本稿では,まず,汎用的なプログラミング言語におけるHygienic構文マクロシステムの実装の難しさを示し,次に,本研究が提案するJavaScript向けHygienic構文マクロシステムの実装技法について述べる.提案する実装技法では,マクロ構文の追加によって拡張されるJavaScript構文を解析するための拡張可能なパーザの実現に解析表現文法を用い,マクロ展開は既存のSchemeマクロ展開器に委ねる.マクロ展開においては,マクロを含むJavaScriptコードをそれと等価なS式へと変換し,Schemeマクロ展開器で展開を行った後に,JavaScriptコードに逆変換するという言語間相互変換を行う.これらの工夫によりわずか2,000行弱のコンパクトな実装によってJavaScriptに対する記述力が高いHygienic構文マクロシステムを実現できた.
著者
吉田 正章 佐々木 武 三町 勝久 松本 圭司
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

絵有方程式の又曲黒写像の離散的類似を得ることに成功した。この結果、離散正則関数及び離散曲面の特異点研究に或方向を与えた。(3,6)型超幾何微分方程式の測多価群が四型領域の離散部分群になる場合と、有限群になる場合に数論的関係があることを示した。空間内の平面配置特に6枚の場合に切り取られる図形を記述した。一般次元の舌寝超平面配置で切り取られる図形を組み合わせ的に調べた。FA型超幾何微分方程式の測多価群の生成元を求めた。
著者
佐々木 亮 木村 昭夫 萩原 章嘉 小林 憲太郎 佐藤 琢紀 伊中 愛貴 阪本 太吾
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.314-319, 2012-07-20 (Released:2020-08-19)
参考文献数
20

本邦では救急外来における破傷風に対する予防は個人・施設によって異なる. 本研究では, 1.破傷風免疫抗体迅速検査キットTetanus Quick Stick (以下TQS) ®の検査精度を調査すること, 2.破傷風予防アルゴリズムの作成における因子の抽出を目的とした. 2009年10月~2010年3月の間, 当施設に搬送された外傷症例182例を対象にTQSの判定及び, Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay法 (ELISA) による破傷風抗体価を測定し, 年齢・予防接種歴・創傷の程度を記録した. 破傷風に対する十分な防御レベルである破傷風抗体価0.1 IU/mL以上の人は, 182例中114例 (62.6%) 存在していた. TQSの検査精度は感度66.7%, 特異度97.1%, 陽性的中率97.4%であった. 破傷風トキソイドが定期予防接種となった1968年を境に分けて破傷風抗体価0.1 IU/mL以上の割合を比較すると, 1967年以前の生まれはわずか35.0%に対して, 1968年以降の生まれは90%以上も存在していた. TQSや年齢別抗体保有率の相違などは破傷風予防アルゴリズムを作成するうえでの重要な因子となると思われた.
著者
竹内 正樹 佐々木 健司
出版者
日本頭頸部癌学会
雑誌
頭頸部癌 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.293-299, 2008-10-25 (Released:2008-11-11)
参考文献数
12
被引用文献数
1

頭頸部領域の手術では,露出部である顔面に切開を加えることも多いため,術後瘢痕を目立たなくする整容的な配慮が必要となる。切開線設定は,(1)皺線(Kraissl線)に沿わせること,(2)毛髪線や外鼻,耳介,口唇など輪郭線のある部位では,その境界線に一致させることが原則である。皮膚縫合に際しては,両方の創縁から均等に真皮を引き寄せて創縁の緊張をとる真皮縫合と縫合糸痕を残さない配慮をした皮膚表面縫合を行う。切開から縫合までの過程では,常に皮膚を愛護的に扱う操作を心がける。抜糸後はテープによる減張固定と遮光を行い,変化する瘢痕の経過観察を怠らないことが重要である。
著者
安田 幹 佐々木 悠
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.57-67, 2010-07-01 (Released:2010-12-01)
参考文献数
72
被引用文献数
1 4

情報セキュリティの分野で利用されるハッシュ関数は特に「暗号学的ハッシュ関数」と呼ばれ,簡単なハッシュ関数と比べて,より多くの安全性条件をより高いレベルで満たすことが求められる.暗号学的ハッシュ関数には代表的なアルゴリズムが幾つか知られ,比較的長い間使われ続けてきたが,近年,これらに関するぜい弱性が次々と発見された.そして,安全かつ高速な暗号学的ハッシュ関数を作るのは,どうやら今まで考えられてきたほど容易ではないということが分かってきた.本稿では,暗号学的ハッシュ関数に関する今までの歴史と近年の最新動向を概観する.
著者
ネウパネ ダナパテイ 佐々木 茂文 金 辰保 石下 真人 鮫島 邦彦
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.33-39, 2003 (Released:2014-03-15)
参考文献数
24

海抜5200 m 付近の高地に棲息している純系のヤクのミルクから作ったバターの脂肪酸組成とビタミン A およびトコフェロール含量を GLC(気-液ガスクロマトグラフィー)と HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で測定し,ウシバターのそれらと比較した。ヤクバターのコレステロール含量と脂質酸化速度は,それぞれ GLC と重量測定法によって判定した。ヤクバターは,短鎖の飽和脂肪酸を多く含んでいるので強い匂いを有している。脂質中の構成脂肪酸は多い順に16:0, 18:1, 14:0, 18:0, 4:0, 8:0 であった。また,レチノール量は脂肪100 g 中に402.3 μg であった。ウシバターの γ-トコフェロール量は,ヤクバターよりも多く,脂肪100 g 中に440 μg であるが,α-トコフェロール量は,ウシバター(1.9 mg/100 g 脂肪)よりもヤクバター(2.6 mg/100 g 脂肪)の方が多かった。β と δ-トコフェロールはヤクおよびウシバター中にほとんど検出できなかった。ヤクバター中のコレステロール量(325 mg/100 g 脂肪)は,ウシのそれ(223 mg/100 g 脂肪)よりも多かった。ウシバター脂質の酸化は,ヤクのそれに対して速くしかもその度合いは高い。極性脂質含量はウシに比べてヤクバターの方が多かった。