著者
村山 淳 村山 悦子 竹中 弘行 佐々木 泰仁 寺見 彰洋
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C0102, 2008

【はじめに】人工股関節全置換術(以下THA)を施行された患者では胡座坐位での靴下着脱動作練習後に、歩容の改善をしばしば経験する。今回は、足部の知覚と動作の関係に着目し,THA患者の靴下着脱動作練習前後の片脚立位能力および歩行能力を比較し若干の知見を得たので報告する。<BR><BR>【対象】片側THA患者17名。男性2名、女性15名、平均年齢66.9±9.8歳、平均体重56.6±9.8kg、平均身長153.2±7.5cm。全荷重可能となり杖歩行自立した者で胡座坐位での靴下着脱練習が可能な者とした。<BR><BR>【方法】靴下着脱練習前後における片脚立位保持時間とTimed up and go test(以下TUG)を測定し比較した。靴下着脱練習はセラピストと一緒に胡座坐位をとり、両側足部の可動性を確認した後、靴下の中に足部が入り込んでいく感覚を感じながらの着脱を両側共おこなった。片脚立位保持時間は2m前方の壁のマークを注視しながら片脚立位を保持し30秒可能で終了とした。TUGは5__m__前方に棒を立てセラピストの合図で立ち上がり、棒を回って戻り、イスに座るまでの時間を測定した。靴下着脱練習前後の差の検定はt検定にて行った。<BR><BR>【結果】術側片脚立位平均時間は靴下着脱前平均12.7±1.0秒、着脱後平均17.3±11.7秒と練習着脱後の方が長くなり有意差を認めた(P<0.01)。非術側片脚立位平均時間は靴下着脱前平均20.1±11.9秒、着脱後22.8±10.6秒と着脱後の方が長くなったが有意差を認めなかった。TUG平均時間は靴下着脱前平均19.8±4.9秒、着脱後平均18.2±4.1秒と着脱後の方が速くなり有意差を認めた(P<0.05)。被験者の主観は練習後靴下着脱がしやすくなり、歩きやすいと答えた者が多かった。<BR><BR>【考察】今回の結果ではTHA患者に対し靴下着脱練習をセラピストと一緒におこなった後の術側片脚立位時間が有意に延長し、TUGが短縮した。胡座坐位は脱臼肢位の股関節屈曲、内転、内旋を取らないということを理解しやすいことと,支持面上で安定しており、足部に手、頭部が向かっていける姿勢のため触運動覚及び視覚での足部の知覚と足関節自体の運動が引き出しやすい姿勢と考えられる。靴下着脱は靴下から受ける触、圧感覚に対し足部が無自覚に反応して行われる。THA患者は術後疼痛が軽減し筋力、可動域が改善しても術前同様の非術側主体の姿勢、動作となり易く術側足部の反応が乏しい。靴下着脱を練習する事により術側足部の活動性を促した結果、足部で支持面を探索し知覚することができバランス反応を引き出す事が出来たと考えられる。このことにより、術側の片脚立位時間が延長し、立ち上がり、歩行し、座るという一連動作であるTUGも短縮したと考えられる。THA後の後療法としてROM改善、筋力強化、歩行練習が主体であるが、術側下肢をADLの中で自分の脚として使えるようになるという視点が大切であることが再認識された。
著者
浅生 貞夫 木下 陸肥路 佐々木 清文 植松 平八
出版者
一般社団法人 日本繊維機械学会
雑誌
繊維機械学会論文集
巻号頁・発行日
vol.18, no.9, pp.T584-T590, 1965

目的 (1) 織機の発生音を解析して騒音対策の基礎データを求める.発生音の測定法は一台の織機を室定数の既知の工場に入れ, 指示騒音計で騒音レベルの分布図を求める.つぎに指示騒音計をオクターブバンドフィルタとレベルメータに接続して周波数分析を行なう. (2) 発生音の解析にもとついてピッキング機構と起動部歯車に防音処置を施し, その結果を測定して織機の騒音対策の可能性を検討する. 成果 (1) 騒音レベルは耳の高さで最高約90ホンである.織機の近くでは騒音は対角線上で大きいが, 少し離れれば点音源とみなせる.音圧レベルの周波数特性は周波数とともに増加し, 1600~3200c/secのバンドで最高となりつぎのオクターブバンドでわずかに減少している. (2) 音響出力をオクターブバンド別に求めた結果, 最大が1600~3200c/secで11mW, 400c/sec以上のバンドでは数mW, それ以下の音は10-1mWのオーダであった. (3) ピッキング機構の調整と消音後に, 高音域で4~5dB, 歯車部のしゃ音によって, 中高音域で4~8dB減音できた.したがって織機は完全な調整としゃ音によってある程度減音できる.
著者
本望 修 佐々木 祐典 浪岡 愛 中崎 公仁 浪岡 隆洋
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

脳主幹動脈閉塞による急性期脳梗塞においては、閉塞血管の灌流領域の脳代謝および機能は低下し、脳実質や脳血管は脆弱化している。一方、近年、血栓溶解療法や脳血管内治療の急速な進歩により、閉塞血管の再開通率は80-90%に至っている。このため、脆弱化した脳実質組織や毛細血管に対して、急速に血流が再開されることよって、脳細胞障害や出血性合併症等を引き起こす再灌流障害は、極めて重要な病態となってきており、急いで対応すべき課題となっている。我々はこれまで、脳梗塞動物モデルを用いた基礎研究で、骨髄幹細胞(mesenchymal stem cell: MSC)の静脈からの全身投与が治療効果を有することを多数報告してきた。治療効果のメカニズムとして、①神経栄養因子を介した神経栄養・保護作用、②サイトカインによる抗炎症作用、③脱髄軸索の再有髄化、④損傷軸索の再生、⑤軸索のSprouting、⑥血管新生による血流増加、⑦神経系細胞への分化による脳細胞の再生、⑧免疫調節作用などが、多段階に作用することが判明している。更に近年、これらの作用メカニズムに加え、⑨血管内皮細胞やペリサイトを再生させ、血液脳関門(blood brain barrier: BBB)を修復する治療メカニズムも報告している。本研究では、一過性中大脳動脈閉塞モデル等を用いて、再灌流障害に対する骨髄幹細胞移植の治療効果を詳細に検討することを目的とする。さらに、血栓溶解療法(tPA静脈内投与)と細胞移植治療との相互作用を解析し、tPAの副作用に対する軽減効果についても検討しており、補助金は適切に使用されている。
著者
水口 幹記 洲脇 武志 喜多 藍 名和 敏光 佐々木 聡 高橋 あやの 清水 浩子 藤井 誠子 松浦 史子 田中 良明
出版者
藤女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本年度は、ベトナムと中国を中心対象地域に設定し、研究を進めていった。1、研究検討会の開催:国内において、計三回の研究検討会を開催した。特に第二回には、立教大学日本学研究所と「前近代東アジアにおける術数文化の伝播・展開―日本とベトナムを中心として―」と題した大規模検討会を共催した。ここでは、ベトナム(ハノイ国家大学)からファム・レ・フイ氏を招きご報告を頂いたほか、外部スピーカーもお招きし、広く意見交換を行い、一般聴衆へも本研究課題の意義を伝えることができた。この概要は『立教日本学研究所年報』に掲載予定である。2、『天地瑞祥志』研究会への参加・翻刻校注の刊行:毎月一度開催される『天地瑞祥志』研究会に参加し、本資料の輪読・校注作業が進展した。本年度は、本書第十六・第十七の翻刻校注が刊行でき、研究作業が大いに進展した。3、国内外調査:複数の研究班メンバーが共同でベトナム調査を敢行した。多くの漢籍を所蔵するハノイの漢喃研究院を中心に文献調査、史跡調査を行った。調査先は、漢喃研究院のほか、国会議事堂地下展示室・タンロン王城遺跡・ベトナム国立歴史博物館・文廟(以上ハノイ)・バクニン省博物館・陶おう廟碑・延応寺(以上バクニン省)などであった。特に、漢喃研究院の院長や研究員と懇談し、今後の協力を取り付けたこと、また、国宝に指定されている隋代の仁寿舎利塔銘を実見・調査できたことは、今後のベトナムの歴史と術数との関連を考える上で大きな収穫であった。また、現地の道教研究者とも意見交換を行うことができ、今後の研究の足がかりを得ることができた。その他、各研究班により、各地の資料館・図書館・文庫での調査が行われた。4、関連論文の翻訳:ベトナム語の論文としては、グエン・コン・ヴィエット「漢喃暦法の文献における二十八宿に関する概要」を日本語に翻訳することができ、研究班メンバー全員での共通認識形成に役立った。
著者
佐々木 香織
出版者
筑波大学哲学・思想学会
雑誌
哲学・思想論叢 (ISSN:02873702)
巻号頁・発行日
no.20, pp.37-47, 2002-01-31

「軍隊の能姿。仮令、源平の名将の人体の本説ならば、ことに[?]平家の物語のまゝに書べし。」これは世阿弥と『平家物語』との関わりを論じる際には、必ずといっていいほど引用される世阿弥の言葉である。しかし、この「まゝ」が何を指しているかについては、内容や詞章をそのままに書くという ...
著者
坂輪 宣敬 伊藤 瑞叡 三友 健容 久留宮 圓秀 佐々木 孝憲
出版者
立正大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

敦煌莫高窟の壁画、出土文書は、発見以来多くの学問領域から注目され研究が為されてきたが、なお未解決の問題も多く残っている。本研究は対象を法華経にしぼり、壁画、彫刻、出土古写本類を素材に法華経鑚仰の様子の一端を解明した。美術の分野では法華経変を考察対象とし、その規模別分類を試み、大規模な経変画が時代を経て形式面、内容面ともに変化が生じたことを明し、更に描かれる品に注目して、その出現頻度を図示した。描かれる頻度によって製作年代における鑚仰の様相が推定されるが、見宝塔品、普門品の両品は特に盛んに造られた。これらの品に就ては単独に描かれる例も多く、前者は盛唐期に多く、西壁に描かれる例が大部分であった。後者はそれ程の傾向は窺知できなかったが、宋代まで、盛んに製作された。古写本ではスタイン本・ペリオ本を総合的に研究し、調巻・奥書に就て考察した。調巻では現行の七巻本、八巻本の他に十巻本という敦煌独自の遺例があり、その製作にあたり、竺法護訳「正法華経」の影響が看取された。また奥書の検討によって、近親者等の供養のために写経を行った例が極めて多いこと、長安で大規模な書写が行われ、それが多数敦煌に送られていたことなどを指摘した。北京本に就ては、未だ殆ど研究されていなかったが、「妙法蓮華経」を抽出し、写本点数が諸経典中第一であることを明し、また遺例の品数、長さ等を調査し、七巻本、八巻本、十巻本混在の様相を発見した。最後に、派生的テ-マである敦煌菩薩竺法護の訳経に就ての考察を試み、訳経の年代、訳経地、没年等の未解決の諸問題にスポットをあてた。特に訳経地に就ては、筆受などの訳経補助者の名を手掛りに「須真天子経」「正法華経」等が長安訳出であることを示した。また竺法護の訳経の特徴として校勘の不十分さなどに論及し、その原因として戦乱の時代であったこと、国家の保護がなかったことなどを指摘した。
著者
駒形 依子 小川 正樹 橋本 誠司 櫻井 理乃 菊浦 沙織 寺田 美里 土山 史佳 佐々木 かりん 金野 潤 三谷 穣 牧野 康男 松田 義雄 松井 英雄
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.344, 2012-10-25

第8回東京女子医科大学メンタルヘルス研究会 平成24年7月18日(水)18:15~20:00 東京女子医科大学 総合外来センター5F大会議室
著者
佐々木 栄英 北川 均 藤岡 透 鬼頭 克也 岩崎 利郎 坂口 雅弘 井上 栄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.683-685, 1995-08-15
参考文献数
15
被引用文献数
8

慢性皮膚疾患に感染した51頭の犬に対して, 34種の抗原を用いて, 皮内反応テストを実施した結果, 4例がスギ花粉抗原に陽性反応を示した. この4例は, Prausnitz-Kustnerテストが陽性で, スギ花粉に対する特異IgE抗体を持っていることが示された. さらに, スギ花粉の素抗原を鼻腔内に滴下し, 臨床観察を行ったところ3例中2例で鼻汁の漏出を認めた. 以上の結果から, これらの大はスギ花粉に対する過敏性と診断され, スギ花粉は犬のアトピー性疾患の原因の一つであることが明らかにされた.
著者
三浦 篤史 青木 芙美 桃井 宏樹 柳沢 国道 大井 敬子 大橋 正明 竹内 玲子 小林 由美子 佐々木 由美 大倉 輝明 跡部 治
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.719-725, 2009-01-30 (Released:2009-04-08)
参考文献数
6

佐久総合病院では,筋弛緩薬,カリウム製剤などはハイリスク薬として扱われているが,インスリンは事故防止のために標準化された対策がなされていない。今回我々は,多職種に渡ったチームを構成し医療改善運動を行なった。チームでは薬剤師が中心となり,Quality Control (QC) 手法を利用してインスリン投与の過誤を防止するための対策に取り組んだ。その結果,インスリン取り扱いに関するヒヤリ・ハットは減少した。薬剤に関したヒヤリ・ハット事例は多く,薬剤師のリスクマネジメントに果たす役割は大きいと考えられる。今後,薬剤師は積極的にリスクマネジメントに関わり,医薬品が関与する医療事故を未然に防止することが望まれる。そのことからも,QC手法を活用し,医療改善運動に取り組むことは効果的な活動と考えられた。
著者
木村 聡元 大塚 幸喜 八重樫 瑞典 箱崎 将規 松尾 鉄平 藤井 仁志 佐藤 慧 高清水 清治 畑中 智貴 佐々木 章
出版者
医学書院
雑誌
臨床外科 (ISSN:03869857)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.952-957, 2017-08-20

【ポイント】◆現在漢方薬は,西洋医学的解析が進み,少しずつエビデンスが蓄積され,使用しやすくなってきた.◆大腸癌における漢方薬は,おもに周術期の合併症予防と抗癌剤治療の有害事象対策に用いられることが多い.◆漢方薬は,その特性を理解し利用することで,今後も癌治療における重要な役割を担っていくものと考えている.
著者
佐々木 美和 Sasaki Miwa ササキ ミワ
出版者
「宗教と社会貢献」研究会
雑誌
宗教と社会貢献 (ISSN:21856869)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.129-162, 2018-04

論文本稿は大阪の複数のプロテスタント教会において行った防災活動のアクションリサーチを事例として扱い、日本におけるプロテスタント福音派の社会貢献活動を考察したものである。分析・考察では稲場圭信[2009]の社会貢献活動の構成要素と、高瀬顕功[2015]の社会貢献活動の独立性の指標、また村田充八[2017]のプロテスタントのエートスの概念を援用した。結論として、社会貢献活動の促進と停滞に影響を及ぼしているのは(1)独立性の高さと、(2)現場のキリスト者の持つエートスとしての「召命」意識と新たな「宣教」観である、と考えられた。The purpose of this study is to identify what kinds of circumstance or motivation influence the progression or stagnation of social contributions by religious people. To determine this, the study examines the case of disaster risk reduction (DRR) activities as a social contribution activity done specifically by evangelical Christians in Japan. The action-research was conducted at protestant churches in Osaka. To analyze the data, the study utilized the perspective of "independence"(Takase2015) and "social contribution activity elements" (Inaba2009), along with the concept of Protestants'"ethos"(Murata2017). The DDR was shown to have resources largely independent from the church itself. Having the ethos of a "calling" can influence the progress of social contribution activities by evangelical Christians.