著者
佐々木 毅
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.88, no.12, pp.2499-2506, 1999-12-10
参考文献数
30
被引用文献数
1

ヒトパルボウイルスB19 (B19)は,小児の伝染性紅斑(りんご病),成人での急性多発性関節炎,あるいは胎児水腫等を起こす.また,赤芽球障害(Aplastic crisis,赤芽球勞).更には肝障害,急性腎炎,血球貪食症候群発現にも関与しうる.我々は,慢性関節リウマチ(RA)の活動時病変を有する関節滑膜組織において, B19が活性化され,かつB19がTNFα, IL-6らの炎症性サイトカイン産生を惹起することを見出した. B19はRA関節滑膜細胞(SVC)の中でもマクロファージ,芽中心の樹状細胞, T, Bリンパ球に発現し,オートクライン,パラクライン機転で炎症細胞, SVCの活性化と増殖を促すと推定される.この事は自己免疫病(慢性関節リウマチ)発症における免疫系細胞をターゲットとしたB19持続感染の役割を示すものであろう.
著者
佐々木 玲子 石沢 順子
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.208_2-208_2, 2016

<p> 子どもの体力・運動能力の低下や身体活動量の減少が問題とされている中で、幼児期から適切な運動の量と質を確保することの重要性が指摘されている。日常的に身体活動量の多い子どもは運動能力も高いという傾向がこれまでの研究で示されてきたがその多くは横断的なデータによるものである。そこで本研究では、幼児を対象にしたこれらの関係を縦断的な視点から検討することを目的とした。対象は、東京都内の公立幼稚園に通う男女45名であり、年少クラス在籍時および1年後同時期の年長クラス在籍時に同一の測定を行った。運動能力は25m走、立幅跳、ソフトボール投げ、体支持持続時間、連続両足跳越しの5種目を、身体活動量は3軸加速度計式活動量計を用いた8日間の連続測定により1日あたりの歩数と中高強度活動時間を指標とした。それらから運動能力や身体活動量の経年変化および各項目の関係性について検討した。全般に運動能力は各種目とも1年間で統計的に有意な向上を示した。身体活動量は、平日における中高強度活動時間のみ有意に増加した。運動能力、身体活動量、ならびに各項目間の関係性は、年少から年長かけてより明確にみられる傾向であった。</p>
著者
佐々木 邦博 米林 由美子 平岡 直樹
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.419-422, 2001-03-30
参考文献数
7
被引用文献数
3 2

長野市松代町は城下町であり,水道網が発達していた。武家屋敷において庭園の水を隣家から隣家へと流す泉水路が存在し,現在でも一部ながら残されている。江戸時代における泉水路の形成過程,その範囲,その用途を明らかにするのが本研究の目的である。対象地は上級武家屋敷地であった殿町とした。真田家文書などの水道絵図から分析すると,次の結論が得られた。中水道が江戸時代中期頃に形成され始め,後期には泉水路として水系を形成する。殿町にはほとんどの家に泉水路が流れ,主に生活用水として,後期には部分的には養魚池の給水源としても用いられていた。その範囲はおそらく松代城下町全体に及んだのではないかと推測される。
著者
佐々木 拓生 高橋 正光
出版者
日本結晶成長学会
雑誌
日本結晶成長学会誌 (ISSN:03856275)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.210-217, 2015 (Released:2017-05-31)

Dislocation-mediated strain relaxation during lattice-mismatched InGaAs/GaAs(001) heteroepitaxy was studied through in situ x-ray reciprocal space mapping (in situ RSM). At the synchrotron facility SPring-8, a hybrid system of molecular beam epitaxy and x-ray diffractometry with a two-dimensional detector enabled us to perform in situ RSM at highspeed and high-resolution. Using this experimental setup, the strain relaxation processes were classified into four thickness ranges with different dislocation behavior. In order to discuss this observation quantitatively, a strain relaxation model was proposed based on the Dodson-Tsao's kinetic model, and its validity was demonstrated by good agreement with the experimental residual strain. In addition to the single InGaAs layer, strain relaxation processes in multi-layer structures are discussed.
著者
遠藤 秀紀 佐々木 基樹
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.45-53, 2001
参考文献数
15
被引用文献数
3 1

哺乳類の科以上の高次分類群に関して,その和名を検討し,リストとして表現した。目レベルでは原義を尊重しながら実際の定着度を考慮して和名を提示し,科レベルでは代表的属名のラテン語綴りを片仮名表記する方針をとった。分類体系の議論は加えていないが,従来の食虫目において,第三紀初期の化石諸群および現生するクリソクロリス類などが目として独立したため,トガリネズミ類,モグラ類,テンレック類などを無盲腸目と呼称する必要が生じていることが特筆される。また,有袋類を複数の目に分割する必要性が生じ,新たな和名を提案することとなった。近年,行政や出版界から,学校教育・社会教育の現場に影響する形で,学術的検討成果を顧みない安易な目名の変更が提案された経緯があり,本結果が哺乳類の高次分類群の和名について,学界のみならず社会的にも有意義な示唆となることを期待する。
著者
大江 靖雄 佐々木 東一 金岡 正樹
出版者
北海道農業経済学会
雑誌
北海道農業経済研究 (ISSN:09189742)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.68-80, 1993-10-01

This study provides an economic analysis about risk aversion behavior, focusing on farmers' selection of varieties of wheat in upland farming areas in Tokachi, Hokkaido and clarified managerial factors that are considered to determine the aversion behavior. The main points mentioned in this paper are as follows; 1. The wheat acreage increased three times in recent two decades in Hokkaido. In every time, changes in variety are one of the major contributed factors. 2. Takune, a variety of wheat preferred by farmers in Tokachi, is preferred as a crop which enables farmers to take risk aversion behavior so that the higher the risk, the larger the ratio of Takune. Thus we can regard Takune as a crop which shows the degree of risk aversion. 3. In a logit regression analysis applied for Takune selection, the results show that it is correlated positively with farm size and negatively with age of the farmer. That means the larger the farm size and the younger the age, the more farms select Takune. Labor and productivity also have a positive correlation with Takune selection although farms without a successor and variance of yield of kidney beans show a negative sign. The results show that in general farmers who have better managerial condition tend to be risk averse. Consequently, it is reasonable to say that further increases in farm size would raise necessity of the risk spreading function in the upland farming management. This role of risk spreading function played by Takune would be one of the important managerial conditions for stable evolution of farm management in the future.
著者
葛原 茂樹 小久保 康昌 佐々木 良元 桑野 良三 伊藤 伸朗 冨山 弘幸 服部 信孝 辻 省次 原 賢寿 村山 繁雄 齊藤 裕子 長谷川 成人 岩坪 威 森本 悟 赤塚 尚美
出版者
国立精神・神経センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

紀伊半島の一部集落に多発する神経風土病の筋萎縮性側索硬化症・パーキンソン認知症複合(ALS/PDC)類似疾患で知られているほぼ全ての原因遺伝子を調べ、異常変異は認められなかった。病態と発症に関して、脳のアルツハイマー神経原線維変化の分布様式はALSとPDCでほぼ同じであった。脳と脊髄にはTDP-43の蓄積が認められ、生化学的にはタウ/TDP-43異常蓄積症と考えられた。尿中の酸化ストレスマーカーが有意に上昇しており、神経変性に参加ストレスの関与が推定された。タウとTDP-43の蓄積を起こして神経変性が進行する仕組みと、遺伝子の関与の解明が今後の課題である。
著者
佐々木 崇
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、胆汁酸が骨格筋機能に及ぼす影響を分子レベルで解析した。その結果、骨格筋に発現する胆汁酸受容体TGR5は骨格筋の肥大化や筋細胞分化を亢進することを明らかにした。TGR5を欠損するマウスにおいては、骨格筋の萎縮が確認された。したがって、骨格筋TGR5は加齢に伴う筋萎縮(サルコペニア)等の予防に向けた有力なターゲットになると考えられる。我々はすでにTGR5活性化能を持つ食品成分として、柑橘成分であるノミリンやオバクノンなど複数見出しており、TGR5との結合様式の解明に成功している。こういった機能性食品成分を活用することで、活力のある高齢社会の実現が期待される。
著者
渋倉 崇行 西田 保 佐々木 万丈 北村 勝朗 磯貝 浩久
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.563-581, 2018-12-10 (Released:2018-12-20)
参考文献数
47
被引用文献数
1

This study examined the psychosocial skills of high school extracurricular sports activities and their generalization to student daily life. In a preliminary study, we collected a wide range of psychosocial skills related to extracurricular sports activities experienced by members of high school sports clubs, and then selected questionnaire items that would be used in the present study. In Survey 1, a confirmatory factor analysis was conducted using data collected from 376 members of high school extracurricular sports clubs (265 males, 111 females) to develop two scales, one measuring psychosocial skills in extracurricular sports activities, and the other psychosocial skills in daily life. The validity and reliability of these two 9-subscale tools, both of which comprised the same items, were thus confirmed. In Survey 2, the two scales developed in Survey 1 were used to conduct three surveys of the same subjects over an interval of about 3 months, in order to determine the causal relationships between the psychosocial skills used in extracurricular activities and those used in daily life. A cross-lagged effect model was used. The study subjects were 137 high school students who were members of extracurricular sports clubs (73 males, 64 females). The results showed that the psychosocial skills needed for extracurricular sports activities could be generalized to student daily life. Generalization in the reverse direction, i.e. from skills used in everyday life to those used in extracurricular sports activities, was also evident. Furthermore, the results suggested that psychosocial skills used in extracurricular sports activities had a cyclical causal relationship with the skills used in everyday life. Finally, the significance of extracurricular sports activities and methods for actualizing this significance was discussed based on the study results.
著者
原 大周 小塩 平次郎 佐々木 淳 矢野 貴久 弓取 修二
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
年次大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1100-1103, 2006
参考文献数
3

過去の教訓に学びつつ、プロジェクト担当者がマネジメント上の分岐点で判断する際に参照できる情報を蓄積し、まとめることは極めて重要である。筆者らは、プロジェクトの中間・事後評価又は追跡調査・評価等から得られる情報を活用し、「NEDO研究開発マネジメントガイドライン(以後、「ガイドライン」という。)を作成した。このガイドラインは、プロジェクトの進捗段階に応じて立ち上げ段階から終了段階まで6つのフェーズに分類し、レビューポイントを明確化した。具体的には、「(1)先導調査の提案」として、先導調査の着手の判断を行うフェーズ、「(2)先導調査の実施・予算要求」として、プロジェクト予算要求の是非の判断を行うフェーズ、「(3)プロジェクト基本計画の策定」として、プロジェクトの骨格となる基本計画を策定するフェーズ、「(4)プロジェクトフォーメーションの決定」として、プロジェクトの実施体制・スケジュール等の詳細決定を行うフェーズ、「(5)実施段階」として、日々のマネジメントと各種評価の反映を行うフェーズ、「(6)終了段階」として、終了間近な時点におけるフォローアップを行うフェーズ、を設定した。全6つのフェーズのうち4つを立ち上げ段階が占めるのは、これらが特にプロジェクトの成功・失敗に大きな影響を及ぼすと考えられるためである。本稿ではこの立ち上げ段階にターゲットを絞り、ガイドラインで示した着目すべき指標とNEDOのマネジメントのあり方について検証した。
著者
山本 和司 佐々木 晶子 中坪 孝之
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.257-262, 2012-11-30

ランタナ(シチヘンゲ)Lantana camara L.は南アメリカ原産のクマツヅラ科の低木で、観賞用に栽培されているが、逸出・野生化した個体による悪影響が世界各地で顕在化しており、IUCN(国際自然保護連合)の「世界の侵略的外来種ワースト100」に選定されている。日本では、要注意外来生物に選定され、沖縄や小笠原をはじめとする島嶼部、本州の一部地域での野生化が報告されているが、地域レベルでの分布の広がりに関する詳細な報告はない。本研究では、瀬戸内海沿岸域におけるランタナの野生化の実態を明らかにするとともに、分布の制限要因の一つと考えられる冬期の気温との関係を検討した。広島県の沿岸域と島嶼部を調査地域とし、GISで1km四方ごとに4000のメッシュに区切った。このうち、森林などランタナが植栽されていないと考えられるメッシュを除外して、約500のメッシュを抽出した。これらのメッシュごとに2010年5月から同年12月にかけて目視による調査を行った結果、100メッシュ、186ヶ所でランタナの生育を確認できた。このうちの47ヶ所は周囲の状況から逸出・野生化したものと判断された。従来の研究では、気温が頻繁に5℃を下回るところではランタナの生育は困難であるとされていたが、2011年1月は調査地域が大寒波に襲われ、ランタナが生育していたすべての地点で平均気温が5℃を大きく下回まわった。しかし、同年の7月から11月にかけて再調査したところ、ほとんどの個体の生存が確認され、ランタナの潜在的な生育可能温度域が従来の報告より広いことが示唆された。

1 0 0 0 「付立」考

著者
佐々木 丞平
出版者
京都大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:03897508)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.3-34, 1995-03-31
著者
佐々木 正己
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.35-40, 1975-03-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
13
被引用文献数
3 3

12時間明,12時間暗の光周期,恒温条件下で,ウリキンウワバの諸行動にみられる日周期性の有無位相と強度を調べた。その結果,孵化と幼虫の摂食行動には周期性が認められず,4令から最終令への脱皮には弱い,蛹化と羽化には比較的強い日周期性が観察された。蛹化と羽化の位相は逆の関係にあり,蛹化が暗期の終り付近に,羽化は明期の終りにそのピークを示した。成虫は顕著な3山型の夜間活動性を示した。雌雄共通の飛翔ピークが1日に2回,消灯後と点灯時にみられた。残るピークは消灯約7時間後に始まり,雌では3時間にわたって継続的に性フェロモンを放出,雄ではこれに同調して,しかし雌の性フェロモンの存在とは無関係に,1∼1.5時間の激しい飛翔ピークを示した。これらのリズムの生成は遺伝的に組み込まれたものである可能性が強い。