著者
市村 美香 松村 裕子 佐々木 新介 村上 尚己 森 將晏
出版者
岡山県立大学
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.55-63, 2011

本研究では、前腕で静脈穿刺をする際に、静脈怒張を得るために実際に臨床で行われている方法を明らかにする目的で、質問紙を作成して実態調査を行った。回収率は70.5%であり、このうち309名の回答(有効回答率99.4%)を分析対象とした。静脈怒張を得るために最もよく行う方法として、割合が高い順にマッサージ(20.7%)、温める(20.1%)、クレンチング(18.4%)、叩く(15.9%)、手をしっかり握らせる(13.3%)の5つの方法に1割以上の支持が集まり、マッサージ、温める、叩く方法は、標準採血法ガイドラインが推奨する方法と一致していた。この他には、駆血帯をきつく締め直す方法(4.5%)と腕を下してから駆血する方法(3.6%)を提示したが、支持する人は少数であった。一方、これらの方法を行ったことがある人が感じる主観的効果が最も高かったのは、もっともよく行われるマッサージではなく、温める方法であった。このことから、多忙な臨床現場においては、すぐに実施できる方法を優先する傾向があり、それを試してみてから、手間や時間はかかるが効果のある方法を行っているのではないかと考えられる。また、それぞれの方法における手技は、回答者により様々であることが分かり、今後は、静脈怒張の効果を検証した上で、簡便で確実な手技を示すことが必要と考えられた。
著者
新納 浩幸 佐々木 稔
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.1011-1035, 2014-09-16 (Released:2014-12-16)
参考文献数
28
被引用文献数
1

本論文では語義曖昧性解消(Word Sense Disambiguation,WSD)の教師なし領域適応の問題に対して,共変量シフト下の学習を試みる.共変量シフト下の学習では確率密度比 w(x) = PT(x)/PS(x) を重みとした重み付き学習を行うが,WSD の場合,推定される確率密度比の値が小さくなる傾向がある.ここでは PT(x) と PS(x) をそれぞれ求めて,その比を取ることで w(x) を推定するが,PS(x) を求める際に,ターゲット領域のコーパスとソース領域のコーパスを合わせたコーパスを,新たにソース領域のコーパス S と見なすことで,先の問題に対処する.BCCWJ の 3 つの領域 OC (Yahoo! 知恵袋),PB(書籍)及び PN(新聞)を選び,SemEval-2 の日本語 WSD タスクのデータを利用して,多義語 16 種類を対象に,WSD の領域適応の実験を行った.w(x) を推定する手法として,PT(x) と PS(x) を求めずに,w(x) を直接推定する uLSIF も試みた.また確率密度比を上方修正するために「p 乗する」「相対確率密度比を取る」という手法も組み合わせて試みた.それらの実験の結果,提案手法の有効性が示された.
著者
佐々木 哲也 下澤 嶽 ササキ テツヤ シモサワ タカシ
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.17, pp.205-218, 2017-03-31

本学では、2015年12月3日に静岡文化芸術大学生活協同組合(以下、本学生協)を設立した。生協設立の運動そのものは、学内の福利厚生の拡充を求める教職員と学生により行われたものであるが、本学も、福利厚生の充実、食堂・店舗の運営の安定化及び大学活動の活性化を目的として、生協設立に積極的に関与した。本稿では、生協設立の過程、開業初年度の状況及び生協設立により得られた成果を報告する。さらに、一連の取り組みから得られた知見として、大学が抱える諸課題の解決において生協設立が有効な手立てとなり得ること、また、生協設立においては、教職員・学生の自治意識と大学の当事者意識が重要であることを提示した。
著者
佐々木 衞
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.280-300, 1988

中国の民間宗教が多様な姿を持つことに, 研究者は多くの関心を払ってきた。本稿ではフリードマン等が提示した中国社会の統一性と多様性に関する命題から, その全体的な姿を理解する手掛を示した。中国の民間宗教には宗族の祖先祭祀や廟の祭祀の他に, 歴代の朝延から弾圧され続けた民間宗教集団のものがある。宗教集団を構成する絆は師弟が結ぶ個人的な関係より他はなく, 宗教集団は師弟の絆を越えた実在を持つことができなかった。この構造においては, 伝統的な宗教権威は継承され難く, 集団の統一は頭目のカリスマ的実力に頼らざるを得ない。中国の民間宗教集団の活動には, 「伝統型」「分派型」「自唱型」の3つの位相がある。教義・組織・活動の範例として大きな影響力を持ったのは, 「伝統型」の位相の集団である。しかしこの位相の集団も教首の法燈を守るのは容易でなく, 幾代もつづいて継承されたのはごく少数であった。その存在は神格化されて広く一般民衆の中に流布した。教派の具体的な姿は, 幾多の「分派型」がくり返し出現する中に新しく更新されていった。中国の民間宗教を全体的に理解するには, 宗族と村廟の祭祀に加えて, こうした宗教集団の活動をも重ね合わせて透視することが必要であろう。中国社会の構造原理を解明する上でも, 欠かすことのできない問題である。
著者
佐々木 隆仁 垣渕 洋一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.120, pp.17-23, 1999-06-17
参考文献数
7

「Truster」は、リアルタイムで信頼度の高い心理分析結果を表示する意思決定支援システムです。専門家が行うような高度な感情分析を容易に行う独特なアルゴリズムをべースに強カな音声心理分析を特徴としています。この「Truster」の音声心理分析アルゴリズムと実証データを検証します。
著者
佐々木 由比 南 豪
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.519-529, 2018-09-05 (Released:2018-10-04)
参考文献数
42
被引用文献数
1

ケモセンサはミクロな分子認識現象を,光学変化を使って読み出すことができる分子サイズのセンサであるが,天然由来の分子認識材料のような高選択性の実現は容易でない.ケモセンサアレイは,これまで欠点とされた人工レセプタの交差応答性を活用したセンシングシステムであり,パターン認識に基づいて多成分の同時検出が可能である.迅速かつ正確な検出を行える当該システムは有用であるが,その構築には,標的種に合わせて数多くのケモセンサを,有機合成化学的アプローチに基づいて作製していかなければならない.著者らは,合成的労力を軽減しながら,少ないケモセンサ数で多くの標的種の分析が行える手法の開発に取り組んでいる.すなわち,ケモセンサの分子内/分子間会合を巧みに制御し,程よい選択性と交差応答性を生み出すことで,たとえ体液や夾(きょう)雑物中に含まれる標的種の検出であったとしても使用可能なケモセンサアレイを提案している.簡易に作製されるケモセンサアレイは,多くの場面で有用な分析ツールとなり,超分子センサの実践応用に向けた第一歩となるであろう.
著者
鹿野 弘 大沼 康 佐々木 丈夫
出版者
宮城県農業・園芸総合研究所
巻号頁・発行日
no.69, pp.50-57, 2002 (Released:2011-03-05)

組織培養によるイチゴの大量増殖苗を、果実生産用の栽培株として利用する場合、及び子苗増殖用の親株として利用する場合の実用性について検討した。 栽培株として利用する場合、微小な大量増殖苗を定植期までさらに育苗する必要があり、8月上旬に夜冷短日処理を行う作型において、ポット育苗では夜冷短日処理前45日程度、セル成型苗では、夜冷短日処理前30日~40日の育苗日数が適当であった。慣行ランナー苗によるポット育苗との収量比較では、大量増殖苗のポット育苗は同等~やや多収であった。大量増殖苗を親株として利用する場合は、茎頂培養後に3代ランナー増殖された慣行ウィルスフリー株と比較して、ランナー及び子苗の発生数は優れた。また、慣行ウィルスフリー苗由来に比較し、大量増殖苗に由来する子苗の果実収量は高く、着花数が多く、1果重はやや低下する傾向にあった。果実品質の差は認められなかった。
著者
佐々木 均 早川 博文
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.383-384, 1986
被引用文献数
2 2

キボシアブ属の稀有種であるマルヒゲアブ(Hybomitra hirticeps)雌成虫1頭を, 北海道当別町青山にある当別町有牧野において, 炭酸ガス誘引の蚊帳トラップにより, 1985年6月に採集した。これは, 本種の北海道における新記録である。これまでの採集地を総括して, 本種の地理的分布を図示した。
著者
成瀬 貫 藤田 喜久 佐々木 哲朗 山田 鉄也
出版者
首都大学東京小笠原研究委員会
雑誌
小笠原研究年報 (ISSN:03879844)
巻号頁・発行日
no.38, pp.87-90, 2014

小笠原諸島父島の二見湾湾口部に位置する口之瀬沖水深46mより、エクレアナマコ1個体が発見されたので報告する。これは本種の小笠原諸島初記録であり、また北半球においては沖縄島に次ぐ記録である。
著者
鹿角 孝男 薩摩林 光 佐々木 一敏 鹿野 正明 太田 宗康 畠山 史郎 村野 健太郎
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.282-291, 1996 (Released:2011-11-08)
参考文献数
34
被引用文献数
6

山岳地域における環境大気中の浮遊粒子状物質 (SPM) と大気降下物の特徴を把握するため, 唐松岳入方尾根および長野市においてSPMを1ヵ月毎に採取し, 化学成分濃度を測定し, 各種発生源寄与率の推定を行った。また, 大気降下物を1ヵ月毎に測定し, 酸性物質降下量を調査して, 渓流水への影響について検討した。八方尾根におけるSPM中のSO42-濃度は春季~ 夏季に高くなる変化を示した。春季 (3~4月) には黄砂の影響が見られ, 黄砂粒子の濃度は約4μg/m3と推定された。調査地点近傍の土壌粒子の寄与は少なかった。大気降下物のpHは平均5.1であり, 長野市 (平均5.3) よりもわずかに低く, 春季に高くなる傾向があった。nss-SO42-の降下量は長野市の約2倍あり, またNO3-の降下量も多く, 清浄地域と考えられる山岳地域にも多量の酸性物質の降下が認められた。八方尾根付近の渓流である平川の水質は, pH7.6, アルカリ度0.48meq/lと十分な中和能があったが, 梅雨期には希釈効果により一時的にアルカリ度の低下が認められた。NO3-濃度は融雪期 (3~4月) に上昇したが, pHの低下は見られなかった。
著者
鹿角 孝男 薩摩林 光 佐々木 一敏 鹿野 正明 太田 宗康 畠山 史郎 村野 健太郎
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.282-291, 1996

山岳地域における環境大気中の浮遊粒子状物質 (SPM) と大気降下物の特徴を把握するため, 唐松岳入方尾根および長野市においてSPMを1ヵ月毎に採取し, 化学成分濃度を測定し, 各種発生源寄与率の推定を行った。また, 大気降下物を1ヵ月毎に測定し, 酸性物質降下量を調査して, 渓流水への影響について検討した。<BR>八方尾根におけるSPM中のSO<SUB>4</SUB><SUP>2-</SUP>濃度は春季~ 夏季に高くなる変化を示した。春季 (3~4月) には黄砂の影響が見られ, 黄砂粒子の濃度は約4μg/m3と推定された。調査地点近傍の土壌粒子の寄与は少なかった。大気降下物のpHは平均5.1であり, 長野市 (平均5.3) よりもわずかに低く, 春季に高くなる傾向があった。nss-SO<SUB>4</SUB><SUP>2-</SUP>の降下量は長野市の約2倍あり, またNO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>の降下量も多く, 清浄地域と考えられる山岳地域にも多量の酸性物質の降下が認められた。<BR>八方尾根付近の渓流である平川の水質は, pH7.6, アルカリ度0.48meq/<I>l</I>と十分な中和能があったが, 梅雨期には希釈効果により一時的にアルカリ度の低下が認められた。NO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>濃度は融雪期 (3~4月) に上昇したが, pHの低下は見られなかった。