著者
橋本 礼児 服部 数幸 佐藤 幸男
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.10, pp.2193-2201, 1993-10-15
被引用文献数
5

本諭文は距離画像を多数の視方向から観測できる条件のもとで適当な視方向を能動的に選択して多面体を認識するアルゴリズムについて述ぺている。モデルは3次元的な面関係グラフによって記述される。距離画像は観測視方向が変化しても対象物の絶対的な位置や大きさを計測できることから、入力対象を同様に面関係グラフとして記述し、モデルのグラフとの間で部分グラフマッチングを図って認識を行っている。その結果、認識対象モデルが一意に決定できない場合は候補モデル間で特徴の差を呈する方向を検索し、そこに視点を移動して再び認識を試みている。論文では多面体認識のためのモデルの記述方法およびマッチング手法について述べ、さらに視方向選択のための姿勢変換法と視方向決定アルゴリズムについて述べている。これbの方法は計算機シミュレーションによる実験によって動作が確認された。
著者
佐藤 幸紀 尾崎 泰助
出版者
北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科
雑誌
Technical memorandum (School of Information Science, Japan Advanced Institute of Science and Technology) (ISSN:09187561)
巻号頁・発行日
vol.IS-TM-2013-001, pp.1-58, 2013-07-25

2012年度に北陸先端科学技術大学院大学において学内で共同利用されている計算サーバや並列計算機を用いて行われた研究の概要および発表論文リストを紹介する.
著者
塚田 亨 徳永 千穂 酒井 光昭 南 優子 佐藤 幸夫 榊原 謙
出版者
特定非営利活動法人 日本血管外科学会
雑誌
日本血管外科学会雑誌 (ISSN:09186778)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.743-747, 2014 (Released:2014-04-29)
参考文献数
7

要旨:肺動脈原発腫瘍は極めて稀な疾患であり,未治療の場合は予後1.5 カ月ともいわれる悪性の疾患である.症例は62 歳女性.咳嗽と血痰を主訴に受診.造影CT で肺動脈肉腫と診断,左右肺動脈はほぼ腫瘤に占拠され突然死の可能性が高いと判断し手術適応とした.麻酔導入後に心停止となり,緊急開胸し人工心肺を開始,主肺動脈から右肺動脈に嵌頓した腫瘍を摘出,肺動脈は馬心膜で再建した.左肺気管支の断端の確保も可能であり人工心肺離脱後に左肺全摘を施行し腫瘍を完全に摘出した.病理組織より左肺動脈内膜肉腫と診断,腫瘍断端は陰性であった.術後補助化学療法については明確なプロトコールがないことより選択しなかった.現在術後36 カ月が経過しているが,再発を認めず外来で経過観察中である.左肺動脈原発血管内膜肉腫に対して,肺動脈再建・左肺全摘術を行い術後36 カ月の生存期間を得た.肺動脈原発血管内膜肉腫の予後改善のためには,完全切除をめざした積極的な手術が有効と考えられた.
著者
佐藤 幸男
出版者
明治大学大学院
雑誌
明治大学大学院紀要 政治経済学篇 (ISSN:03896064)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.241-258, 1974-12-01

日常生活の中で我々は「選挙」、「就職」、「結婚」とかの決定を迫られたり、定めなけれぽならない状況が数限りなく存在している。この意思決定の問題は人間の社会生活だけに限らず、経営レヴェル、国家レヴェルにおいても複雑な構造をもち、人間一人では解決されない幾多の難問をかかえこんでいる。『三人寄れば文珠の智恵』という諺にもあらわれているように、このような難問を解決する為に、集団や組織が構成される。多段階組織では中井正一氏のいう「正しく考え、それを他に対して正しく主張する」ことが、いかなるメカニズムを通して疎外されたり、行なわれたりして合理的な決定を生みだすのか。筆者の論点はそこにあり、研究対象にもなる。
著者
松森 昭 佐藤 幸人
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

サイトカインは、ウイルス性心筋炎における病因において重要であり、その抑制性サイトカインを発現させる事で有用な治療効果が得られるのではないかと考え、In vivo電気穿孔法により、IL-1ra、vIL-10、可溶性c-kitの遺伝子をマウス心筋炎モデルに導入した。IL-1ra、v IL-10導入の結果については、HUMAN GENE THERAPY 12:1289-1297に報告しているが、生存率、組織、サイトカイン等すべてにおいて、治療効果を認める結果を得た。さらに、サイトカイン遺伝子導入による血中レベルを長期に持続するため、サイトカインと免疫グロブリンのFc部分を隔合した蛋白を発現するプラスミドの作製を試みた。vIL-10+免疫グロブリンにFc隔合遺伝子導入により、血中vIL-10濃度は隔合しない場合に比べ100倍上昇し、ウイルス性心筋炎の治療効果がみられた。また、同じくマウス心筋炎モデルにおいて、可溶性c-kitプラスミドを導入することにより治療効果を見た。可溶性c-kitを発現させる事により、幹細胞因子(肥満細胞増殖因子)の活性を阻害し、肥満細胞の増殖、活性化を抑制することが狙いである。まず4週齢のDBA/2雄マウスで心筋炎モデルを作製し、ウイルス投与と同時に、マウス両前頚骨筋に、可溶性c-kitプラスミド100μg、対照群としてベクタープラスミド100μgを筋肉内に注射し、In vivo電気穿孔法にて遺伝子発現を増幅させた。その結果、7日目までの生存率は、可溶性c-kitプラスミド注射群で明らかに良好であった(可溶性c-kitプラスミドVSベクタープラスミド:100%VS50% P<0.05)。また、7日目の心臓組織の評価では、心筋炎の病勢を反映する炎症細胞浸潤、心筋壊死領域は、明らかに可溶性c-kitプラスミド投与群で軽度であった(炎症細胞浸スコア0.90±0.46VS1.37±0.65 p<0.05、心筋壊死スコア0.85±0.22VS1.61±0.23 p<0.05)。以上の結果より、マウスウイルス性心筋炎モデルにおいて、In vivo電気穿孔法による可溶性c-kitプラスミドの導入は有効な治療法であり、新しい遺伝子治療として非常に有用であると考えられた。
著者
戸村 秀明 茂木 千尋 佐藤 幸市 岡島 史和
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.135, no.6, pp.240-244, 2010-06-01
被引用文献数
2

OGR1(Ovarian cancer G-protein-coupled receptor 1),GPR4,TDAG8(T-cell death-associated gene 8),G2A(G2 accumulation)は,お互いのアミノ酸の相同性が40-50%のGタンパク質共役型受容体(GPCR)である.これらの受容体は最初,脂質性メディエーターに対する受容体として報告されたが,2003年のLudwigらによる報告以降,これらの受容体が細胞外プロトンを感知するプロトン感知性GPCRであることが,明らかとなった.OGR1,GPR4,G2Aが脂質メディエーターであるsphingosylphospholylcholine(SPC)やlysophosphosphatidylcholine(LPC)に対する受容体であるとの説は,受容体への結合実験の再現性の問題から,現在は疑問視されている.細胞外pHの低下に伴いプロトン感知性GPCRは,受容体中のヒスチジンがプロトネーションされる結果,立体構造が活性型に移行し,種々の三量体Gタンパク質を介して,多様な細胞内情報伝達系を活性化させると考えられている.G2Aに関しては生理的なpH条件下で恒常的な活性化が観察されるので,別の活性化機構が提唱されている.生体内のpHは7.4付近に厳密に調節されていることから,細胞外pHの低下は炎症部位やがんなど局所的に起こっていることが予想される.実際,炎症やがんなどで,プロトン感知性GPCRを介した作用が,我々の報告を含め,細胞レベル,個体レベルで報告されている.これまでの研究結果から,発現するプロトン感知性GPCRの種類の違いにより,炎症部位で異なる応答が惹起される可能性が浮上してきた.さらに最近,各受容体の欠損マウスの報告が出そろい,プロトン感知性GPCRの研究は新たな段階に入ってきた.プロトン感知性GPCRの研究は,炎症やがんに対する新たな視点からの創薬へのきっかけにつながる可能性を秘めている.
著者
服部 数幸 佐藤 幸男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.8, pp.1528-1535, 1993-08-25
参考文献数
12
被引用文献数
38

本論文は時系列空間コード化法に基づいた新しいレンジファインダのシステムについて述べている.光パターンを生成する光源としては半導体レーザを用いており,レンズ系によって生成されたスリット状の光をパターンに従い時系列的にスイッチングしながらガルバノミラーで走査して光パターンを生成している.レーザおよびミラーはCCDカメラの垂直同期信号と同期して動作し,カメラの1フレーム時間内に各光パターンが生成され,その投影像が撮像される.光パターンの生成,切換えにむだ時間がないため,約0.3秒で8枚の光パターンの照射と撮像が行われ,距離測定精度が約1%の512×256画素の距離画像を得ることができる.光学系は極めて小型に形成され(W:140mm,H:35mm,D:95mm),軽量であるため(680g),ロボットの視覚など広い用途が見込まれる.本論文ではレンジファインダのシステムの構成,専用画像処理システムについて述べている.またいくつかの計測結果を示し,本システムの有効性について論じている.
著者
越地 福朗 江口 俊哉 佐藤 幸一 越地 耕二
出版者
社団法人エレクトロニクス実装学会
雑誌
エレクトロニクス実装学会誌 (ISSN:13439677)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.200-211, 2007-05-01
参考文献数
17
被引用文献数
5

本稿では,半円と台形の放射板を有する半円台形不平衡ダイポールアンテナを提案する。はじめに,電磁界解析により放射板形状の検討を行い,半円と台形の放射板の組み合わせの時に効果的に広帯域化されることを示す。次に,携帯機器への組み込みを考え,マイクロストリップ線路を用いて給電する場合を検討し,VSWR特性および指向性を劣化させることなく給電が可能であることを示す。最後に,実際にアンテナを試作し,実験により特性を評価し,提案するアンテナの有効性を確認している。その結果,提案した半円台形不平衡ダイポールアンテナは,UWBの周波数帯域を含む2.8〜11.5GHzでVSWR≦2.0(帯域幅122%),指向性利得は-3.8〜5.0dBiであり,交差偏波比は15dB以上の良好な特性を得た。
著者
幾原 雄一 溝口 照康 佐藤 幸生 山本 剛久 武藤 俊介 森田 清三 田中 功 鶴田 健二 武藤 俊介 森田 清三 田中 功 鶴田 健二 谷口 尚 北岡 諭
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

本終了研究では特定領域の成果報告会や国際会議を企画し,本特定領域によって構築された「機能元素の学理」の効果的な普及を行った.さらに,本特定領域で得られた知見を次代を担う若手研究者に引き継ぐためのプログラム(若手研究者向けセミナー,若手研究者海外滞在)も企画・運営した.また,班内の効果的な情報共有・打ち合わせのためのインターネット会議の実施や情報管理も本総括班が行った.平成24年度では以下のような総括班会議,成果報告会,シンポジウム等を行い,本特定領域で得られた研究成果の発信を行ってきた.・総括班会議の開催6月(東京)・特定領域最終成果報告会(公開)6/8(東京)【産官学から約200名の参加があった】・国際会議の開催(公開)5/9-11(岐阜)【国内外から約300名の参加があった】The 3rd International Symposium on Advanced Microscopy and Theoretical Calculations(AMTC3)・国際学術雑誌企画5月(AMTC Letters No.3)・最終研究成果ニュースレター冊子体の企画6月・特定領域特集号発刊(セラミックス)・若手研究者向けセミナー1月(名古屋)6月に開催した本特定領域の最終成果報告会においては200名近い参加があり,非常に盛会であった.また,5月に行われた国際会議においても世界中から第一線で活躍する研究者が一堂に会し,3日間にわたって活発な議論が行われた.また,次世代研究者の育成をめざし,研究者の海外滞在プログラム(米国オークリッジ国立研究所,英国インペリアルカレッジ)も行われた.また大学院生を対象とした第一原理計算,透過型電子顕微鏡,電子分光に関するセミナーも開催した.
著者
佐藤 幸治
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.50-57, 2012-04-30 (Released:2012-05-25)
参考文献数
49

外界の化学物質は,五感のうち,嗅覚と味覚によって受容,識別される。この2つは合わせて化学感覚と呼ばれ,動物が最初に獲得した外界を認識する感覚系である。化学感覚が認識する化学物質は数十万ともいわれ,その多様性に対応するため,化学感覚受容体は遺伝子中で最も大きなファミリーを構成している。線虫から高等脊椎動物に至るまで,化学感覚受容体のほとんどはGタンパク質共役型受容体ファミリーに属しており,受容した化学物質の情報はGタンパク質シグナル伝達経路を経て,その下流のイオンチャネルが活性化されることで電気信号へと変換される。しかし昆虫の嗅覚受容体や味覚受容体はGタンパク質共役型受容体と共通の7回膜貫通構造を持ちながら,匂いや味物質で直接活性化されるイオンチャネルを構成することが明らかとなった。また神経伝達物質のイオノトロピック型受容体が,昆虫では化学感覚受容体へと進化していることも明らかになった。一方で,昆虫の化学感覚におけるGタンパク質シグナル伝達経路に関する知見は,断片的である。本稿ではこの昆虫にユニークな,化学感覚受容体として機能しているリガンド活性型イオンチャネルについて述べる。
著者
佐藤 幸雄
出版者
信州大学
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.55-62, 1994-08
被引用文献数
1

野辺山高原におけるハイブッシュ・ブルーベリー栽培の可能性を検討するため,5か年にわたって生育相,寒害,果実収量及び果粒重について調査を行った。1. 調査5か年間の平均発芽日は,品種によって多少異なり,4月29日~5月3日であった。また,開花日も品種によって異なり,5月28日~6月8日であった。しかし,開花期間は品種による差が少なく,およそ25日間であった。2. 収穫時期は品種による差が大きく,早生種7月下旬~8月下旬,中晩生種は8月上中旬~9月中旬以降で,平均収穫期間は短い品種で約25日間,長い品種で約50日間で,2倍の差がみられた。3. 1株当りの新梢発生数は,'ノースランド'が最も多く,最小の'ブルータ'の3.7倍であった。しかし,新梢長については,品種間で有意差は認められなかった。4. 寒害被害新梢数の割合は,'コリンズ'が最高で,ついで'ウエィマウス'及び'コビル'も高かったが,'ジャージー','ノースランド'及び'ブルーレィ'は比較的低かった。寒害被害新梢長の割合についても同様の傾向がみられた。5. 果実収量は年次変動が極めて大きく,1986年は収穫皆無に近かったが,1988年にはかなりの収量が得られ,とくに'ノースランド'では,1株当り平均7㎏以上に達した。しかし,'コリンズ','ウエィマウス','ブルータ'及び'アーリーブルー'の各品種は極端に少なかった。6. 供試10品種のうち,果粒重が最も大きかったのは,'バークレィ'の約1.5gで,ついで'コリンズ'及び'コビル'も比較的大粒であった。しかし,'ノースランド'及び'ジャージー'は小粒で,いずれも1g未満であった。
著者
若林 攻 河野 均 佐藤 幸治 BRASS Sussan NICOLAUS Bea BOGER Peter SUSSANE Bras BEATE Nicola PETER Boger BEATE Nicoau 小川 人士 BOGER Pecter
出版者
玉川大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

当該研究グループの既往研究によって得られている,“Peroxidizing除草剤の作用機構:クロロフィル生合成過程のProtoporphyrinogen-IX oxidase(Protox)阻害,Protoporphyrin-IXの蓄積,エタン発生を伴うチラコイド膜の破壊,光合成色素の減少"と言う,所謂Peroxidizing植物毒性作用を説明するために,当該研究グループ提案中であった“活性酸素が関与するラジカル反応によりチラコイド膜が破壊される"とする機構の構築と確認する検討を行いこれに成功した。次に,前記の帰結の発展応用研究に当たる「ポルフィリン代謝の制御」に関する検討を行い,植物の生長調節,藻類を利用した水素生産,活性酸素の制御による疾病治療等に応用が期待される基礎的データを得た。研究成果は以下((1)〜(5))に纏められる。(1) HPLC-lsoluminol化学発光を原理とする全自動脂質分析システムを用い,protox阻害剤処理後に生ずる過酸化脂質を測定し,活性酸素が関与するチラコイド膜破壊の機構を明らかにした。(2) 緑色植物細胞系を用いて,Protox阻害剤によるチラコイド膜破壊作用を緩和させる薬剤を見出す検討を行い,光合成電子伝達系阻害剤がチラコイド膜破壊作用を緩和させることを見出した。(3) クロロフィル生合成能を有する植物培養細胞(馴化Nicotiana glutinosa,Marchantia polymorphaその他)を用いた生理活性試験を行い,上記の[1],[2]を含むPeroxidizing植物毒性作用が緑色植物の葉緑体中で普遍的に起こることを確認し,Peroxidizing除草剤の作用機構を明らかにした。(4) 得られた生理活性データに関して定量的構造-活性相関解析を行い,光存在下で活性酸素を発生させチラコイド膜破壊を誘導する新しい強力なprotox阻害剤の分子設計と合成に成功した。(5) Peroxidizerと光合成電子伝達阻害剤が藻類の光合成明反応に及ぼす効果を確認し,その結果を藻類の水素生産制御に応用する可能性を見いだした。
著者
佐藤 淳 佐藤 幸男
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、カメラ画像から得られる対象物の位置や形状の情報を音の位置で表現する方法や、視覚情報と音響情報との3次元的な整合性を取る方法を探求した。まず、ステレオカメラが復元した3次元画像空間と、音響制御装置が持つ3次元音響空間と、ユーザが持つ3次元聴覚空間の関係を調べた。ステレオカメラが校正されていない場合、カメラにより復元した空間は3次元射影変換の不定性を持つ。また音響装置が校正されていない場合には、3次元音響空間にはやはり3次元射影変換の不定性が存在する。さらにこのインターフェイスを使用するユーザの聴覚感覚には個人差があるが、相対的な位置感や相対的な距離感が保存されると仮定すると、ユーザの聴覚感覚の個人差は3次元アフィン変換により表せることが明らかになった。そこで、ステレオカメラと音響装置との関係を3次元射影変換で直接表現し、基底音をユーザに与えてこの3次元射影変換を求めることにより、聴覚の個人差を吸収しつつ、カメラで撮影した物の位置を音の位置で表現する方法を開発した。次に、得られた視覚音響弱校正理論を複合現実感に応用し、視覚情報と聴覚情報との3次元的な整合性を取ることにより、より臨場感を増強する手法の開発を行った。この時、複数のカメラ同志がお互いに投影しあうカメラの相互投影の情報を積極的に用いることにより、視覚的3次元情報の計算安定性を格段に向上させることが可能であることを示した。このような視覚的3次元情報を聴覚的3次元情報と結びつけることにより、複数ユーザが存在する状況下において、それぞれのユーザごとに視覚情報と聴覚情報の3次元的整合性を取る手法を示した。実際に音と映像を用いた仮想対戦システムや仮想楽器を実現し、視覚的3次元情報と聴覚的3次元情報との幾何学的な整合性を取ることの重要性を明らかにした。