著者
中川 裕志 佐藤 一誠
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

プライバシー保護データマイニングのひとつである差分プライバシーは有望な方法であるが、データベースのレコード間に相関がある場合の分析があまり進んでいなかった。本研究では、相関がある場合に従来の差分プライバシーを適用した場合、データ入手を狙う攻撃者が相関に関する背景知識を少なく持っているほうが、流出する情報が大きいという直感に反する状況を明らかにし、この状況を改善するために背景知識も考慮したベイズ型差分プライバシーの数理モデルを確立した。この数理モデルにおいて情報漏洩の確率を与えられた閾値以下にする加算すべきラプラス雑音のパラメタを求める近似的アルゴリズムを示した。
著者
齋藤 司 相澤 仁志 澤田 潤 油川 陽子 片山 隆行 長谷部 直幸 林 恵充 安栄 良悟 佐藤 正夫 程塚 明
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.133-137, 2009-11-25 (Released:2010-03-29)
参考文献数
8
被引用文献数
6 1

【背景・目的】小脳梗塞の臨床的特徴を検討し,初期診療上の問題点を明らかにする.【方法】2006年1月1日から2008年12月31日までの3年間に,旭川医大病院Stroke teamが診療した脳卒中患者514例のうちの小脳梗塞患者22例(4.3%)を対象とした.【結果】典型的な小脳症状を全く呈さない症例,あるいは一つのみ呈する症例が8例(36.4%)見られた.3例が救急車を利用し発症後3時間以内に受診したにもかかわらず,当初小脳梗塞と診断されず神経内科や脳神経外科以外の病棟に入院した.その3例はいずれもめまいを主訴とし,構音障害と歩行障害が見られなかった.その他2例を合わせ全体の22.7% にあたる5例が,Stroke teamによる初期の診察を受けておらず,それが当初小脳梗塞と診断されなかった要因の一つと考えられた.【結論】めまいや嘔吐を主訴とする場合は,常に小脳梗塞である可能性を考慮する必要がある.Stroke teamによる早期の正確な神経学的診察が重要である.
著者
久島 英二 佐藤 正広 沖 守 秋元 成太 富田 勝
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.750-753, 1990

血液浄化用Double Lumen Catheter(以下DLCと略す)の問題点として、血栓および位置不良による血流不良が挙られる。我々はそれらを解決するため回転式DLCにスライド式(抜去)の改良を加えた回転スライド式DLCを考案し、その臨床試作を試みた。その構造は従来の固定式と異なり、DLC本体が360度回転し、かつ抜去可能なスライド式になっている。このカテーテルを用いて、血流不良時に対する有効性について検討した。血流不良は、体位変換等により一時的に認められたがDLCの回転あるいはスライドにより容易な対処が可能であった。また、血流不良が頻回に生じる場合では、スライド式が効果的であった。なお、血栓が原因と考えられる血流不良での対処は、スライド方式により一部改善を認めたが血栓が内腔にまで及んだ状態(完全閉塞)での対処は困難であった。以上より、本カテーテルは、血流不良時の対処法として効果的であり、今後十分臨床に応用できるDLCであると判断された。
著者
佐藤 友紀 宮 雅一 藤田 征吾 廣川 類
出版者
一般社団法人 測位航法学会
雑誌
測位航法学会論文誌 (ISSN:21852952)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.11-20, 2016 (Released:2017-04-28)
参考文献数
13
被引用文献数
1

複数の可視の測位衛星から,準天頂衛星のL6信号のビットレートの範囲内で補強対象とする衛星の組み合わせを決定するアルゴリズムを開発した.DOPを評価指標として組み合わせの時系列を準リアルタイムに計画し,リアルタイムで得られる各衛星のインテグリティ情報を反映して,各時刻での組み合わせを決定する.GPS,準天頂衛星,GLONASS,Galileoを対象としたシミュレーションを行い,選択された組み合わせによる日本の各地域でのオープンスカイを想定した環境下のDOPから,アルゴリズムの妥当性を確認した.本アルゴリズムは,4機体制時の準天頂衛星システムのセンチメータ級測位補強サービスに適用する.
著者
田原 靖彦 佐藤 洋 西谷 修一
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.14-23, 2004-12-25 (Released:2017-06-02)
参考文献数
13

エコーが分離して知覚される限界の遅延時間(dTJd)の測定を通じて,聴覚の積分特注が検討された。聴感実験の音源としてインパルス,帯域ノイズパルス,純音パルス,そして日本語の4連音節単語が使用された。本研究により以下の知見を得た。1)聴覚積分による音感覚の減衰過程は,一般的にベキ乗関数によって表現される。しかし,実験音源とエコーレベルの範囲を限定すれば指数関数による表現も可能である。2)エコーが分離知覚されるための直接音とエコーの間の最小空白時間(臨界無音時間)は音源の匪類によらず約9msとなる。3)第2エコーのdTJdは,第1エコーを第2エコーの直接音と見なして,単一エコーの分離知覚モデルを適用することで説明できる。これらの結果を通じて,室内音響評価指標の改良に重要な意味を持つ,聴覚減衰過程の関数型,各種の聴覚パラメータ,エコーの分離知覚メカニズムが明らかとなった。
著者
山村 隆 小野 紘彦 佐藤 和貴郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.35-40, 2018-01-01

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の生物学的病因を探索する近年の研究により,血液・脳脊髄液における種々のサイトカイン上昇,ME/CFS亜群と関連した自己抗体などの異常が明らかにされている。またB細胞を除去する抗CD20抗体(リツキシマブ)がME/CFSに有効であるという医師主導治験の報告もあり,自己免疫応答亢進などの免疫異常を背景とする中枢神経系炎症がME/CFSの本態である可能性が議論されている。
著者
柴田 久美子 永田 雅彦 田上 久美 石野 孝 佐藤 常男 南光 弘子
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13418017)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.10-13, 1999

6歳齢, 去勢雄, ビション・フリーゼに, 沈うつ, 嗜眠とともに, 抗生物質で改善しない発熱と排液を伴う多発性の皮膚結節が生じた。血液検査および血液化学検査で貧血, 総白血球数増加, ALPの上昇がみられた。病理組織学的検査で細菌を認めない, 激しい小葉性皮下脂肪織炎が認められた。組織の細菌培養検査および真菌培養検査は陰性であった。以上より, ヒトでこれまでウェーバー・クリスチャン病と呼ばれていた特発性結節性脂肪織炎と診断した。
著者
藤城 雅也 佐藤 啓造 祖父江 英明 平 陸郎 大多和 威行 梅澤 宏亘 伊澤 光 李 暁鵬 熊澤 武志 堤 肇
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.175-181, 2008

ヒト及び類人猿は他の哺乳類と異なり, 尿酸 (UA) 酸化酵素が欠損しており, プリンの大部分は最終代謝産物のUAとして尿中に排泄される.この事実に基づき, UAの単独測定がヒト尿斑の証明に広く用いられているが, 濃い動物尿の尿斑やトリの糞斑との鑑別ができない.そこで, 本研究では食事内容に影響を受けないクレアチニン (Cre) を濃度補正の対照としてUAとCreを高速液体クロマトグラフィー (HPLC) で同時分析し, UA/Cre比とUVクロマトグラムを指標とするヒト尿斑証明法の開発を試みた.尿斑5mm×5mmから抽出した抽出液10μ1を島津LC-10AのHPLCに注入し, 5分まで波長293nmで分析し, 以後波長234nmに切り換え, 保持時間4.5分に出現するUAのピーク面積と保持時間5.3分に出現するCreのピーク面積の比を求めるとともにHPLCクロマトグラムを比較した.UAの極大吸収のある293nmにてUAを測定し, 5分後に測定波長を切り換え, Creの極大吸収のある234nmにてCreを測定することにより, HPLC分析で通常用いられる254nmの単一波長で測定した場合に比べ, 約4倍の検出感度が得られた.同時に, 254nmで出現する尿成分由来の夾雑ピークによる干渉も回避することができた.前記の条件で斑痕抽出液の濃度はUA, Creともに20~400μg/mlの範囲で良好な直線性が得られ, 健康成人196名 (男性158名, 女性38名) の尿斑の中央部から得られた抽出液のUA濃度は242.2±149.3μg/ml, Cre濃度は336.3±178.0μg/mlであった.健康成人196名の尿斑の中央部から得た抽出液のUA/Cre比は0.61~2.19に分布し (平均値±標準偏差: 1.06±0.32) , ハムスター, ラット, ウマ, ウサギ, イヌ, ダルメシアン, ブタ, ネコの尿斑は, いずれも0.43以下を示した.一方, トリの糞斑は15.0以上を示し, ヒトの唾液, 鼻汁, 涙, 血清, 母乳精液は4.0以上を示した.また, ヒトの尿以外の体液斑はUA, Creともに非常に小さなピークが検出されただけであり, UA/Cre比を用いず, HPLCクロマトグラムだけからも容易にヒト尿斑と鑑別可能であった.以上の結果よりUA/Cre比が0.5~2.5に分布するものをヒト尿斑と判定することとした.本法は尿斑5mm×5mmを使用するだけで, コンベンショナルなHPLCで従来の方法より簡便, 高感度, 迅速な分析ができるので, 法医鑑識領域において有用な方法となることが期待される.
著者
宮澤 宏文 白根 実央 佐藤 広祝 佐々木 和人 鈴木 英二
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.19-22, 2012 (Released:2012-03-23)
参考文献数
6

高齢者は疾患にかかわらずバランス能力の低下をきたしていることが多い。当院ではスリングを用いて,運動戦略のうち,股関節戦略,足関節戦略を模したエクササイズを実施している。この股関節運動戦略エクササイズと足関節運動戦略エクササイズについて,各エクササイズ前後にfunctional reach test(以下FRT)とTimed Up and Go test(以下TUG)を実施した。また合わせて重心動揺計を利用して安定性限界の測定も行った。股関節運動戦略エクササイズではFRTの向上が認められ,静的バランスの向上が示唆された。足関節運動戦略エクササイズではFRT,TUGの両方で向上が認められ,静的バランスだけでなく動的バランスの向上が示唆されたが,安定性限界の測定については,有意な変化を認めなかった。
著者
星野 浩司 青木 幹太 井上 友子 佐藤 佳代 佐藤 慈 進藤 環
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第65回春季研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.298-299, 2018 (Released:2018-06-21)

本研究では、福岡市南区の商店街におけるブランディングを目的とした活性化事業として、本学の芸術学部と福岡市、長住大通り商店街(福岡市南区)の産官学が協働で取り組む、産官学連携型のキャリア教育・専門教育を目的とした人材育成教育プログラムの実践を行った。小学生による長住大通り商店街の店舗コマーシャルの制作をワークショップ形式で実施する取り組みや、長住地区についてゲーム形式で学習するアーケード型ゲームコンテンツの開発を行っている。これらの取り組みを通して高齢化や人口流出の問題、生活様式の変化による商店街衰退の現状について直に触れることで、地域が抱える課題解決に向けた打開策の必要性という切迫した状況を理解する機会を得ることが出来た。また、授業で学んだ知識や技術の応用として学外での本取組みの中で、問題の解決や渉外交渉を通し、主体性を持った行動力とコミュニケーション能力の育成を図ることが出来たと考える。
著者
田中 雄大 菅野 圭祐 佐藤 滋
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.305-312, 2016

本研究の目的は、山形県鶴岡市を対象として、城下域の取排水系統や、水路網の取水・分水・集水地点などの伝統的水系構造を解明し、景観構成との関係を明らかにすることである。本研究は以下の手順で行う。第一に、城下絵図や明治地籍絵図、現代の地番図などの地図資料の比較を基にArcGISを用いて藩政期における城下域の流路を復元する。第二に、微地形の分析や地図史料を用いて流水方向を特定し、地区ごとに記述する。第三に、各地区の記述に基づき、城下域全体の取排水系統を把握する。また、各系統が配水する地域における土地利用の特徴を考察する。第四に、城下域全体の取排水系統における、取水・分水・集水地点を特定し、各地点に確認される水路形態の特徴を把握する。第五に、水系上に確認される山当て景観と借景の分布実態を把握し、取排水系統の違いによる分布の差異や、取水・分水・集水地点との位置的関係を分析する。
著者
佐藤 正寛 小畑 太郎
出版者
Japanese Association for Laboratory Animal Science
雑誌
Experimental Animals (ISSN:00075124)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.731-735, 1995-10-01 (Released:2010-08-25)
参考文献数
11

シリアンハムスターを選抜実験に用いるため, 給与飼料および交配週齢が受胎率や離乳子数などの繁殖成績に及ぼす影響について検討した。雌240匹を2群に分け, 1群には草食動物用飼料ZC-2, 他の1群には繁殖用飼料MB-1を給与して育成した (育成期) 。交配時に各群をさらに2群に分け, 1群は育成期と同一飼料, 他の1群は飼料を変えて繁殖させた (繁殖期) 。交配は各群の半数を8週齢, 残りの半数を12週齢で行った。育成期にZC2を給与し, 繁殖期にMB-1を給与した区が, 雌親の分娩数, 離乳数, 3週齢時における子の匹数および一腹体重において有意に高い値を示した (P<0.01) 。12週齢交配区は8週齢交配区に比べて, 雌親の分娩数, 分娩時における産子数と一腹体重において有意に高い値を示した。しかし, 3週齢における子の匹数や一腹体重には差がみられなかった。以上の結果から, ハムスターの育成期には比較的高繊維質の飼料を給与し, 繁殖期に繁殖用飼料に切り換えることによって高い繁殖成績が得られることが明らかとなった。
著者
右田 真里衣 山崎 哲司 佐藤 史子
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.285, 2012 (Released:2012-11-07)

【目的】進行性核上性麻痺(以下PSP)によりすくみ足が著明で認知機能低下のある方に、在宅でレーザー杖を工夫し単独移動時のすくみ足が軽減したため報告する。尚、報告にあたり書面で本人、ご家族に説明し同意を得た。【方法】症例は84歳女性。平成19年PSP診断。認知機能(注意・記憶)低下有り。ADL自立。移動は主に4点杖歩行や伝い歩きで、すくみ足が著明。その為トイレに間に合わず洗面器に排尿有り。トイレまでの平均移動時間は2分43秒であった。日中は単身状態で移動の介助は得られず、歩行の改善を目指した。すくみ足改善に向け開始前動作や視覚刺激を検討した。開始前動作(足を高く上げる等)は効果はあるが、介助者の促しが必要であった。視覚刺激(床にテープ等)は、直後の効果はあるが数日後には無効であった。次に既製レーザー杖を試行した。これはスイッチを押すとレーザーが床面に出るT字杖で、すくみ足の方に効果がありパーキンソン病友の会で販売されている。しかし、介助者の促しが無いとレーザー杖を使用する事やスイッチを押す事が行えなかった。また、本人にとってやや前方にレーザーが出る為、その距離が却ってすくみ足を助長する事等があり、既製レーザー杖をそのまま適用出来なかった。その為、臨床工学技師の協力で、以前から使い慣れている4点杖にレーザーを取り付け、グリップを握ると本人に合った位置にレーザーが出るよう調整し導入に至った。【結果】本人用のレーザー杖を使用した時の平均移動時間は35秒となり、すくみ足が軽減してトイレに間に合うようになった。また、9週間後にも効果が持続していた。【考察】PSPにより認知機能低下のある方がすくみ足を改善する為には、身体機能だけではなく生活環境の確認も重要であり、今回の症例は自宅内を単独移動する事から、介助者の促しが無い状況で行える事が必要であった。しかし、常に生活環境上にある視覚刺激では効果は持続しなかった。これに関する研究論文等での報告は確認出来なかったが、慣れると注意が向けられず効果が持続しなかったと考える。効果を持続させる為には必要時のみ視覚刺激となるレーザー杖の適応があると考えたが、既製レーザー杖では身体機能的にも生活環境的にも本人が使いこなす事は困難であった。その為、既製レーザー杖を参考にしながら、本人に合わせて操作手順を減らす等の工夫をした事が、レーザー杖の有効性を高めすくみ足の軽減に繋がったと考える。【まとめ】PSP者にレーザー杖を工夫した症例を経験し、身体機能だけではなく生活環境をみる事や、その方に合った用具に工夫する事の大切さを学んだ。