著者
佐藤 哲彦
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.38-48, 2003-08-25 (Released:2016-11-16)

本稿は、医療的相互作用過程の質的分析に関する論争において示唆されたものの、具体的には展開されなかった分析方法を新たな観点から提案し、当の論争において公表された慢性病診察過程のデータを再分析することで、その有効性を検証することを目的としている。特に本稿は、ディスコース分析を用ることで、社会的相互作用論による相互作用過程の分析では明らかにされなかった、医師・患者による個々の発話の意味と文脈の協働的構築過程を明らかにするとともに、ローカルな診察の場で、どのようにして「病の軌跡」がコントロールされるのかを詳細に明らかにした。この作業を通して本稿は、具体的な分析方法を新たに提示するとともに、それが特定の医療的相互作用の特殊性を記述することができることを示した。
著者
中里 和弘 塩崎 麻里子 平井 啓 森田 達也 多田羅 竜平 市原 香織 佐藤 眞一 清水 恵 恒藤 暁 志真 泰夫 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.263-271, 2018 (Released:2018-08-21)
参考文献数
31

【目的】1)緩和ケア病棟における患者と家族間の思いの言語化を支える家族支援(家族へのバーバルコミュニケーション支援)の有無と評価,2)家族へのバーバルコミュニケーション支援と「患者と家族との良好な関係性」および「ケアの全般的満足度」との関連を検討した.【方法】全国の緩和ケア病棟103施設における死亡患者の遺族968名に質問紙調査を実施した.【結果】536名を分析対象とした.支援を受けた遺族の割合は内容によって差がみられたが,評価は概ね高かった.重回帰分析の結果,患者と家族との良好な関係性では,全8つの支援で有意な正の関連が認められた.ケアの全般的満足度では,4つの支援(家族から患者への言語化の具体的提案,家族の思いを患者に伝える,患者の聴覚機能保持の保証,患者の思いを推察した家族への言葉かけ)で有意な正の関連が認められた(p<0.05).【結論】家族へのバーバルコミュニケーション支援の意義が示唆された.
著者
小島 慎也 佐藤 香枝 前田 亮太 呉 宏堯 矢田 拓也 森田 敏明 岩崎 博之
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2014年大会
巻号頁・発行日
2014-04-07

明星電気株式会社は、小型気象計POTEKA Sta.(ポテカ:Point Tenki Kansoku、以下POTEKA)を開発した。POTEKAは気温・湿度・気圧・感雨・日照を1分間隔で測定でき、従来気象計と比較して安価で、設置が容易なため稠密な設置及びデータ収集が可能である。そのPOTEKAを用いて、伊勢崎市内小中学校及び同市周辺のコンビニ(SAVE ON)に約1.5~4km間隔で計55ヶ所に設置した。本稿では、顕著な観測事例として8月11日に高崎市・前橋市で発生した突風現象の観測結果について紹介する。8月11日18時頃に高崎市から前橋市にかけて突風が発生し、住家の屋根の飛散などの被害がみられた。POTEKAの気温1分値を見ると、最大12分間で-13.9℃の気温低下がみられた。前橋地方気象台発表の突風経路に近いPOTEKAの海面補正した気圧の1分値時系列を下図に示す。気象台の10分値の気圧は徐々に増加していく傾向しか見られないが、POTEKAの1分値では、1~2hPa程度の一時的な上昇がみられた。これはダウンバースト発生時の下降流による一時的な気圧上昇であると示唆される。さらに詳しく見ると、気圧の上昇は2回発生している地点もあり、1回目はガストフロントによるもの、2回目はダウンバーストによる上昇と考えられる(詳細は「地上稠密観測POTEKAによるダウンバーストとガストフロントの識別」を参照のこと)。今回の稠密観測のようなダウンバースト・ガストフロント発生時の地上における気圧変化を、これほど細かい時間的・空間分解能で観測した事例はほとんど見られない。このような稠密観測をすることによって、突風の種類の判別や突風に対する事前の注意喚起が出来る可能性がある。謝辞:本プロジェクト始動にあたり、サンデン(株)殿、(株)セーブオン殿、伊勢崎市教育員会殿にはPOTEKA設置のご協力を頂きました。ここに御礼申し上げます。
著者
佐藤 浩 八木 浩司
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.207, 2011

ネパール東部では1934年にM8.2の地震が発生したが,地震空白域に当たる西部では,今後の地震による斜面崩壊の多発と住民への被害が懸念されている.そこで,先行研究の活断層図を用いてネパール西部における地震時の斜面崩壊の脆弱性をマッピングした。その結果を報告する。
著者
佐藤 晃彦
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.577-580, 2008-05-31 (Released:2008-07-01)
参考文献数
23

急性膵炎では,軽症例であっても入院治療が原則であり,脈拍数・血圧・尿量・呼吸数などの基本的なモニタリングを行いながら,絶食による膵外分泌刺激の回避,除痛,十分な輸液を行う必要がある。軽症例では,感染性合併症の続発がまれであるため予防的抗菌薬投与の必要はなく,蛋白分解酵素阻害剤投与や経腸栄養療法の臨床的有用性も確立されていない。経口摂取を契機として急性膵炎が再燃する場合があるため,食事開始時期の決定は重要なポイントとなる。軽症例では,腹痛の消失,血中膵酵素値やCRPの低下を指標として食事開始を決定することが推奨される。入院時に軽症であっても,経過中に重症化する症例が少なからず存在するため,重症度評価を継続する必要がある。
著者
佐藤 庚 稲葉 健五 戸沢 正隆
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.207-213, 1973-06-30 (Released:2008-02-14)
参考文献数
16
被引用文献数
15 22

A japanica rice (var, Norin-17) was used to test the effects of high temperature treatment (day-night, 35-30°C) from young panicle formation to maturity upon the ripening and the distribution of assimilates, and upon the pollens and anthers. 1) More than 20 per cent sterility occurred when treated just before and after flowering, being progressively decreased as the time of treatment was apart from flowering stage. In general, a larger amount of carbohydrate and nitrogen remained in the straw of the plant which exhibited a higher sterility. The plant with the greatest sterility treated at flowering stage produced grains of the greatest 1000-kernel-weight, being greater than the control. 2) The pollens of plants treated just before and during were smaller in size and stored starch abnormally, often being deficient of inclusions. Besides, the plants had a greater number of anthers which did not open at flowering. These may be related to the high sterility. 3) The plants treated at one or two weeks before flowering produced grains of smaller 1000-kernel-weight, due to smaller grain size especially in its length, although the sterility did not increase by the treatment. In such a plant, more nitrogen and available carbohydrate remained in the straw than the control plant. 4) The grains of plant which was treated under high temperature at several stages during the ripening period decreased in weight, but their sterility did not increase. Grain weight was smallest in the plant treated at 6 to 16 days flowering stage, mainly due to a decrease in grain thickness, and became progressively greater as the time of treatment went away from those period. The sum of TAC(total available carbohydrate)content of panicle and straw was decreased by the high temperature treatment, but more of it remained in the straw of the plants with smaller grains. Nitrogen accumulation did not change significantly by the treatments.
著者
佐藤 幸男 YAKOVLEV Ale BONDER Alexa RAZJUK Rosen CHERSTVOY Ye LAZJUK Genna 松浦 千秋 武市 宣雄 大瀧 慈 AKOVLEV Alexander ALEXANDER Ya ALEXANDER Bo ROSENSON Raz YEGENY Chers GEUNADY Lazj ROSENSON(DMI(ローゼンソン(ドミトリ) ラジュク) YEVGENY Cher GENNADY Lazj
出版者
広島大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

研究目的1996年はチェルノブイリ原子炉事故から早くも10年目を迎える。我々は事故後4年目の1990年からベラル-シ、ウクライナ共和国の被災地に赴き、特に1992年からは約10数回現地に出向してチェルノブイリ核被災の後障害の調査を行ってきた。その目的は、広島型原爆とは被曝の形の異なる、急性外部および慢性内部被曝が人体にもたらす影響の全体像の把握に務め、その結果を今後の疾病の診断や治療の参考に供する基礎的資料を提供することにある。さらに、現場での観察の視点を重視し、放射能被災を過大又は過少評価することなく種々な専門的立場からの調査・研究をすすめ、その作業過程での人的交流の深まりが核の被災のない社会の創造に向けての一里塚になるであろう事を期して、今後も長期にわたる交流を継続する事も本調査・研究目的の大きな部分を占めていると考えている。研究の内容・方法先天異常研究の内容・方法チェルノブイリ原子炉事故の被災は、ウクライナ、ベラル-シ、ロシアに及ぶがその汚染面積や人的被災はベラル-シ共和国において顕著である。ベラル-シのミンスク遺伝性疾患研究所では1970年代から先天異常児登録のモニタリングシステムを確立し各地から送られる先天異常児の剖検、病理組織的検索、細胞遺伝学や生化学的諸検査も行われている。我々はそこでの共同調査、研究を志向し胎児の剖検、組織検索、資料の検証などを行った。放射能災害が生じた場合、妊婦が被曝すると流産、死産および胎内被曝の結果としての先天異常が最小に生じ、被曝の初期像を観察するのには不可欠な指標である。一方、精原又は卵母細胞が被曝した結果生じる遺伝的な先天異常の観察は長期にわたる観察が必要である。先天異常は放射能事故前も事故後も存在し、且つそれらの多くは複数の遺伝子と環境要因の相互作用で生じる多因子のものが多くを占め突然変異によって生じる骨の異常などは多くはない。そのため、放射線依存性の異常の同定にも長期にわたる資料の収集と解析が必要となる。我々は現地における約30,000例の剖検資料を事故前と事故後、およびセシウム137高濃度汚染地区と低濃度汚染地区(対照)に区分しそれらの発生頻度の差異を調べた。現在も個人や地域の被曝線量の資料の発掘や資料の収集を継続中である。小児甲状腺癌研究の内容・方法事故後数年頃から汚染地区での小児甲状腺癌の増加が指摘され始めた。ベラル-シではミンスク甲状腺腫瘍センター、ウクライナではキナフ内分泌代謝研究所に集約的に手術例が集まるシステムが確立されている。我々は汚染地域での調査や検診と併行して同研究所での小児甲状腺癌の病理組織標本検証、ヨード131との被曝線量依存性、統計的資料の収集、甲状腺ホルモンの機能検査、癌遺伝子活性の解析などを行った。結論・考察先天異常調査の結論・考察 事故後の高濃度汚染地区から得られた人工および自然流産児両群の剖検例に、低濃度汚染地区から得られた対照児の剖検例よりも高頻度に先天異常が認められた。その傾向は1986年から1年間の胎内被曝例で顕著であった。事故前と事故後の剖検例での比較でも事故後に奇形の多い結果が得られた。奇形の内容は多岐にわたき多指症など突然変異によるものの頻度の増加は軽度で放射線被曝以外にも複数の環境要因の関与が示唆された。小児甲状腺癌の結論・考察 広島の原爆被曝者にも例をみない本疾患の発生は現在ベラル-シ、ウクライナで400例を超えている。それらの多くは乳頭癌で、且つ1.5cm以上の大きさの、いわゆる臨床癌に属するものでありヨード131高濃度汚染地域で多発の傾向にある。セシウム137やストロンチウム、プロトニウムの関与、線量依存性の調査は今後の課題である。少数例乍らも小児甲状腺癌の病理組織標本からRET癌遺伝子活性が検出可能となり、その増加がゴメリ地方の高濃度汚染地域で認められ、放射線被曝との関連性がより濃厚となった。
著者
REN YI 佐藤 真 赤石 美奈
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
JSAI大会論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.1F46, 2018-07-30

<p>ニュースサイトに載っている記事は速報性と読みやすさを重視している。このため、ひとつひとつの記事の情報量が少ないという問題がある。個別の記事のみからでは、事件の全貌を知ることが難しい場合もある。そこで、読者がひとつの記事をきっかけとして、その事件の全貌を理解できるように支援するための手法に関する研究を行う。各方法の実験効果を比較し、ユーザーにその結果を提示する有効な手法を開発することを目指す。 </p>
著者
佐藤 光雄 片桐 康雄
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4-6, pp.169-175, 1966-07-31 (Released:2010-06-28)
参考文献数
11

1. 全長20mm及び35mmのナマズの稚魚の下あごひげの再生経過と3種の琶琵湖産ナマズ類の下あごひげの組織構造を調べた。2. 20mm稚魚においては永存ひげも一時ひげもその再生経過には差異がなく, ひげ切断後約6時間で傷口は表皮によって完全におおわれ, 12時間後には軟骨支柱の再生芽が形成され, 切断後5日目で対照のひげと同じ長さ及び組織構造をもつにいたる。3. 35mm稚魚の永存ひげの再生は, 再生に幾分多くの日時を要する点を除くと, 20mm稚魚のそれとほとんど変りがない。4. 35mm稚魚の一時ひげは退化の兆しをみせていたが, このひげを切断した場合, 傷口が切断後1日目にしてようやく1層の表皮でおおわれるだけで, 軟骨膜細胞の切断端への移動はみとめられない。5. ビワコオオナマズの下あごひげはナマズ及びイワトコナマズのそれに比して短少で発達が悪いが, その組織構造においてはこれら3種間にほとんど差異がない。