著者
佐藤 喜久一郎
出版者
現代民俗学会
雑誌
現代民俗学研究 (ISSN:18839134)
巻号頁・発行日
no.6, pp.77-91, 2014

This paper is intended as a sympathetic critique of the cultural activities of Rekijyo-Japanese history buffs. A rekijyo is regarded as female enthusiast who has an obsessive interest in historical figures. Some rekijyos are males, in which case they are often called rekidan. Rekijyos throw themselves into touring historical sites like palaces, temples, graves, and castles, as if they are on a pilgrimage. Sometimes they wear costumes there to portray a certain historical character or role.A rekijyo is also a self-educated amateur historian who attaches great importance to fieldwork. Their pilgrim-like activity is somewhat related to a romantic reaction to their academic or educational history. It is a way for them to resist the formal, dry and unemotional discourse on history that they experienced when they were younger. The prefer to empathize with their favorite historical characters than to analyze them. However, just like other Japanese youth, rekijyo culture is excessively postmodernized. Rekijyo also engage in an endless deformation and imitation of persons from history. Even though their view of history is based on empathy, theif behavior is rooted in modern consumerism. Rekijyo culture is merely otaku consumption, but it is also a form passive resistance against those who set themselves up as authorities on history.
著者
佐藤 勉 利野 靖 山田 六平 大島 貴 益田 宗孝
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.197-204, 2012 (Released:2013-05-08)
参考文献数
28

ACTC-GCで切除可能な進行胃癌に対する術後補助化学療法としてS-1が標準治療となったが,層別化解析でStage Ⅲに対する有効性は実証されなかった.そこで,予後不良である大型3型・4型胃癌やbulkyN2胃癌を対象とした術前補助化学療法(Neoadjuvant chemotherapy:NAC)が注目され,第Ⅱ相試験であるJCOG0210でS-1/CDDP療法の有効性が示され,現在第Ⅲ相試験であるJCOG0501が進行中である.しかし,今までNACの有効性の根拠として考えられてきたMAGIC試験やACCORD-07試験が,EORTC-04954試験結果から疑問視されてきている. 本邦における切除不能・進行胃癌に対する標準治療はS-1/CDDP療法とされているが,さらなる治療成績向上のため3剤併用療法のDCS療法の第Ⅱ相試験が報告されている.海外でも3剤併用療法(DCF療法,DXP療法など)の臨床試験結果が報告され,治療成績の向上が期待されている. NACの治療効果を改善するための候補として3剤併用療法の第Ⅱ相試験が数多く計画されているが,JCOG0501の結果を踏まえて2剤と3剤併用療法の良質な第Ⅲ相試験が望まれる.
著者
川崎 永大 富樫 結 小林 武司 佐藤 惇司 山本 優一 藤田 貴昭 蛯名 葉月 大河内 香奈 佐藤 達夫 大槻 剛智
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.EbPI1421-EbPI1421, 2011

【目的】<BR> 日本人の死亡因子の上位である脳卒中は、心筋梗塞の発症率と比較し高い罹患率にある。また、脳卒中後の後遺症は健常者と比較し転倒リスクを高めるため、内・外的因子を踏まえた上で介入方法を随時検討する事は周知の通りである。<BR> 脳卒中後の後遺症により歩行障害を呈した対象者の足関節背屈機能の低下は特徴的で、歩行能力低下の一因子となる。麻痺側下肢の足関節背屈機能の低下は、麻痺側立脚期の前方推進力を非効率的なものとし、健側下肢は各動作において多彩なパフォーマンスが要求され努力的な歩行を強いられる。<BR> そこで、本研究では慢性期脳卒中患者を対象とし、足関節背屈機能の代償が期待される転倒予防靴下の有効性をこの場にて検証した。<BR>【方法】<BR> 慢性脳卒中患者7名(年齢62~86歳 男性4名 女性3名 発症期間3.0±1.2年 Stroke Impairment Assessment Set平均52±9点)を対象とした。明らかな高次脳機能障害や足関節拘縮が認められず杖を用いれば監視下にて歩行可能な対象者とし装具は装着していない。<BR> 検査者は対象者の10m最大歩行を自覚的な疲労に応じ1~3回実施し、裸足、市販靴下+ルームシューズ、転倒予防靴下+ルームシューズの3条件で異なった歩行様式から歩行時間と歩数を記録した。<BR> 統計処理として対象者の歩行時間と歩数をFriedman検定および多重比較試験(Bonferroniの不等式)にて統計処理を行い有意水準は5%未満とした。<BR>【説明と同意】<BR> すべての対象者には、慢性期脳卒中患者を対象とした研究と説明した上でヘルシンキ宣言に則り書面にて同意を得ることができている。<BR>【結果】<BR>10m最大歩行は平均値にて裸足22.8±10.4秒、市販靴下+ルームシューズ22.8±9.3秒、転倒予防靴下+ルームシューズ18.7±9.3秒となり、裸足と転倒予防靴下+ルームシューズの間に有意差が認められた(p<0.01)。平均歩数は裸足28±4歩、市販靴下+ルームシューズ28±5歩、転倒予防靴下+ルームシューズ27±5歩となり裸足と転倒予防靴下+ルームシューズの間で有意差が認められた(p<0.01)。<BR>【考察】<BR> 片麻痺患者の歩行特性の一つとして、歩行時の足関節背屈機能の低下が問題とされる。転倒予防靴下は健常成人を対象とした研究において、歩行または段差昇降における高いtoe clearanceを保ち足関節の背屈機能を代償するとされている。<BR> 本研究では3種類の条件が異なった歩行において転倒予防靴下+ルームシューズの組み合わせが最も高い歩行能力を発揮した。歩行時の足関節背屈機能の改善は、床反力の前後成分を変化させ、床反力の制動成分を減少し、立脚初期より後方に位置する身体重心を効率よく前方へ推進させ全体的に歩行時間及び歩数の減少に至ったと考える。しかし、その他の群間検定においては有意差がみられなかったが、持参していただいたルームシューズの素材や形態が異なり、靴着用時に足部より受ける床反力を定量化できなかった事が問題であり今後の検討課題としたい。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 転倒予防靴下は脳卒中患者の足関節の機能を代償し歩行能力を改善させるため、リハビリテーションのみならず屋外歩行での積極的な利用が進められると推察される。
著者
佐藤 衛 福本 文良
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.393-396, 1996-08-25
参考文献数
13
被引用文献数
1

香川県の3点のキャベツ, 三重県の2点および鳥取県の1点のブロッコリーからPeronospora parasiticaのサンプルを集め, 各サンプルから5菌株, 合計30の単胞子分離株を調製し, これらの宿主範囲を調査した。供試植物として, Brassica oleracea (カリフラワー, キャベツおよびブロッコリー18品種) の他, B. campestris (タイサイ, ミズナ, アブラナ, ハクサイおよびカブ8品種), B. juncea (カラシナ1品種), B. napus (ルタバガ1品種) およびRaphanus sativus (ダイコン2品種) を用いた。接種試験の結果, 分離源と同種の植物であるB. oleraceaの3作物の16品種は高い感受性を示し, 本種は宿主植物と考えられた。また, B. napusは中程度の感受性を示したことから宿主となる可能性が示唆されたが, B. campestris, B. juncea, R. sativusは抵抗性を示したことから非宿主と考えられた。供試したべと病菌はすべて同じ系統に属し, B. oleracea (B. napusも含む可能性がある) を宿主とする系統と考えられた。B. oleraceaの中でキャベツの2品種, ゴールデンベストおよびYR-さわみどりは抵抗性を示した。供試した単胞子分離菌株で病原性に違いは見られなかった。
著者
佐藤 衛 福本 文良
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.393-396, 1996
被引用文献数
11

香川県の3点のキャベツ,三重県の2点および鳥取県の1点のブロッコリーから<i>Peronospora parasitica</i>のサンプルを集め,各サンプルから5菌株,合計30の単胞子分離株を調製し,これらの宿主範囲を調査した。供試植物として,<i>Brassica oleracea</i>(カリフラワー,キャベツおよびブロッコリー18品種)の他,<i>B. campestris</i>(タイサイ,ミズナ,アブラナ,ハクサイおよびカブ8品種),<i>B. juncea</i>(カラシナ1品種),<i>B. napus</i>(ルタバガ1品種)および<i>Raphanus sativus</i>(ダイコン2品種)を用いた。接種試験の結果,分離源と同種の植物である<i>B. oleracea</i>の3作物の16品種は高い感受性を示し,本種は宿主植物と考えられた。また,<i>B. napus</i>は中程度の感受性を示したことから宿主となる可能性が示唆されたが,<i>B. campestris</i>, <i>B. juncea</i>, <i>R. sativus</i>は抵抗性を示したことから非宿主と考えられた。供試したべと病菌はすべて同じ系統に属し,<i>B. oleracea</i> (<i>B. napus</i>も含む可能性がある)を宿主とする系統と考えられた。<i>B. oleracea</i>の中でキャベツの2品種,ゴールデンベストおよびYR-さわみどりは抵抗性を示した。供試した単胞子分離菌株で病原性に違いは見られなかった。
著者
佐藤 佳子 熊谷 英憲 岩田 尚能 伴 雅雄
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2017年度日本地球化学会第64回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.143, 2017 (Released:2017-11-09)

蔵王火山は東北地方の代表的な成層火山の1つで、約100万年前から活動を開始し、現在まで活動を維持している。2013年からの火山性微動や山頂部のわずかな隆起など、活発になっている火山活動の監視の観点からも、現状をモニタリングできる湖水、湧水などの希ガスデータが必要である。今回、蔵王周辺の湖水・温泉水について、希ガスの同位体比と元素存在度を測定し、He-Ne同位体比を用いて、温泉水などへのマグマからの寄与の判定を行った。測定の結果、He-Ne同位体比に関しては、同位体比は大気に近い値が得られたが、混合曲線を描いて検討した結果、大気中の希ガス同位体比に比較して、わずかにマントル起源のガスの混入が示唆された。
著者
長畑 守雄 近藤 礼 毛利 渉 佐藤 慎治 山木 哲 長畑 仁子 齋藤 伸二郎 嘉山 孝正
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
Journal of Neuroendovascular Therapy (ISSN:18824072)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.156-161, 2013

【目的】機械的血栓回収療法(mechanical thrombectomy;MT)導入前後で,当院における急性期脳梗塞に対する治療動向と治療成績の変化を検討する.【方法】MT導入前(pre-MT期)10ヵ月とMT導入後(post-MT期)19ヵ月で,発症から6時間以内の急性期脳梗塞患者数,期間中の全脳梗塞患者に占める割合,施行された再灌流療法毎の重症度(National Institute of Health Stroke Scale;NIHSS)と転帰(modified Rankin Scale;mRS)を検討した.【結果】急性期脳梗塞症例数はpre-MT期が97(全脳梗塞症例の44.3%),post-MT期が250(同52.2%).これらに対するt-PA静注療法(intra-venous tissue-plasminogen activator;IV-tPA)の施行率はpre-MT期が12.4%,post-MT期が25.2%であった.Pre-MT期における局所線溶療法の施行率は5.2%,post-MT期におけるMTの施行率は11.6%であった.IV-tPAによる30日後mRS 0-2はpre-MT期で50.0%,post-MT期では48.0%であった.MTによる90日後mRS 0-2は37.9%であった【結論】Post-MT期にIV-tPAの施行率が上昇したのは,早期受診の重要性を訴えてきた当院の社会的啓発活動の効果で,より早期の来院例が増えた影響が大きいと思われた.当院においてMTは急性期脳梗塞患者の11.6%に対して施行され,4.4%で90日後mRS 0-2の転帰が得られた.
著者
佐藤 時幸 中川 洋 小松原 純子 松本 良 井龍 康文 松田 博貴 大村 亜希子 小田原 啓 武内 里香
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1, pp.38-50, 2004-01-15
参考文献数
25
被引用文献数
5 10

沖縄本島南部のうりずん露頭とそれに近接する守礼ゴルフ場露頭における知念層の石灰質ナンノ化石および浮遊性有孔虫化石生層序を検討した.その結果,知念層基底の地質時代は両露頭とも1.97 Maよりやや古い鮮新世末に対比されるが,うりずん露頭における知念層の基底の地質年代は,守礼ゴルフ場露頭の同基底年代よりやや古い.また,うりずん露頭および守礼ゴルフ場露頭のいずれにも時間間隙が認められたが,うりずん露頭では知念層下部に約30万年の時間間隙が,守礼ゴルフ場では新里層と知念層の境界に若干の時間間隙が推定され,両露頭は近接するにもかかわらず,時間間隙の層準および規模が異なることが明らかとなった.本研究の結果は,琉球列島が現在のようなサンゴ礁の広がる海域へと姿を変えた過程を復元するためには,知念層およびその上下層の岩相層序と微化石層序との関係を解明することが,重要であることを示唆している.
著者
村瀬 篤 佐藤 紀夫
出版者
一般社団法人 日本ゴム協会
雑誌
日本ゴム協会誌 (ISSN:0029022X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.7, pp.405-409, 2000 (Released:2007-07-09)
参考文献数
9

Pyrolysis infrared spectroscopy system using a pyrolysis probe has been developed for the rapid identification of waste rubbers containing a large amount of carbon black. This system consists of a pyrolysis probe, flexible and heatable gas guide, FT-IR, and computer. The small area of the surface of a plastic part is pyrolyzed momentarily with the pyrolysis probe, and the gaseous pyrolyzate is carried with nitrogen gas cell in FT-IR, the type of plastic is then identified with the IR spectra of the pyrolyzate. This method has the following features; (1) Almost all kinds of waste rubbers used for automobile parts can be identified in a few seconds. (2)Samples do not need to be carried. (3)Surface degradation and stains do not affect the identification. And (4) automatic identification system using this technique has made it possible to identify rubbers by only one action. The application of this method to the identification of weather-strips which had been collected from scrapped cars has confirmed that this method is useful for sorting before devulcanization process of waste rubbers.
著者
長友 重紀 藤井 邦彦 佐藤 智生
出版者
大学等環境安全協議会
雑誌
環境と安全 (ISSN:18844375)
巻号頁・発行日
pp.17H0301, (Released:2017-07-01)
参考文献数
7

大学等の化学実験におけるリスク低減は長年の課題である。その中でも、多人数が同時に実験を行う学生実験室において揮発性の高い化学物質を使用する場合、実験を行う学生数に対して十分な数の囲い式フード型の局所排気装置を設置できていない状況がある。さらに、囲い式フード型の局所排気装置については、予算とスペースの問題から必要数を導入できない場合も多い。そこで、我々は低費用でリスクの低減化を図るために、通常の化学実験室に備えられている既設の設備を活用して外付け式フード型の局所排気装置を導入した。本報告では、その費用対効果と実際に使用した学生の意見を示し、化学実験における安全性の向上および教育効果を紹介する。
著者
佐藤 貢一 檜作 正登 肥田 研一 引地 健彦
出版者
日本コンクリート工学協会
雑誌
コンクリート工学年次論文集 (ISSN:13404741)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.517-522, 2000
参考文献数
4
被引用文献数
3

東名阪自動車道四日市高架橋は供用開始以来30年以上が経過し,RC床版の疲労損傷が生じていることから,床版下面に補強鉄筋を配置しポリマーセメントモルタルの吹付け工法により一体化させる下面増厚工法による床版補強工事を実施した。本工法は機械化施工により施工性・経済性の改善を図っている。本論文ではポリマーセメントモルタルの吹付けによる床版下面増厚工法の補強効果を載荷試験により検討し,その結果,床版の曲げ性状は改善され疲労耐久性が向上したことが確認された。
著者
桑原 大志 高橋 淳 高橋 良英 中島 永美子 藤井 昭 久佐 茂樹 大久保 健史 藤野 紀之 野里 寿史 疋田 浩之 小堀 敦志 武居 明日美 佐藤 明 青沼 和隆
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.3-9, 2011 (Released:2011-08-02)
参考文献数
9

【目的】高齢者における心房細動(AF)カテーテルアブレーション治療の成績,手術合併症,長期予後を明らかにする.【対象】当院でAFカテーテルアブレーション治療を施行した75歳以上の102例(男性73例,発作性79例).【方法】肺静脈隔離と非肺静脈由来のAF起源焦点アブレーションを基本とし,必要に応じ左房後壁隔離などを追加した.【結果】肺静脈隔離などの一般的治療のみを施行された患者が95例(93%)であった.手術重大合併症が1例(心タンポナーデ1例)に発症した.アブレーション後937±598日の経過観察において,95例(93%)で洞調律が維持された.死亡,新規脳梗塞発症,心不全による入院の複合エンドポイント回避率は,アブレーション後洞調律を維持している患者で高値を示した.【結論】75歳以上のAF患者に対するカテーテルアブレーション治療は,安全に施行可能であり,その後の洞調律維持効果も十分高く,長期予後改善効果も認められた.
著者
岡本 淳子 永井 智 佐藤 秀行 下山 晃司 金 亜美
出版者
立正大学心理臨床センター
雑誌
立正大学臨床心理学研究 (ISSN:21883017)
巻号頁・発行日
no.11, pp.19-30, 2013-03-31

本学では、原則1年間の学校臨床心理実習を実施しており、主旨としてはスクールカウンセリング実習生として活動している。学校実習では、実習生は学校という組織の中で自分の臨床活動の「場」を作り、そこに生きる人々を対象に臨機応変な心理臨床活動を行っていくことが求められる。心理臨床活動の専門性からみると応用編とも言えるその活動は大変に難しいが、それだけに臨床的な成長も期待される。実習にあたっては、学校教育の運営や教員組織運営、子どもたちの学校教育の営み、スクールカウンセラーの相談体制に支障を起こさずに、地道な活動を積んでいくことを心がけることが重要である。大学院としては、院生の実習に責任をもつ必要があるが、実習生を派遣する先の「場」の確保そのものにも困難が伴うのが実状である。本論文では、実習のシステム構築について、実習生派遣体制のフレーム構築という側面に焦点をあてて、開始から9年間継続されてきた実践を振り返り考察する。システム構築にあたっては、派遣要請をとらえるタイミング、「場」の管理機構と交わす文書に実習への考え方を反映させること、「場」と院生の関係の実状をとらえた堅実な連携、危機対応を含めた臨機応変な対応、大学院教員によるコーディネートやバックアップ体制が重視された。その上にたって、院生の臨床的成長が育まれると考えられた。At Rissho University we have been implementing the field training program for clinical psychology students at the graduate school. The main objective of this program is to allow the students to perform counseling activity at public schools. To successfully implement the training session, we, first of all, have to ensure that this training does not interfere with the actual educational curriculum as well as the school activities and organizational structure of the school faculty in addition to the existing school counseling system. The student has to establish their position as the clinical psychologist trainee and create the opportunity to perform the counseling activity with while recognizing the reality of the educational site. This enables the student to develop their expertise. However, there is a difficulty to even find a school that provides the training opportunity. In this thesis, we will focus on building and designing the framework for the system to dispatch the clinical psychology students by analyzing the 9-year training records that we have accumulated since the start of this program. To establish the above system, timing of dispatching a student must be considered as well as the inclusion of the program policy in the agreement with the school that accepted the program. This thesis explains the importance of student communication with the local school faculty, designing the emergency measures from clinical psychology viewpoint in addition to the backup support by the graduate school.研究論文
著者
佐藤 勝 林 敦子 加登 基弘 新田 裕 並河 勇 白木 雅文 勝谷 芳文 岩山 幸雄 平田 健一 木村 健一
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.407-415, 1985-06-28
被引用文献数
2 2

ヒトの口腔内には鞭毛虫類としてTrichomonas tenax (T. tenax)が生息し,歯周疾患の進展と共にその検出率が高くなることが経験的に知られている。しかし本原虫は培養,純培養が困難であるため,その病原性や生物学的性状は不明である。我々はT. tenaxの培養用に新培地を開発し,この培地がT. tenaxの分離,増殖にも優れていることを確認したので今回は,ヒトの歯肉縁下歯垢中における本原虫の分布と検出率を疫学的に調査した。その結果,T. tenaxの検出率と,被検者の年齢,ポケットの深さ,歯肉炎の程度および歯垢集積量の間には密接な関連性が認められた。また歯周療法がT. tenaxの消長に及ぼす影響を検討したところ,臨床症状の改善に伴ってT. tenaxの検出頻度は低下した。