著者
佐藤 喜世恵
出版者
名古屋大学
雑誌
名古屋大学教育学部附属中高等学校紀要 (ISSN:03874761)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.137-143, 2001-11-15

現在、死をめぐる問題はどんどんエスカレートしている。死の自己決定権を可能にしている国もある。余命わずかで自分自身が生きる価値がないと認めたら死を選ぶ。この判断は自殺が死因の第2位を占める日本の高校生にどう影響するのか。死の自己決定権についての是非について、不治の病でも最期まで生き抜くHIV感染者の生き様と絡めながら問い掛けてみた。
著者
佐藤 純子 Junko SATOH 淑徳大学短期大学部こども学科 Shukutoku University Junior College
出版者
淑徳大学短期大学部紀要委員会
雑誌
淑徳短期大学研究紀要 = Bulletin of Junior College of Shukutoku (ISSN:02886758)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.63-80, 2015-02-25

ラーニング・ストーリーとは、ニュージーランドの多くの教育や保育現場において用いられている観察記録の一つの方法である。本研究では、C保育園(後に対象児は、P保育園に転園。P保育園においても調査を継続)において、当時4歳児であったリリコの2年間を観察した。具体的には、K保育士にラーニング・ストーリーの手法に基づいた観察記録を蓄積してもらい、定期的に園全体で振り返る機会を設けた。そして、1 その記録をニュージーランドの幼児教育カリキュラムである「テ・ファリキ」と日本の「保育所保育指針」の双方と照合することによって保育士自身の保育観に影響や変化をもたらすのか、2 観察記録で得られた成果を次の日からの保育実践に活かすことにより、子どもの発達に効果が表れるのかを分析した。ラーニング・ストーリーに記されたリリコの活動を「テ・ファリキ」と照合した結果、保育者に対しては、「保育を客観的に観る力」と「子どもの内なる声を聴く力」を養成していたことが明確となった。また、対象児の発達面でも変化が見られ、とりわけ社会性と表現能力の両面が育まれていた。
著者
佐藤 岩夫 広渡 清吾 小谷 眞男 高橋 裕 波多野 敏 浜井 浩一 林 真貴子 三阪 佳弘 三成 賢次
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、法社会学・法史学・犯罪学専攻の研究者の学際的・総合的な共同研究を通じて、19世紀から現代に至るヨーロッパ各国の司法統計(裁判所組織統計・訴訟統計・犯罪統計等)の歴史的・内容的変遷を詳細に明らかにするものである。研究成果として、ヨーロッパの司法統計の歴史的発展および内容を包括的に明らかにした研究書としては日本で最初のものとなる『ヨーロッパの司法統計I:フランス・イギリス』および『ヨーロッパの司法統計II:ドイツ・イタリア・日本』を刊行した。
著者
石川 信一 岩永 三智子 山下 文大 佐藤 寛 佐藤 正二
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.372-384, 2010-09-30 (Released:2012-03-07)
参考文献数
34
被引用文献数
3 8

本研究の目的は, 小学校3年生を対象とした集団社会的スキル訓練(集団SST)の実施による進級後の抑うつ症状への効果を検討することであった。本研究では, ウェイティングリストコントロールデザインが採用された。対象児童は, 先に集団SSTを実施する群(SST群114名)と, SST群の介入終了後, 同一の介入がなされるウェイティングリスト群(WL群75名)に割り付けられた。集団SSTは, 学級単位で実施され, 上手な聞き方, あたたかい言葉かけ, 上手な頼み方, 上手な断り方, 教師に対するスキルの全5回(1回45分)から構成された。加えて, 獲得された社会的スキルの維持促進の手続きとして, 終了後に集団SSTのポイントが記述された下敷きを配布し, 進級後には教室内でのポイントの掲示, ワンポイントセッション, ブースターセッションといった手続きが採用された。その結果, SST群とWL群において, 訓練直後に社会的スキルの上昇がみられ, 進級後もその効果が維持されていることが示された。さらに, 訓練群とWL群は, 1年後の抑うつ症状が有意に低減していることが示された。以上の結果を踏まえ, 早期の抑うつ予防における集団SSTの有効性と有用性に加え, 今後の課題について議論がなされた。
著者
佐藤 直之 Sila Temsiririrkkul Luong Huu Phuc 池田 心
出版者
情報処理学会
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2016論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.57-64, 2016-10-28

近年,人間らしい挙動をするゲーム人工プレイヤに関する技術が注目されている.古典的ボードゲームだけでなくリアルタイム制のビデオゲームでも研究例が多い.一方で,日本で人気があるゲームジャンルの1つであるシューティングはあまりその対象として注目されてこなかった.シューティングは概して人間による1人用ゲームだが,対戦型シューティングというジャンルがあり,そこではキャラクタの自然で人間らしい動作が求められる.我々はシューティングの既存組み込み人工プレイヤの観察によって,大域的な視野の不足や精密に過ぎる動作,細かな振動の動作は,人間らしくない印象を与える要因であると考えた.そこで我々は十分に遠い先を読む探索と,弾の将来の位置予測を反映したInfluenceMap の併用でキャラクタの大域的で精密すぎない動きの実現法を提案した.またキャラクタの動作を複数フレームにまたがり固定する事で細かな振動を抑制した.この実装と被験者実験により,この手法の有効性を確かめた.Recently, techniques for human-like artificial game player get to gather attention. Not only classical board games but also recent real-time video games are used as the target. However, shoot'em up video games are rarely used as the target of developing such techniques. We observed existing shoot'em up game artificial players and concluded that they are not human like because of their narrow eye sights, too precise avoidance moves, and moves like fine vibration. Therefore we addressed these problems with route search techniques that can look ahead possible routes enough further, and influence map technique that shows areas where bullets can pass in near future. Additionally, we forced character moves to last multiple frames to reduce vibrating moves. We implemented the methods and evaluated that our method contributes to make artificial players look human-like by a subject experiment with human subjects.
著者
佐藤 恵大 鈴木 美緒 細谷 奎介 宮之上 慶 屋井 鉄雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_773-I_784, 2015

自転車運転者のマナーが問題視されているにもかかわらず,パターン化した教育が一律に行われていることや,「交通ルールを知っているが遵守しない」自転車利用者に対する教育方法が確立されていないことなど,自転車安全教育の改善には重要な課題が存在する.近年,体験させる教育ツールとして注目されているのが自転車シミュレータ(CS)である.そこで,本研究ではCSの教育機会への導入可能性を検討するために,法令違反による事故の傾向を整理し,CSの主観的評価とCSでの事故経験および教育効果の関連性を考察した後,自転車の法令違反行為をCSで再現できるか実験を行なった.その結果,CS走行シナリオ内で法令違反を含む普段通りの走行挙動が観測され,「交通ルールを知っているが遵守しない」違反挙動を再現できる可能性が示された.
著者
水山 高久 佐藤 一朗 小杉 賢一朗
出版者
京都大学農学部附属演習林
雑誌
京都大学農学部演習林報告 (ISSN:0368511X)
巻号頁・発行日
no.66, pp.p48-60, 1994-11
被引用文献数
2

山腹斜面中にはパイプ状の水みちがあり, 流出過程に大きな影響を与えていると考えられるようになってきた。しかし, その実態については限られた地域でしか明らかにされていない。山腹の表層崩壊について一様な土層構造を仮定した雨水の浸透現象に基づく説明が試みられてきたが, 崩壊の発生し易い斜面は判定できるものの, 時間的に降雨のピークに対応して発生する現象は説明されていない。筆者らは最終の研究目標を表層斜面崩壊の予測に置き, そのために必要不可欠な研究項目としてパイプフローを取り上げた。かつて谷の出口で流量観測が実施された芦生演習林内のトヒノ谷の中の1つの凹地形 (0次谷, hollow) において2つのパイプの流出量を観測するとともにパイプの空間的な分布を調べた。その結果, 以下のような項目が明らかになった。・0. 64haの0次谷で雨中の調査を行った結果, 直径3 - 8cmの7カ所のパイプの出口が見つかった。その内, 下流端の3カ所だけに常時流水が見られる。その他は斜面が先行降雨によって湿潤になって降雨強度が大きい場合にのみ流出が見られた。・パイプ流出量の時間的な変化は降雨波形とよく対応している。しかし, パイプの流量には上限があり頭打ちとなる。観測しているパイプの1つで1リットル程度の土砂流出が発生した。その後, このパイプについては上述の流量の上限が無くなった。・パイプの形状, 分布を調べるため掘ってみた。パイプの形をしているのは出口から50cm程度で, その後はマトリクスの流失したと思われる礫層につながっていた。したがって, 地表への出口はパイプとなっているが流れとしてはパイプ流というよりも礫間流と呼ぶべきものであった。・パイプからの流出は流量に上限を与えたタンクモデルでうまく説明することができた。
著者
古口 日出男 佐藤 広美 前川 富哉 Chonlada Luangarpa
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.83, no.853, pp.17-00198-17-00198, 2017 (Released:2017-09-25)
参考文献数
15

Singular stress and electric displacement fields occur at the vertex of interface in piezoelectric joints under an external loading. It can be expected that concentrated electric displacements causes large electric fields in an adjacent space and electric potential will be induced on the surface of electrode when the electrode approaches to the electric field. In the present paper, a piezoelectric joint which four blocks of piezoelectric material are bonded using a resin is analyzed. In this joint, a singular field occurs at a center gathering four vertexes in blocks and the intensity of singularity in electric displacements around the center of cross section in the joint may be four times larger. The intensity of singularity is numerically investigated using several methods for analysis to pursue the possibility of application of the singular fields. Firstly, three loading conditions, e.g., compression in the poling direction, compression in the vertical direction of side surface and input a voltage, are investigated for increasing a response of electric displacement in the piezoelectric joint. In the case of compression in the vertical direction of side surfaces, the maximum response is obtained. Hereafter, the results in the analyses are obtained for the compression of vertical direction of side surface. It is shown that the intensity of singularity depends on a power law of the thickness of adhesive layer. Influence of material properties of adhesive layer, piezoelectric and dielectric properties in the block of the joint, on singular fields is also investigated. It is shown that when piezoelectric materials with large piezoelectric constant are used, amplified electric displacements are obtained.
著者
佐藤 朝美 佐藤 桃子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.49-52, 2013

本研究では,子どもを取り巻くメディアに対する親の意識調査と,タブレット用デジタル絵本について「読み聞かせ」の観点から分析を行う.親子による絵本の読み聞かせは,親子のコミュニケーションを促すとともに,子どもの認知発達を促す場としても重要な役割を果たすという.紙媒体からタブレットに変化する事で,どのような差異が生じるか把握するために,紙絵本とタブレット用デジタル絵本の親子による読み聞かせ場面を記録し,質的に分析を行った。その結果,紙絵本では親主導で読み聞かせが行われるのに対し,タブレットでは子ども中心で操作が行われるケースが多く見られた.いっぽう,タブレットでは絵本に接する時間が増え,子どもからの発話数も増える傾向にあった.親子の対話も紙絵本と異なる内容が生じており,飽きずに物語世界を繰り返し堪能している様子がみられた.
著者
佐藤 運海 川久保 英樹
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.83, no.853, pp.17-00179-17-00179, 2017 (Released:2017-09-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1

This paper discusses the surface modification processing of kovar alloy (Fe-29.72wt%Ni-16.28wt%Co) by Na2SO4 electrolyzed oxidizing water (hereinafter referred to as EO water). First, the etching effect of Na2SO4 EO water on the surface of kovar alloy was clarified by comparative experiments of chemicals and NaCl EO water. The comparative study showed that as for the etching effect on the surface of kovar alloy, Na2SO4 EO water was superior to H2SO4 solution, but inferior to NaCl EO water. Next, by the observation using SEM image, the influence of Na2SO4 EO water on the surface shape of kovar alloy was clarified. The results indicated that when using Na2SO4 EO water, the surface of polished test pieces which had not been heat-treated becomes smooth, but in the test pieces surface which had been heat-treated, a lot of dimples had occurred. When using the supersonic together with one of Na2SO4 EO water or NaCl EO water, the surface shape became smooth. Lastly, as for the test pieces after heat treatment, the surface oxidation layer removal experiment by the immersion was carried out. The results showed that Na2SO4 EO water could remove the surface oxidation layer like H2SO4 solution approximately. However, thin surface oxidation layer might be formed when using Na2SO4 EO water. By this study, we received the suggestion that Na2SO4 EO water could be applied to the surface treatment such as the etching of kovar alloy.
著者
佐藤 紀子
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.17-26, 2007 (Released:2010-08-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

本研究では, 17世紀のオランダの画家フェルメールが, 構図を決め下図を作成するための補助的な道具として, カメラ・オブスクラを利用したという仮説について考察する.彼の作品に繰り返し描かれたのは, 室内空間の様子である.これらの風俗画は, 当時のオランダで描かれた同種のものよりも, かなり正確な遠近法で描写されている.本論では, 描かれた床のタイルサイズを基準として13作品から分析図と平面図・立面図を作図した.平面図から, 彼が遠近法の知識によってタイルの数を増減して様々な絵画空間を創作したことが推察できた.フェルメールの用いたキャンバスは, 似たようなサイズが数枚ずつある.分析より, そのサイズによって, 描かれた空間の大きさが類似していることがわかった.よって, いくつかの描かれた場面は, 同一の部屋のバリエーションとして, ある視点から, トリミングされたと考えられる.結論として, フェルメールは, カメラ・オブスクラの光の像を絵画空間の遠近的な整合性を画面に描写するために利用し, さらに透視図法を融合させることによって, よりリアルな空間表現を追求したといえる.
著者
江川 翔一 瀬島 吉裕 佐藤 洋一郎 渡辺 富夫
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.83, no.853, pp.17-00076-17-00076, 2017 (Released:2017-09-25)
参考文献数
27

We have already developed an embodied communication system with the pupil response and demonstrated that the pupil response plays an important role in realizing smooth human interaction and communication. Therefore, the pupil response has possibilities to enhance a sharing of empathy and to convey rich affects such as a pleasure with laugh. Hence, in order to develop communication systems which enhance empathy, it is desired to design the media representation of pupil response. In this paper, focusing on the laugh with pleasure emotion as a typical pleasure affect, we analyzed the relation between laugh and pupil response using a pupil measurement device, and developed a pupil response system for inducing empathy by laugh response based on speech input. In addition, we evaluated the pupil response with the laugh by using the developed system. The results demonstrated that the dilated pupil response with the laugh is effective for enhancing empathy.
著者
佐藤 邦明 増永 二之 稲田 郷 田中 利幸 新井 剛典 海野 修司 若月 利之
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.449-458, 2005
参考文献数
25
被引用文献数
1

多段土壌層法を用いて,汚濁負荷の大きい河川浄化システムの開発を目的とし,福岡県を流れる一級河川遠賀川の支流,熊添川のBOD除去を対象に基礎試験を行い,資材および構造の検討を行った。H144×W80×D56cmの装置を10基作成し,通水層および混合土壌層資材を検討し,構造については資材が同じで土壌層の幅を変えたものを作成した。流入原水は対象河川と同程度のBOD値(約40mg L^<-1>)である農業集落排水処理施設の処理水を用いて4,000Lm^<-2> day^<-1>の負荷で実験を行った。混合土壌層において対象河川の河川敷における現地土割合が高い装置で初期に目詰まりが起こった。この現地土は旧炭坑由来の微粉炭を含み,易分散性のシルト・粘土含量が高く,孔隙の閉塞を起こし易いためだと考えられた。今回のような特殊な現地土を使用する場合には,他資材の添加によってその透水性を上げること,そして分散性を抑制することが重要であると示唆された。また現地土に黒ボク土を混合した装置よりマサ土を混合した装置で目詰まりが起こりにくかったことから現地土へは大きな粒径の割合が多いマサ土の添加が好ましいと推察された。BOD値においても,現地土のみより(平均8.0〜12.4mg L^<-1>),特にマサ土を混合した装置(平均3.3,5.4mg L^<-1>)で高い処理能力を示した。本実験条件では,土壌資材の粒径はシルト以下の粒径が20%程度まで,0.450mm以下が50%程度までであることが,混合土壌層の混合割合は,現地土:マサ土:木炭:腐葉土=4:4:1:1の容積比が最適であると示唆された。また,通水層資材の違いについてはBOD処理には大きな差は出なかった。構造については,土壌層幅が15cmの装置で最も優れた性能を示した。土壌層幅の大きな装置で先に目詰まりを起こしたため,土壌層幅が狭いほうが有利であると示唆された。T-P除去能も土壌層幅の狭い装置で良い結果を示し,土壌との接触効率が高かったためと考えられた。