著者
菊池 良和 梅﨑 俊郎 安達 一雄 山口 優実 佐藤 伸宏 小宗 静男
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.321-325, 2015 (Released:2015-10-17)
参考文献数
20
被引用文献数
1

「吃音を意識させないように」「親子で吃音のことを話さない」ことが正しい対応だと思われている現状がある.しかし,自分に吃音があることを意識する年齢やその場面についての詳細な報告はこれまでにない.そこで10歳以上の吃音者で親が一緒に来院した40組に対して,吃音に気づいた年齢の違いを調べた.吃音者本人の意識年齢は平均8.1歳(3~16歳)だった.自分に吃音があると気づいた場面として,「親との会話中」はわずか8%であり,「園や学校」で気づいたのは57%だった.また,親が子どもの吃音に気づいた年齢は5.3歳(2~14歳)で,ほとんどの症例で親のほうが先に吃音の発症に気づいていた.以上より,多くの親は子どもに吃音を意識させることはなかったが,園・学校など人前での発表・会話で,本人は吃音を意識し始めたことがわかった.吃音に伴ういじめやからかいなどの不利益を最小限にするためには,吃音の話題を親子でオープンに話す必要があると示唆された.
著者
佐藤 雄一郎
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.135, no.11, pp.1281-1289, 2015-11-01 (Released:2015-11-01)
参考文献数
42
被引用文献数
1 1

The recently discovered high mannose (HM)-binding lectin family in lower organisms such as bacteria, cyanobacteria, and marine algae represents a novel class of anti-viral or anti-tumor compounds. This lectin family shows unique carbohydrate binding properties with exclusive high specificity for HM glycans with core trisaccharide comprising Manα(1-3)Manα(1-6)Man at the D2 arm. At low nanomolar levels, these lectins exhibit potent antiviral activity against HIV and influenza viruses through the recognition of HM glycans on virus spike glycoproteins. In addition, some of these lectins, such as bacterial PFL, show cytotoxicity for various cancer cells at low micromolar levels. Cell surface molecules to which PFL bound were identified as integrin alpha 2 and epidermal growth factor receptor (EGFR) by peptide mass finger printing with MALDI-TOF MS. Upon PFL binding, these molecules were rapidly internalized to cytoplasm. EGFR was time dependently degraded in the presence of PFL, and this process was largely responsible for autophagy. Furthermore, PFL sensitizes cancer cells to the EGFR kinase inhibitor, gefitinib. In vivo experiments showed that intratumoral injection of PFL significantly inhibited the growth of tumors in nude mice. PFL-mediated down regulation of integrin/EGFR ultimately contributed to the inhibition of tumor growth both in vitro and in vivo. Thus, the novel anti-cancer mechanism of PFL suggests that this lectin is potentially useful as an anti-cancer drug or as an adjuvant for other drugs. This class of proteins will likely have beneficial impact as a tool for biochemical and biomedical research because of its unique carbohydrate specificity and various biological activities.
著者
石山 育朗 鈴木 政登 松原 茂 滝口 俊男 工藤 照三 鈴木 義久 佐藤 吉永
出版者
Japanese Society for Mastication Science and Health Promotion
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.42-52, 1998-06-25 (Released:2010-07-21)
参考文献数
27
被引用文献数
2

本研究は, ガム咀嚼時の自律神経機能を調べるため, 心拍数 (HR), R-R間隔の変動係数 (CVRR), 指尖容積脈波 (PTG) の波高 (WH) と変動係数 (CVwH), 血漿カテコールアミン (pAd, pNorad) 濃度等を指標に用い, ガム咀嚼時の各指標の変化を観察した.被験者は健康な男性11名 (年齢24.5±4.1歳) であった. 実験は被験者を閉眼仰臥位にして行い, 硬さの異なる3種のガム (I, soft; II, semi-hard; II, super-hard) を用い, 毎秒1回のリズムでガムIから順にそれぞれ6分間咀嚼させ, 間に6分間の休息をとった. HR, PTGの記録は, 安静時, 各ガムの咀嚼開始時, 咀嚼終了2分前, 咀嚼終了直後および4分後と, ガムIII咀嚼終了10分後に記録した. 採血は留置翼状針を介し安静時, 各ガムの咀嚼直後とガムIII咀嚼終了10分後に行った. その結果, HRはガム咀嚼時に-過性に増加し, CVRRは硬いガム咀嚼時に安静値より低下, 咀嚼直後休息時に上昇した. WHはガム咀嚼時に低下し, 咀嚼後休息時も数分間低値が持続, CVWHはガム咀嚼開始時に安静値より上昇した. ガム咀嚼直後のpAd, pNorad濃度は上昇し, pNorad濃度はガム咀嚼実験終了10分後も高値を示した.以上の結果から, ガム咀嚼時には交感神経活動の亢進, 末梢血管の収縮が起こり, 全身運動時とは異なる調節機序が推察された. ガム咀嚼終了後の休息時と回復期には副交感神経活動が亢進するが, 末梢血管系等への交感神経活動も弱い亢進状態が持続することが示唆された.
著者
岡部 晋典 佐藤 翔 逸村 裕
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.333-349, 2011-09-27
被引用文献数
2

本稿ではオープンアクセス運動の契機となったBudapest Open Access Initiative(BOAI)について分析し,これがどのような意図のもとで公開されたか調査した.まず,BOAIを提唱し,オープンアクセス運動を支援している財団であるOpen Society Institute(OSI)と,その設立者であるGeorge Sorosについて紹介し,彼らの思想的根拠であるKarl R. Popperの提唱した「開かれた社会」概念について概観した.また,BOAI中にその思想が影響していることを明らかにした.次に,オープンアクセス運動に関連する文献群中でのPopperおよび「開かれた社会」への言及状況とBOAIの受容状況の定量的計測から,オープンアクセス関係者の間での「開かれた社会」関連思想の認知状況を検討した.その結果,OSIは「開かれた社会」という政治思想の実現を目的にオープンアクセス運動に関与しているにもかかわらず,他のオープンアクセス運動関係者はこの思想の存在には言及していないことがあきらかになった.
著者
安部 テル子 佐藤 幸 玉田 あかり 石井 邦彦 築城 文明
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.1035-1039, 1997-11-15 (Released:2010-03-09)
参考文献数
18
被引用文献数
2

牛すね肉スープにおけるすじの効用を明らかにするため, すね肉からすじを除いた肉およびすじ入りの肉からとったスーフ.のペプチド, 核酸, ゼラチンや遊離アミノ酸等の成分を測定し, 味覚試験の結果と合わせ, 比較検討した。その結果次のことが明らかになった.(1) 牛すね肉すじの入ったスープはすじを除いた肉からとったスープに比べ, ゼラチン, ペプチドの溶出が多く, 逆に, クレアチニン, クレアチン, 核酸および糖は, すじを除いた肉から取ったスープの方に多く検出された.(2) 遊離アミノ酸量は, セリン, スレオニン, グルタミン, アラニン, グリシン, アスパラギン酸, グルタミン酸, ヒスチジン, アルギニンはすじ入り肉のスープに多く存在した.一方, 味と強く関係あるとされるジペプチド, カルノシン, アンセリンはすじなし肉から多く抽出された.(3) 味覚試験では, すじ入り肉からのスープの方が旨味, まろやかさが強く感じられ, すじなし肉スープは酸味, 渋味が顕著に強く感じられた.総合的には 1% の危険率で有意にすじ入り肉の方が好まれた.
著者
吉村 浩一 佐藤 壮平
出版者
法政大学文学部
雑誌
法政大学文学部紀要 = Bulletin of Faculty of Letters, Hosei University (ISSN:04412486)
巻号頁・発行日
no.69, pp.87-105, 2014

映画やアニメーションに滑らかな動きを知覚する理由を説明するのにいくつか異なる説がある。知覚心理学的観点から,われわれはこの問題に対し,仮現運動説に焦点を当てて検討する。2013年 8月 25日に著者らが計画して法政大学で研究会を開催したことが,本研究の出発点となった。研究会にはパネリストとして,知覚心理学者以外に,アニメーション教育に携わるアニメ映画制作者や画像工学者も招いた。われわれが主張した最重要な論点は,Braddick(1974)による,仮現運動を短いレンジと長いレンジに分けるべきだとする主張である。彼の考えを受けて,映像研究者のAnderson & Anderson(1993)は,映画における動きの知覚は,長いレンジではなく短いレンジの仮現運動によって生じると主張した。しかしながらこの二分法は,知覚心理学分野ではその後批判され,短いレンジの仮現運動の代わりに一次運動という新しい概念が提案されている。にもかかわらずわれわれは,一次運動と短いレンジの仮現運動がほぼ共通する処理であるとの証拠を指摘し,映画やアニメーションにおける動きの知覚は短いレンジの仮現運動によると結論づけた。最終節では,研究会において発言したパネリストや参加者による多くの示唆に富むコメントを引用した。There are some different theories to explain the reason why we perceive smooth motion in movies and animations. From the perceptual psychological point of view, we can focus on the apparent motion theory to this problem. The meeting which was planned by us and held in Hosei University on August 25, 2013 became the starting point of the present study. As the panelists, we invited some animation movie producers engaged in animation education and an image engineer as well as perceptual psychologists. One of the most important points at issue which we insisted was the Braddick's(1974) claim, in which he divided apparent motion into short-range and long-range ones. Based on his idea, Anderson & Anderson(1993), movie researches, insisted that the short-range apparent motion, not the long-rangone, causes motion perception in movies. This dichotomy, however, was received severe criticism in the field of perceptual psychology, and new concept called first-order motion is suggested for the short-range apparent motion. Nevertheless, we pointed out a lot of evidence that the low-level processing and the short-range apparent motion have almost common processes and concluded that the short-range apparent motion would be responsible for the motion perception in movies and animations. In the last section, we quoted some suggestive comments by the panelists and the participants of the meeting.
著者
佐藤 健
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.3_36-3_44, 2010-07-27 (Released:2010-09-27)
被引用文献数
5

筆者は,論理に基づく人工知能の法学への真の応用を求めて,東大法科大学院に2006年から3年間在学し,そこで法律に関する知見を得た.本稿では,その知見とこれまで20年にわたり研究してきた人工知能における論理の研究を融合させた結果について概観するとともに,今後の有望な研究テーマについて述べる.
著者
佐藤 みなみ Sato Minami
出版者
青山学院大学日本文学会
雑誌
青山語文 (ISSN:03898393)
巻号頁・発行日
no.49, pp.40-52, 2019-03-20
著者
氏田 万寿夫 佐藤 英夫 山口 美沙子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.11, pp.2688-2700, 2014-11-10 (Released:2015-11-10)
参考文献数
14

市中肺炎でみられる画像パターンは気腔性肺炎と気管支肺炎パターンに大別され,肺野末梢の非区域性の均等陰影を主所見とする気腔性肺炎パターンは,肺炎球菌,肺炎桿菌,レジオネラと肺炎クラミドフィラにほぼ限定される.特徴的な所見を確認することにより,患者背景や起炎菌の頻度を参考に,画像から原因微生物を推定することが可能である.また,CTによる画像診断は,臨床上肺炎と紛らわしい患者の診断に有用性が高い.
著者
佐藤 典子 Noriko Sato 千葉経済大学 CHIBA KEIZAI UNIVERSITY
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = The Chiba-Keizai ronso (ISSN:0915972X)
巻号頁・発行日
no.39, pp.21-36,

今日、必要性や有効性など、道具的機能によってのみモノが選択され、消費されることはあるのだろうか。必要なものはすべて手に入れた後の消費は何を基準になされているのか。しばしば、私たちは、その消費したモノを他者に呈示するのだが、それは、社会的・文化的にどのような意義があるのか。高度消費社会を迎えたといわれ、消費そのものが記号化し先鋭化される中で、消費がもたらすコミュニケーション機能について論じた。
著者
佐藤 志帆子
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.13-28, 2008-04-01

近世末期下級武士とその家族の日常会話における言語実態を知りうる『桑名日記』を対象として、日記の内容や桑名藩の分限帳からわかる人物の属性と関わらせながら「来ル」を意味する尊敬語の使用実態を考察し、近世の武家社会における待遇表現の一端を明らかにした。その結果、『桑名日記』にみられる日常的な会話場面における「来ル」を意味する尊敬語は、御出ナサル・ゴザラシル・ゴザル・来ナサル・来ナルの5形式であることがわかった。そのうち前者の3形式は(ア)相手との社会的関係によって使い分けられる尊敬語といえる。一方、後者の2形式は(イ)相手との社会的関係に関わらず使用される尊敬語といえ、身内や親しい間柄の打ち解けた場面で使用される。また、これらの尊敬語より待遇価値の低い語として基本形来ルがある。この基本形来ルは、上記の5形式が使用される人より下位の人に使用される。
著者
佐藤 勉 中村 豊 齋田 淳
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.7, pp.7_463-7_473, 2015 (Released:2015-12-25)
参考文献数
12

我々がローマにあるコロッセオの常時微動を1998年に本格的に測定してから15年以上が経過した。2013年には、そのうちの一部を再計測する機会に恵まれた。再計測したのは、1354年の地震でも崩壊せずに残った北側最外壁の地上階から最上階までである。地上階を除き15年前とほぼ同じ位置で計測できたので、以前の測定データも改めて今回の計測データとともに解析して、両者を比較した。その結果、概ね同様な伝達スペクトル形状となったが、明らかな相違も検出されたので、これらについて報告する。