著者
藤野 義之 佐藤 正樹 永井 清仁 平良 真一 尾崎 裕 渡邉 栄司 澤 学 田中 行男 楠田 哲也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.91, no.12, pp.1611-1619, 2008-12-01
被引用文献数
3

ヘリコプターによる撮影は,災害時の情報収集に有効な手段の一つである.しかし,現在は,撮影した被災地映像を地上の車載局や基地局で中継するため通信範囲が限られ,新潟中越地震では,付近に基地局がなく緊急消防援助隊の指導などに生かされなかったといわれている.本論文では,筆者らが開発した,ヘリコプターから災害映像を実時間で直接衛星を経由し対策本部等に伝送するシステムについて論じる.本システムは,(1)MPEG4規格での384kbit/s準動画及び1.5Mbit/s 動画伝送機能,(2)ヘリコプターと対策本部との間の音声及びデータの双方向通信機能,(3)撮影している被災地位置を三次元地図を用いて高精度で特定する機能等を有している.また,これらの通信を可能とするために,(1)高速回転するヘリコプタープロペラのわずかなすき間をねらって電波を送信する技術,(2)ヘリコプターの姿勢が動揺してもアンテナビームを人工衛星方向に高精度で捕そく指向させる技術,(3)通信機器等に異常が発生しても利用衛星に隣接する衛星や地上の無線設備に干渉を与えないための技術等を開発し,実証試験を行ってその有効性を確認したので報告する.

4 0 0 0 OA 失語 : 書字面

著者
佐藤 睦子
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.198-204, 2011-06-30 (Released:2012-07-01)
参考文献数
5

文字の読み書き機能は口頭言語の獲得と密接に関わっている。そのため,「聴く」・「話す」・「読む」・「書く」のすべての言語様式が何らかの機能低下をきたす失語症の場合,書字の症状には書字機能自体の問題のみならず語想起障害など他の言語様式の困難さが反映されることが少なくない。書字の脳内機構を論じた大槻 (2006) によれば,書字達成には左中前頭回,左頭頂葉 (上頭頂小葉,角回) ,左側頭葉後下部がさまざまなレベルで関与している。これらの領域は失語症をもたらす Broca 野や Wernicke 野に隣接していることから,失語症例で書字障害をきたすのは必然である。本論では,失語症におけるさまざまな書字障害の実例を提示した。
著者
佐藤 知己 北原 モコットゥナシ イヤス シリヤ
出版者
北海道大学アイヌ・先住民研究センター
雑誌
アイヌ・先住民研究 (ISSN:24361763)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.75-101, 2022-03-01

本稿は北海道大学が作成・配布する「北大キャンパスマップ」に掲載される学内諸施設の名称をアイヌ語訳する作業の過程および訳案と、作業過程での議論をまとめて記録し、今後に残すものである。既存の語彙にない表現の翻訳としては、ウポポイ(民族共生象徴空間)で行われて来た展示・表示のアイヌ語化と通じるところがある。ただし、ウポポイでは日本語表現もアイヌ民族を主体とする表現を検討する余地があったが、本作業は和人を主体として長年使用されて来た語句を如何にアイヌ語化するかという視点を含んでおり、よりラディカルな形で脱植民地化というテーマに接近したものとなった。そのため、一致点を容易に見いだせず、狭義の言語学的翻訳論における議論のみでは不十分であることが浮き彫りにされた。なお、作成の過程では和人研究者(佐藤)とアイヌ民族に出自を持つ研究者(北原および複数名)が協議し、それぞれの立場からの議論を行ったが、議論は主として、現在用いられている日本語名称をアイヌ語訳する際の言語学的な精緻化、およびアイヌ民族の視点を反映させた訳の検討、そうした視点の必要性の3点について行った。なお、参考のために海外の同様の事例も検討することとし、サーミ語とフィンランド語の事例について、寄稿を受けて紹介することとした。本稿はこれらの議論を踏まえ、1から3は佐藤が、4はイヤスが、5から9は北原が執筆した。
著者
佐藤 洋希
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.409-421, 2023 (Released:2023-12-13)

本稿では、占領期の日本放送協会松山中央放送局管内における「ラジオの集い」の実施内容の形成過程を跡付けた。当初、同管内の「ラジオの集い」は、その「公民教育」の射程として、CIEや日本放送協会の関心事であった「政治教育」を強調していた。一方で、その後、愛媛県の社会教育課や農業改良課と結びつくことによって「考える農民」の育成にも取り組まれていった。こうした取り組みの総括的な団体として同管内では1952年に「ラジオの集い」連合会が結成されるに至ったのである。
著者
佐藤 宏亮
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.88, no.809, pp.2169-2178, 2023-07-01 (Released:2023-07-01)
参考文献数
17

Differentiation by annual income level was analyzed from the following three aspects.1. The annual income and its changes of each town was estimated over time.2. Classification and its characteristics of each town was analyzed according to their changes over time.3. Differentiation of residential areas according to income levels was analyzed according to the population structure and spatial characteristics of each classified area.
著者
吉本 公則 佐藤 諒 石原 佑彌 山口 明彦 吉川 雅博 池田 篤俊 高松 淳 小笠原 司
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集 2014 (ISSN:24243124)
巻号頁・発行日
pp._3P1-S03_1-_3P1-S03_4, 2014-05-24 (Released:2017-06-19)

It is important to realize the robot handling soft objects. In this paper, we treat a string as an example of soft objects. Humans can create various figures with a string; we aim to develop a robot system that can do such a thing. We employ the string figures as the task. We propose a framework with which a robot can play string figures with a human. Concretely, we develop a description method that can represent a variety of procedures of string figures to be played by a robot and a human pair. In order to implement this framework on a dual-arm robot, we also develop a method to decide centers of loops to be picked up using camera images. This paper demonstrates the experimental results with a dual-arm robot Hiro-NX.
著者
丸山 来輝 山﨑 宏継 佐藤 之俊 井上 準人
出版者
一般社団法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.650-654, 2023-11-15 (Released:2023-11-15)
参考文献数
9

自動縫合器は組織の安全な切離,閉鎖のために多用されている.今回,肺切除断端のステープルが大動脈外膜を損傷し術後出血をきたした症例を報告する.症例は63歳,女性.転移性肺腫瘍に対して胸腔鏡下左下葉部分切除術を施行した.術後1日目にドレーンを抜去,術後2日目に退院となった.術後4日目に呼吸苦を自覚し救急搬送となり,左胸腔内出血を認め緊急手術を施行した.左胸腔内には血腫が充満し下行大動脈の外膜が頭尾側方向に欠損し血餅が付着していた.同部位からの出血と判断し修復を行った.欠損部位に接する肺にステープルの突出を認め,大動脈の拍動と呼吸性変動による摩擦で大動脈外膜損傷に至ったと考えられた.自動縫合器のステープルによる大動脈外膜損傷の術後出血報告例はなく,肺部分切除後のステープルが大血管に接する症例では,ステープルを人工被覆材や脂肪組織等でカバーリングする必要性が考えられた.
著者
山内 敏正 神谷 英紀 宇都宮 一典 綿田 裕孝 川浪 大治 佐藤 淳子 北田 宗弘 古家 大祐 原田 範雄 幣 憲一郎 城尾 恵里奈 鈴木 亮 坊内 良太郎 太田 康晴 近藤 龍也 日本糖尿病学会コンセンサスステートメント策定に関する委員会
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.91-109, 2020-03-30 (Released:2020-03-30)
参考文献数
158
被引用文献数
1

「糖尿病診療ガイドライン」は,エビデンスに基づく糖尿病診療の推進と糖尿病診療の均てん化を目的とし,3年ごとに改訂され刊行されている.「糖尿病診療ガイドライン」の策定は然るべきプロセスを踏まえる必要があり,糖尿病診療に必要なアップデート事項を毎年ガイドラインとして刊行することは困難である.そこで,日本糖尿病学会として,今後はアップデート事項を適宜コンセンサスステートメントとして刊行していくことを決定した.そのため,日本糖尿病学会理事会の下に,事務局長,事務局長代行並びに幹事からなる「コンセンサスステートメント策定に関する委員会」を設置し,本委員会が中心となって,アップデートの必要なテーマの選択とその執筆者を選び,理事会の承認を得た後に執筆を行った.本コンセンサスステートメントについては,全理事が査読者を務めた.また,他学会ガイドラインとの整合性の観点から,関連学会に外部評価もお願いした.本コンセンサスステートメントは,我が国における糖尿病診療に関する考え方について,テーマごとにできうる限り新しいエビデンスを含め,我が国の専門家間でのコンセンサスが得られた見解を取り纏めたものとご理解いただき,最善の糖尿病診療を行う上で活用していただきたい.糖尿病患者数は世界のどこよりも急速にアジア地域で増加しており,世界の糖尿病人口の3分の1はこの地域に集中していることから,我が国からコンセンサスステートメントをタイムリーに示していくことは,極めて重要な意義を有することと考えられる.今後,英語版の刊行も予定している.今回は,その第1報として,「糖尿病患者の栄養食事指導」をテーマにコンセンサスステートメントを作成した.我が国における糖尿病患者に対する栄養食事指導の考え方やその指導について,アップデートが必要なフォーカスすべき4つの内容(目標体重および総エネルギー摂取量の設定,炭水化物の摂取量,タンパク質の摂取量,管理栄養士による栄養食事指導)で構成している.主に糖尿病の管理を目的としたものであるが,タンパク質の摂取量においては,糖尿病性腎症やサルコペニア,高齢者の場合に関しても言及している.コンセンサスステートメントは,今後も糖尿病診療について適宜アップデートが必要なテーマを選び,できうる限り最新のエビデンスを盛り込みながら定期的に刊行していく.コンセンサスステートメントが,我が国での糖尿病診療の向上に貢献することを期待するとともに,新しいエビデンスを加えながら,より良いものに進化し続けていくことを願っている.
著者
岡田 鈴人 笹栗 健一 佐藤 貞雄
出版者
特定非営利活動法人 日本顎咬合学会
雑誌
日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学 (ISSN:13468111)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1-2, pp.27-34, 2009-04-24 (Released:2015-01-30)
参考文献数
35

アロスタシスとは生命体が生命活動をおこなうための必要不可欠なメカニズムであり,それは生体の恒常性の維持あるいは恒常性を維持するために生体のシステムを変化させることを意味している.アロスタシスは身体の環境に対する適応や社会に対する精神的適応を促進する.生体が環境の変化に適応するためには,生体自身はある程度の危険を犯さなければならない.しかし,その危険があまりにも頻繁な場合や,生体自身の適応に限界がある場合には,その危険は,アロスタティックロードとよばれ,生命活動に対して障害(病気,あるいは死)を生じることとなる. 今回われわれは,生命活動の緊急状態の指標として,血圧と体温を測定して,それらに対するバイティングの効果について検討した.拘束ストレス中に木製の棒を噛ませると,ストレス性の血圧上昇が30分,45分,60分,75分で有意に抑制され,体温の上昇も30分,60分,120分,180分で有意に抑制された.これらの変化は,サーモグラフィーにより肉眼的にも明らかとなった.また,バイティングにより血中のIL-1β,IL-6,レプチンのストレス性上昇が有意に抑制され甲状腺刺激ホルモンの減少も抑制された.これらの結果は,バイティングにはストレス抑制効果があり,顎口腔諸器官の活動はストレス刺激に対する精神的適応に重要な役割を担っている可能性を示唆している.
著者
佐藤 成基
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.37-53,224, 2002-02-28 (Released:2016-11-02)

This paper attempts to explore the relationships between nationalism and fascism in historical contexts. Nationalism is political action seeking to represent the "wills " and "interests" of the "nation" as a political (imagined) community, also regarded as "us" or "a people." Forms of nationalism historically vary. Fascism could be regarded as a form of nationalism, which first emerged in Europe under the impacts of the First World War. This "total war" brought about dramatic changes in the relationships between "state" and "society": while the state expanded their ruling functions and came to penetrate civilian lives more deeply, various political groups in society began to claim more actively their interests to the state. State and society were thus "democratized." As a result of these changes, nationalism turned from an official, top-down movement, which had still been dominant in the prewar period, into a popular mass movement seeking to mobilize the "nation" as a whole. The First World War also transformed the idea of nationalism: strong solidarity under the "total mobilization" and "fraternity" in trenches were idealized as symbols of the nation. The idea of the nation came to be associated with the memory of the experiences of national solidarity during the war. "Front soldiers" coming back from the battlefields became active bearers of nationalism and developed militant "paramilitary" movements. Moreover, the idea of "national self-determination," which was officially recognized by world leaders as a principle of international politics in the Paris Conference, raised the moral and political legitimacy of nationalism, although the Versailles settlement could never fully realize this ideal and even engendered resentments in some "nations." All these changes contributed to the rise of the popularity and the intensity of nationalism in the postwar period, which fascism was able to utilize to gain mass support.
著者
佐藤 佑樹
出版者
The Japanese Association of Administrative Science
雑誌
経営行動科学 (ISSN:09145206)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.13-34, 2014 (Released:2014-08-11)
参考文献数
75
被引用文献数
1

The purpose of this paper is to review the literature on the theoretical foundation, antecedents, consequences, and measurement of perceived organizational support (POS). The study of POS has recently received considerable attention in the Organizational Behavior and Human resource Management literature. This paper proceeds as follows. First, the concept and scale of POS is described. Second, Organizational Support Theory that provides a theoretical base for POS is overviewed. Third, various factors affecting POS are identified: Fairness, Organizational Politics, Human Resources practices (HR practices), Supervisor Support, and so on. Last, the future directions of studies on POS are discussed.
著者
佐藤 研
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.409-426, 2008-09-30 (Released:2017-07-14)

キリスト教の内部批判として二百年以上前に誕生した「聖書学」は、歴史学と人間学に基づいた学問である。そうであれば、現段階に至って、その「批判」の対象を、キリスト教会や聖書文書だけに留まらず、人間イエス自身にも向けるのは当然と言わねばならない。教祖をあえて批判するという「不敬」こそ、今のキリスト教のキリスト論には必要と思える。それによって初めて、イエスの何が重大なのかが反省されるであろう。そもそもイエスは、人間として幾度も飛躍して最後の刑死の姿に至った。そうであれば、いわゆる公生涯の大部分において彼が語った言葉も、究極の妥当性を持ったものばかりではない。そこには、その終末論的時間感覚のごとく現在の私たちにはそのままでは通じないものもあれば、その威嚇的態度や自己使命の絶対化とも思える意味づけ等、教会が暗黙の内に真似をして悲劇的な自己尊大化を招いたものも存在する。現代の私たちは、こうした面のイエスに直線的に「まねび」の対象を見出してはならない。むしろ、そのゲツセマネの苦悩を通過した後、ゴルゴタで絶叫死するまでの沈黙から響いてくるものをこそ最も貴重な指針として全体を構成し直す必要があると思われる。
著者
佐藤 典彦
出版者
Japan Cartographers Association
雑誌
地図 (ISSN:00094897)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.11-20, 1977-03-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
14
著者
今井 俊吾 難波 正志 柏木 仁 佐藤 夕紀 武隈 洋 菅原 満
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
pp.nt.2020-0025, (Released:2021-03-10)
参考文献数
10

薬剤師は安全な薬物療法の提供のために,患者から必要な情報を「聞き取る」ことが重要である.しかし,薬局薬剤師の「聞き取り」に対し,一部の一般市民は厳しい視線を投げかけており,患者の理解を促すためのエビデンス構築が急務である.本研究は「患者への聞き取り」に基づき実施された疑義照会に着目し,その実態解明と医療安全への貢献度評価を試みた.解析には北海道大学病院の近隣薬局の疑義照会データを用いた.その結果,聞き取りに基づく疑義照会は「薬学的疑義照会の 33.3%を占め,高い許諾割合(98.5%)を有し,用法や用量などの疑義照会分類において,医療安全への貢献度が高い」ことが見いだされた.また,このうち「医師からの説明と処方内容が食い違う」ことが発端となった事例が,特に医療安全へ貢献していることが示された.「患者への聞き取り」に基づく疑義照会の有用性を広く調査するための基礎となる知見が創出された.