著者
杜 偉彬 前川 祐理子 夏井 謙介
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.154, no.1, pp.6-11, 2019 (Released:2019-07-12)
参考文献数
21
被引用文献数
2

アレルゲン免疫療法(allergen immunotherapy:AIT)は,原因アレルゲンを有効成分として投与することにより,アレルギーの根治が期待できる唯一の治療法とされている.日本では,1960年代より花粉やダニに起因するアレルギー性鼻炎に対する皮下免疫療法(subcutaneous immunotherapy:SCIT)が導入され,その臨床効果も認知されている.しかし,SCITでは,アナフィラキシーなどの全身性反応のリスクが課題であり,それを解決するために舌下免疫療法(sublingual immunotherapy:SLIT)が確立された.日本では,スギ花粉症の成人及び12歳以上の小児において,初めてのSLIT製剤としてスギ花粉舌下液が2014年に承認された.その後,当社は至適用量の設定や服薬の利便性の向上を実現させるために,SLIT錠の開発に着手した.ダニアレルギー性鼻炎の成人及び12歳以上の小児においては,ダニ舌下錠が2015年に承認されたのち,2018年に12歳未満の小児においても追加適応の承認を取得した.一方,スギ花粉症に対しては,スギ花粉舌下錠が2018年に年齢制限がなく承認された.本稿では,SLITの液剤及び錠剤の開発経緯とともに,SLIT錠の製剤技術,舌下投与後のアレルゲンの体内分布についても述べる.
著者
吉野 由美子 別府 あかね 前川 賢一 古橋 友則
出版者
視覚障害リハビリテーション協会
雑誌
視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.3, 2009

視覚障害者に対する相談窓口や歩行・日常生活訓練、便利グッズの普及などのシステムづくりを行おうとする時、県や市町村の担当者との相互理解なしでは、システムづくりは難航し、また頓挫してしまうのは明らかな事である。しかし、視覚障害者は身体障害者手帳所持者全体の約1割と数が少なく、視覚障害リハビリテーションとは何かと言うことや、どんな専門家がいるのかと言うことも、一般の人だけでなく、福祉・教育などの行政担当者にもほとんど知られていないのが現状である。<br> このシンポジウムでは、県の費用を使って研修に行き、視覚障害者生活訓練指導員の認定資格を得て高知に戻って来たが、「ニーズがない」と言う理由で、仕事に就けなかった別府さんが、どのように働きかけて行政担当者の理解を得られたか。三重県で、盲学校や市町村に職員を派遣し、視覚リハを展開している前川さんに、どのようにして盲学校や市町村と契約を結んで来たか、そして、県費で15人の視覚障害者生活訓練指導員をつくる計画を承認させた静岡の古橋さんに、なぜそのようなことが出来、現状はどうなっているのかを語っていただく事を通して、視覚障害リハビリテーションの必要性とその効果について、どのようにして行政担当者の理解を得、公的な予算を引き出すことが出来るかについて、地域のそれぞれの条件を超えた共通点を見いだし、これから地域で視覚障害リハビリテーションシステムを構築し、また専門家としてやりがいのある職場をつくって行こうとしている人達に、その方法論を学んでいただくと共に、共に共感し、相談できるつながりをつくって行くことを狙いとしている。
著者
藤本 隆宏 前川 諒樹 岩尾 俊兵
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.5-40, 2019-02-25 (Released:2019-02-25)
参考文献数
36
被引用文献数
1

本稿は、産業競争力の概念を明らかにした上で、生存時間解析のシミュレーションによって、産業競争力の類型と発現過程に関する洞察を得ることを目的とする。ここで競争力とは「選ばれる力」と定義され、「収益力」「表の競争力」「裏の競争力」という多層的な競争力の構造が示される。次に、広義のものづくり論にもとづき、「産業」を同類の設計の製品の集合体、あるいはそれを生産する現場の集合体と規定する。以上の概念規定をおこなった上で、国内・国際競争の軸と競争強度の軸による四つの競争状況についての予想を示し、シミュレーション・モデルによって四つの状況における一定期間競争後の予想生産性分布が再現できることを確認した。さらに、競争強度と現場生存率との間に累積指数分布に近い関係が観察された。また、国際競争における2国の賃金率と現場生存率との関係を調べ、リカード的コスト競争において平均すれば比較劣位な国の現場も「緩やかな競争」では生存可能性が高まるという「越境」現象を確認した。
著者
前川 明紀
出版者
日本高圧力学会
雑誌
高圧力の科学と技術 (ISSN:0917639X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.16-21, 2019 (Released:2019-04-10)
参考文献数
4

The study of high-pressure processing (HPP) technology started in Japan in the 1980s as a non-thermal pasteurization method and practical applications have since been developed. However, HPP technology was not popular then. These days it is getting more popular among Japanese food companies, so to meet the demand we developed horizontal cold isostatic pressing (CIP) equipment called ‘FOOD FRESHER’ based on our knowledge of making high pressure equipment for more than 50 years. This paper describes the recent trends in the HPP market and the specifications of FOOD FRESHER both as it is now, and as it will be in the future.
著者
前田 保旭
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.277-283, 1993
被引用文献数
8
著者
福田 賢一郎 森川 健太郎 八木 正晴 土肥 謙二 村上 雅彦 小林 洋一 中島 靖浩 中村 元保 香月 姿乃 鈴木 恵輔 井上 元 柿 佑樹 前田 敦雄 加藤 晶人
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.58-68, 2020

患者に対する医療安全の確保は感染管理とともに病院における危機管理の骨格である.さらに病院評価としても院内の医療安全システムの構築が求められている.近年では予期せぬ院内急変への対応だけではなく,院内急変の予防に向けた取り組み(RRS:Rapid Response System)が注目されている.昭和大学病院および昭和大学付属東病院では緊急性に応じて院内急変プロトコールがいくつか存在する. RRS導入前における予期せぬ院内急変について,特に緊急性の最も高い緊急コード事例(コードブルー事例)について検討を行った.方法:2014年4月から2018年3月までの4年間にコードブルーの要請があった症例129例を対象として解析を行った.院内急変のうち入院患者は41.0%であり,その他が外来患者や患者家族・職員であった.平均年齢は63.6歳であった.心肺停止症例は26.4%であり,平均年齢は71.2歳であった.心肺停止症例の82.4%は入院患者であった.発生頻度は入院1,000人当たり4.36人であった.心肺停止患者のうち44%で蘇生に成功したが,神経機能が急変前まで改善した例は全心肺停止症例の20.6%のみであった.心拍再開までの時間が短い症例で神経機能予後は良好であった.昭和大学病院および昭和大学付属東病院では院内心肺停止の発生頻度は過去の報告よりは少ない傾向にあったが,今後の院内急変対応の課題としては院内心停止患者の救命率をより向上させること,さらには院内心停止発生率をさらに低下させるためRRSの導入を含めたシステムの構築が必要である.院内発生の心肺停止症例でも予後不良例は依然として存在している.したがって,院内急変あるいは院内心肺停止を予防することが将来的な病院の医療安全の確保の方策として極めて重要である.
著者
寺前 周平 梶原 裕二
出版者
京都教育大学教育学部附属環境教育実践センター
雑誌
京都教育大学環境教育研究年報 (ISSN:09193766)
巻号頁・発行日
no.11, pp.77-88, 2003

ソードテイルフィッシュの成体は自然環境においても性転換を行う大変興味深い魚である。本実験は,ソードテイルフィッシュが性転換を起こす機構を調べるための雌雄の判定基準をつくり,また環境に存在する性ホルモンや性ホルモン類似物質が成体で性転換を引きおこすかどうか,またその濃度を知るために行った。その結果,性ホルモンによりソードテイルフィッシュ成体に性転換が生じること,メダカ幼魚に性転換を引きおこす場合より約10倍の濃度が必要であることが明らかとなった。性転換はホルモン処理後2週で効果が生じ,オスの尾ビレ下辺の短縮,尻ビレの交接器の変化,メスの尾ビレ下辺の伸張として現れた。体長に対する尾ビレ下辺の割合は,よりオスらしい対照混泳群のオスでもっとも数値が高く,ついで対照単独飼育群のオス,ホルモン処理2週間後のオス,同4週間彼のオスの順と低くなった。また,メスでは逆に対照混泳群と対照単独飼育群のメスで低く,ホルモン処理でこの割合が増加した。これらの結果から,体長に村する尾ビレ下辺の割合は,尻ビレの交接器の存在より良いオス・メスを判定する基準となることが明らかになった。中間型の個体群を体長に対する尾びれ下辺の割合が0.4を境界にオス・メスに区別できることが示唆された。
著者
松島 理明 高橋 育子 保前 英希
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.147-151, 2012 (Released:2012-03-28)
参考文献数
16

症例は53歳の女性である.貧血に対する1カ月の鉄剤内服でHb 3.5g/dl が8.9g/dl と改善した.入院当日頭痛や痙攣を主訴に救急搬送され,搬入後痙攣重積となった.高血圧を呈し,脳MRIで両側後頭葉などに異常信号をみとめた.髄液蛋白は上昇していた.人工呼吸管理下のチアミラール持続静注で痙攣は収束し,意識状態の改善,脳MRI異常の消退をみとめ,posterior reversible encephalopathy syndrome(PRES)と診断した.PRESの背景として高血圧や薬剤性などがあるが,本症例のように比較的急速な貧血補正で発症するばあいもある.貧血補正の際は慎重さを要する症例が存在する.
著者
加納 圭 水町 衣里 岩崎 琢哉 磯部 洋明 川人 よし恵 前波 晴彦
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.3-16, 2013-06

Science cafés have become popular as casual public dialogue format since 2005, when is considered the first year of science communication in Japan. We conducted a research focused on the participants in science cafés, using a method of marketing research, "segmentation." We used the third generation of segmentation method, which was originally from Victorian Government in Australia and was considered as useful to access target audiences and segmented the participants in science cafes and other science and technology (S&amp;T) events such as public lectures, science festivals as "the high engagement in S&amp;T" and "the low engagement in S&amp;T" segments. As a result, we found that major participants in science cafés belonged to "the high engagement in S&amp;T" segment and this tendency was true of public lectures and science festivals. However, we also found that the following three formats had a potential to attract "the lowly engagement in S&amp;T" segment. 1) The theme is relevant to their lives. 2) The events are held in a place where can serve alcohols such as a bar. 3) The theme looks collaborative with non-science area such as art or Japanese culture. We need more samples and further analysis to better understand the participants in S&amp;T events.
著者
大前 慶和
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会研究発表会講演論文集 第18回廃棄物学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.6, 2007 (Released:2007-11-23)

環境教育は,今日的には,持続可能な開発のための教育として展開されることが重要である。本研究では,先ほど開発を終えたダンボールコンポスターを活用した環境教育教材『にじいろタウン』を紹介する。webや印刷媒体を組み合わせた教材になっており,子供達が楽しみながら学習できるように作られたものである。
著者
三津橋 佳奈 工藤 慎太郎 前沢 智美 川村 和之
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0614, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】石井によると,重力環境において状況に応じてダイナミックに,また調節的に運動させるためには,体幹の動的安定性は非常に重要である,と述べている。動作時の体幹の安定性の低下は,身体重心の過剰な動揺による動作効率を低下させるため問題となる。また,安定性の低下を代償するために,骨盤や腰椎の運動性を低下させ,腰痛を引き起こしている症例に遭遇することもある。Neumannによると,歩行中,身体は二つの機能的単位である“パッセンジャー(上半身と骨盤)”と“ロコモーター(骨盤と下半身)”に分けられるとし,“パッセンジャー”の唯一の機能は自らの姿勢を保つこと,と述べている。つまり,歩行中の体幹筋には自らの姿勢を保つ為のDynamicな調節が求められる。このような筋収縮を動作中に発揮するためのトレーニングには,運動学習理論が必要になる。Schmidtは,運動学習において,運動を転移させるには,2つの運動課題の類似性が重要としている。つまり,歩行中の体幹筋の収縮をトレーニングするには,その体幹筋の収縮に類似したトレーニングが必要になる。臨床において腹筋群のトレーニングとして,sit-upやブリッジ,コアエクササイズなどが用いられている。しかしそれらのトレーニングが歩行時の腹筋群の動態を再現しているかは疑問が残る。この疑問を解決するには,まず歩行中の体幹筋の動態を明らかにしなくてはならない。そこで本研究の目的は歩行中の体幹筋の動態を示すこととした。【方法】対象は健常成人男性9名の左側とした。超音波画像診断装置には,日立メディコ社製MyLab25を用いて,Bモード,12MHzのリニアプローブを使用した。臍レベルで腹直筋の外側端,外腹斜筋(EO),内腹斜筋(IO),腹横筋(TrA)の筋腹が超音波画像として同時に得られる部位を,体幹の長軸に対して短軸走査となるように自作した固定装置を用いて,プローブを固定した。超音波画像診断装置とデジタルビデオカメラを同期し,トレッドミル上での歩行(4.7km/h)を左側から観察した。歩行は,ランチョ・ロス・アミーゴ方式を用いて細分化した。得られた歩行周期中の超音波の画像から,初期接地(IC)と立脚終期(TSt)の3筋の内側端の座標と,各筋の筋厚の最大値をImage-Jを用いて測定した。ICを基準としたときのTStでの内側端の内・外側方向への移動距離と筋厚の変化量(筋厚変化量)をそれぞれ計測した。統計学的手法として,各筋のICとTStの移動距離・筋厚変化量の違いについては,Wilcoxsonの順位和検定を,移動距離,筋厚の変化量の三筋間の比較にはFriedman検定(P<0.05)を用いて検討した。また,各筋の筋厚変化量とIC時,TSt時の筋厚の関係をspearmanの順位相関係数を用いて検討した。なお,統計解析にはSPSS ver.18を用いて,有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】対象者には本研究の目的と趣旨を口頭にて十分に説明し,紙面上にて同意を得た。【結果】Friedman検定の結果,移動距離は,EO-0.38(-0.53-0.20)mm,IO0.48(-1.33-0.56)mm,TrA0.38(-0.79-0.85)mmで有意差はなかった。また,筋厚変化量も,EO0.07(0.04-0.17)mm,IO0.40(0.21-0.58)mm,TrA0.35(0.29-0.39)mmで有意差はなかった。TrAの変化量はIC時の筋厚と相関係数-0.9の負の相関関係を認めた。【考察】本研究結果から,側腹筋群の移動距離,筋厚ともに動態が乏しいことが分かった。しかし,EO・IOに比べて,TrAの変化量が大きい傾向にあった。この原因を調べるため,相関係数を検討したところ,TrAのIC時の筋厚と筋厚変化量に負の相関がみられた。つまり,ICで筋厚の薄いものほど,TStでは筋厚が増大するといえる。そのため,ICでの筋厚が他の2筋に比べて薄いため,若干の筋厚の増大でも相関がみられたと考えられる。また,先行研究における歩行中の体幹筋の筋電図学的変化と,今回の筋の動態は関連が乏しい。すなわち,体幹筋の筋厚を計測することで,筋活動の指標としている研究の妥当性を再考する必要性が考えられる。【理学療法学研究としての意義】歩行時,体幹は“パッセンジャー”として姿勢を保つために働いている。臨床では,腰部安定化エクササイズなど様々な体幹トレーニングが行われているが,その課題特異性を考慮した歩行時の腹筋群のトレーニングの再考が必要となる。歩行時の側腹筋群の動態は乏しい。先行研究においてわれわれは片脚ブリッジ運動時の下肢支持側と下肢挙上側の腹筋群の動態を報告している。その結果,支持側で見られた動態は今回歩行において見られた動態と類似していた。一方,下肢挙上側の筋厚は変化量が大きかった。以上のことから,歩行中の体幹筋の動態に近い運動は下肢支持側での片脚ブリッジ動作であり,今後介入効果を検討していきたい。
著者
安達 實 室 譲 前川 秀和 小堀 為雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.279-284, 2001-05-01 (Released:2010-06-15)
参考文献数
11

明治維新後の城下町金沢において、藩政期から架かっていた浅野川大橋と犀川大橋はともに北国街道の重要な橋であった。大正期にそれぞれコンクリートアーチ橋と鋼トラス橋になったが、それまでは木橋であった。明治期のこの木橋について、これまで写真や新聞記事でしかその概要を知ることはできず、木橋構造の詳細を記したものはなかった。今回その資料の一部を見る機会があったので紹介したい。
著者
藤沼 澄夫 掛村 忠義 佐藤 浩一郎 飯田 努 三枝 善伯 平畑 光一 鴫山 文子 古畑 司 前谷 容
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.3010-3018, 2008-12-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
28
被引用文献数
2

直腸粘膜脱症候群は排便時の過度のいきみにより,直腸粘膜が機械的刺激や虚血性変化を受け,直腸粘膜に隆起性病変,平坦発赤病変や潰瘍性病変を生じる疾患である.臨床的には悪性腫瘍と誤認されることがあるので鑑別が重要である.過度のいきみを行う理由として,排便習慣の他に,恥骨直腸筋の奇異性収縮も要因となっている.症状としては血便が一般的であるが,粘液排泄,会陰痛,テネスムスなどもある.隆起性病変は主に直腸下部にみられ,平坦病変や潰瘍性病変は中部または上部直腸にみられやすい.大きさは様々であり形態学的に本症を診断するが,直腸肛門機能検査や排便造影検査が診断の手助けとなることもある.病理組織学的には線維筋症(fibromuscular obliteration)が特徴であり,平滑筋線維と膠原線維の増生が粘膜固有層において著明にみられる.治療はまず保存的治療を行い,いきみ習慣の改善を第一とする.トイレで過こす時間を最小限にとどめ,排便時のいきみを控えるように指導するとともに緩下剤などの薬物治療を行う.外科的治療は保存的治療を行っても症状に悩ませ続けている患者,または難治性MPSと考えられる症例にのみ考慮されるが,種々の術式により予後は報告者によって異なっている.
著者
前田 譲治
出版者
北九州市立大学文学部
雑誌
北九州市立大学文学部紀要 = Journal of the Faculty of Humanities, the University of Kitakyushu (ISSN:13470728)
巻号頁・発行日
no.73, pp.41-52, 2007

日米が各々制作した2種のゴジラのcharacterizationの比較と、日米の映画題名の方向性の比較と、アメリカ映画の素材の検討を行った。これらの作業を通して、アメリカ人は荒唐無稽な映画内容を、現実との連続性を有した、現実と近しい世界と眺める傾向が強いのに対して、日本人は、映画内容を現実と完全に乖離した別世界と認識する傾向が強いことを明確化した。次に、現実の日本人とアメリカ人の行動形態に注目した。まず、日本人とは異なり、アメリカ人は映画内容に対して、それが現実であるかの如き反応を示す点を明らかにした。次いで、日本人が決して現実とは認識できない荒唐無稽な噂を、アメリカ人は現実として受容する点に注目した。以上の在り方を論拠として、アメリカ人が現実として受容可能な領域は、日本人よりも格段に広く、日米間では現実認識のあり方に多大な差異が存在すると結論付けた。
著者
半澤 礼之 宮前 耕史 浅井 継悟
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.Suppl., pp.93-96, 2021-02-20 (Released:2021-03-08)
参考文献数
12

本研究は,教員志望の大学生を対象として,地域と学校教育の協働の重要性の認識を測定する尺度を作成することが目的であった.大学生341名に対する質問紙調査の結果,「地域の教育への活用」,「地域の未来のための教育」,「地域と学校の関わりによる子どもの発達」,「地域と学校の関わりの重要性」の4つの因子が得られた.地域愛着と地域社会への責任感,地域を題材としたカリキュラム開発への効力感という,地域と学校教育の協働の重要性の認識と関連をもつであろう他の変数との関連を検討したところ,有意な正の相関がみられた.この結果から,本尺度は一定の妥当性を有していることが明らかになった.