著者
宮前 良平 渥美 公秀
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.1711, (Released:2018-03-21)
参考文献数
40

本研究は,津波で流出した被災写真を目にした被災者の「語りにならなかった事例」をもとに,語りえないことが復興に果たす役割を考察したものである。まず,先行研究においては復興過程で被災者が語らなかったこと,語りえないことについての議論がほとんどなされていないことを確認した。そのうえで,それらに着目することが実践的にも意義があるということを言語化可能な経験Aと言語化不可能な経験Bについての議論をもとに,本研究の前提として示した。これらの議論を通して,本研究のリサーチクエスチョンとして,「経験Bを第三者が共有するにはどのような方法があるか」「経験Bをめぐる現場のダイナミズムは,時間によってどのように変容するか」「津波という喪失経験からの復興という文脈において,経験Bは復興とどのようにかかわっていくか」の3点を提示した。本研究では,語りえないものを調査する道具としてなにげない日常が写っている被災写真を用いた。また,語りにならなかった事例を描写するために,岩手県野田村での被災写真返却お茶会の実践を通じた3年以上に亘るフィールドワークを実施し,その中から4編のエスノグラフィを示した。考察において,一枚の写真と「秘密」としか語らない被災者の様子から,語りえないことを第三者が共有する際に語りえないことを写真として名指すことの可能性を示し,その時間的変容を分析した。また,言葉にならないようななにげないことが写真として他者にも開かれていることを指摘し,このことが復興過程における新たな公共性の萌芽となりうることを論じた。
著者
松井 和輝 古川 正統 安藤 英由樹 前田 太郎
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.243-252, 2015

We manipulate equipment naturally as an extension of physical ability. However, it is unclear whether we can transform supernumerary body parts to our body image to use the equipment as a similar body parts. So, this study suggests that ownership is formed by the simultaneity of visual and tactile stimulation, and that this perception of ownership is important to form the body image. In addition, we propose that if the equipment appears to be extended continuously from our body and ownership of the equipment occurs, then the body image will be transformed to include the equipment. Therefore, in this study, the equipment was arranged to appear as extending from the body, and visual and tactile stimulation were used to elicit ownership of the equipment. The results confirmed that body image was transformed to include the equipment. Furthermore, this suggested that it is possible to incorporate equipment into one's body image, and that we could use the equipment as a supernumerary our own body-part.
著者
前田 光哉
出版者
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
pp.JOSH-2015-0025-CHO, (Released:2016-08-11)
参考文献数
66

2011年の東電福島第一原発事故の教訓を踏まえ,厚生労働省においては,今後仮に原子力発電所に事故が発生した場合に備え,労働者が緊急作業に従事している間の被曝線量の管理について検討した.検討の基本的な考え方は,①ICRPの正当化原則,②緊急被曝限度の考え方,③原子力災害の危機管理の観点,④ICRPの最適化原則に基づくものであった.厚生労働省は,検討結果を基に2015年8月に改正電離則を公布した.改正の内容は,①特例緊急被曝限度の設定,②特例緊急作業従事者の限定,③被曝線量管理の最適化,④特例緊急作業従事者に係る記録等の提出等,⑤緊急作業従事者の線量の測定及びその結果の確認,記録,報告等の5点である.また,特例緊急被曝限度の設定に当たっては,数多くの文献レビューの結果に基づき検討したが,同様に低線量被曝の文献レビューを行った食品安全委員会及び低線量被曝のリスク管理に関するワーキンググループの検討結果を紹介するとともに,最近の低線量被曝に係る主要な文献の内容を紹介した.今後,放射線作業に従事する労働者の線量管理方策を検討する場合は,高線量の急性被曝だけではなく,低線量の慢性被曝による健康影響を考慮に入れる必要がある.それに備えて,長期的に労働者を追跡した疫学研究を積極的に推進していく必要がある.
著者
出原 立子 藤井 朝比 前田 祐太朗
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.153, 2014 (Released:2014-07-04)

金沢市は、平成27年春に北陸新幹線開業を迎えるにあたり、滞在型観光の促進を目標とした「夜の賑わい創出事業」に取り組んでいる*1。本事業の一環として、我々は金沢の玄関口である金沢駅東口にある「もてなしドーム」において、プロジェクションマッピングを用いた実証実験を行った。 本研究のねらいは、ICTを活かし街の付加価値を創出する方法を実践的に追求することにある。今回の取り組みにおいて掲げた目標は、北陸新幹線開業に伴い新しい金沢のイメージを創り伝えること、そして新幹線開業の気運を市民と共に高めるために、見に来られた参加者達とプロジェクションマッピングとの関係性を創ることを目指した。 そこで、金沢の新たなイメージを伝えるために、もてなしドームにある構造物を対象に映像を投影する鑑賞型プロジェクションマッピングを行い、さらに、広場に集まった人々との関係性を創り出すために、インタラクティブ技術を用いた参加型プロジェクションマッピングのイベントを実施した。
著者
賀沢 秀人 平尾 努 前田 英作
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.317, pp.11-16, 2002-09-12

全順序を備えた未知の集合から取り出された順位つきサンプルを利用し,サンプル間の順序関係を推定する「順位づけ学習問題」について議論する.従来,ある順位を境にサンプルを正例と負例にわけ,SVMの学習を行ったのち,得られた識別関数の値で未知の事例に対する順位づけを行うという手法が提案されている.この手法は,実験的に高い精度を残すことが報告されているが,妥当性について理論的な説明を欠き,また,ある特定の順位の上下という粗い順序関係しか用いていないという点で,問題があった.そこで,本稿では,このSVMによる順序づけ手法の理論的な妥当性を検証するとともに,改善手法の一つとして,複数の順位を境として正例と負例にわけたサンプルから学習を行うRanking SVMの提案を行う.また,テキスト自動要約タスクにおける重要文抽出データと人工データを用いて,Ranking SVMと従来手法を比較した結果についても報告する.
著者
須藤 裕子 小笠原 勝 西尾 孝佳 一前 宣正
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.8-14, 2004-03-31
参考文献数
24
被引用文献数
3

舗装道路内の縁石と歩道の接合部に形成される路面間隙に成立する雑草植生の生態学的な特性を明らかにすることを目的に,栃木県宇都宮市内の国道,県道および市道の植生調査を行った。植生調査は2002年3月18日から4月25日(春期),同年10月17日から10月29日(秋期)に行い,間隙のサイズと間隙に含まれる土壌のpHを測定するとともに,草種別の出現頻度,積算優占度,生活型および帰化雑草率を求めた。植生解析の結果から,路面間隙の雑草植生はオランダミミナグサ(Cerastium glomeratum Thuill.),ノミノツヅリ(Arenaria serpyllifolia L.),エノコログサ(Setaria viridis (L.) Beauv.),コニシキソウ(Euphorbia supina Raf.),ニワホコリ(Eragrostis multicaulis Steud.),オヒシバ(Eleusine indica(L.) Gaertn.),スズメノカタビラ(Poa annua L.)およびヨモギ(Artemisia princeps Pampan.)を優占種,ノミノツヅリを標徴種の候補とし,種組成の点において水田や畑の雑草植生と明らかに異なることが判明した。また,路面間隙に出現した雑草種は春期と秋期あわせて25科74種に上り,路面間隙は植物の生育にとって不適な環境と考えられるにもかかわらず,多種類の雑草が生育していることも明らかになった。さらに,路面間隙の雑草の多くは地下および地上に連絡体を作らず(R_5),重力または風によって種子散布を行う(D_4)一年生(Th)のTh-D_4-R_5型の雑草であった。
著者
塚本 俊介 前田 貴昭 池田 元吉 秋山 秀典
出版者
社団法人 プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.39-42, 2003 (Released:2005-09-28)
参考文献数
8
被引用文献数
5 7

Pulsed high voltage was applied to logs used for mushroom culturing to mushroom growth. An experiment was carried out in an attempt to increase shiitake mushroom yield. Results showed that the weight of shiitake mushroom yield was double that of a normal group cropped in a month. Another experiment was performed to estimate the effect of electrical stimulation on the growth of hyphae. Results of that experiment showed a slight influence on the growth of hyphae, and showed some possibilities this method can improve mushroom culturing techniques.
著者
前田 浩
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.80-88, 2018-03-25 (Released:2018-06-25)
参考文献数
42
被引用文献数
1 1

固型腫瘍のEPR効果(enhanced permeability and retention effect)発見の歴史、問題点、各種EPR効果増強剤(エンハンサー)の重要性、腫瘍のHeterogeneityと遺伝子変異の多形性、高分子化/ナノメディシンの体内安定性と薬物活性本体(API)の化学的性状の違いによる腫瘍局所での放出とその細胞内とり込みとの大きな差異(例:ポリマー(P)結合ピラルビシン(THP)とP-ドキソルビシン(DOX)の差)、固型がんの血栓形成などの血流不全と腫瘍デリバリーのバリアーとその克服、マウス実験腫瘍モデルと現実のヒト臨床成績のギャップなどについて論じた。
著者
藤原 聡 高橋 優基 前田 剛伸 嘉戸 直樹
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.66-73, 2021 (Released:2021-12-25)
参考文献数
18

In clinical practice, muscle weakness is often considered a functional disability similar to limitation of range of motion. Physical therapists use manual muscle testing (MMT) as described by Daniels et al. for the general assessment for muscle weakness. This test quantitatively assesses muscle strength by the amount of joint movement, muscle contraction, and the effect of gravity and resistance. However, it is not possible to evaluate the strength of individual muscles involved in a single joint movement, or to separate a single muscle into fibers with different actions when using this method. It is also difficult to assess qualitatively whether muscle activity is assessed at a specific time during movement. In this paper, we examine the possibility of evaluating muscle weakness using MMT for knee extension, hip extension, and hip abduction by changing some of the test positions and the direction of manual resistance based on kinematics. For knee extension, we describe how to check the alignment of the patella and how to vary the movement speed to check for muscle activity at a given time. Each of these approaches are presented based on electromyogram data.